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4章 渡界人の慧眼
4-1 我はウォルター・ランドステイ⑦ 恐るべき転生の秘法
しおりを挟む「君は一体何を掴んだんだ?」
大伴家の最寄り駅であるD駅へ向かう電車内で私は居ても立っても居られずに渡に尋ねた。
彼はBOX席で向かい合った私の顔に触れる程の近さに体を傾けると話し出した。
「逆の方を追ったのさ。つまり勇君の魂の方をね。君も知っての通り転生には3通りある。一つは転生者自身が別の人物として元の人格そのままに異世界に飛ぶ事」
「そうだね。というより大抵はそのパターンじゃないのか?」
「もう1つは既に存在している異世界の誰かに転生者の魂を入れる事だ。このパターンは器の方、つまり異世界側の人物がロクデナシである事が多い。つまり神による魂の矯正というところかな。ほとんどはこの2つだ」
「待ってくれ。2番目のやり方はないだろ?勇君の元の人格は普通の子供のそれだぞ?何の落ち度もないじゃないか。1番目ではないとすると最後の方法はなんだ!?」
「3番目は合法的な転生方法ではない。異なる次元にある2つの魂を入れ替えてしまうのだ。この方法は転生や転移を司る神々を通さないという自由さの反面非常に難易度が高い。僕はこの点に気が付いて探ってみたんだ」
「あったんだね、勇君の魂が!?」
「正確に言うと誰の体に入ったか、どこにいるかも分からないんだ。異世界カーウデクストの恐らくは仙人か隠者の様な生活をしている錬金術士か魔導士だと思うのだが。向こうの神々に働きかけて今そいつの身元の捜索を現地の冒険者ギルドに緊急クエストとして発布してもらっている」
沈鬱な表情で渡は続ける。
「問題はそいつが既に死んでいる場合だ。当たり前だが肉体的に死んでいる体にいくら健全な魂が宿ろうともその体は動かない。それどころか肉体に引っ張られて魂までもが滅んでしまう」
「そうなったら大変じゃないか!一刻も早く彼の魂を呼び戻さなくちゃ」
「そう。だから時間がない。最悪の場合に備えて僕はカーウデクストの女神マハから魂を元の場所に戻す呪文を1度きり唱える事を許された。それを使う必要が無いと良いのだが」
「何で?」
「僕らが対決しようとしているのは事故か故意かは分からないが次元の異なる若い肉体に独力で転生魔法だか錬金術を使う程の高位の魔導士が相手だからさ。つまりそれほどの技術や学識のある奴なら対抗手段も講じていると考えるべきだろう。もし、呪文が防がれたり効力を十分に発揮しなかった場合どうなると思う?そうなった場合元の勇君の肉体や魂に取り返しのつかない傷を負わせてしまうかもしれないのだ」
渡の言葉に私は身震いした。
私達はD駅に電車が着くや否や扉が開くのと同時にホームを駆け抜けた。
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