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映画館デートとおさかなカフェ@

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「それで?のぼせちゃってなんて言ったのか記憶がない、と?」
「あぁ。なんとなく、ヤガフが介抱してくれたことは覚えてるが…そのまま寝てしまって…。」

くりっとしたオリーブ色の瞳。
綺麗に彩られた爪で不機嫌そうにテーブルをとんとんと叩きながら私の言葉に垂れた犬耳を傾ける。
フォークに刺したオムレツを頬張って、彼女は深いため息を一つついた。
その仕草に、私は嫌な想像が加速する。

「ぅ……や、やっぱり、ヤガフは私を…嫌って…」

勿論、私がショックを受ける筋合いなんてないことは分かっている。
先に彼を拒んだのほかの誰でもなく、私自身だ。
だから、私がめそめそするなんて自分勝手すぎるって、分かってはいる。
でも、彼にだけは…。

「んなわけないでしょうが。嫌いな人の幸せなんて願わないわよ普通!」

くわ、と大きな口を開け、声を荒げた彼女の指先が、つん、と額を小突く。
何とも言えないような、もどかしげな表情で私を睨むと、彼女は再び大きくため息をついて。
自分で気づきなさい、と塩ゆでのジャガイモを口にした。

「何が駄目なのよ、いいやつじゃない。シロナの事一番に考えてくれてるし、夫にするのに申し分ないと思うけど」
「……………。」

頭にフラッシュバックする嫌な記憶。
今にも獣の本能をむき出しにしてしまいそうな父の表情が、脳裏にへばりついて離れない。

「ま、見てて面白いから私は今のままで構わないけど…王位を継ぐ前までにはどうにかすることね。そんなしょげた顔してたらだぁれも応援してくれないわよ?」
「……あぁ、ありがとう、マキ。やっぱり、キミに相談してよかった。」

あっそ、とそっけない声をしながら、その表情はとてもやさしくて。
あぁ、私はいい友を持ったな、と今更ながら実感する。

「お礼はアンタお手製のクッキーがいいわ。あのチョコチップたっぷりの。」
「そんなのでいいのか?あ、ほら、この間言っていたアクセサリーでも…」

にぃ、と笑えば鋭い牙が覗く。
同じ女性だというのに、口も、手も、身体も、彼女のほうが大きくて。
人の形をもって生まれたことは誇らしいと思っていた自分が、ほんの少し後ろめたくなってくる。
けれど、彼女はむっとして、ぷにぷにとした柔らかな肉球で、私の頬を包んだ。

「い、い、の、よ!アンタ、私に貢ぎすぎ!ことあるごとに服とか宝石とかくれるんだから、クローゼットパンパンなのよ!!」
「ご、ごめんなふぁい…。」

あまりの圧に尻尾だけでなく身体中の身体がぶわりと膨らんだ。
服をあげるのは、日頃の感謝と国の経済を回すためだし、宝石は私が大事にしまっておいたって意味がないからで。
まさか嫌がられているだなんて思わなくて、がっくりと肩を落とせば頭上からため息が降る。

「嫌ってわけじゃないのよ、ただ、アンタは自分にお金をかけなさい。好きなもの食べたり、自分が着る服を買ったり。」
「は、はぁ……。」
「ってことで、はいこれ。誰かしら誘って行ってきなさい。」

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