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捜査会議
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「警部、そろそろ捜査会議が始まります」
「おう」
パソコン画面に映し出されたアクビスの里のホームページを閉じ、九条は背広を羽織る。ざわつく会議室に入ると、すでに席についていた刑事たちが前のめりに九条を見た。
「只今より、浦和連続強盗殺人事件の捜査会議を行う」
九条の一声を皮切りに、それぞれが捜査報告を伝える。
浦和連続強盗殺人事件。
最初の被害者は、同区の二十七歳会社員、中山静香。
帰宅時ドアの開錠直後背後から襲われたと見られ、そのまま玄関で絞殺される。部屋は荒らされ、アクセサリーや財布の中身の現金が無くなった。
二人目は、大宮区のキャバクラに勤めていた北宮ありさ、二十四歳。彼女もまた自宅の玄関で絞殺され、現金や金目のものが無くなっていた。
「以前も言ったが、この二つの事件が同一犯だと断定できた理由は絞殺痕から殺害時に使われた紐が同一のものの可能性が高いこと。紐は見つかっておらず、犯人が犯行毎に持ち帰っているとみられる。次に、二つの現場に残された造花の蓮の花。その二点である」
九条の発言とともに、スクリーンに映し出された花は深い紫檀の蓮の花であった。
「先刻タレコミのあった渋谷区広尾の強盗の件は、本件とは無関係である可能性が高いとのことです。ただ、そのタレコミ元は特定できておらず、引き続き調査が必要とみられます」
広尾の強盗事件とは、涼子の事務所で捕まった橘達也が起こした事件のことである。
都内の事案に埼玉県警察が動いたのは、そのタレコミとして警察に送られてきた文書に、例の蓮の花が描かれていたからだった。
「橘はインターネットの掲示板で募集されていた高額のバイトを引き受けただけだと供述しています。日付と時刻を指定され、指示された場所に拳銃を持って行けば二十万円の報酬を与えると。橘の自宅のパソコンを調べたところ、確かに供述通りのメールが発見されましたが、相手のアドレスは海外のメールサーバーを経由しており特定は不可能。拳銃は暗証番号式のコインロッカーを指定され手に入れたようで、モデルガンではなく本物の拳銃だったことを伝えると橘本人も驚いていました」
橘がやり取りしたメールの内容では、金持ちの友人へのドッキリが目的だと書いてあったと同時に、松永涼子が抵抗したり騒いだ場合には拳銃の引き金を弾くようにとの指示もあった。
「拳銃は偽物で、引き金を引けばパーティーグッズのように花束が出る仕組みだと橘は聞かされていたようです。警察に送られてきた文書にも、心当たりはないと言っています」
「ちっ。何でそんな不可解な依頼を受けるかねえ。モデルガンがあんな重厚に作られているわけねぇだろう。どっから花が出んだよ」
九条は呆れたように、キャップのついた万年筆でこめかみ辺りを掻いた。
「別件とはいえ、犯人が引き金を引くように指示している以上松永涼子もなんらかの恨みを買っているのは確かなようだな。凶器の紐の特定はどうなっている」
「はい。被害者の首に残った繊維から、スウェットの腰紐やパーカーのフード部分に使われるような手芸用の平たいアクリル紐だと分かりました。店舗やネット通販でよく売られているもので、特定は難しいかと」
九条は小さくため息をつく。
この事件の一番の難点は、容疑者が未だ絞れていないことだった。
一人目の被害者の中山静香は大手広告代理店の受付として働いており、ホステスだった二人目の被害者である北宮ありさとの接点は見つかっていない。
交友関係を洗っても特に怪しい人物は出て来ず、SNSも充実しているようで悩みやストレスになるような内容は読み取れなかった。
「一班は引き続き、被害者二人の接点を洗ってくれ。二班は防犯カメラの再チェック。それ以外は、怪しい人物の目撃者がいないかを今一度足で稼いで来てほしい。犯人は同一の凶器や蓮の花を残していたり、自分の存在を誇示する傾向にある。そう言う傲慢な奴ほど必ずどこかに綻びを残している、探し出せ」
「はっ」
「おう」
パソコン画面に映し出されたアクビスの里のホームページを閉じ、九条は背広を羽織る。ざわつく会議室に入ると、すでに席についていた刑事たちが前のめりに九条を見た。
「只今より、浦和連続強盗殺人事件の捜査会議を行う」
九条の一声を皮切りに、それぞれが捜査報告を伝える。
浦和連続強盗殺人事件。
最初の被害者は、同区の二十七歳会社員、中山静香。
帰宅時ドアの開錠直後背後から襲われたと見られ、そのまま玄関で絞殺される。部屋は荒らされ、アクセサリーや財布の中身の現金が無くなった。
二人目は、大宮区のキャバクラに勤めていた北宮ありさ、二十四歳。彼女もまた自宅の玄関で絞殺され、現金や金目のものが無くなっていた。
「以前も言ったが、この二つの事件が同一犯だと断定できた理由は絞殺痕から殺害時に使われた紐が同一のものの可能性が高いこと。紐は見つかっておらず、犯人が犯行毎に持ち帰っているとみられる。次に、二つの現場に残された造花の蓮の花。その二点である」
九条の発言とともに、スクリーンに映し出された花は深い紫檀の蓮の花であった。
「先刻タレコミのあった渋谷区広尾の強盗の件は、本件とは無関係である可能性が高いとのことです。ただ、そのタレコミ元は特定できておらず、引き続き調査が必要とみられます」
広尾の強盗事件とは、涼子の事務所で捕まった橘達也が起こした事件のことである。
都内の事案に埼玉県警察が動いたのは、そのタレコミとして警察に送られてきた文書に、例の蓮の花が描かれていたからだった。
「橘はインターネットの掲示板で募集されていた高額のバイトを引き受けただけだと供述しています。日付と時刻を指定され、指示された場所に拳銃を持って行けば二十万円の報酬を与えると。橘の自宅のパソコンを調べたところ、確かに供述通りのメールが発見されましたが、相手のアドレスは海外のメールサーバーを経由しており特定は不可能。拳銃は暗証番号式のコインロッカーを指定され手に入れたようで、モデルガンではなく本物の拳銃だったことを伝えると橘本人も驚いていました」
橘がやり取りしたメールの内容では、金持ちの友人へのドッキリが目的だと書いてあったと同時に、松永涼子が抵抗したり騒いだ場合には拳銃の引き金を弾くようにとの指示もあった。
「拳銃は偽物で、引き金を引けばパーティーグッズのように花束が出る仕組みだと橘は聞かされていたようです。警察に送られてきた文書にも、心当たりはないと言っています」
「ちっ。何でそんな不可解な依頼を受けるかねえ。モデルガンがあんな重厚に作られているわけねぇだろう。どっから花が出んだよ」
九条は呆れたように、キャップのついた万年筆でこめかみ辺りを掻いた。
「別件とはいえ、犯人が引き金を引くように指示している以上松永涼子もなんらかの恨みを買っているのは確かなようだな。凶器の紐の特定はどうなっている」
「はい。被害者の首に残った繊維から、スウェットの腰紐やパーカーのフード部分に使われるような手芸用の平たいアクリル紐だと分かりました。店舗やネット通販でよく売られているもので、特定は難しいかと」
九条は小さくため息をつく。
この事件の一番の難点は、容疑者が未だ絞れていないことだった。
一人目の被害者の中山静香は大手広告代理店の受付として働いており、ホステスだった二人目の被害者である北宮ありさとの接点は見つかっていない。
交友関係を洗っても特に怪しい人物は出て来ず、SNSも充実しているようで悩みやストレスになるような内容は読み取れなかった。
「一班は引き続き、被害者二人の接点を洗ってくれ。二班は防犯カメラの再チェック。それ以外は、怪しい人物の目撃者がいないかを今一度足で稼いで来てほしい。犯人は同一の凶器や蓮の花を残していたり、自分の存在を誇示する傾向にある。そう言う傲慢な奴ほど必ずどこかに綻びを残している、探し出せ」
「はっ」
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