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館編
情報交換
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大柳佐和子(52)契約日数:5日
段田慎之介(37)契約日数:10日
竹林彩美 (不明)契約日数:15日
権堂薫 (46)契約日数:15日
江畑マリア(19)契約日数:20日
野中海里 (29)契約日数:30日
相澤千聖 (24)契約日数:不明
大食堂。円卓には料理が並ばない代わりに、権堂が殴り書きした各契約者の情報が並んだ。
「おう、竹林。あんたいくつ?」
「あ、に……28です」
「にじゅうはっさい、っと。相澤は? 契約日数」
「それ、明かす必要ある?」
枝毛を触りながら投げやりに答える千聖。権堂は幼子でも見るかのような呆れた表情で、自身の後頭部を掻いた。
「あのねえ。みんなで協力して情報出し合おうってやってんだから、出鼻挫くのやめてくれる? あんた、自分の情報は提示しないで人の情報だけ聞くつもり?」
千聖は周りの視線を察知し、自分が浮いていることを認識すると、ぼそっと呟く。
「……30日よ」
「はいはい、30日ね。あんたも海里と一緒で一番長いのな、契約日数」
海里はいつだか突っ掛かられたことを思い出し、鼻を膨らませた。
「なんだよ。俺にがめついとか言っといて、自分も大概なんじゃん」
「はあ?」
「ほらほら、海里もほじくんないの。話が進まねえよ。それで、次は報酬の話でもするか。俺は前にも言った通り、この足を治してもらったけどよ。そういや大柳さんはたったの5日でなんの報酬もらったんだよ?」
権堂が芹に目をやる。芹は井無田が用意した珈琲に口をつけ、カチャっとカップをソーサーに置いた。
「守秘義務がございます。大柳様ご本人が亡くなられた今、その報酬を私の口から申し上げることは出来ません。ただし、権堂様のようにご本人が明かしても良い……そう思われる方はどうぞ、ご自由にお話し頂いて。私は契約の内容やその報酬の正否に一切口を出しませんので」
芹の話を聞いたマリアは、うーんと腕を上げて背を伸ばす。息を吐き、テーブルに両肘をついて顔を乗せた。
「マリアは右手だよ。ちょっと怪我してうまく動かなくなっちゃって。絵を諦めてたところに芹さんが話を持ってきた」
「そういえば江畑さん、画材はどうやって? 私物の持ち込みは禁止のはずじゃ」
「ああ、それなら私がご用意しました。私の庭を気に入って下さり、写生をしたいと仰っるので、快く」
海里の質問に芹が答える。すると今度は、彩美が遠慮がちに手をあげた。
「わ、私はお金です」
「僕もお金です。10日で1000万」
「ちょっと待ってよ」
明らかな不満を含む低い声。千聖は立ち上がると、段田を指差しながら芹に訴える。
「あたしは30日も差し出したのに、なんでこいつより報酬が低いの?」
「それぞれの事情を精査した結果です」
「あたしの30日は、こいつの10日よりも価値が低いってわけ?」
「そうですね。結果だけ申せば、そうなりますか」
敵意を剥き出しにする千聖に対しても、芹は涼しげな顔のまま。千聖は我慢のならない様子で、部屋の出入口へと歩みを進めた。
「やってらんないわ」
「おい、どこいくんだよ」
「部屋に戻んのよ!」
権堂に言い放ち、扉に向かう千聖。その手前で振り返ると、眉間に皺を寄せ怒りを露わにした。
「残りの日数、あたしはあんたたちと馴れ合う気はないから。必要以上に話しかけないで。それと芹さん。その子に画材が用意できるなら、あたしの部屋にも電子ピアノ、用意できるわよね。別に高価なものでなくその辺のでいいから、なるべく早く持ってきて欲しいんだけど」
「承知しました。明日の朝にはお持ち致します」
「宜しく」
わざと大きな音を立てて千聖が扉を閉めれば、大食堂は一瞬シンと静まり返った。
「まったく、これだからアーティストかぶれは困るよ。気だけでかくて」
「そんな言い方は。大柳さんが亡くなった不安もあるんですよ、きっと」
偏見ですよ、と彩美が続ければ、海里は小さく頭を下げた。
「んじゃあ、再開。海里は? 芹から何貰ったんだよ」
海里は一瞬考えた。2750万。海里がこの館で30日間過ごすことの対価に得る報酬は、きっと他の誰よりも高い。それを素直に言うべきか、それとも嘘をつくべきか。
“私はその正否にには口を出しません”
芹の発言が、海里の頭で反芻した。
「俺も金です。30日で1000万」
段田慎之介(37)契約日数:10日
竹林彩美 (不明)契約日数:15日
権堂薫 (46)契約日数:15日
江畑マリア(19)契約日数:20日
野中海里 (29)契約日数:30日
相澤千聖 (24)契約日数:不明
大食堂。円卓には料理が並ばない代わりに、権堂が殴り書きした各契約者の情報が並んだ。
「おう、竹林。あんたいくつ?」
「あ、に……28です」
「にじゅうはっさい、っと。相澤は? 契約日数」
「それ、明かす必要ある?」
枝毛を触りながら投げやりに答える千聖。権堂は幼子でも見るかのような呆れた表情で、自身の後頭部を掻いた。
「あのねえ。みんなで協力して情報出し合おうってやってんだから、出鼻挫くのやめてくれる? あんた、自分の情報は提示しないで人の情報だけ聞くつもり?」
千聖は周りの視線を察知し、自分が浮いていることを認識すると、ぼそっと呟く。
「……30日よ」
「はいはい、30日ね。あんたも海里と一緒で一番長いのな、契約日数」
海里はいつだか突っ掛かられたことを思い出し、鼻を膨らませた。
「なんだよ。俺にがめついとか言っといて、自分も大概なんじゃん」
「はあ?」
「ほらほら、海里もほじくんないの。話が進まねえよ。それで、次は報酬の話でもするか。俺は前にも言った通り、この足を治してもらったけどよ。そういや大柳さんはたったの5日でなんの報酬もらったんだよ?」
権堂が芹に目をやる。芹は井無田が用意した珈琲に口をつけ、カチャっとカップをソーサーに置いた。
「守秘義務がございます。大柳様ご本人が亡くなられた今、その報酬を私の口から申し上げることは出来ません。ただし、権堂様のようにご本人が明かしても良い……そう思われる方はどうぞ、ご自由にお話し頂いて。私は契約の内容やその報酬の正否に一切口を出しませんので」
芹の話を聞いたマリアは、うーんと腕を上げて背を伸ばす。息を吐き、テーブルに両肘をついて顔を乗せた。
「マリアは右手だよ。ちょっと怪我してうまく動かなくなっちゃって。絵を諦めてたところに芹さんが話を持ってきた」
「そういえば江畑さん、画材はどうやって? 私物の持ち込みは禁止のはずじゃ」
「ああ、それなら私がご用意しました。私の庭を気に入って下さり、写生をしたいと仰っるので、快く」
海里の質問に芹が答える。すると今度は、彩美が遠慮がちに手をあげた。
「わ、私はお金です」
「僕もお金です。10日で1000万」
「ちょっと待ってよ」
明らかな不満を含む低い声。千聖は立ち上がると、段田を指差しながら芹に訴える。
「あたしは30日も差し出したのに、なんでこいつより報酬が低いの?」
「それぞれの事情を精査した結果です」
「あたしの30日は、こいつの10日よりも価値が低いってわけ?」
「そうですね。結果だけ申せば、そうなりますか」
敵意を剥き出しにする千聖に対しても、芹は涼しげな顔のまま。千聖は我慢のならない様子で、部屋の出入口へと歩みを進めた。
「やってらんないわ」
「おい、どこいくんだよ」
「部屋に戻んのよ!」
権堂に言い放ち、扉に向かう千聖。その手前で振り返ると、眉間に皺を寄せ怒りを露わにした。
「残りの日数、あたしはあんたたちと馴れ合う気はないから。必要以上に話しかけないで。それと芹さん。その子に画材が用意できるなら、あたしの部屋にも電子ピアノ、用意できるわよね。別に高価なものでなくその辺のでいいから、なるべく早く持ってきて欲しいんだけど」
「承知しました。明日の朝にはお持ち致します」
「宜しく」
わざと大きな音を立てて千聖が扉を閉めれば、大食堂は一瞬シンと静まり返った。
「まったく、これだからアーティストかぶれは困るよ。気だけでかくて」
「そんな言い方は。大柳さんが亡くなった不安もあるんですよ、きっと」
偏見ですよ、と彩美が続ければ、海里は小さく頭を下げた。
「んじゃあ、再開。海里は? 芹から何貰ったんだよ」
海里は一瞬考えた。2750万。海里がこの館で30日間過ごすことの対価に得る報酬は、きっと他の誰よりも高い。それを素直に言うべきか、それとも嘘をつくべきか。
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「俺も金です。30日で1000万」
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