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第26話 環境テロリストE₃の最期(前編) 類人猿型UMAモノス 類人猿型UMA XYZ1 登場
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S計画が失敗し、コンビニエンスストアの襲撃事件で逮捕されたEスリー隊員。
彼は今パトカーに乗せられていた。
「何でお前達が警察にいるんだよ」
「我々は社会の至る所にいる。それを忘れたな」
「裏切者のお前には実験の被験者になってもらう」
彼を捕まえたのは同じEスリーの隊員達であった。
「実験?まさか新人類計画か?ふざけるな!あんなものは組織の存続にかかわるものだぞ」
過激な環境保護団体がいくつも寄り集まってできたのがEスリーという組織であることは繰り返し説明してきた。
だが組織というものが人間の集まりである以上は掲げた理念を曲解あるいは先鋭化、真逆の発想をする者達が出る事を防ぐことは不可能と言っていい。Eスリー内では『公認された禁忌』という異端思想がいつの頃からか存在した。
その最たるものが新人類計画を推進する一派で彼らは環境破壊が極まった地球でも生きられる人間を作り出そうという環境保護を最初から諦めているという点で非難の対象となってきた。
ところがどういう風の吹き回しか今のEスリー代表が就任してから『第二プラン』という名目でこれに一定の予算が下りる事になった。
こうした反発が先のS計画の強Eスリーの組織の弱体化に繋がっているのが現状なのである。
そしてご多分に漏れずこういう事を推進する面々とはつまり人を人とも思わぬ鉄面皮共の集まりであった。
「お前に拒否権は無い」
男達は裏切者をあるビルの一室に担ぎ込む。
その部屋には椅子とその正面にパラボラアンテナ状の妙な機械があるだけだった。
「さあ、お前に新時代を築く価値があるか見せてもらおうか」
そう言いながらリーダーらしき人物の姿が変化する。
類人猿型UMAモノス
ヘッドギアをつけた骸骨状の頭部にボクシンググローブに似た腕を持つ格闘家の姿に男は恐怖の声を上げる。
「やれ」
椅子に縛り付けられた男にパラボラから赤い光が照射される。
男の姿が苦痛と共に変わっていく。
骸骨状の頭部以外は猿を人間大にしたような風貌だった。
「フン、また同じか。まあいい、これで君も晴れて新人類の仲間入りだ」
モノスの声を合図に周りの隊員達も椅子に拘束された男と同じ姿となる。
類人猿型UMA XYZ1
それが彼らの新たな名前だった。
男が何度目かの恐怖の叫びをあげる。
「喚くな。お前も今同じ姿なんだぞ」
「嫌だああああ」
拘束具を引きちぎった新入りのXYZ1がモノスに殴り掛かる。
モノスは相手の首を掴むとそのまま床に叩きつける。
「分かるか?この実力差が。これこそが新たな秩序を生み出す源泉なんだよ」
そして周囲を見回すと
「今度の作戦を説明する。我々の目的は腕だ。信頼すべき情報源からあの魔法の鎧の左腕がある大学の研究室にある事が分かった。それを回収する事。邪魔する者は全て叩き潰せ。新生Eスリー誕生の狼煙を上げよ」
彼の言葉に呼応するように一斉に鬨の声が上がる。
Eスリー本部。
この代表専用の部屋で代表たるテオドラの独語とも妄想ともいえるつぶやきが響く。
声の調子や時折見せる大仰な身振りから、もしこれを見る者が居たら芝居の稽古とでも思っただろう。それくらい真に迫っていた『演技』だった。
「はい。全ては私の不徳の致す所でした。もはや時間はありません。この地上に再び楽園を築く事は現生人類がこの世にいる限り無理と今更ながらわかったのです」
「分かっております。私はあなた様の僕。今度は主人の計画に協力するのが道理と言う物。文字通り命を懸けて。ええ、これで組織も連中も無くなろうが関係のない事です」
代表は話すのも息絶え絶えといった風である。
会話が途切れ『彼女』の喘鳴だけが部屋に響く。
やがてそれが落ち着くと内線をかける。
「本部ビルの防衛状況はどうなっているか?敵は明日攻めてくるぞ。新人類部隊の調子はどうだ?結構、彼らがいればまず負けは無い。その為に我々の存続理由をかなぐり捨てて配備したのだからな。引き続き警戒を怠るな」
その声は先程の会話の卑屈さと打って変わって支配者のそれだった。
そう言うと『彼女』は新しい左腕を付け替える。
「来るがいい、レジリエンス、プロトマルス。時代が選ぶのはお前達か我々か明日にはそれが分るのだ」
明らかな老人の声で代表は呟いた。
「じゃあ達人が生きているって知ってたの?」
「ええ、彼の肉片はともかく超金属の鎧の破片がどこにもなかったので。どうやって逃げ延びたのかの方法は判りませんでしたけど」
鈴宮玲を加えた八重島家の夕食後のリビング。
そこで作戦会議らしきものが開かれていた。
らしい、というのは今の様に度々話が脱線するからで、大まかな内容としては殆ど決まっている。
その為この場は懇親会といった雰囲気があった。
「確か鈴宮さんのご家族の事件はその・・・頭部が滅茶苦茶に破壊されていたので一時期センセーショナルに報道されていたね」
「はい。私の家族だけでなく近隣住民30名が同一の手口で殺されていました。犯人は全く足取りが今もつかめていないようです」
八重島修一郎に玲は答える。
その言葉を発する時彼女の眼に憎悪の炎が宿るのを全員が見た気がした。
「鈴宮さん。月並みな表現ではあるけれど復讐はやはり良くないわ。ご家族の方もきっとそう思っているはずよ」
八重島梓の言葉に
「いえ、父ならばきっと自分達の仇を取れと言うでしょう。仮に私が死んで家族のだれかが生き残ったならその者に私もそう望むでしょうから」
この言葉だけで鈴宮玲が異様な家庭環境で育ってきたのが分かる。
(だから芹沢達人とウマが合うのか)
修一郎は心の中で妙な納得をする。
同時に彼女をプロトマルスに選んだかつての友が何を企むのか気がかりだった。
「それで明日俺は八重島さんの研究室に行けば良いんだな?」
「ああ。明日は臨時休校にしてあるから学生はいない。連中研究室にある左腕が例の鎧の一部だと気が付いたらしい。Eスリーの奴らどうやら大学内でセミナーを装って新会員を募集してたようでな。気が付けばスパイがいたという訳だ。」
修一郎は力なく答える。
こうした悪意が自分の大学内にいた事、そしてそれを防げなかった事が悔やみきれないのだ。
「でも良く分かったね、襲撃が明日だって。予告状が来たとかじゃないんでしょう」
「何でも文明存続委員会には優秀なスパイがいるらしい」
娘の質問に修一郎が答える。
(本当にそうか?そいつは魔法使いじゃないのか?)
達人の疑念は高まるばかりだった。
彼らは地と風の四元将出現の際積極的な対応を取らなかった。
達人には組織がある程度の破壊と混乱をまるで歓迎しているかの様にも見えた。
まだ『切り札』を切る時ではない。
そう考えているように思えるのだ。
(俺の考えすぎかもしれないし、そうであることが一番いい。現状の連中の装備ではとても対抗できないからな)
達人はそれ以上考えるのをやめた。
証拠がない以上はいくら疑念をぶつけても黒川らにのらりくらり躱されるのは目に見えていた。
何よりも今はEスリーという危険分子の排除に集中すべきなのだ。
翌日
Eスリー襲撃部隊は何の小細工も無しに大学の正門から入ってきた。
余りの正々堂々ぶりというか無策ぶりに警備員達があっけにとられている隙に彼らの数人がXYZ1に変身し彼らを殺害した。
軍隊の様に変身していない1人の後ろに4名の怪物が2列に並んで正門を突っ切り中庭に差し掛かった彼らの前にレジリエンスが立ちはだかった。
「何で貴様がここにいるんだ?どこで計画を知った?」
「企業秘密だ。その後ろの化物共とどういう関係だ?早く離れないとお前もそうなるぞ」
「残念ながらもうなっているんだなあ」
先頭の男はモノスへと変身する。
「俺達はケチじゃないから教えてやる。この先地球はどんどん生物の住めない環境になる。そんな世界を生き抜くために我らは進化したのだ。我らは新時代のアダムなのだ。その進化についてこれない者は死あるのみ」
同時刻
研究室にフードを被った黒ずくめの人物が突如現れた。そして何かを探るように見渡すと金属製の箱を見つけると指先から赤いレーザーを発して蓋に丸穴を開ける。そして中に保管されている青い金属製の篭手を取り出すとその状態を確かめるようにクルクルと回す。一通り確かめ終わるとその人物は来た時同様にまた音もなく姿を消した。
モノスはレジリエンスへ向けて拳から光弾を放つ。
同時にXYZ1達4名が散開しレジリエンスを取り囲むとその2本の舌を伸ばして敵の手足を拘束する。
本人達は連携攻撃のつもりだろうがXYZ1らの動きは早すぎた。
「こんなものが通用するか」
レジリエンスは左腕に巻き付いた舌を掴んで正面に投げ飛ばす。
その舌の持ち主にモノスの光弾が当たり、断末魔の叫びをあげてXYZ1が炎上、消滅する。
だが仲間の死にまるで動揺を見せず、両足を拘束していた2匹の怪物が舌を動かしレジリエンスを転倒させる。
転倒したレジリエンスは杖から炎の剣を発し、右腕に巻き付いていた舌を焼き切る。
彼が正面に目をやるとモノスが飛び上がりながらパンチを見舞うのが見えた。
レジリエンスは両足を引き、バック転の要領で後方に飛ぶ。
両足を拘束していた2体の怪物がモノスと空中で激突し、その衝撃で舌を足から離してしまう。
「大変だ」
その時研究室の方から八重島修一郎の研究室のスタッフが息を切らせてレジリエンスに駆け寄ってくる。
XYZ1の1体が彼を人質にすべく飛び掛かった。
「サンダーバード、合身だ」
レジリエンスの呼び声と共にサンダーバードが異世界から顕現し、サンダーナイトへと融合合身する。
「馬鹿な!?奴の姿が変わった?」
怪物達とスタッフが驚くと同時にサンダーナイトの姿が消えた。
次の瞬間スタッフは怪物達が各々空中に吹き飛ばされ、きれいに縦一列に並んでいるのを見た。
高速移動を開始したサンダーナイトはまずスタッフに飛び掛かった1体を追い越すと旋回しながらアッパーカットでそいつを打ち上げた。
後は残りの3体を最初の1体の目の前にキックで蹴り上げていく。
この間僅かに20秒程の出来事である。
スタッフがサンダーナイトの姿を再び見たのは彼がエナジ―を込めた剣を投げつけている場面だった。音速で投げられた剣は怪物4体を同時に貫いてなお勢いは止まらずに上空へ飛び抜けると大きな弧を描いて持ち主の手に戻って行く。
そして剣が持ち主の手に戻ったのと同時に大爆発が起こる。
「どうしました?」
「無い。無くなっているんだ。あの腕が。誰も保管場所に入っていないのに」
「何ですって。他にあれを欲しがる奴に心当たりはありませんか?」
「そりゃ、世紀の発見だからね。考古学をやっている奴なら誰でも欲しがるだろう。だがどうやって入っていったのか皆目見当がつかない。ドアの前の監視カメラには何も映っていないんだ」
「連中は囮にされたのか」
「まさか既にEスリーに?」
「でしょうね。取り返してきます。離れていて下さい」
スタッフが十分に離れた所でサンダーナイトは文明存続委員会から聞かされていたEスリー本部へ向けて飛翔した。
彼は今パトカーに乗せられていた。
「何でお前達が警察にいるんだよ」
「我々は社会の至る所にいる。それを忘れたな」
「裏切者のお前には実験の被験者になってもらう」
彼を捕まえたのは同じEスリーの隊員達であった。
「実験?まさか新人類計画か?ふざけるな!あんなものは組織の存続にかかわるものだぞ」
過激な環境保護団体がいくつも寄り集まってできたのがEスリーという組織であることは繰り返し説明してきた。
だが組織というものが人間の集まりである以上は掲げた理念を曲解あるいは先鋭化、真逆の発想をする者達が出る事を防ぐことは不可能と言っていい。Eスリー内では『公認された禁忌』という異端思想がいつの頃からか存在した。
その最たるものが新人類計画を推進する一派で彼らは環境破壊が極まった地球でも生きられる人間を作り出そうという環境保護を最初から諦めているという点で非難の対象となってきた。
ところがどういう風の吹き回しか今のEスリー代表が就任してから『第二プラン』という名目でこれに一定の予算が下りる事になった。
こうした反発が先のS計画の強Eスリーの組織の弱体化に繋がっているのが現状なのである。
そしてご多分に漏れずこういう事を推進する面々とはつまり人を人とも思わぬ鉄面皮共の集まりであった。
「お前に拒否権は無い」
男達は裏切者をあるビルの一室に担ぎ込む。
その部屋には椅子とその正面にパラボラアンテナ状の妙な機械があるだけだった。
「さあ、お前に新時代を築く価値があるか見せてもらおうか」
そう言いながらリーダーらしき人物の姿が変化する。
類人猿型UMAモノス
ヘッドギアをつけた骸骨状の頭部にボクシンググローブに似た腕を持つ格闘家の姿に男は恐怖の声を上げる。
「やれ」
椅子に縛り付けられた男にパラボラから赤い光が照射される。
男の姿が苦痛と共に変わっていく。
骸骨状の頭部以外は猿を人間大にしたような風貌だった。
「フン、また同じか。まあいい、これで君も晴れて新人類の仲間入りだ」
モノスの声を合図に周りの隊員達も椅子に拘束された男と同じ姿となる。
類人猿型UMA XYZ1
それが彼らの新たな名前だった。
男が何度目かの恐怖の叫びをあげる。
「喚くな。お前も今同じ姿なんだぞ」
「嫌だああああ」
拘束具を引きちぎった新入りのXYZ1がモノスに殴り掛かる。
モノスは相手の首を掴むとそのまま床に叩きつける。
「分かるか?この実力差が。これこそが新たな秩序を生み出す源泉なんだよ」
そして周囲を見回すと
「今度の作戦を説明する。我々の目的は腕だ。信頼すべき情報源からあの魔法の鎧の左腕がある大学の研究室にある事が分かった。それを回収する事。邪魔する者は全て叩き潰せ。新生Eスリー誕生の狼煙を上げよ」
彼の言葉に呼応するように一斉に鬨の声が上がる。
Eスリー本部。
この代表専用の部屋で代表たるテオドラの独語とも妄想ともいえるつぶやきが響く。
声の調子や時折見せる大仰な身振りから、もしこれを見る者が居たら芝居の稽古とでも思っただろう。それくらい真に迫っていた『演技』だった。
「はい。全ては私の不徳の致す所でした。もはや時間はありません。この地上に再び楽園を築く事は現生人類がこの世にいる限り無理と今更ながらわかったのです」
「分かっております。私はあなた様の僕。今度は主人の計画に協力するのが道理と言う物。文字通り命を懸けて。ええ、これで組織も連中も無くなろうが関係のない事です」
代表は話すのも息絶え絶えといった風である。
会話が途切れ『彼女』の喘鳴だけが部屋に響く。
やがてそれが落ち着くと内線をかける。
「本部ビルの防衛状況はどうなっているか?敵は明日攻めてくるぞ。新人類部隊の調子はどうだ?結構、彼らがいればまず負けは無い。その為に我々の存続理由をかなぐり捨てて配備したのだからな。引き続き警戒を怠るな」
その声は先程の会話の卑屈さと打って変わって支配者のそれだった。
そう言うと『彼女』は新しい左腕を付け替える。
「来るがいい、レジリエンス、プロトマルス。時代が選ぶのはお前達か我々か明日にはそれが分るのだ」
明らかな老人の声で代表は呟いた。
「じゃあ達人が生きているって知ってたの?」
「ええ、彼の肉片はともかく超金属の鎧の破片がどこにもなかったので。どうやって逃げ延びたのかの方法は判りませんでしたけど」
鈴宮玲を加えた八重島家の夕食後のリビング。
そこで作戦会議らしきものが開かれていた。
らしい、というのは今の様に度々話が脱線するからで、大まかな内容としては殆ど決まっている。
その為この場は懇親会といった雰囲気があった。
「確か鈴宮さんのご家族の事件はその・・・頭部が滅茶苦茶に破壊されていたので一時期センセーショナルに報道されていたね」
「はい。私の家族だけでなく近隣住民30名が同一の手口で殺されていました。犯人は全く足取りが今もつかめていないようです」
八重島修一郎に玲は答える。
その言葉を発する時彼女の眼に憎悪の炎が宿るのを全員が見た気がした。
「鈴宮さん。月並みな表現ではあるけれど復讐はやはり良くないわ。ご家族の方もきっとそう思っているはずよ」
八重島梓の言葉に
「いえ、父ならばきっと自分達の仇を取れと言うでしょう。仮に私が死んで家族のだれかが生き残ったならその者に私もそう望むでしょうから」
この言葉だけで鈴宮玲が異様な家庭環境で育ってきたのが分かる。
(だから芹沢達人とウマが合うのか)
修一郎は心の中で妙な納得をする。
同時に彼女をプロトマルスに選んだかつての友が何を企むのか気がかりだった。
「それで明日俺は八重島さんの研究室に行けば良いんだな?」
「ああ。明日は臨時休校にしてあるから学生はいない。連中研究室にある左腕が例の鎧の一部だと気が付いたらしい。Eスリーの奴らどうやら大学内でセミナーを装って新会員を募集してたようでな。気が付けばスパイがいたという訳だ。」
修一郎は力なく答える。
こうした悪意が自分の大学内にいた事、そしてそれを防げなかった事が悔やみきれないのだ。
「でも良く分かったね、襲撃が明日だって。予告状が来たとかじゃないんでしょう」
「何でも文明存続委員会には優秀なスパイがいるらしい」
娘の質問に修一郎が答える。
(本当にそうか?そいつは魔法使いじゃないのか?)
達人の疑念は高まるばかりだった。
彼らは地と風の四元将出現の際積極的な対応を取らなかった。
達人には組織がある程度の破壊と混乱をまるで歓迎しているかの様にも見えた。
まだ『切り札』を切る時ではない。
そう考えているように思えるのだ。
(俺の考えすぎかもしれないし、そうであることが一番いい。現状の連中の装備ではとても対抗できないからな)
達人はそれ以上考えるのをやめた。
証拠がない以上はいくら疑念をぶつけても黒川らにのらりくらり躱されるのは目に見えていた。
何よりも今はEスリーという危険分子の排除に集中すべきなのだ。
翌日
Eスリー襲撃部隊は何の小細工も無しに大学の正門から入ってきた。
余りの正々堂々ぶりというか無策ぶりに警備員達があっけにとられている隙に彼らの数人がXYZ1に変身し彼らを殺害した。
軍隊の様に変身していない1人の後ろに4名の怪物が2列に並んで正門を突っ切り中庭に差し掛かった彼らの前にレジリエンスが立ちはだかった。
「何で貴様がここにいるんだ?どこで計画を知った?」
「企業秘密だ。その後ろの化物共とどういう関係だ?早く離れないとお前もそうなるぞ」
「残念ながらもうなっているんだなあ」
先頭の男はモノスへと変身する。
「俺達はケチじゃないから教えてやる。この先地球はどんどん生物の住めない環境になる。そんな世界を生き抜くために我らは進化したのだ。我らは新時代のアダムなのだ。その進化についてこれない者は死あるのみ」
同時刻
研究室にフードを被った黒ずくめの人物が突如現れた。そして何かを探るように見渡すと金属製の箱を見つけると指先から赤いレーザーを発して蓋に丸穴を開ける。そして中に保管されている青い金属製の篭手を取り出すとその状態を確かめるようにクルクルと回す。一通り確かめ終わるとその人物は来た時同様にまた音もなく姿を消した。
モノスはレジリエンスへ向けて拳から光弾を放つ。
同時にXYZ1達4名が散開しレジリエンスを取り囲むとその2本の舌を伸ばして敵の手足を拘束する。
本人達は連携攻撃のつもりだろうがXYZ1らの動きは早すぎた。
「こんなものが通用するか」
レジリエンスは左腕に巻き付いた舌を掴んで正面に投げ飛ばす。
その舌の持ち主にモノスの光弾が当たり、断末魔の叫びをあげてXYZ1が炎上、消滅する。
だが仲間の死にまるで動揺を見せず、両足を拘束していた2匹の怪物が舌を動かしレジリエンスを転倒させる。
転倒したレジリエンスは杖から炎の剣を発し、右腕に巻き付いていた舌を焼き切る。
彼が正面に目をやるとモノスが飛び上がりながらパンチを見舞うのが見えた。
レジリエンスは両足を引き、バック転の要領で後方に飛ぶ。
両足を拘束していた2体の怪物がモノスと空中で激突し、その衝撃で舌を足から離してしまう。
「大変だ」
その時研究室の方から八重島修一郎の研究室のスタッフが息を切らせてレジリエンスに駆け寄ってくる。
XYZ1の1体が彼を人質にすべく飛び掛かった。
「サンダーバード、合身だ」
レジリエンスの呼び声と共にサンダーバードが異世界から顕現し、サンダーナイトへと融合合身する。
「馬鹿な!?奴の姿が変わった?」
怪物達とスタッフが驚くと同時にサンダーナイトの姿が消えた。
次の瞬間スタッフは怪物達が各々空中に吹き飛ばされ、きれいに縦一列に並んでいるのを見た。
高速移動を開始したサンダーナイトはまずスタッフに飛び掛かった1体を追い越すと旋回しながらアッパーカットでそいつを打ち上げた。
後は残りの3体を最初の1体の目の前にキックで蹴り上げていく。
この間僅かに20秒程の出来事である。
スタッフがサンダーナイトの姿を再び見たのは彼がエナジ―を込めた剣を投げつけている場面だった。音速で投げられた剣は怪物4体を同時に貫いてなお勢いは止まらずに上空へ飛び抜けると大きな弧を描いて持ち主の手に戻って行く。
そして剣が持ち主の手に戻ったのと同時に大爆発が起こる。
「どうしました?」
「無い。無くなっているんだ。あの腕が。誰も保管場所に入っていないのに」
「何ですって。他にあれを欲しがる奴に心当たりはありませんか?」
「そりゃ、世紀の発見だからね。考古学をやっている奴なら誰でも欲しがるだろう。だがどうやって入っていったのか皆目見当がつかない。ドアの前の監視カメラには何も映っていないんだ」
「連中は囮にされたのか」
「まさか既にEスリーに?」
「でしょうね。取り返してきます。離れていて下さい」
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