12 / 35
クエスト「アズール家族を救え」
第12話 アズール家族の秘密(1)
しおりを挟む
家政婦桜子さんのお陰で「神の施し」での物資調達はなんとかなりそうだ。
僕はベッド下に隠していたノートパソコンをテーブルの上に戻してモニターを見る。
時刻は朝8時過ぎ。視点は台所。
竈の横の流し台で洗い物をしている母親が居た。どうやら病気が治ったみたいだ。インフルエンザの薬が効いて良かった。
グレーの半袖パーカーを着ている母親。もちろん僕が送った服だ。オレンジ色の長い髪によく似合っている。送った服は上着とシャツだけなので、履いている下のスカートは母親が持っていたもの。裾が膝上までなのは、ファッションなのか狩りで行動の妨げにならない為なのかは判らない。
ただ、よく似合ってるのは間違いない。
見た目は二十代前半に見える可愛い女性。でもミーナが十二歳前後だとすると三十代前後なのかもしれない。(意外とおばさん?)
「シュパッ!」
いきなり包丁差しからナイフを抜き取り、カメラ目線で半目になる母親。
(うわっ!ごめんなさい‥‥‥)
母親は頷きナイフを包丁差しに戻した。
これがラノベで俗に言う「定番」か。怖かったけどちょっとだけ嬉しい僕が居た。
僕は姉弟を探す為、視点を家の外にした。居たのはタルク。畑仕事ではなく、なにかやっている。よく見るとタルクから五メートルほど離れた位置の地面に棒を刺し、その棒の先に空き缶を被せているものが五本あった。
タルクはその空き缶目掛けて右手を突きだし構えていた。
「ファイアボール」
タルクの手のひらの先から拳大の火が現れ、バッティングセンターの低速くらいの速度で空き缶目掛けて飛んで行った。
僅かに外れて七メートルほど先で消滅する火の玉。悔しそうな顔をするタルク。
いや、凄ぇよタルク。
僕は初めて攻撃魔法を見て感動した。(ミーナの魔法?あれは調理だったからね)
それからタルクは五分ほど続けて魔法を放っていた。空き缶に当たったのは約三割ほど。疲れたのか魔力が少なくなったのか、不満げな顔をして地べたに座るタルクだった。
僕はここで「神のお告げ」を発動する。
『昼食後、過去を含めてお前達家族の事を詳しく教えてくれ。』
二十七文字。(今日は調子が悪い)
「判りました!あと神様、お母さん元気になりました。ありがとうございます。それと美味しいご飯と服も嬉しかったです!」
空に向かって大きな声で叫ぶタルク。何気にカメラ目線になっているのが素敵。
僕はモニターに向かって手を振り、次の場所に移動する。(歩いてないけどね)
目的は「神の施し」と残り一人を探す為。
本日の「神の施し」メニューは、食パン一斤、ピーナッツバター1瓶、調理済みの唐揚げタッパー1つと玉子焼きタッパー1つ。
さっき、桜子さんが持ってきてくれたものだ。
(桜子さん、ありがとう!)
桜子さんが作る唐揚げは、生姜とニンニクがアクセントの肉汁溢れる逸品だ。また、玉子焼きもだし巻きみたいに深い味わいでとても美味しいのだ。
ジュースは冷蔵庫にコーヒーしか残ってなかったので今回は入れていない。
アズール家族が元気でふっくらとするまでは継続して支援しよう。ただし、自立が最終目標なので生活基盤を整える事も合わせて協力していくつもりだ。
僕は「神の施し」で段ボール箱を台所のテーブルに送る。そして変換して「神のお告げ」をあと二回にして「神のお告げ」も発動した。
外で座り込んでいるタルクに。
『食べ物を送った。今日はこれだけだ。明日も少しだが送る。』
二十七文字。(ぐぬぬ、今日は駄目だな)
段ボール箱に気がついた母親は、感謝の祈りを捧げていた。そして段ボール箱の前に立つと、右手を天高く上げた。
(ええぇ!ま、まさか!!)
母親が天高く上げた右手。握り締めていた拳はまるで花開くように平手になった。
「ふんっ!」
まさかのパーチョップ。
(お前か!お前の遺伝子が原因なのか!)
何事も無いような顔をして、段ボール箱の蓋を開ける母親。
食パンを触り柔らかさを堪能し、ピーナッツバターの蓋を開け、鋭い手刀ですくい舐めた。そのあと唐揚げと玉子焼きのタッパーの蓋を開け、匂いを嗅ぐが首を傾げて蓋をした。
(そこもお前か!ミーナの天然ゴリ押し部分は全てお前の遺伝子が成せる技なのか!)
精神を疲労した僕は、一度癒しを求めて視点を家の外に持っていく。
(タルク~、僕はくじけそうだよ)
タルクは魔法の練習を再開していた。
僕はタルクが休憩するまで見守り英気を養った。(うん、元気になった)
そして僕は母親の遺伝子を濃く受け継いだ女の子を探す。残るは森か寝室か?ここから視点を森に向けて一回り見てみたが、見える範囲には見当たらない。
そして僕は視点を寝室に移した。
ベッドでスヤスヤと寝むる女の子。時刻は9時を過ぎていた。(引きこもりの僕が起きてるのにお前はいつまで寝てるんだ?)
ミーナの寝顔は僕が今まで見た中で、一番幸せそうな顔をしていた。そうだよな。お前は頑張ったよな。母親を支え弟を守ったミーナ。
お前が頑張ったから神様が助けてくれたんだ。僕はお前を尊敬する。性格の一部は否定するけどな!
僕は視点をミーナの足から顔まで二往復させてから視点を台所に変えた。(ごめんなさい)
母親は椅子に座って窓からタルクの様子を見ていた。その顔はとても優しい顔つきで綺麗だった。僕は少しだけ頬が赤くなる。
そしてその母親の手元には、首から上の部分が切り飛ばされたペットボトルがテーブルの上に置かれていた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
もうこれ以上なにも言うことはない。僕は少しだけ頬が青くなる。
(タルク~、僕を癒して~)
僕はベッド下に隠していたノートパソコンをテーブルの上に戻してモニターを見る。
時刻は朝8時過ぎ。視点は台所。
竈の横の流し台で洗い物をしている母親が居た。どうやら病気が治ったみたいだ。インフルエンザの薬が効いて良かった。
グレーの半袖パーカーを着ている母親。もちろん僕が送った服だ。オレンジ色の長い髪によく似合っている。送った服は上着とシャツだけなので、履いている下のスカートは母親が持っていたもの。裾が膝上までなのは、ファッションなのか狩りで行動の妨げにならない為なのかは判らない。
ただ、よく似合ってるのは間違いない。
見た目は二十代前半に見える可愛い女性。でもミーナが十二歳前後だとすると三十代前後なのかもしれない。(意外とおばさん?)
「シュパッ!」
いきなり包丁差しからナイフを抜き取り、カメラ目線で半目になる母親。
(うわっ!ごめんなさい‥‥‥)
母親は頷きナイフを包丁差しに戻した。
これがラノベで俗に言う「定番」か。怖かったけどちょっとだけ嬉しい僕が居た。
僕は姉弟を探す為、視点を家の外にした。居たのはタルク。畑仕事ではなく、なにかやっている。よく見るとタルクから五メートルほど離れた位置の地面に棒を刺し、その棒の先に空き缶を被せているものが五本あった。
タルクはその空き缶目掛けて右手を突きだし構えていた。
「ファイアボール」
タルクの手のひらの先から拳大の火が現れ、バッティングセンターの低速くらいの速度で空き缶目掛けて飛んで行った。
僅かに外れて七メートルほど先で消滅する火の玉。悔しそうな顔をするタルク。
いや、凄ぇよタルク。
僕は初めて攻撃魔法を見て感動した。(ミーナの魔法?あれは調理だったからね)
それからタルクは五分ほど続けて魔法を放っていた。空き缶に当たったのは約三割ほど。疲れたのか魔力が少なくなったのか、不満げな顔をして地べたに座るタルクだった。
僕はここで「神のお告げ」を発動する。
『昼食後、過去を含めてお前達家族の事を詳しく教えてくれ。』
二十七文字。(今日は調子が悪い)
「判りました!あと神様、お母さん元気になりました。ありがとうございます。それと美味しいご飯と服も嬉しかったです!」
空に向かって大きな声で叫ぶタルク。何気にカメラ目線になっているのが素敵。
僕はモニターに向かって手を振り、次の場所に移動する。(歩いてないけどね)
目的は「神の施し」と残り一人を探す為。
本日の「神の施し」メニューは、食パン一斤、ピーナッツバター1瓶、調理済みの唐揚げタッパー1つと玉子焼きタッパー1つ。
さっき、桜子さんが持ってきてくれたものだ。
(桜子さん、ありがとう!)
桜子さんが作る唐揚げは、生姜とニンニクがアクセントの肉汁溢れる逸品だ。また、玉子焼きもだし巻きみたいに深い味わいでとても美味しいのだ。
ジュースは冷蔵庫にコーヒーしか残ってなかったので今回は入れていない。
アズール家族が元気でふっくらとするまでは継続して支援しよう。ただし、自立が最終目標なので生活基盤を整える事も合わせて協力していくつもりだ。
僕は「神の施し」で段ボール箱を台所のテーブルに送る。そして変換して「神のお告げ」をあと二回にして「神のお告げ」も発動した。
外で座り込んでいるタルクに。
『食べ物を送った。今日はこれだけだ。明日も少しだが送る。』
二十七文字。(ぐぬぬ、今日は駄目だな)
段ボール箱に気がついた母親は、感謝の祈りを捧げていた。そして段ボール箱の前に立つと、右手を天高く上げた。
(ええぇ!ま、まさか!!)
母親が天高く上げた右手。握り締めていた拳はまるで花開くように平手になった。
「ふんっ!」
まさかのパーチョップ。
(お前か!お前の遺伝子が原因なのか!)
何事も無いような顔をして、段ボール箱の蓋を開ける母親。
食パンを触り柔らかさを堪能し、ピーナッツバターの蓋を開け、鋭い手刀ですくい舐めた。そのあと唐揚げと玉子焼きのタッパーの蓋を開け、匂いを嗅ぐが首を傾げて蓋をした。
(そこもお前か!ミーナの天然ゴリ押し部分は全てお前の遺伝子が成せる技なのか!)
精神を疲労した僕は、一度癒しを求めて視点を家の外に持っていく。
(タルク~、僕はくじけそうだよ)
タルクは魔法の練習を再開していた。
僕はタルクが休憩するまで見守り英気を養った。(うん、元気になった)
そして僕は母親の遺伝子を濃く受け継いだ女の子を探す。残るは森か寝室か?ここから視点を森に向けて一回り見てみたが、見える範囲には見当たらない。
そして僕は視点を寝室に移した。
ベッドでスヤスヤと寝むる女の子。時刻は9時を過ぎていた。(引きこもりの僕が起きてるのにお前はいつまで寝てるんだ?)
ミーナの寝顔は僕が今まで見た中で、一番幸せそうな顔をしていた。そうだよな。お前は頑張ったよな。母親を支え弟を守ったミーナ。
お前が頑張ったから神様が助けてくれたんだ。僕はお前を尊敬する。性格の一部は否定するけどな!
僕は視点をミーナの足から顔まで二往復させてから視点を台所に変えた。(ごめんなさい)
母親は椅子に座って窓からタルクの様子を見ていた。その顔はとても優しい顔つきで綺麗だった。僕は少しだけ頬が赤くなる。
そしてその母親の手元には、首から上の部分が切り飛ばされたペットボトルがテーブルの上に置かれていた。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
もうこれ以上なにも言うことはない。僕は少しだけ頬が青くなる。
(タルク~、僕を癒して~)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話
ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。
異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。
「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」
異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる