異世界転生請負人・渡界人～知られざる異世界転生の裏側公開します

３章 候補者は４人

22 捜索隊の真実⑨ 最後の関門・最大の悲劇②

　『私は彼女の意変に最初、ただ驚くばかりだったのはあまりに突然だったのと頭に酸素が足りなかったからだと思います。なぜなら岡星隊員の握力も人間のそれとは思えないほど強く、私の力で容易に振りほどけない位には強かったのです。そして目！彼女はいつの間にかあの原住民と同じ目をしていたのです！その目と手が邪悪の色を湛えて私を氷のような冷たい水の中に突き落とそうとしているのです。
「後はお前だけだ。お前さえ排除すれば我が主の御座をようやく手にすることが出来る！」
後ろから徳長隊長の声が響き渡りました。
「主！？するとお前達はダーハムの使徒だというのか？この星の原住民でなく！？」
「ご名答。私達はずうっとお前達の後を追い、時には先回りして排除の機会を伺っていたのだ。そしてこの２人を乗っ取る事に成功した。我々は主同様肉体を持たぬ。だがそのかわりどんな物にでも乗り移れるのだ」
どんな物にも。その言葉に悪夢で見たあのトカゲモドキの目と今の隊長の目が同じだったことを思い出しました。
「まさか最初から・・・」
「その通り。だがやり方を変える事にしたのだよ。お前達は元の世界で我々を撃退したと思わせ油断させた後、この世界の様々な生物に乗り移っての殺害を試みたのだ。だがお前達は思いのほか外部からの脅威には備えていて抹殺の見込みが薄いと判断した。だから今度はお前達に乗り移り、暗殺する事に決めたのだ。不幸な事に腰野という奴に憑依した同胞はあのフォレストキングに食べられてしまったがね。本来なら滝に降りるところでお前だけ始末する予定だったのがここまで長引いてしまった。さあ、長話を聞くのも君の首もつらかろう。やれ」
隊長はここで岡星隊員に憑依したそいつにそう指示して先に行ってしまいました。残された岡星隊員に憑依した奴はどういうつもりか、私を絞め殺すのではなく川で溺死させようと首を絞めた態勢のまま河原から突き落とそうとしました。あの時の自分の動きは正に神懸かっていました。また同じことをやれと言われてもできないでしょう。すなわちこうです。突き落とすという事は手を離さなければなりません。私はその瞬間に奴の手を掴み、背負い投げの要領で奴を川の中へ逆に投げ落としました。奴の断末魔は一生耳から離れないでしょう。少しでも周りが暗くなると耳に木霊すんです。私は凍死した岡星隊員の死体が流れ去るのを見届けて徳長隊長に取り憑いた奴を追ってさらに洞窟を下って行きました。』