怠惰の神の使徒となり、異世界でのんびりする。筈がなんでこんなに忙しいの?異世界と日本で怠惰の魔法を使って駆け巡る。

七転び早起き

文字の大きさ
7 / 35
クエスト「アズール家族を救え」

第7話 母親の病気(2)

しおりを挟む
 アズール家族の母親は、多分インフルエンザになっていると思われた。もし、異世界でしかない病気だったらお手上げだ。

 僕は部屋に戻ると急いで机の中を漁る。

「あった!家政婦さんに見つかるのを怖れてゴミ箱に捨てなかった僕は偉い!」

 その薬はあと四日と2/3日分残っていた。(やっぱり一回しか飲んでなかった)

 さっそく「神の施し」を実行して段ボール箱を呼び出し、中に薬を入れた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 僕は気が付いてしまった。

 そう言えば、今日はもう「神のお告げ」が使えなかったんだ。どうしよう?

 説明が無いと薬だと判らないよな。明日にするしかないのか‥‥‥‥

 でも僕は苦しんでいる母親を今すぐにでも治してあげたい。少しでも可能性があるならば、なんにでも頼ってやる!

 春馬の性格は少しずつだが積極性が強くなり、いい方向に変わってきていた。その変化に気付いているのは兄のみだが。

(神様、僕は少しでも早く母親の病気を治してあげたい。どうかお願いします。メッセージを送れるようにしてください)

 僕は無我夢中で神様に祈った。

「ピコン」

 静かな部屋に響いた着信音。僕は慌ててモニターを確認すると、チャットウインドウにメッセージが入っていた。

『「神の施し」①を「神のお告げ」②に変換可能です。また逆も可能』

 やった!今まで反応してくれなかったのに、今回はすぐに対応してくれたんだ!神様、ありがとう!

 僕は空に向かってお辞儀をしてから、作業に取り掛かった。

 項目欄に追加されていた「変換」。僕は残り二回の「神の施し」を一回分、「神のお告げ」に変換した。これで今日出来るのは、「神の施し」が一回と「神のお告げ」が二回となった。

 段ボール箱には、ナイロン袋にまとめて入れた薬(保護シートから錠剤を取り出すことが出来ないかも知れないのでバラした)、部屋の冷蔵庫にあったジュース類を六本を詰めた。まだスペースに余裕はあったが入れるものが無かった。

 次は「神のお告げ」だ。

 まずは薬の説明だ。送り先はタルク。(ミーナ、ごめんな)

『薬を送る。母親は朝昼夜二個ずつ飲め。姉弟も二個だけすぐ飲め。』

 ちょうど三十文字。水分補給と治っても続けて飲むように指示したかったが諦めた。あともう一回分は、いざと言う時の為に残しておくことにした。

 三人はまだ寝室で話をしている。僕は「神のお告げ」と「神の施し」を続けて実行した。

 寝室の母親が寝ているベッドの足元に「ブウォン」という音と共に現れた段ボール箱。
 驚く母親とミーナ。タルクは「神のお告げ」を聞いていた途中だったので驚くことは無かった。

「お母さん!これよ、これ!これに食べ物が入ってるの。神様がまた送ってくれたんだわ。ちょっと見ててね!」

 ミーナは椅子から立ち上がり箱の前に来ると、右手を振り上げた。

「ふんっ!」

 出た‥‥‥‥ ゴリ押し女のグーパンチ。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 初めてみた母親は固まった。

「タルク‥‥‥あの開け方が正解なの?」

「違うと思う。でもミーナお姉ちゃんらしいよね。ボクはカッコいいと思うよ」

 「そ、そうなんだ‥‥‥‥」

 ミーナはそんな二人のやり取りを気にせずに、段ボール箱の中身を取り出していく。

「これはさっき飲んだオレンのジュースが入ってた入れ物なの。今回は違うジュースが入っているみたい。あと、この透明の袋に入ってる丸い粒は何なのかしら?」

 ミーナは袋を開けて一粒取り出すと、ためらいもなく口に入れ、噛み砕いていた。

「待って、ミーナお姉ちゃん。それ、お母さんの病気を治す薬だよ!」

 タルクは慌てて姉を止めるが間に合わなかった。

(ミーナ‥‥‥  あとから姉弟も飲む必要があったから良かったものの、少しは考えてから行動して欲しいよ)

「ええっ!もう食べたゃったよ!どうしよう‥‥‥吐けばいい?お母さん!口開けて!」

 ミーナは焦った顔をして、右手中指だけをピンと伸ばし勢い良く口に突っ込んだ。

「「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」」

 これにはさすがのタルクでも庇いきれなかったようで、無言で姉を見つめていた。

「さっきボクに神様からお告げがあったんだ。その丸く白いものは薬で、お母さんは朝昼夜と二個ずつ飲むようにって。それとボクとミーナお姉ちゃんもすぐに二個だけ飲みなさいだって」

 タルクの言葉にほっとしたミーナ。唾液まみれの中指を、服の裾で拭きながら涙目でタルクに質問する。

「なんで私達も飲むの?」

「たぶん、お母さんの病気は流行り病のようなものなんだと思う。だから予防の為に飲む必要があるんだよ」

「ほほー、なるほどね」

 タルク。ホント凄いな。

 ミーナは走って台所まで行き、水の入った鍋を持ってきた。母親とタルクがジュースを飲んでいたコップを持ち、残っているジュースをイッキ飲み。そして軽く振って鍋の水を注ぎ、母親とタルクに薬と一緒に手渡した。

「はい、どうぞ」

 母親とタルクは、男前ミーナの行動に戸惑いつつも、お礼を言って薬を飲んだ。

「これでお母さんの病気が治るのね。神様、本当にありがとうございます」

 母親が病気になって一週間。頼る人も無い中、幼い弟が不安にならないように気を使っていたのだろう。ミーナは安心したのか母親に抱きついて大きな声で泣き始めた。

 そんなミーナに母親は、小さな声で「ありがとう」と言い、泣き止むまで背中を擦っているのであった。

 僕はその光景を見て思った。

 母親の病気がインフルエンザでなかったらどうしようと‥‥‥‥‥‥‥

(神様、お願い。助けて!)
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します

名無し
ファンタジー
 毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...