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Δ-ハスラパル戦域編(後編)
197-バカンスへ
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「いよいよ出発だね」
「そうですね」
俺はブリッジに上がって、そう宣言する。
目的地はアトリウス星系群、大観光星系群とも呼ばれる中で中流階級の観光地であるスリマラン星系へ向かう。
そこで観光と療養を兼ねて、暫く過ごすつもりだ。
「旅路を気にする必要がなくなったのは、歓迎するべきなのか、歓迎すべからざる事なのか分からないね」
「でも、海賊に襲われないよ?」
「まあね」
旅の風情はなくなってしまった。
ただ、海賊に襲われないというのは最高だな。
殺されるのも、殺すのも勘弁して欲しい。
「ジャンプドライブ航行に問題は?」
「ありません、ジャンプ終了後燃料残量が30%以下になってしまいますが、すぐに影響はないでしょう」
ジャンプドライブは、恒星からの光で距離を計測して座標を割り出す。
だから、その恒星系からの光が届くなら、航行距離は理論上は無限大に引き伸ばされる。
「流石に滞在し過ぎたからね、とりあえず行くだけ行こう」
「ええ」
ステーションの管理側からせっつかれているのは事実だ。
俺たちは確かに貢献はしたが、英雄でも何でもないんだからな。
リスペクトする必要も優遇する必要もなく、仕事が終わればただの輸送業者の一人だ。
「ワープを開始します」
周辺に船がいると巻き込むかもしれないので、俺たちは一度ワープを挟む。
申し訳ないとは思うのだが、空白地帯の座標は一応記録してある。
使ったあとはしっかり消すので、問題はないと信じたいが。
「向こうで何しようかな」
「最初の二週間は療養とリハビリテーションですよ」
「わかってるよ」
予算は200万MSCで、それだけあれば二か月は遊べる。
軍からの報酬で1.6億だったが、その後カストル伯爵家とサタマイラ伯爵家の両方からそれぞれ5億MSCずつ振り込まれて11.6億MSCになった。
幾らなんでも報酬が高すぎないかと思ったが、ジュディ曰く、
『Judy:最悪、サタマイラ伯爵家の責任問題に発展してしまう可能性がありました。名前は明かせませんが、とある家の謀略によるものです。本来は指名依頼でも報酬は最大1~4億MSC程ですから、1億MSCは我々の誠意と思ってもらって構いません』
との事だった。
俺の知らないところで、大きな陰謀があったそうだ。
その陰謀は、最悪サタマイラ伯爵を大きく追い詰めるもので、俺が支援物資を届けたことで、「カストル伯爵家にサタマイラ伯爵家が依頼し、前線に物資を届けられた」という事になったそうだ。
カストル伯爵家とサタマイラ伯爵家の間にどんな関係があるかは知らないが、貸し借りはこれで両家のみとなり、「とある家」とその黒幕、腰巾着たちはまとめて大損、という訳だろう。
両家で5億MSCで巨大な陰謀をはねのけられたと思えば、安い物なのかもな。
だが、同時にこれはカストル伯爵家からは口止め料、サタマイラ伯爵家からは手切れ金と見るべきだな。
これをネタに強請ったり、恩着せがましく厚遇を迫ったりすれば怒りを買う、という事だろう。
金は手に入ったが、コネは以前と変わらず――――そういう訳だな。
命懸けの対価としてはちょっと安いかもだが、
「(コレは貰えたからいいか)」
俺が精神的に参った事を知ったフレデリカ・カストル個人からの、とあるものの贈与。
それはとても嬉しいもので、金には換えられないものだ。
もちろん、俺の商売に役立つとか、困った時の印籠とか、そういう類のものじゃない。
誰だって金さえ積めば贈れる、ささやかで強力なものだ。
「座標算出完了、誤差はプラスマイナス0.5AU内に抑えました。ジャンプドライブ使用の許可を」
「ジャンプフェーズに移行して」
「了解」
前回はじっくり見る暇もなかったからな。
俺は進路上に開いた眩い穴を、その眼でしっかりと捉えた。
さあ、楽しいバカンスの始まりだ。
「そうですね」
俺はブリッジに上がって、そう宣言する。
目的地はアトリウス星系群、大観光星系群とも呼ばれる中で中流階級の観光地であるスリマラン星系へ向かう。
そこで観光と療養を兼ねて、暫く過ごすつもりだ。
「旅路を気にする必要がなくなったのは、歓迎するべきなのか、歓迎すべからざる事なのか分からないね」
「でも、海賊に襲われないよ?」
「まあね」
旅の風情はなくなってしまった。
ただ、海賊に襲われないというのは最高だな。
殺されるのも、殺すのも勘弁して欲しい。
「ジャンプドライブ航行に問題は?」
「ありません、ジャンプ終了後燃料残量が30%以下になってしまいますが、すぐに影響はないでしょう」
ジャンプドライブは、恒星からの光で距離を計測して座標を割り出す。
だから、その恒星系からの光が届くなら、航行距離は理論上は無限大に引き伸ばされる。
「流石に滞在し過ぎたからね、とりあえず行くだけ行こう」
「ええ」
ステーションの管理側からせっつかれているのは事実だ。
俺たちは確かに貢献はしたが、英雄でも何でもないんだからな。
リスペクトする必要も優遇する必要もなく、仕事が終わればただの輸送業者の一人だ。
「ワープを開始します」
周辺に船がいると巻き込むかもしれないので、俺たちは一度ワープを挟む。
申し訳ないとは思うのだが、空白地帯の座標は一応記録してある。
使ったあとはしっかり消すので、問題はないと信じたいが。
「向こうで何しようかな」
「最初の二週間は療養とリハビリテーションですよ」
「わかってるよ」
予算は200万MSCで、それだけあれば二か月は遊べる。
軍からの報酬で1.6億だったが、その後カストル伯爵家とサタマイラ伯爵家の両方からそれぞれ5億MSCずつ振り込まれて11.6億MSCになった。
幾らなんでも報酬が高すぎないかと思ったが、ジュディ曰く、
『Judy:最悪、サタマイラ伯爵家の責任問題に発展してしまう可能性がありました。名前は明かせませんが、とある家の謀略によるものです。本来は指名依頼でも報酬は最大1~4億MSC程ですから、1億MSCは我々の誠意と思ってもらって構いません』
との事だった。
俺の知らないところで、大きな陰謀があったそうだ。
その陰謀は、最悪サタマイラ伯爵を大きく追い詰めるもので、俺が支援物資を届けたことで、「カストル伯爵家にサタマイラ伯爵家が依頼し、前線に物資を届けられた」という事になったそうだ。
カストル伯爵家とサタマイラ伯爵家の間にどんな関係があるかは知らないが、貸し借りはこれで両家のみとなり、「とある家」とその黒幕、腰巾着たちはまとめて大損、という訳だろう。
両家で5億MSCで巨大な陰謀をはねのけられたと思えば、安い物なのかもな。
だが、同時にこれはカストル伯爵家からは口止め料、サタマイラ伯爵家からは手切れ金と見るべきだな。
これをネタに強請ったり、恩着せがましく厚遇を迫ったりすれば怒りを買う、という事だろう。
金は手に入ったが、コネは以前と変わらず――――そういう訳だな。
命懸けの対価としてはちょっと安いかもだが、
「(コレは貰えたからいいか)」
俺が精神的に参った事を知ったフレデリカ・カストル個人からの、とあるものの贈与。
それはとても嬉しいもので、金には換えられないものだ。
もちろん、俺の商売に役立つとか、困った時の印籠とか、そういう類のものじゃない。
誰だって金さえ積めば贈れる、ささやかで強力なものだ。
「座標算出完了、誤差はプラスマイナス0.5AU内に抑えました。ジャンプドライブ使用の許可を」
「ジャンプフェーズに移行して」
「了解」
前回はじっくり見る暇もなかったからな。
俺は進路上に開いた眩い穴を、その眼でしっかりと捉えた。
さあ、楽しいバカンスの始まりだ。
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