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招かれざる客

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「ほら! この女の脳天ぶち抜くよ! 今すぐ伊東遥をこっちによこしな!!」
 
 シンっ、と静まり返る室内。
 
「うっそ……」
「本当に来たよ」
「こっちに張ってて大正解だな」
 
 たか絵や涼子、それから九条の反応に、美帆は半狂乱で震えている。
 
「なに言ってんだお前ら! 撃つぞ!? ほら、みんな手を上げんだよ!」
「そんなことをしても無駄よ。あなたが逃げた速報が流れてから何時間経ったと思っているの? 準備してないわけないじゃない」
 
 涼子が言うと、その場にいた皆が服を捲り上げる。その身体には防弾ベストが巻かれていた。

 
「罪を償ってください」
 晃が、たか絵の肩を抱き寄せて言う。
 
「償えるなんて、幸運よ? 感謝なさい」
 涼子は腕を組んで美帆を見下した。
 
「美桜もはらわた煮えてんだ。さすが、俺の娘だな」
 美帆を睨む美桜を、九条はそっと背中に隠す。
 
「そ、そんなことをしても無駄だぞ! すぐに真央ちゃんを、は、離せ!」
 瑛山は汗を拭いながら威嚇した。
 
 
「は? 気持ち悪りぃな、仲良しごっこが! 私に指図するな! まだ終わってない……お前らみたいな虫ケラ、皆殺しにしてやる!!」
 
 興奮する美帆に、遥は真顔で言う。
 
「あなたが単細胞で助かりました。あなたの計画なんて私が全てぶっ潰す、そう言ったでしょう?」
「うぅ……くっそォォおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 

 
 パンっ!!

 
 
 銃声を聞いて。奥の部屋から続々と出てきた警察官は、状況を見て目を見開いた。
 
 
「…………ったーい!! うった? うった! おまえ、わたしを打ったな! 血がでてる! 死んじゃうぅぅ!」
 
 
 地面に座り込むように倒れたのは、美帆だった。

 銃口を突きつけられた真央に、翔太が指を鳴らそうと一歩前に出た瞬間。真央は後ろに下がりながらしゃがみ込むと、拳銃を持つ美帆の腕を制圧し、肘で美帆の顎を殴った。そしてその後倒れ込んだ美帆の左太ももを、奪った拳銃で撃ったのだ。

 真央は、その美しい顔に血管を浮かび上がらせて、まんまるな目を剥き出しにしている。
 
「半端な覚悟で握るからこういうことになるんや、このエセサイコパスが。遥ちゃんを危ない目に遭わせた女の顔、ひとめ見ようと思うてここに来たけど……この間抜け。もう一発打ったろか」
「ちょ、ちょっと真央ちゃん! ダメだよ!」
 
 必死で止める瑛山に、真央はキョトンとした顔で言う。
 
「なんでや。正当防衛やろ」
 
 その時。その場にいた全員の声が揃った。
 
「過剰防衛です!!」 


       
     to be continued……
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