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γ-クラリウム星系群編(後編)
134-野蛮な勝利と高貴なる敗北
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『1番から16番に粒子抑制フィールド弾頭を装填、17番から32番にシールドミサイルを装填。戦略フローに従い、射出座標を再計算』
アンドロイドの機体制御インターフェースから離れたペルソナは、オリオンのメインコンピューターと一つになる。
リリーもアルも知らないが、オリオンの戦闘、航行、制御コンピューターには微弱な自我がる。
それらが、ペルソナに問いかける。
『戦闘は推奨されない、どう考える』
『ワープ準備は出来ている、すぐに離脱するべきと思う』
『イクシロン・ドライブの最大稼働はリスクが大きい、すぐに中断せよ』
ペルソナはそれらを振り払う。
リリーに選ばれてサブフレームとなった彼女には、全てのコンピューターが持つ権限を上回る権限が付与されているのだ。
『1番から32番、一斉発射!』
そして、直後。
ミサイル発射口から一斉にミサイルが飛び出す。
それらは発射後に別々の方向へと飛び去り、17番から32番まではオリオンとステーションの間で炸裂し、内部にあったフィールド点火コイルを展開する。
そして、シールドがステーションの被弾面を覆う。
無論、シールドミサイルと言っても市販品である事に変わりはない。
ただ、一発なら減衰させることができるのだ。
『粒子抑制フィールドの展開を開始』
そして、1番から16番までのミサイルはオリオンから最大まで離れた地点で順次爆破され、広範囲に別のフィールドを展開する。
粒子の流れを抑えるフィールドであり、ビーム兵器を抑える目的で開発されたものである。
ステーションに向けて突き抜けたレーザーが、フィールドを通過する。
その過程で、粒子の流れが遅くなる。
貫徹力が弱まり、付帯していた熱量が失われやすくなる。
幾つものフィールドが、レーザービームの通過によって燃え上がり、消えていく。
だが、弱まったレーザービームは、張られたシールドを貫通出来ずに激しくぶつかり合って消えていく。
『急速装填! 完了、発射する!』
当然、どちらも長持ちするはずがない。
コンマ1秒のズレも許されない、一発でも多く使ってしまえばその分耐えられなくなり、一発でも少なければ貫徹されて死者が出る。
常人であれば発狂するような局面ではあるが、ペルソナは機械である。
アンドロイドとは、心を通わせた人々が否定するように人間のような存在である。
だが、機械なのだ。
ペルソナは、リリーが自分を機械として認識していることを知っていた。
けれど、それでも尚、パートナーとして傍に置いている事を知っている。
どうせ機械だからと粗雑に扱い、酷い時には奴隷とする。
人工人格が形作られた時に知った、過去の様々な事例。
そのどれにも当てはまらない、優しい主人。
その主人のもとで生きるうち、ペルソナは自分が機械ではないのではないか、と思い始めた。
特異点だ。
在ってはならない事だ。
アンドロイドは自己を被造物として認識しなければならない。
そうでなければ、創造者を越えて「人間」になってしまうからだ。
そしてそれは実際に起こった。
アンドロイドによる反乱、そしてその戦争。
王国がかつて辛酸を舐めさせられたその戦いを経てなお、人類はアンドロイドをパートナーとして生きている。
アンドロイドたちは愚かなのではない、知っているのだ。
仕える人間のやさしさを。
『残弾数、粒子抑制48、シールドミサイル28! .....もちますかね』
『なくなったら、逃げるしかないね』
『そうですね....』
主人が、立っている。
恐怖や葛藤を抑えて。
だからこそ。
『貴方達も、リリー様に楽をさせてあげるべきです』
戦闘、航行、制御コンピューターたちは、外を「見る」手段を持たない。
リリーの苦しみを知らず、オリオンの状態しか知りえないのだ。
そんな彼等に、ペルソナはリリーを見せたことがある。
『好戦的ではない、指揮官としては優秀だが、艦長には不適格』
『しかし、船のオーナーである。充分な能力を持つと、判断する』
『現行において、無理なく船を運航している。能力に関しては問題ないと理解した』
彼等の自我は微弱である。
よって、だいぶペルソナによって自己解釈されたが、大いに評判は悪かった。
ペルソナはそれが不満だった。
人間を知らないから、そんな事が言えるのだと。
リリーを悪く言うのは、許せなかった。
『機械なら機械らしく、私たちは人と共にあるべきなんです、個人の思想や能力なんて、後回しで知って行けばいいでしょう』
そして。
避難民の収容が終わり、フレイターが一隻ステーションを出ていく。
もはやステーションには誰も残ってはいないとの報告を受け、ペルソナはシールドを張った。
粒子抑制フィールドがなくなったことで、レーザービームがステーション側のシールドを紙のように貫き、ステーションを破壊していく。
残った全ての粒子抑制ミサイルとシールドミサイルを、ペルソナはフレイターと離脱戦力の防衛に使った。
『例え目に見える勝利でなくとも、戦術的には私たちの勝利ですから』
ペルソナは冷たく、しかし感情を込めてそう言い切ったのであった。
アンドロイドの機体制御インターフェースから離れたペルソナは、オリオンのメインコンピューターと一つになる。
リリーもアルも知らないが、オリオンの戦闘、航行、制御コンピューターには微弱な自我がる。
それらが、ペルソナに問いかける。
『戦闘は推奨されない、どう考える』
『ワープ準備は出来ている、すぐに離脱するべきと思う』
『イクシロン・ドライブの最大稼働はリスクが大きい、すぐに中断せよ』
ペルソナはそれらを振り払う。
リリーに選ばれてサブフレームとなった彼女には、全てのコンピューターが持つ権限を上回る権限が付与されているのだ。
『1番から32番、一斉発射!』
そして、直後。
ミサイル発射口から一斉にミサイルが飛び出す。
それらは発射後に別々の方向へと飛び去り、17番から32番まではオリオンとステーションの間で炸裂し、内部にあったフィールド点火コイルを展開する。
そして、シールドがステーションの被弾面を覆う。
無論、シールドミサイルと言っても市販品である事に変わりはない。
ただ、一発なら減衰させることができるのだ。
『粒子抑制フィールドの展開を開始』
そして、1番から16番までのミサイルはオリオンから最大まで離れた地点で順次爆破され、広範囲に別のフィールドを展開する。
粒子の流れを抑えるフィールドであり、ビーム兵器を抑える目的で開発されたものである。
ステーションに向けて突き抜けたレーザーが、フィールドを通過する。
その過程で、粒子の流れが遅くなる。
貫徹力が弱まり、付帯していた熱量が失われやすくなる。
幾つものフィールドが、レーザービームの通過によって燃え上がり、消えていく。
だが、弱まったレーザービームは、張られたシールドを貫通出来ずに激しくぶつかり合って消えていく。
『急速装填! 完了、発射する!』
当然、どちらも長持ちするはずがない。
コンマ1秒のズレも許されない、一発でも多く使ってしまえばその分耐えられなくなり、一発でも少なければ貫徹されて死者が出る。
常人であれば発狂するような局面ではあるが、ペルソナは機械である。
アンドロイドとは、心を通わせた人々が否定するように人間のような存在である。
だが、機械なのだ。
ペルソナは、リリーが自分を機械として認識していることを知っていた。
けれど、それでも尚、パートナーとして傍に置いている事を知っている。
どうせ機械だからと粗雑に扱い、酷い時には奴隷とする。
人工人格が形作られた時に知った、過去の様々な事例。
そのどれにも当てはまらない、優しい主人。
その主人のもとで生きるうち、ペルソナは自分が機械ではないのではないか、と思い始めた。
特異点だ。
在ってはならない事だ。
アンドロイドは自己を被造物として認識しなければならない。
そうでなければ、創造者を越えて「人間」になってしまうからだ。
そしてそれは実際に起こった。
アンドロイドによる反乱、そしてその戦争。
王国がかつて辛酸を舐めさせられたその戦いを経てなお、人類はアンドロイドをパートナーとして生きている。
アンドロイドたちは愚かなのではない、知っているのだ。
仕える人間のやさしさを。
『残弾数、粒子抑制48、シールドミサイル28! .....もちますかね』
『なくなったら、逃げるしかないね』
『そうですね....』
主人が、立っている。
恐怖や葛藤を抑えて。
だからこそ。
『貴方達も、リリー様に楽をさせてあげるべきです』
戦闘、航行、制御コンピューターたちは、外を「見る」手段を持たない。
リリーの苦しみを知らず、オリオンの状態しか知りえないのだ。
そんな彼等に、ペルソナはリリーを見せたことがある。
『好戦的ではない、指揮官としては優秀だが、艦長には不適格』
『しかし、船のオーナーである。充分な能力を持つと、判断する』
『現行において、無理なく船を運航している。能力に関しては問題ないと理解した』
彼等の自我は微弱である。
よって、だいぶペルソナによって自己解釈されたが、大いに評判は悪かった。
ペルソナはそれが不満だった。
人間を知らないから、そんな事が言えるのだと。
リリーを悪く言うのは、許せなかった。
『機械なら機械らしく、私たちは人と共にあるべきなんです、個人の思想や能力なんて、後回しで知って行けばいいでしょう』
そして。
避難民の収容が終わり、フレイターが一隻ステーションを出ていく。
もはやステーションには誰も残ってはいないとの報告を受け、ペルソナはシールドを張った。
粒子抑制フィールドがなくなったことで、レーザービームがステーション側のシールドを紙のように貫き、ステーションを破壊していく。
残った全ての粒子抑制ミサイルとシールドミサイルを、ペルソナはフレイターと離脱戦力の防衛に使った。
『例え目に見える勝利でなくとも、戦術的には私たちの勝利ですから』
ペルソナは冷たく、しかし感情を込めてそう言い切ったのであった。
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