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γ-クラリウム星系群編(後編)
138-復讐の片棒
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アルデランの話はマジで長かった。
とはいえ、要約するとこうだ。
アルデランは元々、フーデリア・アルターテックのCEOとして働いているが、元々は技術の最先端で責任者をやっていた立場であった。
彼は同じ研究の同志である妻を迎え、子をもうけたという。
そして、彼は妻を失った。
実験中の事故だという。
まあこの辺はいいか。
妻を失ってそれでも、彼はCEOに就任してまで、あの兵器を完成させたという。
軍部に融資を募ってまで。
その結果、元々は送電システムの送電パネルの一環だったものが、兵器になってしまった。
それを完成させて、あとは汎用性と量産性を高める段階であったという。
残された娘を育てた彼は、あの日はステーションに居たのだという。
たまの休日を過ごすため、娘を呼んで職場を案内していたという。
だが、襲撃が起こった。
口封じだと、アルデランは言っていた。
彼は娘と共に主力艦と艦隊で脱出したが、逃避行のすえに追いつかれ、最初の一撃で艦体の六割を喪失。
その時点で彼の娘は――――
「罰だと思ったよ、彼の口車に乗せられたのもそうだが、私はとっくの昔に諦めておくべきだったんだ」
「あの兵器の完成を?」
「そうだとも、フフフ、終わってから気付くとは私も人間か」
アルデランは部下たちに見送られ、シャトルに乗り込んだ。
そして、彼は独りになった。
俺は同情できなかったが、しかし同時に安堵してもいた。
ここに座って、俺の淹れた茶を飲んでいるのは、一人の男なのだと。
血も涙もない機械のような、悪の枢軸ではないのだ。
そう思うだけで、随分話しやすい。
その後、俺はオブリビオン艦隊と交戦したことをアルデランに明かした。
彼の表情は、笑えるほどに驚愕一色だった。
「.....冗談、ではないだろうね。しかし、オブリビオンの弱点とは相性が良い。」
「あまり驚かないのですね」
「この歳になると、驚くのに使うエネルギーも勿体ないのだよ」
彼は肩をすくめると、自分の携帯端末を操作して、俺の携帯端末に何かを送ってきた。
とてつもなく長い上に、グラフやら専門用語が大量に使われていて読めない。
「私の部下が執筆した報告書だ、君の所のアンドロイドなら読めるだろう」
「ありがとうございます」
「まあ、分かりやすく言うのであれば――――あの船はね、かなり無茶な構造をしているんだよ、笑えるほどにね....見てみるといい」
俺の所に、改造後の設計図が転送されてくる。
見れば、素人目でもわかる。
確かにギッチギチだ。
一つの主力艦でやりたい事を全部詰め込んだ結果なんだろうな。
「よって、主砲と荷電粒子砲のヒートシンク....冷却槽が、シールドジェネレーターのヒートシンクと隣接しているんだよ.....ハッハッハッハ!!」
「何がおかしいんです?」
「主力艦ですら耐えられなかったのに、この船なら耐えられるというじゃないか」
アルデランは身を乗り出し、俺の目に視線を合わせてきた。
一瞬、センチネルに制圧するように命じようかと思った。
だが、彼からは敵意が感じられ無い。
「いいだろう、全て賭けよう。私がこの船に敵を引き付けてやろう、耐えられるのだろう? ろくに他人の技術を使う智慧のない猿共に、私の娘を殺した罰を受けてもらおうではないかね?」
「いやに協力的ですね」
「いやなに、実を言うと私は君がかわいくて仕方ない」
「.....セクハラですか?」
「言っただろう、娘に瓜二つだ。髪と目の色だけだな、違うのは」
「そんなに」
アルデランは不敵に笑った。
「いいかね、35分間連続で射撃を続ければ、理論値ではヒートシンクの温度は五千度に達する、それだけの熱があれば、遮蔽板も役には立たない。周囲に熱漏れが発生し、シールドジェネレーターのヒートシンクも熱を受ける。そこから5分耐えれば、シールドジェネレーターはオーバーヒートして劣化、もしくはシールドが消失するだろう」
「では、40分耐えればいいと?」
「そうだ、そして、付帯している艦隊も同様だ。荷電粒子砲を一回撃てば、耐えるのに必要な時間は12分縮まるはずだ」
流石に元は技術者か。
曖昧なことは言わない筈だ。
「私が囮になろう、あの愚図ならば、私が生きていれば必ず殺しに来る。これが、私を死から救ってくれた君への私の贈れる最大の報酬だ」
アルデランは、佇まいを直してそう言ったのだった。
とはいえ、要約するとこうだ。
アルデランは元々、フーデリア・アルターテックのCEOとして働いているが、元々は技術の最先端で責任者をやっていた立場であった。
彼は同じ研究の同志である妻を迎え、子をもうけたという。
そして、彼は妻を失った。
実験中の事故だという。
まあこの辺はいいか。
妻を失ってそれでも、彼はCEOに就任してまで、あの兵器を完成させたという。
軍部に融資を募ってまで。
その結果、元々は送電システムの送電パネルの一環だったものが、兵器になってしまった。
それを完成させて、あとは汎用性と量産性を高める段階であったという。
残された娘を育てた彼は、あの日はステーションに居たのだという。
たまの休日を過ごすため、娘を呼んで職場を案内していたという。
だが、襲撃が起こった。
口封じだと、アルデランは言っていた。
彼は娘と共に主力艦と艦隊で脱出したが、逃避行のすえに追いつかれ、最初の一撃で艦体の六割を喪失。
その時点で彼の娘は――――
「罰だと思ったよ、彼の口車に乗せられたのもそうだが、私はとっくの昔に諦めておくべきだったんだ」
「あの兵器の完成を?」
「そうだとも、フフフ、終わってから気付くとは私も人間か」
アルデランは部下たちに見送られ、シャトルに乗り込んだ。
そして、彼は独りになった。
俺は同情できなかったが、しかし同時に安堵してもいた。
ここに座って、俺の淹れた茶を飲んでいるのは、一人の男なのだと。
血も涙もない機械のような、悪の枢軸ではないのだ。
そう思うだけで、随分話しやすい。
その後、俺はオブリビオン艦隊と交戦したことをアルデランに明かした。
彼の表情は、笑えるほどに驚愕一色だった。
「.....冗談、ではないだろうね。しかし、オブリビオンの弱点とは相性が良い。」
「あまり驚かないのですね」
「この歳になると、驚くのに使うエネルギーも勿体ないのだよ」
彼は肩をすくめると、自分の携帯端末を操作して、俺の携帯端末に何かを送ってきた。
とてつもなく長い上に、グラフやら専門用語が大量に使われていて読めない。
「私の部下が執筆した報告書だ、君の所のアンドロイドなら読めるだろう」
「ありがとうございます」
「まあ、分かりやすく言うのであれば――――あの船はね、かなり無茶な構造をしているんだよ、笑えるほどにね....見てみるといい」
俺の所に、改造後の設計図が転送されてくる。
見れば、素人目でもわかる。
確かにギッチギチだ。
一つの主力艦でやりたい事を全部詰め込んだ結果なんだろうな。
「よって、主砲と荷電粒子砲のヒートシンク....冷却槽が、シールドジェネレーターのヒートシンクと隣接しているんだよ.....ハッハッハッハ!!」
「何がおかしいんです?」
「主力艦ですら耐えられなかったのに、この船なら耐えられるというじゃないか」
アルデランは身を乗り出し、俺の目に視線を合わせてきた。
一瞬、センチネルに制圧するように命じようかと思った。
だが、彼からは敵意が感じられ無い。
「いいだろう、全て賭けよう。私がこの船に敵を引き付けてやろう、耐えられるのだろう? ろくに他人の技術を使う智慧のない猿共に、私の娘を殺した罰を受けてもらおうではないかね?」
「いやに協力的ですね」
「いやなに、実を言うと私は君がかわいくて仕方ない」
「.....セクハラですか?」
「言っただろう、娘に瓜二つだ。髪と目の色だけだな、違うのは」
「そんなに」
アルデランは不敵に笑った。
「いいかね、35分間連続で射撃を続ければ、理論値ではヒートシンクの温度は五千度に達する、それだけの熱があれば、遮蔽板も役には立たない。周囲に熱漏れが発生し、シールドジェネレーターのヒートシンクも熱を受ける。そこから5分耐えれば、シールドジェネレーターはオーバーヒートして劣化、もしくはシールドが消失するだろう」
「では、40分耐えればいいと?」
「そうだ、そして、付帯している艦隊も同様だ。荷電粒子砲を一回撃てば、耐えるのに必要な時間は12分縮まるはずだ」
流石に元は技術者か。
曖昧なことは言わない筈だ。
「私が囮になろう、あの愚図ならば、私が生きていれば必ず殺しに来る。これが、私を死から救ってくれた君への私の贈れる最大の報酬だ」
アルデランは、佇まいを直してそう言ったのだった。
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