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「許せない……許さないっ……伊東遥……!」
右頬は落ち窪み、胸から腹にかけて広がる黒い斑点は、一分一秒腐敗を進めていく。
アクビスの里から姿を消したマウトたちは創造空間に身を置いていた。
その場所は神のみが創り出せる、誰にも邪魔されぬ空間。創り出す神の創造によってその形はさまざまだが、今はコンクリートの冷たい壁に簡易的なベッドが一つ。まるで廃病院の手術室だ。
「イシス……修繕は、どうなっている」
「申し訳ございませぬ。これ以上の器の修繕は、不可能かと」
「見解は」
「恐れながら。原因はおそらく、その身にオシリスを取り込んでいるからかと。人間一人にその呪力の大きさは、耐えきれませぬ」
マウトは鼻息荒く、肩で息を繰り返す。
「政尚、要、大、そして舞……! 何故だ。何故こうもうまくいかぬ! ネフティス!!」
「はっ」
ネフティスは片膝で傅く。
「お前はその身に何人もの魂をストック出来ような。ならばそなたを飲み込めば、オシリスを抱える我の器はより強靭のものになるのではないか」
「なにをっ」
イシスが口を挟めば、マウトはゆっくりとその眼球を震わせる。見ずともわかる、憤怒の震えだ。
「知っておるのだぞ。そなたが裏で何をしたか。アンクを導き、あの白井翔太の身体を手に入れさせたこと……我はずっと根に持っておる」
「なんの、話でしょう」
「賭けの勝率を上げるため、更には白井翔太の器を渇望する我に手を出させぬため。そなたはあの忌まわしい“ハルのピアス”を身につけさせ、極上の適合者を我から隠し続けた!
晶子と正和の娘、田中正美。
大と晃の兄であり菊田家長男、菊田航。
……その最強の血を受け継いだ、白井翔太の器を!」
イシスは凛とした表情で空を見つめている。
「白井実とかいう詐欺師が、まさかあんなにいい働きをしていたとはな。だがまあ、気に留めなかった我の負けだ、未来を見ようではないか。伊東遥がアンクの核を壊せば、あの身体は肉体を持ったまま器となる。朽ちることのない、それこそ最強の器にな。それまでの我慢だ……我慢にはもう、慣れたぞ」
マウトは冷静さを取り繕って、あえて風格を纏った。
「これより最終段階に入る。黄泉のナミに連絡を。神壺を用意せよ。薙の剣を探し出し、この日本……いや、ヒノモトを崩壊に導く! よいな! 松永涼子よ!」
その名を呼ぶマウトの眼が、ギラリと光る。
「承知致しました。我が、主」
右頬は落ち窪み、胸から腹にかけて広がる黒い斑点は、一分一秒腐敗を進めていく。
アクビスの里から姿を消したマウトたちは創造空間に身を置いていた。
その場所は神のみが創り出せる、誰にも邪魔されぬ空間。創り出す神の創造によってその形はさまざまだが、今はコンクリートの冷たい壁に簡易的なベッドが一つ。まるで廃病院の手術室だ。
「イシス……修繕は、どうなっている」
「申し訳ございませぬ。これ以上の器の修繕は、不可能かと」
「見解は」
「恐れながら。原因はおそらく、その身にオシリスを取り込んでいるからかと。人間一人にその呪力の大きさは、耐えきれませぬ」
マウトは鼻息荒く、肩で息を繰り返す。
「政尚、要、大、そして舞……! 何故だ。何故こうもうまくいかぬ! ネフティス!!」
「はっ」
ネフティスは片膝で傅く。
「お前はその身に何人もの魂をストック出来ような。ならばそなたを飲み込めば、オシリスを抱える我の器はより強靭のものになるのではないか」
「なにをっ」
イシスが口を挟めば、マウトはゆっくりとその眼球を震わせる。見ずともわかる、憤怒の震えだ。
「知っておるのだぞ。そなたが裏で何をしたか。アンクを導き、あの白井翔太の身体を手に入れさせたこと……我はずっと根に持っておる」
「なんの、話でしょう」
「賭けの勝率を上げるため、更には白井翔太の器を渇望する我に手を出させぬため。そなたはあの忌まわしい“ハルのピアス”を身につけさせ、極上の適合者を我から隠し続けた!
晶子と正和の娘、田中正美。
大と晃の兄であり菊田家長男、菊田航。
……その最強の血を受け継いだ、白井翔太の器を!」
イシスは凛とした表情で空を見つめている。
「白井実とかいう詐欺師が、まさかあんなにいい働きをしていたとはな。だがまあ、気に留めなかった我の負けだ、未来を見ようではないか。伊東遥がアンクの核を壊せば、あの身体は肉体を持ったまま器となる。朽ちることのない、それこそ最強の器にな。それまでの我慢だ……我慢にはもう、慣れたぞ」
マウトは冷静さを取り繕って、あえて風格を纏った。
「これより最終段階に入る。黄泉のナミに連絡を。神壺を用意せよ。薙の剣を探し出し、この日本……いや、ヒノモトを崩壊に導く! よいな! 松永涼子よ!」
その名を呼ぶマウトの眼が、ギラリと光る。
「承知致しました。我が、主」
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