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第29話 UMA軍団総進撃(中)コウモリ型UMAコンガマト― バク型UMAガセカ 他 登場
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レジリエンスがo山でUMAと戦い始めたのと同時刻
プロトマルスとコウモリ型UMAコンガマト―進化体の戦いもまた始まっていた。
敵の周りを飛び回り長い足に生えた三日月型の爪でのキックを見舞ったり手持ちの鞭で攻撃するコウモリの化け物。
それに対してプロトマルスは刀での斬撃のカウンターやエナジー・バルカンを放つ。
「チッ、チョロチョロと面倒な。一ヶ所に留まれないのですか?」
「そいつは無理な相談だな。しかし君こそ僕にかまけてていいのかい」
プロトマルスの周囲を飛びながらコンガマト―は小屋の方を見ながら言う。
『数合わせ』として呼び出した土人形兵士アダマンなる雑兵がバンガロ―に迫るのが見えた。
それを知ったプロトマルスは小屋へ走り出す。
その後ろから怪物が鞭を振るうが玲は鎧のふくらはぎのブースターを目一杯吹かしてそれを躱す。
その勢いのまま窓を破って屋内に侵入しようとしたアダマンを両断し近くいたもう1体の首を飛ばす。
さらにその飛ばした首を後ろから追ってきた怪物目掛けて蹴り飛ばす。
その頭をコンガマト―は鞭で弾き飛ばした。
その動きの間にプロトマルスは小屋の扉をたたき壊そうとする最後のアダマンをエナジー・バルカンで粉砕していた。
「全く手ごたえがありませんね。もう少し優秀な部下を貰ったらどうです?」
「いやお見事。しかしそろそろいいかな。雇い主は時間にうるさくってね」
チラリと足元を見ながらコンガマト―が言う。
そこには破壊されたアダマンの破片が一つの場所に向かって集合していた。
それを確認するとコンガマト―はバッと翼を開く。マント上の翼の下から現れた胸の悪魔の顔を模した器官から耳障りな超音波を放つ。
途端にプロトマルスの鎧に電流が走ると成す術なくプロトマルスは片膝をつく。
「体が動かない?何が起こって」
「ハハハッ、僕の超音波はどうやら君の鎧の動きを止める周波数を持っていてね。それで今回雇われたのさ。僕の部下はレジリエンスとその取り巻き共を止める音波を出すらしいから今頃連中も君と同じ目に遭っているんじゃないか。さて楽しいお仕置きタイムだ」
そう言ってコンガマト―は鞭を振り上げ無抵抗のプロトマルスを打ち据える。
「2人ともまだ生きているか」
「ああ何とかな。だがこのままでは全員エレメンタル・エナジーに粒子分解されてしまうぞ」
バク型UMAガセカに吸収されたガッシングラム、サンダーバードそしてレジリエンスはその体内の特殊な空間に閉
じ込められていた。
彼らのいる場所のちょうど真上に黒い穴があった。
この穴はゆっくり右回りに回転しておりその動きに合わせて空間全体も動いている、いわば巨大なミキサーの中に放り込まれたようなものだった。
「入って来たなら出ていく事もできると思うが、その先どうする?また同じ事の繰り返しになるぞ」
そう言うレジリエンスの装甲表面から黄色の光の粒子がゆっくりと立ち上り始める。
分解が始まったのだ。
「そこでだガッシングラム、この分解作用を利用して我と融合し新たな肉体を再構成しないか?」
「新たな姿で達人と合身するっていうのか。確かにそれならあのコウモリ共の音波を掻い潜る事が出来るだろうが・・・」
ガッシングラムはサンダーバードの提案を渋る。
「そうなった場合二人はどうなるんだ?元に分離できるのか?意識はどうなる?」
「判らん。分離どころかどちらかの意識が消えるか全く新たな人格が生まれる可能性もある」
「それでいいのか?敵を倒す為にこんな形で俺は戦友を失いたくない。他に方法は無いのか?」
サンダーバードの説明に達人は反論する。ガッシングラムが難色を示すのも正にここだった。
そうこうする内にガッシングラムとサンダーバードの体にも粒子が立ち上る。
3人の内粒子化が早いのはガッシングラムだった。
「もう時間がない。これ以上分解されたらそれこそ脱出などと言っていられなくなる。一か八かやるか、サンダーバード。融合後どうなっても恨みっこ無しと行こうや」
「合身には俺も関わっている。3人でやれば成功率も上がるかもしれない」
「よし、では3人の意識を集中し行くぞ」
3人は互いに触れあい意識を集中させる。
全員の内にある唯一つの望みを賭けて。
やがて3者は大きな光の球となって溶け合い頭上の穴に向かって飛んでいった。
「ガセカ、本当に腹でも下したんじゃないのか?どう見ても変だぞ」
脂汗をかき、激しく息をつくガセカの症状は時間が経つにつれて良くなるどころか悪化の一途を辿っているのを見たナウエリトが声を掛ける。
「仕方がありません。もしもの時は吐き出すのですよ。ガセカ、あなたの命の方が大事ですからね。出てきた直後は
連中の消耗も激しいでしょうから我々で始末をつけますよ」
「そうだな。そちらの方が私としてもスッキリするな」
そう言うフライング・ヒューマノイドにイエティも同意する。
粗相の許可を得て安心したのかガセカはバイザーを上げる。
数秒後どうやって入っていたのか分からない程の巨大な光球が中から出てきた。
その球は形を変えレジリエンスと彼より2回りほど巨大な生物へと変わる。
「なんだこいつは?」
ナウエリトの疑問も尤もだった。
それは翼を生やした赤と金色のライオンだった。ただし普通のライオンと違いその額に黄色の水晶状の物体が埋め込まれているのである。
「ガッシングラム、サンダーバード無事か?」
「ああ。我は無事だ。ガッシングラムも外に意識は出ていないが無事だ。どうやら脱出のゴタゴタで意識と頭部の入れ違いが起きたようだな。それと横から我を見るなよ」
その生物はサンダーバードの声でそう言った。
「どうしてだ?」
そう言って覗き込んだレジリエンスは絶句した。
横から見ると鳥の嘴がライオンの後頭部に突き刺さっていた。水晶と見られた物はこの嘴の一部がそう見えたのだった。
「バカな!?神話の生物グリフォンとでも言うのか?しかし脱出直後ならば付け入る隙があるはずです」
フライング・ヒューマノイドは動揺する心を何とか落ち着け同様に困惑している2体のUMAを叱咤する。
「いくぞ、グリフォン」
「応!!」
『精霊大合身!』
レジリエンスから放たれる光を受けてグリフォンが金属状に変わる。
ライオンの頭部が外れ鳥の頭が現れる。
グリフォンの体が直立しながら脚部の爪が上に跳ね上がる。そして180度横回転し人型の足に変わる。
同時に後背部のパーツと両前腕部が外れ、尾を含めた後背部のパーツが分割され前腕を形成し拳が飛び出す。
胸の鳥の部分が前方に開きその空間にレジリエンスが入る。
ライオンの鬣が前方に移動し左右それぞれ90度上に展開し角を形作る。
さらに口が開いてノーズガードとチンガードを形成しレジリエンスの新たな兜となる。
ノーズガードがV字型ゴーグル状のレジリエンスの眼部を縦に割ってまるで人間や四元将同様の双眼を形作る。
前腕部分の爪が変形しレジリエンスの杖の先端と石突に装着され双刃のトライデントとなる事で合身が完了する。
その体躯は2mを超える3怪人より頭2つほど大きい。
「凄い力だ。油断していると内側からバラバラになりそうだ」
『合身できる時間はせいぜい2分だ。早めに決着をつけるぞ』
グリフォンの言葉が終わらない内にガセカ以外の三体のUMAが熱線・雷撃・冷気を撃ってきた。
新レジリエンスはそれらを念じる事で形成したバリヤーで弾き返す。
そしてトライデントの片方に火炎をもう片方に強風を纏わせる。
そのトライデントを頭上で回転させるとUMA軍団を風と炎の結界が包み込み、その渦の巻き起こすエネルギーは数秒でガセカを赤い光へと分解し、3体の上級UMAのバリヤーを弱体化させる。
「何だこの結界は?バリヤーが中和されちまう。2人とも出力を上げろ!」
そのナウエリトの声をかき消すように結界の風が強まる
それは結界の力が強まっていく事と同義である。
「駄目だ。最大出力でもかき消される」
「皆さん私のバリヤーの中へ。出力は低いですが無いよりましです」
UMA全員がフライング・ヒューマノイドのバリヤー範囲へ集う。そのバリヤーも強風の中のろうそくの如く頼りなくたなびいている。
「風よ嵐を呼べ。炎よ空を熱し、稲妻となれ。アネモヴロホ!!(ギリシア語で暴風雨の意)」
詠唱終了と同時に三叉槍を地面に打ち付ける。
同時に天から巨大な稲妻が結界を貫き、熱し、爆発させる。
その爆光を背に新レジリエンスはバンガロ―目指して翼を広げ猛スピードで飛翔する。
だから彼は稲妻の落ちた瞬間に別のバリヤーがUMA達を守った事に気が付かなかった。
「生きていますか、皆さん」
「なんとかな」
フライング・ヒューマノイドにナウエリトが答える。
「フライング・ヒューマノイド、大丈夫か!?まさか私達を守るために広域バリヤーを張って助けてくれたのか」
イエティは首と胴体がかろうじて残っているだけという状態の変わり果てた姿の盟友を見て叫ぶ。
「いいえ。我々を救ったのは彼女です」
そこには小柄な女性が意地の悪い笑顔で佇んでいた。長い黒髪を二つの巨大な輪にして頭頂部で結っており、その輪の間に冠の様な物を被っているというよりは挟んでいるといった方が正しい表現だろう。
そんな奇抜な髪形をした美女は白いチャイナドレスを纏い両手の人差し指にはその細さと小ささに不釣り合いな巨大な白色の宝石の指輪がその他の指にはそれよりも小さな宝石が嵌まっている指輪を付けていた。
そして彼女の影はその頭部に当たる部分は明らかに人間の物ではない巨大な単眼が浮かんでいた。
「マブいぜ。あの女」
その女はナウエリトの不躾な声に明らかに不快感を示しながら
「妾の気まぐれに感謝しろよ、小童共。たまたまこの近くの小屋に泊まっていたからいたからいい物を、そうでなかったら纏めてあの世行きじゃぞ?それにUMA界の最右翼とも言うべきお主が酷いやられぶりじゃのう、フライング・ヒューマノイド」
「感謝しますよグ」
「今の妾はその名ではなく、白井良子じゃ。そっちの方が気に入っておる」
白井良子と名乗った女はフライング・ヒューマノイドを遮るようにそう言った。
「そうですか。ですが回復のアテもありますから心配なさらず。私としては何故排除対象の生物に姿を変えているのか理解できませんが。さ、我々は命拾いしたので帰りますよ。何、後は『彼』がやってくれますよ。いかにあのレジリエンスの新形態、ケイモーン・ノテロス(ギリシア語で嵐の意)が強力でもどうしようもないことがあるという事を思い知るでしょう。それと白井良子、貴方も火遊びはほどほどにすることですね。それと最後に。助けて頂きありがとう」
余計な事だと言わんばかりに良子は手を振るとかき消えた。
そうしてフライング・ヒューマノイドはナウエリトとイエティに抱えられながら3体の上級UMAは異世界へと帰って行った。
「どうした、もっといい声で泣け、喚け!」
コンガマト―進化体は先ほどやってきた部下達の目の前で超音波で動けないプロトマルスを鞭で甚振っていた。
「そうだ。君にぜひお礼をしたいという奴がいてね。トドメは彼にやってもらうか」
プロトマルスは息を飲む。
コンガマト―の背後に巨人が立ち上がる。
岩塊巨人ゴーレム
先程プロトマルスに倒されたアダマン複数体が寄せ集まって合体した、幼児の作る積木細工のような間の抜けた見た目に反して攻撃力耐久力共に激増した姿である。
そのゴーレムが先ほどの恨みとばかりに咆哮を上げながら大木の如き腕を振り上げる。
その時凄まじい暴風がゴーレムを包み、彼をボロボロの塵へと風化させる。
「何だ?何が起こったんだ?」
だがコンガマトー進化体はその答えを知る事も聞くこともなかった。
超スピードで駆け付けた、レジリエンスの新たな姿ケイモーン・ノテロスが繰り出したトライデントに胸を貫かれ赤い炎に包まれた後爆散したからである。
部下のコンガマト―は首領の死に動揺し各々の安全を図るべく散開する。
ケイモーン・ノテロスは背中の翼を広げそこに翼にエレメンタル・エナジーを集中させる。
ノテロスの兜に4体のコンガマト―の行動予測が示される。
「フロギストン」
翼全体から放射状に火球が怪物を追尾し、計4羽の怪物を焼き尽くした。
「達人、会うたび違う姿になっていませんか」
超音波の拘束を解かれたプロトマルスが呆れた声を出しながら立ち上がる
『達人。まだ他にもいるぞ。地面の下だ』
ガッシングラムの声と共にケイモーン・ノテロスの背後の地面が盛り上がる。
雄叫びと共に巨大なミミズ型UMAモンゴリアン・デスワームが姿を現し、彼らに襲い掛かった。
プロトマルスとコウモリ型UMAコンガマト―進化体の戦いもまた始まっていた。
敵の周りを飛び回り長い足に生えた三日月型の爪でのキックを見舞ったり手持ちの鞭で攻撃するコウモリの化け物。
それに対してプロトマルスは刀での斬撃のカウンターやエナジー・バルカンを放つ。
「チッ、チョロチョロと面倒な。一ヶ所に留まれないのですか?」
「そいつは無理な相談だな。しかし君こそ僕にかまけてていいのかい」
プロトマルスの周囲を飛びながらコンガマト―は小屋の方を見ながら言う。
『数合わせ』として呼び出した土人形兵士アダマンなる雑兵がバンガロ―に迫るのが見えた。
それを知ったプロトマルスは小屋へ走り出す。
その後ろから怪物が鞭を振るうが玲は鎧のふくらはぎのブースターを目一杯吹かしてそれを躱す。
その勢いのまま窓を破って屋内に侵入しようとしたアダマンを両断し近くいたもう1体の首を飛ばす。
さらにその飛ばした首を後ろから追ってきた怪物目掛けて蹴り飛ばす。
その頭をコンガマト―は鞭で弾き飛ばした。
その動きの間にプロトマルスは小屋の扉をたたき壊そうとする最後のアダマンをエナジー・バルカンで粉砕していた。
「全く手ごたえがありませんね。もう少し優秀な部下を貰ったらどうです?」
「いやお見事。しかしそろそろいいかな。雇い主は時間にうるさくってね」
チラリと足元を見ながらコンガマト―が言う。
そこには破壊されたアダマンの破片が一つの場所に向かって集合していた。
それを確認するとコンガマト―はバッと翼を開く。マント上の翼の下から現れた胸の悪魔の顔を模した器官から耳障りな超音波を放つ。
途端にプロトマルスの鎧に電流が走ると成す術なくプロトマルスは片膝をつく。
「体が動かない?何が起こって」
「ハハハッ、僕の超音波はどうやら君の鎧の動きを止める周波数を持っていてね。それで今回雇われたのさ。僕の部下はレジリエンスとその取り巻き共を止める音波を出すらしいから今頃連中も君と同じ目に遭っているんじゃないか。さて楽しいお仕置きタイムだ」
そう言ってコンガマト―は鞭を振り上げ無抵抗のプロトマルスを打ち据える。
「2人ともまだ生きているか」
「ああ何とかな。だがこのままでは全員エレメンタル・エナジーに粒子分解されてしまうぞ」
バク型UMAガセカに吸収されたガッシングラム、サンダーバードそしてレジリエンスはその体内の特殊な空間に閉
じ込められていた。
彼らのいる場所のちょうど真上に黒い穴があった。
この穴はゆっくり右回りに回転しておりその動きに合わせて空間全体も動いている、いわば巨大なミキサーの中に放り込まれたようなものだった。
「入って来たなら出ていく事もできると思うが、その先どうする?また同じ事の繰り返しになるぞ」
そう言うレジリエンスの装甲表面から黄色の光の粒子がゆっくりと立ち上り始める。
分解が始まったのだ。
「そこでだガッシングラム、この分解作用を利用して我と融合し新たな肉体を再構成しないか?」
「新たな姿で達人と合身するっていうのか。確かにそれならあのコウモリ共の音波を掻い潜る事が出来るだろうが・・・」
ガッシングラムはサンダーバードの提案を渋る。
「そうなった場合二人はどうなるんだ?元に分離できるのか?意識はどうなる?」
「判らん。分離どころかどちらかの意識が消えるか全く新たな人格が生まれる可能性もある」
「それでいいのか?敵を倒す為にこんな形で俺は戦友を失いたくない。他に方法は無いのか?」
サンダーバードの説明に達人は反論する。ガッシングラムが難色を示すのも正にここだった。
そうこうする内にガッシングラムとサンダーバードの体にも粒子が立ち上る。
3人の内粒子化が早いのはガッシングラムだった。
「もう時間がない。これ以上分解されたらそれこそ脱出などと言っていられなくなる。一か八かやるか、サンダーバード。融合後どうなっても恨みっこ無しと行こうや」
「合身には俺も関わっている。3人でやれば成功率も上がるかもしれない」
「よし、では3人の意識を集中し行くぞ」
3人は互いに触れあい意識を集中させる。
全員の内にある唯一つの望みを賭けて。
やがて3者は大きな光の球となって溶け合い頭上の穴に向かって飛んでいった。
「ガセカ、本当に腹でも下したんじゃないのか?どう見ても変だぞ」
脂汗をかき、激しく息をつくガセカの症状は時間が経つにつれて良くなるどころか悪化の一途を辿っているのを見たナウエリトが声を掛ける。
「仕方がありません。もしもの時は吐き出すのですよ。ガセカ、あなたの命の方が大事ですからね。出てきた直後は
連中の消耗も激しいでしょうから我々で始末をつけますよ」
「そうだな。そちらの方が私としてもスッキリするな」
そう言うフライング・ヒューマノイドにイエティも同意する。
粗相の許可を得て安心したのかガセカはバイザーを上げる。
数秒後どうやって入っていたのか分からない程の巨大な光球が中から出てきた。
その球は形を変えレジリエンスと彼より2回りほど巨大な生物へと変わる。
「なんだこいつは?」
ナウエリトの疑問も尤もだった。
それは翼を生やした赤と金色のライオンだった。ただし普通のライオンと違いその額に黄色の水晶状の物体が埋め込まれているのである。
「ガッシングラム、サンダーバード無事か?」
「ああ。我は無事だ。ガッシングラムも外に意識は出ていないが無事だ。どうやら脱出のゴタゴタで意識と頭部の入れ違いが起きたようだな。それと横から我を見るなよ」
その生物はサンダーバードの声でそう言った。
「どうしてだ?」
そう言って覗き込んだレジリエンスは絶句した。
横から見ると鳥の嘴がライオンの後頭部に突き刺さっていた。水晶と見られた物はこの嘴の一部がそう見えたのだった。
「バカな!?神話の生物グリフォンとでも言うのか?しかし脱出直後ならば付け入る隙があるはずです」
フライング・ヒューマノイドは動揺する心を何とか落ち着け同様に困惑している2体のUMAを叱咤する。
「いくぞ、グリフォン」
「応!!」
『精霊大合身!』
レジリエンスから放たれる光を受けてグリフォンが金属状に変わる。
ライオンの頭部が外れ鳥の頭が現れる。
グリフォンの体が直立しながら脚部の爪が上に跳ね上がる。そして180度横回転し人型の足に変わる。
同時に後背部のパーツと両前腕部が外れ、尾を含めた後背部のパーツが分割され前腕を形成し拳が飛び出す。
胸の鳥の部分が前方に開きその空間にレジリエンスが入る。
ライオンの鬣が前方に移動し左右それぞれ90度上に展開し角を形作る。
さらに口が開いてノーズガードとチンガードを形成しレジリエンスの新たな兜となる。
ノーズガードがV字型ゴーグル状のレジリエンスの眼部を縦に割ってまるで人間や四元将同様の双眼を形作る。
前腕部分の爪が変形しレジリエンスの杖の先端と石突に装着され双刃のトライデントとなる事で合身が完了する。
その体躯は2mを超える3怪人より頭2つほど大きい。
「凄い力だ。油断していると内側からバラバラになりそうだ」
『合身できる時間はせいぜい2分だ。早めに決着をつけるぞ』
グリフォンの言葉が終わらない内にガセカ以外の三体のUMAが熱線・雷撃・冷気を撃ってきた。
新レジリエンスはそれらを念じる事で形成したバリヤーで弾き返す。
そしてトライデントの片方に火炎をもう片方に強風を纏わせる。
そのトライデントを頭上で回転させるとUMA軍団を風と炎の結界が包み込み、その渦の巻き起こすエネルギーは数秒でガセカを赤い光へと分解し、3体の上級UMAのバリヤーを弱体化させる。
「何だこの結界は?バリヤーが中和されちまう。2人とも出力を上げろ!」
そのナウエリトの声をかき消すように結界の風が強まる
それは結界の力が強まっていく事と同義である。
「駄目だ。最大出力でもかき消される」
「皆さん私のバリヤーの中へ。出力は低いですが無いよりましです」
UMA全員がフライング・ヒューマノイドのバリヤー範囲へ集う。そのバリヤーも強風の中のろうそくの如く頼りなくたなびいている。
「風よ嵐を呼べ。炎よ空を熱し、稲妻となれ。アネモヴロホ!!(ギリシア語で暴風雨の意)」
詠唱終了と同時に三叉槍を地面に打ち付ける。
同時に天から巨大な稲妻が結界を貫き、熱し、爆発させる。
その爆光を背に新レジリエンスはバンガロ―目指して翼を広げ猛スピードで飛翔する。
だから彼は稲妻の落ちた瞬間に別のバリヤーがUMA達を守った事に気が付かなかった。
「生きていますか、皆さん」
「なんとかな」
フライング・ヒューマノイドにナウエリトが答える。
「フライング・ヒューマノイド、大丈夫か!?まさか私達を守るために広域バリヤーを張って助けてくれたのか」
イエティは首と胴体がかろうじて残っているだけという状態の変わり果てた姿の盟友を見て叫ぶ。
「いいえ。我々を救ったのは彼女です」
そこには小柄な女性が意地の悪い笑顔で佇んでいた。長い黒髪を二つの巨大な輪にして頭頂部で結っており、その輪の間に冠の様な物を被っているというよりは挟んでいるといった方が正しい表現だろう。
そんな奇抜な髪形をした美女は白いチャイナドレスを纏い両手の人差し指にはその細さと小ささに不釣り合いな巨大な白色の宝石の指輪がその他の指にはそれよりも小さな宝石が嵌まっている指輪を付けていた。
そして彼女の影はその頭部に当たる部分は明らかに人間の物ではない巨大な単眼が浮かんでいた。
「マブいぜ。あの女」
その女はナウエリトの不躾な声に明らかに不快感を示しながら
「妾の気まぐれに感謝しろよ、小童共。たまたまこの近くの小屋に泊まっていたからいたからいい物を、そうでなかったら纏めてあの世行きじゃぞ?それにUMA界の最右翼とも言うべきお主が酷いやられぶりじゃのう、フライング・ヒューマノイド」
「感謝しますよグ」
「今の妾はその名ではなく、白井良子じゃ。そっちの方が気に入っておる」
白井良子と名乗った女はフライング・ヒューマノイドを遮るようにそう言った。
「そうですか。ですが回復のアテもありますから心配なさらず。私としては何故排除対象の生物に姿を変えているのか理解できませんが。さ、我々は命拾いしたので帰りますよ。何、後は『彼』がやってくれますよ。いかにあのレジリエンスの新形態、ケイモーン・ノテロス(ギリシア語で嵐の意)が強力でもどうしようもないことがあるという事を思い知るでしょう。それと白井良子、貴方も火遊びはほどほどにすることですね。それと最後に。助けて頂きありがとう」
余計な事だと言わんばかりに良子は手を振るとかき消えた。
そうしてフライング・ヒューマノイドはナウエリトとイエティに抱えられながら3体の上級UMAは異世界へと帰って行った。
「どうした、もっといい声で泣け、喚け!」
コンガマト―進化体は先ほどやってきた部下達の目の前で超音波で動けないプロトマルスを鞭で甚振っていた。
「そうだ。君にぜひお礼をしたいという奴がいてね。トドメは彼にやってもらうか」
プロトマルスは息を飲む。
コンガマト―の背後に巨人が立ち上がる。
岩塊巨人ゴーレム
先程プロトマルスに倒されたアダマン複数体が寄せ集まって合体した、幼児の作る積木細工のような間の抜けた見た目に反して攻撃力耐久力共に激増した姿である。
そのゴーレムが先ほどの恨みとばかりに咆哮を上げながら大木の如き腕を振り上げる。
その時凄まじい暴風がゴーレムを包み、彼をボロボロの塵へと風化させる。
「何だ?何が起こったんだ?」
だがコンガマトー進化体はその答えを知る事も聞くこともなかった。
超スピードで駆け付けた、レジリエンスの新たな姿ケイモーン・ノテロスが繰り出したトライデントに胸を貫かれ赤い炎に包まれた後爆散したからである。
部下のコンガマト―は首領の死に動揺し各々の安全を図るべく散開する。
ケイモーン・ノテロスは背中の翼を広げそこに翼にエレメンタル・エナジーを集中させる。
ノテロスの兜に4体のコンガマト―の行動予測が示される。
「フロギストン」
翼全体から放射状に火球が怪物を追尾し、計4羽の怪物を焼き尽くした。
「達人、会うたび違う姿になっていませんか」
超音波の拘束を解かれたプロトマルスが呆れた声を出しながら立ち上がる
『達人。まだ他にもいるぞ。地面の下だ』
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俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
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