2 / 2
第一章:世界を旅する準備
ベッドの中での現状確認
しおりを挟むさて、そろそろ落ち着いてきたし決意も新たにしたところなので現在までの10年間の状況を確認していこう。
まず俺の名前はアレクトス。
他の人からはアレクと呼ばれる。
なお、目を合わせて呼んでくれるのは大抵一人だけなんだけどね。
陰口ではよく呼ばれてるんだよな......は!?危ない危ない、危うくまた心に多大なるダメージを負ってしまうところだった。恐るべし、幼少期の俺の記憶!
さて、気を取り直して状況確認の続きをしよう。
今俺が住んでいるのは三つ存在する大陸のうち2番目に大きいドゥバイ大陸にあるメルヴィ王国だ。
メルヴィ王国は大陸のなかでは2番目に大きく、兵士も精強なため国境付近でなければ基本的に平和な国である。
また、西側は海に面し、南には鉱山が多数存在し、北は冬になると吹雪の厳しい時はあるが春になると雪は溶けてなくなりその水が起点となって国内を北から南まで枝分かれしながら流れていくため、農作に適した陸地が多く存在する資源豊かな国である。
しかし、その豊かさ故に東北に国境を接しているフォルムカ帝国から度々侵略戦争を仕掛けられているという。
そのため毎回少なくない数の孤児が生まれてしまい、王国はその孤児を国内の孤児院に分配する政策をとっている。
なぜそんなことを話したかというと俺自身5歳の時に住んでいた村が帝国との国境に近かったために戦争に巻き込まれ、孤児として南西にある中規模の街の孤児院に引き取られて来たのだ。
前世とあまり変わらない展開に既視感を覚えるが、既に前世でボッチを極めていた俺にとっては慣れたも...の......グハッ!?
しまった、またダメージを負ってしまった。
しかし俺は変わると誓ったのだ!
この程度でへこたれてなどいられない!!
そして孤児院にやって来た俺は五年間スクスクと育ち、先日満10歳になった日の朝に前世の記憶を思い出した反動で寝込んでいたというわけだ。
ん?
大陸の情勢ばかりで俺自身の説明が少ないって?
バカ言っちゃいけねぇなぁ...俺は今日までずっと生粋のボッチだぜ?
他の孤児と遊んだ記憶はないし、親兄弟もいやしねぇ。
それだけでなく、精霊と話していたために気味の悪い子と思われていた俺はほとんどの奴らから避けられていた。
ヤベッ、自分で言ってて泣きそうになってきた。
まあ正直こいつら精霊は俺の大切な友人たちであり恨みなんて更々ないんだけどな。
でもそれはそれ、これはこれだ。
気づいたときにはボッチ街道まっしぐらだったことは素直に悲しいです...うぅ。
しかし、そんな俺の心の支えというか唯一の縁が孤児院を経営しているシスターだった。
シスターは人族ではなく森の賢者と言われるエルフの女性で、前世の祖父のように俺に愛情を注いでくれる大切な存在だ。
まあ、見た目はしわくちゃの老人とピチピチの美女で全くの真逆だったが、それでも同じように愛情を向けてくれている。
ただ、エルフであるため実際の年齢は祖父以上かもしれないのだが、以前やって来た筋骨粒々な男性がぼこぼこにされていたのを目撃したため怖くて聞こうとは思えない。
さて、一応これまでの10年間をざっと確認できた。代償として残りのライフポイントは5くらいしか残っていないがな。
ここからは今後のことを考えていこう。
目的は世界中に友達を作ることだ、そのためには世界を旅しなければならないのだが、この世界は前世ほど治安が言い訳でもなく、また文明も遥かに遅れているため利便性は格段に劣っている。
そして一番の問題は魔物と呼ばれる生物の存在だ。
魔物は通常の野性動物とは違い体内に魔石と呼ばれる高密度の魔力結晶体があり、そのため常に好戦的で狂暴な性格をしているものが多く、特に街道沿いや森の中などの街から離れた場所では良く人が襲われている。
つまりは世界を旅するにはその魔物たちに負けない強さが絶対条件なのだ。
正直サバンナやアマゾンが可愛く思えるほどに危険な世界であるため、生半可な強さでは直ぐに死んでしまうだろう。
しかし、俺には希望があった。
それは...魔法だ!
そう、この世界には空想の産物だった魔法が存在するのだ!
これはもう魔法を極めるしかないだろう。
幸い、魔力の動かしかたや簡単な生活魔法の使い方はシスターから教えて貰っていたため、あとはそれを応用すればいいだろう。
まず、魔力は普段体の中心、心臓付近に停滞している。その魔力を感じとり、意識して動かすことが出来れば魔法を使うことができる。
生活魔法であれば短い詠唱を行うことで誰でも使うことができるが、戦闘用の魔法などの高度なものになると杖などの発動体や魔方陣等の媒体が必要になるらしい。
俺も以前に他の孤児たちと一緒にシスターから教わって魔法をつかえるのだが、1つ気がかりというか疑問があった。
それは、どんな人でも魔力を動かして体外に放出したときには周辺の精霊がその人物の方向を向くのだ。
そして、呪文の詠唱を始めると火なら赤髪の精霊が、水なら青い髪の精霊が近寄っていき、詠唱が終わり魔法名を言ったときに合わせて近寄っていった精霊が両手を魔法が発動する場所に向けているのだ。
ということはだ、もしかすると魔法とは魔力を使って精霊にお願いして発動するのではないだろうか?
まだ仮説にすぎないが、十分有り得ると思う。
そしてもしこの仮説が正しければ俺は他の人に比べて格段に有利になる可能性が高いのだ。
俺は胸の高鳴りを自覚しながら今日の現状確認の時に負った精神的なダメージを回復させようと眠りについたのだった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
天才魔導医の弟子~転生ナースの戦場カルテ~
けろ
ファンタジー
【完結済み】
仕事に生きたベテランナース、異世界で10歳の少女に!?
過労で倒れた先に待っていたのは、魔法と剣、そして規格外の医療が交差する世界だった――。
救急救命の現場で十数年。ベテラン看護師の天木弓束(あまき ゆづか)は、人手不足と激務に心身をすり減らす毎日を送っていた。仕事に全てを捧げるあまり、プライベートは二の次。周囲からの期待もプレッシャーに感じながら、それでも人の命を救うことだけを使命としていた。
しかし、ある日、謎の少女を救えなかったショックで意識を失い、目覚めた場所は……中世ヨーロッパのような異世界の路地裏!? しかも、姿は10歳の少女に若返っていた。
記憶も曖昧なまま、絶望の淵に立たされた弓束。しかし、彼女が唯一失っていなかったもの――それは、現代日本で培った高度な医療知識と技術だった。
偶然出会った獣人冒険者の重度の骨折を、その知識で的確に応急処置したことで、弓束の運命は大きく動き出す。
彼女の異質な才能を見抜いたのは、誰もがその実力を認めながらも距離を置く、孤高の天才魔導医ギルベルトだった。
「お前、弟子になれ。俺の研究の、良い材料になりそうだ」
強引な天才に拾われた弓束は、魔法が存在するこの世界の「医療」が、自分の知るものとは全く違うことに驚愕する。
「菌?感染症?何の話だ?」
滅菌の概念すらない遅れた世界で、弓束の現代知識はまさにチート級!
しかし、そんな彼女の常識をさらに覆すのが、師ギルベルトの存在だった。彼が操る、生命の根幹『魔力回路』に干渉する神業のような治療魔法。その理論は、弓束が知る医学の歴史を遥かに超越していた。
規格外の弟子と、人外の師匠。
二人の出会いは、やがて異世界の医療を根底から覆し、多くの命を救う奇跡の始まりとなる。
これは、神のいない手術室で命と向き合い続けた一人の看護師が、新たな世界で自らの知識と魔法を武器に、再び「救う」ことの意味を見つけていく物語。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる