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サブストーリー01:悠久の移民船アジスロア
サブストーリー001:悠久の移民船アジスロア(後編)
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二時間後。
物資の受け渡しが終了し、移民船側のハッチが閉じた。
「どうやら、私達の前には誰も来なかったらしいね」
「光速航行技術があっても、やはり命懸けなのでしょうね」
向こうの支配者層とも会話が出来た。
どうも、本来想定されていたモデルとはかなり異なる歴史を辿っていたようだ。
百二十年前に隕石との衝突で支配者と船の外殻と居住区の二割を失い、その修理を五十年かけて終え、対等な関係が段々とリーダーを求める形になって行ったらしい。
物資は基本的には隕石を回収して掘削して金属を得るだけで、タンパク質はいずれ限度が来る予定だったらしい。
彼等の旅路は残り百四十年。
俺たちが死んだ後も、彼等は旅を続けるんだろう、それより前に帝国が滅んで、誰も彼等を出迎えなかったとしても。
俺はその可能性は口にしなかった。
彼等を待ってくれている人がいると、伝えてほしいと頼まれていたからだ。
「さて、そろそろアルを起こそうかな」
「ええ、賛成です」
船内時間は九時、もう起床時間をだいぶ過ぎている。
俺はペルソナに命じる。
「よし、これよりポロイネ星系のゲートステーションへ向かうよ」
「了解です!」
移民船を離れたオリオンは、ワープへと入る。
それを見越して俺は席を立った。
「....よろしかったのですか?」
管制室に声が響く。
招集に素早く応じた十二の元老のうちの一人に、航海長が尋ねた形である。
「それは、どういう意味かな?」
「......中にお招きし、もう少し情報を集められてはと」
「感染対策もある、それに余計な動きをすれば、内乱を誘発しかねない」
「.....」
航海長は、遥か先へワープして消えたオリオンの姿を見た。
彼等が生まれてもいなかった時代、その時代の宇宙船からは考えられないような姿だ。
おまけに、消えたのだ。
遮蔽装置か、ワープかは彼等には判断できない。
「全ては着いた後に考えればいい、メッセージもそれまでとっておきなさい」
「分かりました」
届いたメッセージについては、代表してこの元老が拝聴した。
それを記録に残し、下々には周知しないことを彼は決断していた。
得た物資も食糧も、放棄されていた区画に存在していた生きた物資貯蔵庫を見つけたという事にする予定であった。
「なぜ、隠すのでしょうか」
「我々には過ぎたるものだよ、知っても仕方がない」
外への関心があったところで、彼等にはどうしようもないのだ。
光速航行技術が存在しない以上は、この船から出たところでどこにも行けない。
「ところで、あの人綺麗でしたね」
「ああ、全くだ」
航海長は諦めて話題を逸らす。
通信に映った、美女の話を始めたのだ。
元老もそれに同意した。
厳しい環境では、あのように美麗になる事は難しいので、彼等にとっては大変に本能を刺激される相手であった。
「記録を残しておくべきだろうな、あとで情報官に頼もう」
「はい」
彼等は大変に仲がいい。
公私混同をしないだけで、管制塔から出る事の出来ない彼等彼女等は、常に仲がいい。
元老も同様だ、そこに意見の違いはあれど、最後には手を携えることができる。
一度の航海の中止を挟み、アスロジアの到着は百九十七年後となった。
ポロイネⅧの住民たちは謎の女神像を信奉する信徒となった箱舟の住人たちに尻込みしつつも、遠き時代からの移民を受け入れた。
現在――――彼等の旅はいまだに終わらないが、その未来は決して暗いものではないのであった。
物資の受け渡しが終了し、移民船側のハッチが閉じた。
「どうやら、私達の前には誰も来なかったらしいね」
「光速航行技術があっても、やはり命懸けなのでしょうね」
向こうの支配者層とも会話が出来た。
どうも、本来想定されていたモデルとはかなり異なる歴史を辿っていたようだ。
百二十年前に隕石との衝突で支配者と船の外殻と居住区の二割を失い、その修理を五十年かけて終え、対等な関係が段々とリーダーを求める形になって行ったらしい。
物資は基本的には隕石を回収して掘削して金属を得るだけで、タンパク質はいずれ限度が来る予定だったらしい。
彼等の旅路は残り百四十年。
俺たちが死んだ後も、彼等は旅を続けるんだろう、それより前に帝国が滅んで、誰も彼等を出迎えなかったとしても。
俺はその可能性は口にしなかった。
彼等を待ってくれている人がいると、伝えてほしいと頼まれていたからだ。
「さて、そろそろアルを起こそうかな」
「ええ、賛成です」
船内時間は九時、もう起床時間をだいぶ過ぎている。
俺はペルソナに命じる。
「よし、これよりポロイネ星系のゲートステーションへ向かうよ」
「了解です!」
移民船を離れたオリオンは、ワープへと入る。
それを見越して俺は席を立った。
「....よろしかったのですか?」
管制室に声が響く。
招集に素早く応じた十二の元老のうちの一人に、航海長が尋ねた形である。
「それは、どういう意味かな?」
「......中にお招きし、もう少し情報を集められてはと」
「感染対策もある、それに余計な動きをすれば、内乱を誘発しかねない」
「.....」
航海長は、遥か先へワープして消えたオリオンの姿を見た。
彼等が生まれてもいなかった時代、その時代の宇宙船からは考えられないような姿だ。
おまけに、消えたのだ。
遮蔽装置か、ワープかは彼等には判断できない。
「全ては着いた後に考えればいい、メッセージもそれまでとっておきなさい」
「分かりました」
届いたメッセージについては、代表してこの元老が拝聴した。
それを記録に残し、下々には周知しないことを彼は決断していた。
得た物資も食糧も、放棄されていた区画に存在していた生きた物資貯蔵庫を見つけたという事にする予定であった。
「なぜ、隠すのでしょうか」
「我々には過ぎたるものだよ、知っても仕方がない」
外への関心があったところで、彼等にはどうしようもないのだ。
光速航行技術が存在しない以上は、この船から出たところでどこにも行けない。
「ところで、あの人綺麗でしたね」
「ああ、全くだ」
航海長は諦めて話題を逸らす。
通信に映った、美女の話を始めたのだ。
元老もそれに同意した。
厳しい環境では、あのように美麗になる事は難しいので、彼等にとっては大変に本能を刺激される相手であった。
「記録を残しておくべきだろうな、あとで情報官に頼もう」
「はい」
彼等は大変に仲がいい。
公私混同をしないだけで、管制塔から出る事の出来ない彼等彼女等は、常に仲がいい。
元老も同様だ、そこに意見の違いはあれど、最後には手を携えることができる。
一度の航海の中止を挟み、アスロジアの到着は百九十七年後となった。
ポロイネⅧの住民たちは謎の女神像を信奉する信徒となった箱舟の住人たちに尻込みしつつも、遠き時代からの移民を受け入れた。
現在――――彼等の旅はいまだに終わらないが、その未来は決して暗いものではないのであった。
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