SAVE_YOU

星逢もみじ

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七廻目 誰が為に

第136話 烏野の居場所

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「――それにしても、まさか影愁が志樹さんと知り合いだったとはな」

 エレベーターを待っている間、木流さんがそんなことを口にする。
 黒石は声の主に対してギロリと睨みを利かせたものの、それが無意味だと悟ると深い溜め息をついて冷静に答えた。

「……そこの小僧とはついさっき会ったばかりだ」
「なに? ではほとんど初対面ではないか。それならもう少し言葉遣いをだな――」
「黙れ……! 長年に渡る悲願の一つを目の前で保留にされたのだ。これでも優しい方だと思うがな」
「……すまないな志樹さん。――おっと、今さらですが名前で呼んでも?」
「ええ、もちろんです。俺も木流さんって呼んでもいいですか?」
「ああ、もちろんいいとも」

 木流さんはニッコリ笑って手を差し伸ばしてくる。二度目となる自己紹介に感慨深いものを感じながら、その手を握り返す。

 想像以上の戦力が揃って気が緩んでいると、ポケットの中から振動が伝わる。携帯電話の画面に表示されたのは蛍の名前だった。

「どうした?」
「――志樹! 烏野さんの居場所が分かったの!」
「烏野の⁉」

 開口一番告げられた言葉に、この場にいる三人の視線が集まる。

「ええ。場所は最上階。人の話によると、急に発砲したらしいんだけど」

 発砲……⁉ どうしてそんなことを。

「怪我人は⁉」
「転んだりして軽い怪我はしてるみたいだけど、命に関わるものは誰も」
「そうか、よかった……」

 もう次は無いのだ、出来るなら誰一人として死なせたくはない。
 烏野が発砲した理由は不明だが、ここにきていよいよ動き出したということだろう。

 すでにルメを使おうとしたと仮定すると、タイムリミットは今から約三〇分……。爆弾を解除してアンを無力化。それから烏野を止めに行く……? 無理だ、時間が足りない。

 だが、烏野の居場所が分かった今、先にそっちのかたをつけてからアンの方へ向かえばいい。それなら充分間に合う。

「一応、九九階でスタッフの人が見張ってくれてるけど。今のところ動きはないみたい」

 罠か、それとも単純にルメが使えないと分かって八つ当たりでもしたか。

 ……そうか。無﨑亡き今、PLOWで一番力を持っているのは霧山さんだ。ウイルスを仕込まれたと知ったなら、どうにかして排除しようとするだろう。だが、その霧山さんは秘匿されていて居場所が掴めない。だから、ルメでどうすることもできない騒ぎが起きたら彼女が来ると踏んで発砲したのかもしれない。

 もし霧山さんを誘き出すことが目的なら烏野は待つだろう。

「――そうか、分かった」
「それと……えっと、志樹」
「ん?」
「……その……」

 その時、チンという音と共にエレベーターの扉が開いた。続くであろう蛍の言葉を待っている時間はもうない。
 ――だから、蛍が言わんとしていることを先読みして答える。

「……必ず生きて帰る」
「えっ――」

 そうしてエレベーターの中に入るのと同時に電話を切った。
 もしかしたら違うかもしれないが、おそらく蛍は俺の身を案じてくれていたのだと思う。電話越しではあったが、確かにそんな心配と優しさを感じていた。

「どうやら烏野が見つかったようね」
「ああ」

 いつの間にか般若の面を付けていた花柳が、いつになく真剣な声音で話しかけてくる。

「奴は意味の無いことはしない。体術も相当なものだけど拳銃の腕はそれ以上。掛け値なしに天才のそれよ。相手はあーしがするけど、充分に気を付けなさい」

 その言葉に無言のまま首肯する。まずは目先の問題。烏野の制圧だ。
 ――そう意気込んで階数表示を凝視していたのだが、エレベーターは目的の一〇〇階ではなく、その途中の六五階で止まってしまった。

 どうしてと思う間もなく、静かに扉が開く。

「……なんだ?」

 誰かが待っているのかと思ったが、外には誰もいない。それどころか館内は薄暗く、上下逆さまの鏡張りになった空間以外にホログラムによる装飾は施されていないように見え、とても営業中とは思えない様相を醸し出していた。

 閉めようとボタンを押すも、うんともすんとも言わない。横から黒石がカチカチと何度もボタンを押すも、故障してしまったかのように、ピクリとも動く気配がなかった。

「……どういうことだ?」

 一様に理解に努めようとしている中、黒石が呟く。
 誰も答えることのできない問い――かに思われたが、次の瞬間エレベーターの中から聞き覚えのある声が響いてきた。

「――すみませんが、そちらのアトラクションはワタシが一時的に止めさせていただきました」
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