6 / 35
クエスト「アズール家族を救え」
第6話 母親の病気(1)
しおりを挟む
アズール家族三人は、ジャムを塗った食パンとオレンのジュースで久し振りに楽しい夕食を迎えた。
「それでミーナ、このパンとジュースはどうしたの?とても美味しいものだけど」
それは気になるだろう。何もなかった食卓に、食べたことの無いような物が出てきたのだ。
「これはね、神様が私達を助けてくれたの。まだ、たくさんあるんだよ。それでも毎日送ってくれるんだって。凄いよね」
母親は困惑した。(相変わらずミーナは説明するのが苦手なのね)
「あのね、神様からミーナお姉ちゃんに神託があったの。ボク達家族を見守ってくれてるんだって。それで苦しんでるボク達を助けてくれるそうで、毎日食べ物を届けてくれるって言われたらしいよ」
タルク、素晴らしい説明をありがとう。
「そうなの? タルクが言うなら本当なんでしょうね。神様にお礼を言わないといけないわね。さあ、お祈りしましょう」
ミーナ。くじけずに頑張るんだぞ。
三人は目をつむり、両手を胸の前で合わせて静かに黙祷する。
「神様ありがとう。とても美味しかったです。出来ればお母さんの病気を治して下さい。一週間ほど前から熱が出て体の節々が痛いそうです。食欲はあまり無く、体がダルくて立ち上がる事が出来ません。そして呼吸が苦しくなることが増えてきました。体に発疹とかは無いです。怪我などもしていません。森にある薬草は、外傷に効くものしか見つからず困っています。どうか宜しくお願いします」
お祈りは黙祷のようだったが、ミーナはブツブツと声に出して祈っていた。
ミーナ。今回だけはナイスだ。それも詳細に語ってくれてありがとう。(さっき母親に説明した時とは大違いだな)
僕はネットで母親の病気の症状を入力して調べてみた。
調べた結果だが、風邪から肺炎になりかけていると思うが、インフルエンザのようにも思える。僕はどうしようかと悩んだ。そして僕は重い腰を上げ、部屋の外に出た。
行き先は兄の雅人の部屋。今日、仕事は休みなので部屋にいる筈だ。
兄は一時期、医者を目指していた。大学も医学大学に通っていたが、親から家業を継いでくれと懇願され、雑貨の輸入販売店の次期社長として働き始めた。
兄とは引きこもりになってから、ほとんど話していない。兄はとても優しい。僕が逃げているだけなのだ。でもアズール家族の為だ。
コンコン 「兄さん、少しいいかな」
しばらく待つとドアが開いた。
僕より頭一つ背が高く細身、短い清潔感ある髪型。眼鏡を掛けて優しそうな顔をした兄が少し微笑みながら現れた。
「春馬か。どうした?まあ、俺の部屋に入って来い。久し振りに話をしよう」
「うん」
兄の部屋は六畳。この家は僕が小学六年の時に建て直した家だ。兄の為にと親が広い部屋を準備していたのに、我儘な僕が泣いて「広い部屋がいい」と駄々をこねた。兄はそれを見て笑って部屋を交換してくれたのを今でも覚えている。(とても恥ずかしい)
兄の部屋には、ベッドと少し大きめの机、あとは壁一面の本棚。兄は机の椅子に座り、僕はベッドに腰掛けた。
兄は僕を見て、なにも言わずに微笑んでいる。僕から話すのを待ってくれているのだ。
「兄さん、その、相談があって‥‥‥」
どう話そうかと悩む僕。
「ああ、なんでも話せ。お前は人に気を使い過ぎるところがある。俺達は兄弟だ。それは何があってもだ。変わることはない」
やっぱり兄は優しい。
僕はアズール家族の事は伏せて、ネットで知り合った一人住まいの友達が病気になっている事にして病状を話した。
兄は少しだけ考える。
「うーん、断定は出来ないがほぼ間違いはないと思う。それはインフルエンザだな。風邪であれば、関節の痛みはあまり起きることがない。他の症状も合わせての見解だ。それと肺炎になり掛けているかも知れない」
インフルエンザか。ミーナとタルクは元気だが、大丈夫なんだろうか。
「友達の友達が、何度もお見舞いに行ってるみたいだけど大丈夫なのかな?」
兄は僕をじっと見る。暫くして、微かに呆れた顔をして話し始めた。
「インフルエンザになるかもな。友達の友達はせめてマスクをするべきだ。そして熱が出始めたら病院に行った方がいい。病気の友達は今すぐにだ。だが、その友達達は病院には行けないんだよな?」
うっ、見透かされてる。
「市販の風邪薬じゃ治らないの?」
「風邪薬では治らない。反対に良くない場合もある。自然治癒する場合もあるが、聞いた限りではもう無理だ」
そうなんだ‥‥‥‥
落ち込む僕を見て、兄は助け船を出してくれた。それもとびきり上等なやつを。
「お前、冬にインフルエンザになったよな。薬嫌いのお前の事だ。症状が少し良くなった後、飲まずに隠してるんじゃないか?本当は治っても全部飲み続けるもんだがな」
おおお!そうだった。錠剤タイプの薬を持ってるぞ!それもほとんど残ってる。
僕は薬が嫌い。初日に飲んで少し良くなったので、それから食事と一緒に出てくる薬を飲まないで机の引き出しの中に入れていた。
「そうだった。僕の部屋の机の中にあるよ。兄さん、ありがとう。これで何とかなるかも」
僕は立ち上がり急いで部屋を出ようとした。
「春馬、いい顔で笑うようになったな。それでいいんだ。また何かあれば相談しに来い。ただ話に来るだけでもいいぞ」
「うん、ありがとう!」
「薬は治っても全部飲ませるんだ。友達の友達にも一回だけ飲ませろ。あと、水分補給を忘れるなよ」
僕は兄にお礼を行って部屋を飛び出した。
未だ名前を知らないお母さん。待っててね。僕が必ず治してみせるから!
「それでミーナ、このパンとジュースはどうしたの?とても美味しいものだけど」
それは気になるだろう。何もなかった食卓に、食べたことの無いような物が出てきたのだ。
「これはね、神様が私達を助けてくれたの。まだ、たくさんあるんだよ。それでも毎日送ってくれるんだって。凄いよね」
母親は困惑した。(相変わらずミーナは説明するのが苦手なのね)
「あのね、神様からミーナお姉ちゃんに神託があったの。ボク達家族を見守ってくれてるんだって。それで苦しんでるボク達を助けてくれるそうで、毎日食べ物を届けてくれるって言われたらしいよ」
タルク、素晴らしい説明をありがとう。
「そうなの? タルクが言うなら本当なんでしょうね。神様にお礼を言わないといけないわね。さあ、お祈りしましょう」
ミーナ。くじけずに頑張るんだぞ。
三人は目をつむり、両手を胸の前で合わせて静かに黙祷する。
「神様ありがとう。とても美味しかったです。出来ればお母さんの病気を治して下さい。一週間ほど前から熱が出て体の節々が痛いそうです。食欲はあまり無く、体がダルくて立ち上がる事が出来ません。そして呼吸が苦しくなることが増えてきました。体に発疹とかは無いです。怪我などもしていません。森にある薬草は、外傷に効くものしか見つからず困っています。どうか宜しくお願いします」
お祈りは黙祷のようだったが、ミーナはブツブツと声に出して祈っていた。
ミーナ。今回だけはナイスだ。それも詳細に語ってくれてありがとう。(さっき母親に説明した時とは大違いだな)
僕はネットで母親の病気の症状を入力して調べてみた。
調べた結果だが、風邪から肺炎になりかけていると思うが、インフルエンザのようにも思える。僕はどうしようかと悩んだ。そして僕は重い腰を上げ、部屋の外に出た。
行き先は兄の雅人の部屋。今日、仕事は休みなので部屋にいる筈だ。
兄は一時期、医者を目指していた。大学も医学大学に通っていたが、親から家業を継いでくれと懇願され、雑貨の輸入販売店の次期社長として働き始めた。
兄とは引きこもりになってから、ほとんど話していない。兄はとても優しい。僕が逃げているだけなのだ。でもアズール家族の為だ。
コンコン 「兄さん、少しいいかな」
しばらく待つとドアが開いた。
僕より頭一つ背が高く細身、短い清潔感ある髪型。眼鏡を掛けて優しそうな顔をした兄が少し微笑みながら現れた。
「春馬か。どうした?まあ、俺の部屋に入って来い。久し振りに話をしよう」
「うん」
兄の部屋は六畳。この家は僕が小学六年の時に建て直した家だ。兄の為にと親が広い部屋を準備していたのに、我儘な僕が泣いて「広い部屋がいい」と駄々をこねた。兄はそれを見て笑って部屋を交換してくれたのを今でも覚えている。(とても恥ずかしい)
兄の部屋には、ベッドと少し大きめの机、あとは壁一面の本棚。兄は机の椅子に座り、僕はベッドに腰掛けた。
兄は僕を見て、なにも言わずに微笑んでいる。僕から話すのを待ってくれているのだ。
「兄さん、その、相談があって‥‥‥」
どう話そうかと悩む僕。
「ああ、なんでも話せ。お前は人に気を使い過ぎるところがある。俺達は兄弟だ。それは何があってもだ。変わることはない」
やっぱり兄は優しい。
僕はアズール家族の事は伏せて、ネットで知り合った一人住まいの友達が病気になっている事にして病状を話した。
兄は少しだけ考える。
「うーん、断定は出来ないがほぼ間違いはないと思う。それはインフルエンザだな。風邪であれば、関節の痛みはあまり起きることがない。他の症状も合わせての見解だ。それと肺炎になり掛けているかも知れない」
インフルエンザか。ミーナとタルクは元気だが、大丈夫なんだろうか。
「友達の友達が、何度もお見舞いに行ってるみたいだけど大丈夫なのかな?」
兄は僕をじっと見る。暫くして、微かに呆れた顔をして話し始めた。
「インフルエンザになるかもな。友達の友達はせめてマスクをするべきだ。そして熱が出始めたら病院に行った方がいい。病気の友達は今すぐにだ。だが、その友達達は病院には行けないんだよな?」
うっ、見透かされてる。
「市販の風邪薬じゃ治らないの?」
「風邪薬では治らない。反対に良くない場合もある。自然治癒する場合もあるが、聞いた限りではもう無理だ」
そうなんだ‥‥‥‥
落ち込む僕を見て、兄は助け船を出してくれた。それもとびきり上等なやつを。
「お前、冬にインフルエンザになったよな。薬嫌いのお前の事だ。症状が少し良くなった後、飲まずに隠してるんじゃないか?本当は治っても全部飲み続けるもんだがな」
おおお!そうだった。錠剤タイプの薬を持ってるぞ!それもほとんど残ってる。
僕は薬が嫌い。初日に飲んで少し良くなったので、それから食事と一緒に出てくる薬を飲まないで机の引き出しの中に入れていた。
「そうだった。僕の部屋の机の中にあるよ。兄さん、ありがとう。これで何とかなるかも」
僕は立ち上がり急いで部屋を出ようとした。
「春馬、いい顔で笑うようになったな。それでいいんだ。また何かあれば相談しに来い。ただ話に来るだけでもいいぞ」
「うん、ありがとう!」
「薬は治っても全部飲ませるんだ。友達の友達にも一回だけ飲ませろ。あと、水分補給を忘れるなよ」
僕は兄にお礼を行って部屋を飛び出した。
未だ名前を知らないお母さん。待っててね。僕が必ず治してみせるから!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる