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プロローグ
転生したがいきなり出鼻を挫かれた
しおりを挟む「吾輩は孤児である、名前は言わない。」
なにバカなことを言っているんだと思ったことだろう。
自分でも何を言い出してるんだと疑問に思う。
しかし、現在絶賛ベッドのなかで身悶えしている最中のため変なことを言って現実逃避していないと寝込んでしまいそうなのである。
現在俺は先日10歳になったばかりの少年だ。
だがしかし、今ベッドで身悶えている原因を語るには今から体感で15年ほど前に遡ることになる。
前世で俺は地球という星の日本という国で生活をしていた。
当時15歳になり、高校受験も終え悠々と過ごしていたのだが、突然最後の親類である祖父が老衰で他界してしまった。
母は俺が生まれたあとに病気で、父は小学校に上がる前に交通事故によってこの世を去っていた。
俺は父方の祖父に引き取られ、以来ずっと祖父と二人で生きてきた。
祖父は引っ込み思案で内気な性格の俺を心配し、空手道場に通わせた。
しかし、友達ができることなくついに祖父が亡くなってしまった。
祖父の遺産は土地と家だけだったので、既に県外の高校に進学することが決まっている俺が持っているより他の人に使ってもらったほうが良いだろうと思い、全て売り払ってしまった。
それから5年ほど経ち大学三年生の正月、友達などなくましてや彼女など夢物語だと断定し、ボッチ街道を爆走していた時だった。
せっかく正月、それも元旦なのだからとスーパーで小分けにされているお餅と何個かの食材を買ってきて簡単なお雑煮を作って食べていた。
手抜きだったが思いの外美味しくできたので2杯目を食べていた時だった。
カタン、と自室のアパートのポストから音が聞こえてきた。
普段あまりにもボッチで人との関わりがないため、ポストに何かが届くなんてことはほとんどなかった。
かろうじて近くの飲食店からたまにクーポン付きのチラシが来るぐらいだが、それ以外では来たことがない。
普段であればまたチラシかと一蹴していただろう。
しかし!
今は元旦、それも徹夜でテレビを見ていたために時刻は早朝の8時を少し過ぎたころだった。
時間的にはあの伝説の『年賀状』というモノが届く時間帯だ。
これまでの人生において年賀状を貰ったことは1度もない、出す相手もいない。
しかし、今回はまさかという希望がある。
それは大学の図書館にいる一人の司書さんだ。
絶世の美女というわけではなかったが若く笑顔が可愛い女性であり、少なくない男子大学生が話しかけており、俺も密かに好意を抱いていた。
交わしたのは挨拶程度だが、もしかしたらあの子が俺に年賀状を出してくれたのではないか。
九分九厘有り得ないことだがそれでも僅かな期待を抱かずにはいられなかった。
一度期待してしまうともうそれを信じたいという気持ちが沸きだしてしまい、鼓動が早くなりドクンドクンと煩いほどの心臓の音が聴こえてくる。
汗がにじみ出て喉も乾いてきたため生唾を飲み込もうと喉をならす。
しかし、それがいけなかった。
よく考えよう、俺は今何を食べていた?
何を口に含んでいたのだ?
答えは、
食べていたのはお雑煮であり、口の中にあるのはまだよく噛んでいないお餅だった。
その事を忘れ飲み込んでしまったのだから当然のように喉につまる。
よく老人が餅を喉につまらせそれを家族が掃除機で吸いだして助けたという話を聞くが、残念ながら俺に家族は居らず、そもそも家にある掃除機はノズルのないタイプであるため自分ですい出すこともできない。
パニックになった俺は何とか餅を吐き出そうと右往左往したが遂に意識が朦朧としてきた。
しかし、せめてこうなった原因であるあの郵便物だけは確認しようとふらつきながら玄関のポストを確認する。
そこには確かにハガキが1つ存在していた。
俺は気力を振り絞ってハガキを確認する。
そこには
『松永浩介様』
と書かれていた。
俺はうっすらと涙を流し、倒れながら思った。
これ、お隣さんのやつや...と。
そしてとうとう意識が無くなり死んだと思っていたらいつの間にか何かよくわからない空間に立っていた。
いや、正確には足が着いている感覚がないので浮かんでいるのだが。
それより、死んだはずだがここはどこなのだろう。
もしかして死後の世界か?
などと考えていると
「ここは死後の魂が輪廻によって生まれ変わる直前の狭間の空間じゃよ」
突然老人の声が聞こえてくる。
「誰だ!?」
と声がした方に振り返ると。
「神さんじゃよー」
と呑気な声を出す柔らかい雰囲気のお爺さんが立っていた。
この老人は何者なのだろうか?
神さまということだが本当か?
神さまというがその神さまが俺に何の要件があるのだろうか?
「落ち着きなさい。ちゃんと説明するからのぅ」
色々な疑問を浮かべていると神さま(仮)からそう言われる。
説明してくれるなら良いかと直ぐに神さま(仮)に向き直る。
そして神さま(仮)は話し始めた。
話をまとめると、
ある日俺がいつも一人だということに気づいた。
最初の頃はいつか友達ができるだろうと思っていた。
しかし、何年たっても友達どころか知人と呼べる存在すら居るか怪しい。
あまりにも可哀想で俺に少し祝福を授けた。
そのお陰なのか少しずつではあるが大学の司書さんと近づいていった。
しかし、予想以上に俺のメンタルが弱かったことと配達みすという不幸が重なり俺は餅をつまらせ死んでしまった。
俺は説明のなかでボッチ、孤独、一人などという単語が出る度に心に甚大なダメージを負っていた。
自分で思う分には少しへこむくらいですむが、他人から改めて事実を突きつけられるととてもではないが耐えられなかった。
説明が終わり神さま(仮)が俺の方を見る頃には、俺は膝を折って両手をつき涙と鼻水で顔をグシャグシャにしながら泣いていた。
「な!?なんじゃ一体、どうしたのじゃ!?」
「おぉうぉう、ズビッ。ぅおぉうおう。」
あまりの号泣ぶりに神さま(仮)は狼狽えまくり、俺も説明しようと思ったが嗚咽が酷く全く言葉にならなかった。
いくらか時が経ち、落ち着いた俺が泣いたわけを話すと神さま(仮)は土下座せんばかりに謝ってきた。
しかし、俺も説明を求めたわけだし大丈夫だと言うと神さま(仮)はあからさまにほっとした顔になった。
良かった良かったと頷いていた神さま(仮)だったが、1つ咳をすると真面目な表情になった。
「さて、ここからが本題じゃが。お主、違う世界に記憶を持ったまま転生せんか?」
「記憶を持ったまま?」
「そうじゃ。実を言うとあまりにも他との縁がないと輪廻を巡ることに拒否反応を起こしてしまうことがあるのじゃ。そして拒否反応を起こした魂は今いるこの狭間の空間をさ迷い、遂には消滅してしまうのじゃ。」
「魂が、消滅?てことはもしかして俺もその拒否反応とやらが!?」
「安心せい、幸い拒否反応を起こしておらん。じゃが、ビミョーに危ないのでの。じゃから記憶を持ったまま転生することで積極的に人と関わり縁をもってもらうことで危険な状態を脱しようというわけじゃ。どうじゃ?」
正直どうじゃと言われても次の人生で縁がないと魂が消滅すると言われてるようなものだし、それに読んでいた小説のなかには異世界転生のものもあったので少しワクワクしてもいる。
なので、答えは1つだった。
「わかった。転生して次こそボッチを脱却するよ!」
「そうかそうか。ならばそうしようかの。おっと、それでは記憶を思い出す。のはいつ頃が良いとか希望はあるかの?」
記憶を思い出す時期か。
正直よく小説であるみたいに生まれてすぐとかだとおむつ交換という苦行が待っている。
逆にあまり遅すぎるともしかしたら犯罪者になってたなんてことがあるかもしれない。
「んー。間を取って10歳の時が良いかな?」
「わかったのじゃ。性別はそのままで良いかの?」
「当たり前だ!俺にそっちの趣味はない!」
「ホッホッ冗談じゃよ。おっとそうじゃ、さっき泣かせてしもうたお詫びもかねて1つだけ望みを叶えてやろうかの。何かないかの?」
「......俺だけの友達が欲しい」
「良かろう。ならばそろそろ転生してもらうとしようかの。」
口から出てきたその言葉に俺は地味にダメージを負って。
俺って咄嗟に友達が欲しいって言うほどボッチだったのかと。
「ではさらばじゃ!今度の人生は沢山の縁を持てるように祈っとくぞー」
またもや膝を折りかけていた俺をよそに神さま(仮)は俺を転生させた。
そして俺は先日前世の記憶を思い出し、そのときの反動で数日ほど寝込んでいたというわけだ。
ではなぜ冒頭、ベッドで身悶えていたかというと、それは今も俺の周囲に群がっている体長15cmほどの様々な色の髪をした小人がかんけいしている。
この小人、俺は精霊と呼んでいるのだが、どうやら俺にしか見えていないらしい。
そして、転生直前の俺の願いを神さま(仮)が叶えた結果そうなっていると思われる。
よくよく思い返してみれば俺が転生直前に願ったのは『俺だけの友達』である。
俺だけということは俺以外の存在とは友達になり得ない存在とも解釈できる。
恐らく神さま(仮)も多少苦労したのだろうと思う。なにせ、俺以外に存在を知られていないが確かに存在し、その上で俺と友達になりうる存在というのを探さなければならなかったのだから。
確かにこいつら精霊は多少イタズラ好きなところはあるが基本的に無害で無邪気、そして落ち込んでいるときには慰めてくれる優しい奴等だ。
しかし、少し考えてみて欲しい。
精霊とは俺だけが見ることができた存在であり、他の人間たちは見ることはもちろん感じることさえできないのだ。
そして俺は生まれたときから精霊がみえており、尚且つ前世の記憶が戻り判断能力などが付いたのは今朝起きたときだった。
つまりはだ、記憶が戻るまでの間の10年間、他人から見た普段の俺は誰もいないところに向かって話したり怒ったり笑ったりしている危ない子、気味の悪い子だったのだ!!
ゆえに、前世ではないこれまでの10年間で友達は一人もできていないという事実を突きつけられてしまったために俺は自分の浅慮さを嘆きベッドで身悶えていたのだ。
あぁ、これでは前世となにも変わらないじゃないか。
このままでは次の転生のときに輪廻に拒否反応を起こし生滅してしまうかもしれない。
「決めたぞ...俺は変わる、俺は世界中に友達を作ってやる!!」
後々気づいたが、ここで彼女が欲しいと言えないところが前世からの俺の悲しい性なのだろう...
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