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潜入
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「ようこそ。待っていましたよ、さあこちらへ」
アクビスの里の門を潜ると、薄紫色の作務衣を着た女性がふたり立っていた。
顔は全く違うのに、貼り付けられた笑顔がまるで双子のようで気味が悪い。
「あ、松永様は別にご案内しますので。伊東様はこちらに」
涼子と離された遥は、右側の扉に案内された。
中に入ると、荷物の検査と服を着替えるように言われる。
「荷物は問題ありません。スマートフォン等の通信機器は持ち込めませんので、事前に解約を勧めていましたが、手続きはお済みですか?」
「はい」
「良かった。では念のため、お身体の方も調べさせていただきますね」
女性はそう言うと、遥の頭から足にかけてゆっくり探知器を動かした。
ビビビビッ
警告音が部屋に響く。
「そのポケット、何か入っていますか? 出してください」
遥は女性から視線を逸らさぬままポケットに手を突っ込むと、入っているものを取り出した。
「それは?」
「母の形見の指輪なんです。これだけはどうしても身につけておきたくて」
「そうでしたか。でも、ごめんなさいね。金属類も持ち込めない決まりなんです」
「……そうですか」
落胆する遥に、女性は気持ちを切り替えるよう着替えを勧めた。
「ここへ来たからにはもう大丈夫。あなたの苦しみも悲しみも、全てザラム様が浄化してくださいます。里では自給自足、人間本来の生活を送ることができます。そこで認められればバッジを授けられ、更にザラム様の御眼鏡に適えば、この先一生の幸せが約束されます。精進なさいね」
着替え終わった遥は、生活部門のエリアに通された。
「あの、お手洗いはどちらですか?」
遥はトイレの個室に入ると、天井や壁に注視する。カメラや盗聴機器の有無を素早く確認し、ないことがわかると靴を脱いだ。靴下の中から通信機を取り出すと、イヤホンを耳に装着する。
「翔太、聞こえる?」
「聞こえます。大丈夫ですか?」
「うん。指輪は取られたけどこっちは無事。私の落ち込む顔を見て、足元までは探知機向けられなかった」
「さすが先輩、思った通りですね。でも指輪は早めに取り返さないと」
「わかってる。とりあえず今はバッジの確保。それから、たか絵さんに会う。たか絵さんは今どのあたりにいる?」
「まだ親子部門エリアにいます。こちらの動きは伝えてあって、集いのある明後日までは目立たず過ごすように言いました」
「わかった」
遥がトイレから出ると、すぐそこに女性が待っていた。
「大丈夫ですか?」
「すみません、なんか緊張しちゃって」
「すぐに慣れますよ」
すると突然、近くから歓喜の声が上がり拍手が鳴り響いた。
「どうかしたんですか?」
「たった今、最後の銀バッジが授けられたみたいですね。ザラム様の集いは明後日。さすがに今回は間に合わなかったけれど、また来月もあるから。頑張って」
「……はい」
遥は遠目に繰り広げられる祝いの雰囲気から視線を逸らした。
一通り施設の案内をされると、最後に部屋へと通される。六畳分の空間に二段ベッド、簡易的な流し台が一つ付いていた。
「刑務所かよ……」
「なにか?」
「いや、なんでもありません。相部屋ですね。もう一人はどちらに?」
「今は居ません。次の信者が来るまではあなた一人で使ってもらいます。あなたは運がいい。この部屋を使っていた方は先月、ザラム様のお達しを頂いて幸運への階段を登られたんですよ」
アクビスの里の門を潜ると、薄紫色の作務衣を着た女性がふたり立っていた。
顔は全く違うのに、貼り付けられた笑顔がまるで双子のようで気味が悪い。
「あ、松永様は別にご案内しますので。伊東様はこちらに」
涼子と離された遥は、右側の扉に案内された。
中に入ると、荷物の検査と服を着替えるように言われる。
「荷物は問題ありません。スマートフォン等の通信機器は持ち込めませんので、事前に解約を勧めていましたが、手続きはお済みですか?」
「はい」
「良かった。では念のため、お身体の方も調べさせていただきますね」
女性はそう言うと、遥の頭から足にかけてゆっくり探知器を動かした。
ビビビビッ
警告音が部屋に響く。
「そのポケット、何か入っていますか? 出してください」
遥は女性から視線を逸らさぬままポケットに手を突っ込むと、入っているものを取り出した。
「それは?」
「母の形見の指輪なんです。これだけはどうしても身につけておきたくて」
「そうでしたか。でも、ごめんなさいね。金属類も持ち込めない決まりなんです」
「……そうですか」
落胆する遥に、女性は気持ちを切り替えるよう着替えを勧めた。
「ここへ来たからにはもう大丈夫。あなたの苦しみも悲しみも、全てザラム様が浄化してくださいます。里では自給自足、人間本来の生活を送ることができます。そこで認められればバッジを授けられ、更にザラム様の御眼鏡に適えば、この先一生の幸せが約束されます。精進なさいね」
着替え終わった遥は、生活部門のエリアに通された。
「あの、お手洗いはどちらですか?」
遥はトイレの個室に入ると、天井や壁に注視する。カメラや盗聴機器の有無を素早く確認し、ないことがわかると靴を脱いだ。靴下の中から通信機を取り出すと、イヤホンを耳に装着する。
「翔太、聞こえる?」
「聞こえます。大丈夫ですか?」
「うん。指輪は取られたけどこっちは無事。私の落ち込む顔を見て、足元までは探知機向けられなかった」
「さすが先輩、思った通りですね。でも指輪は早めに取り返さないと」
「わかってる。とりあえず今はバッジの確保。それから、たか絵さんに会う。たか絵さんは今どのあたりにいる?」
「まだ親子部門エリアにいます。こちらの動きは伝えてあって、集いのある明後日までは目立たず過ごすように言いました」
「わかった」
遥がトイレから出ると、すぐそこに女性が待っていた。
「大丈夫ですか?」
「すみません、なんか緊張しちゃって」
「すぐに慣れますよ」
すると突然、近くから歓喜の声が上がり拍手が鳴り響いた。
「どうかしたんですか?」
「たった今、最後の銀バッジが授けられたみたいですね。ザラム様の集いは明後日。さすがに今回は間に合わなかったけれど、また来月もあるから。頑張って」
「……はい」
遥は遠目に繰り広げられる祝いの雰囲気から視線を逸らした。
一通り施設の案内をされると、最後に部屋へと通される。六畳分の空間に二段ベッド、簡易的な流し台が一つ付いていた。
「刑務所かよ……」
「なにか?」
「いや、なんでもありません。相部屋ですね。もう一人はどちらに?」
「今は居ません。次の信者が来るまではあなた一人で使ってもらいます。あなたは運がいい。この部屋を使っていた方は先月、ザラム様のお達しを頂いて幸運への階段を登られたんですよ」
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