魔甲闘士レジリエンス

紀之

文字の大きさ
22 / 64

第22話 誇り高き獣王(後編) ライオン型上級UMAガッシングラム 虎型UMAヴァッソコ 登場

しおりを挟む
  虎型UMAヴァッソコ

Eスリーの青田義男が変化した姿である。

古代ローマの剣闘士のような風貌はガッシングラムのエナジーの影響だろうか

変身時に放射したエレメンタル・エナジーが両隣の警官を消滅させると天井を破ってパトカーのボンネットに飛び乗る。

そして運転していた警官を両腕に装備された4本のクロ―で引き裂く。

「許さんぞ。俺を馬鹿にした奴らはすべて皆バラバラにしてやる」

 ヴァッソコは次元移動の穴を作り出すとその中に消えていった。



ライオンの強奪を終えたEスリーの襲撃部隊は港にて檻を船用コンテナに入れる作業をしていた。

「おかしい、D班も隊長も来ないぞ」

そうぼやきつつ作業をしていた隊員に別の隊員が駆け寄ってくる。

「大変だ。ライオンの怪物が出たらしい」

「そんな馬鹿な。まさか」 

 二人して檻に入ったライオンを見る。

「こいつらの仲間が化けたんじゃ」

「おい」

「まさか隊長も」

「よせ。縁起でもない」

「作戦はどうするんだよ」

「どうって隊長が来るまで待つしかないだろう。作業続行だ」

その言葉が終わると同時にライオン達が一斉に吠え出す。

同時に人間の悲鳴と怒声が港に響き渡った。

ガッシングラムとレジリエンスが港に現れたのだ。

レジリエンスはEスリー隊員の銃撃を弾き返しながら銃を握りつぶし、隊員を殴り飛ばす。

レジリエンスの頭上を飛び越えガッシングラムが船へと迫る。

港に平積みされたコンテナを足場に船上のライオン達の入れられている檻に一気に近づく。

「ゲッ、怪物だ」

「おい、ライオンに当たったらどうする」

「馬鹿野郎。命あっての作戦だろうが」

「そうだな。こんなのはどうだ?」

言い争っていた二人の隊員は第三の声のする方へ首を向ける。

2人のそばにレジリエンスが立っており手刀で両名とも気絶させた。

「こっちは終わったぞ」

「こちらも皆無事だ」

人間とUMAの奇妙なコンビは互いの健闘を称えあう。

「檻を戻そう。手伝ってくれ」



「そういえばさっきの金色の姿は一体なんだ?」

全ての檻を船から港に戻し終えてレジリエンスが尋ねる。

「あれか。儂はもうすぐ精霊となる。あれはその予兆だ」

「精霊というとサンダーバードみたいになるのか。この世界にずっといられなくなるとか」

「奴を知っているのか。あの一族も変わり者よ。自分達でなく人間を守るのだからな」

そこでガッシングラムは言葉を切って檻の方を見て続ける。

「そう。守護者の座は別の者に譲られる。暫くはそいつの後見という訳よ」

その言葉に一頭の雄ライオンが吠え声を上げる。

「なんて言ったんだ?」

「『俺が後を継ぐ』とさ。ハハハ、頼もしい限りよ」

レジリエンスの質問に老獅子が答える。

突如ガッシングラムの足元に次元の穴が形成される。

「まずは貴様からだ!!」

そこから飛び出してきたヴァッソコがガッシングラムの脇腹をクロ―で深々と抉る。

「次はお前だ!」

ガッシングラムの体をレジリエンス目掛けて投げ飛ばすと同時にヴァッソゴは大きく跳躍する。

老獅子の体を受け止めたレジリエンスはとっさに背中を向けて彼を庇う。

金属を切る嫌な音と火花が周囲に飛び散る。

「グッヌ」

レジリエンスは呻きながらもヴァッソコの爪の第二撃を杖で押さえつける。

その杖を跳ねのけようともがくヴァッソコは急に体勢を崩す。

レジリエンスが力を抜いた為だ。

よろめいた怪物の顎を杖で突き飛ばし、距離を取る。

レジリエンスは背中で咆哮と共に急速なエレメンタル・エナジーの上昇を検知した。

彼が振り返ろうとした時その体を跳ね飛ばし、新たなガッシングラムがヴァッソコへ向かって行った。

「あいつ、有言実行したのか」

檻の一つが破られていた。

「人間の戦士よ。聞いてくれ」

「あまりしゃべるな、ガッシングラム」

「フ・・・自分の体は自分が良く知っている。あいつはUMAになったばかりでその力に翻弄されておる。出来るなら彼を止めてくれ」


「必ず止める」

「強いぞ。我らは。仮に倒しても正々堂々の戦いなら誰も憎まん。そういう死に方ができなかったのが心残りだ。長く生き過ぎた」

そう言い残し、老獅子は金色の光の粒子となって天に昇っていく。



新たに生まれた若いガッシングラムはヴァッソコを終始圧倒していた。

この個体は先代と同じ姿と遜色ない力に加えて独自の能力として『超加速』能力を有していた。


目にも止まらぬ速さでヴァッソゴをその爪で切り裂いていく。

その二体のUMAの戦いの音で気絶していた一人のEスリー隊員が目を覚ました。

その彼の目の前でライオンの怪物が斧で虎の怪物を両断する。

隊員とライオンの怪物の目が合う。

「ひいいいーた、助けてー」

逃げだした隊員を背中から斬ろうとするガッシングラムの前にレジリエンスが立ち塞がる。

「どけ、こいつらがいなければあの方が死ぬことはなかった」

「逃げる敵を斬るのは誇りに反する。あの老獅子ならしない」

「お前に何が分かる!」

ガッシングラムは斧を持って突進してくる。

レジリエンスは右腰のスイッチを押して足元に次元移動の穴を開くと同時に体を大きく開く。

その穴にガッシングラムが自ら飛び込む形となりレジリエンスがそれに続く。


着いた先は周囲を高い崖に囲まれた森林地帯だった。

「ガアアアッ」全身からエナジーを立ち昇らせてガッシングラムが斧を振るう。

「あの斧は高周波を発している様だな」

躱した斧が周りの木々を音もなく切断する様を見てレジリエンスは呟く。

彼は直後に来た横薙ぎの一撃を飛んで躱し、近くの木立を蹴る。

互いの体が一瞬交錯した

互いの中間に斧が落ちる。

若獅子がその勢いのまま頭上に振り上げた斧の根本をレジリエンスは炎の剣で切り飛ばしていた。

「やるな。だがまだお前に負けたわけじゃない」

「お前は力に呑まれかけている。このままでは自滅だぞ」

「そんな事はこれを止めてから言うのだな!」

瞬間獅子の体が消えたと思うとレジリエンスは遥か後方へ吹きとばされていた。

レジリエンスが巨木に叩きつけられ共に地面に沈むまでに4度の衝撃を受けた。

両者は森の中の木のない空き地に出ていた。



レジリエンスは弱点を探るべく爪痕が走る右手で三角形を描き上方を横薙ぎしながら探知魔法プサクフを唱えようとする。


「魔法は使わせん!」

ガッシングラムの高速攻撃はレジリエンスが右手を動かす間3度彼の体を吹き飛ばした。

レジリエンスは再び木々の中に身を隠す。

(ここならスピードを出せまい。だが火のエナジー量が心許ない。身体強化無しで奴に対抗できない。どうする?)


レジリエンスがこう考えている間にガッシングラムが跳躍して爪を振り下ろす。

それを同じく跳躍でかわすが若獅子は恐るべき瞬発力で飛び上がり、レジリエンスを追い越す。

「しまった!?」

猛烈な蹴りがレジリエンスの背中を襲い藍色の鎧は崖にめり込み、落下する。

「先代に何か言われたんだろうが、殺すつもりで来ないとお前が死ぬぞ。お前に恨みはないが新たな守護者として実力を示す必要があるからな」

「そうか。だが約束は守るためにするものだ」

「後ろは崖。逃げ場はない。諦めろ。こんな状況で勝ち目はない」

「方法はある」

レジリエンスが崖に対して垂直に飛ぶ。

「身体能力では俺には勝てん」

続いてガッシングラムも飛ぶ。

両者の体が空中で同じ高さに来た。

「今だ!」レジリエンスが崖を蹴って更に跳躍する。

ガッシングラムの爪が空を切る。

「何ッ」

ガッシングラムの体は崖から離れていて相手と同じ事は出来ない。

異世界の赤黒い太陽がレジリエンスの体に火のエナジーを送り込む。

レジリエンスの両腕がガッシングラムの頭頂部を掴む。

レジリエンスはガッシングラムの頭の上で逆立ちしている状態となる。

「ハアッ!」

「ガハッ」

その状態で反動をつけた蹴りを腹部に叩き込む。

吹き飛ばされ、大地を跳ねるガッシンクラム。

レジリエンスはその体をバックブリーカーの要領で持ち上げた。

「風に当たって頭を冷やせ。その姿が何の為にあるのかをな」

そう言いながらガッシングラムの体を揺すって体全体で三角形を描き上面を薙ぐように投げ飛ばす。

「グオオオッ?」

ガッシングラムの体はプノエー(ギリシア語で突風の意)で強化された投げで先程の空き地にガッシングラムを叩きつける。



「効いたぜ。あんたを認めよう」

「リーダーや守護者はもう少し冷静さがいるんじゃないか」

「かもな。何かあったら言ってくれ。今の事先代の事含めて世話になったからな。出来る限りのことはする」

「そんな時が来ない様願いたいな」

「違いない」

2人して笑う。お互いこんなに笑うのは久しぶりだった。



こうしてEスリーのS計画は阻止された。実行犯は2名を除いて逮捕された。

しかしこの事件の裏で人とUMAが友情を結んだ事

それを導いた誇り高き獣王がいたことを知る者は少ない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

時き継幻想フララジカ

日奈 うさぎ
ファンタジー
少年はひたすら逃げた。突如変わり果てた街で、死を振り撒く異形から。そして逃げた先に待っていたのは絶望では無く、一振りの希望――魔剣――だった。 逃げた先で出会った大男からその希望を託された時、特別ではなかった少年の運命は世界の命運を懸ける程に大きくなっていく。 なれば〝ヒト〟よ知れ、少年の掴む世界の運命を。 銘無き少年は今より、現想神話を紡ぐ英雄とならん。 時き継幻想(ときつげんそう)フララジカ―――世界は緩やかに混ざり合う。 【概要】 主人公・藤咲勇が少女・田中茶奈と出会い、更に多くの人々とも心を交わして成長し、世界を救うまでに至る現代ファンタジー群像劇です。 現代を舞台にしながらも出てくる新しい現象や文化を彼等の目を通してご覧ください。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ

一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。 百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。 平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。 そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。 『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...