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シーズン4-ビージアイナ侵攻編
087-BLACKBIRD
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その頃。
ガレスを旗艦とする第五分隊は、ジャンプ先の宙域に展開していた。
既に第三分隊が交戦状態に入っており、ガレス内部の天空騎士団は緊張に包まれていた。
「”腕太”はこの戦いについていけるのか?」
「大丈夫さ、お前こそ”板材”で撃ち落とされないようにな」
獣人たちは、自分たちの乗る戦闘機の正式名称を知らない。
それゆえに、互いに戦闘機に名称を付けあっていた。
「..........」
その様子を見ていたのは、紺色の髪の少年だった。
頭の上には、兎のものらしい長い耳が生えている。
「何が腕太、板材だ、馬鹿らしい」
少年の名はアズル。
両親を戦争で亡くし、食いぶちが得られるのならと天空騎士団に志願。
しかしながら、その耳のせいで通常のレシーバーが身に着けられず、整備士となった獣人である。
「あれは”ファウヌス”。腕太なんてダサい名前じゃない。あれも”エインハージ”、板材なんかじゃない」
アズルは呟きながら、自分の手で耳を畳んで格納庫を歩く。
彼は整備士だが、実際の戦闘においては少し違う役割を担っている。
レシーバーが装備できない以上、通信を受けながらドッグファイトを繰り広げる通常の艦載機には乗れない。
そう、通常の艦載機には。
「おい、あれ....アズルじゃねーか?」
「まったく....調子に乗りすぎだ、シン様に特別な機体を与えられておきながら。それが温情だと分かりもせんのか」
アズルはあまり歓迎されていなかった。
シンとしては適材適所の配置をしたつもりだったが、この目つきの悪い少年は、獣人の中では華奢な体つきもあって、人望があまりないのだ。
「.........」
「あっ、アズル!」
その時。
吹き抜けを歩いていたアズルは、前からかかった声に意識を向ける。
「.......レンファ、どうした?」
「キミの機体、整備終わったよ」
前から現れたのは、瑠璃色の髪の少女だった。
兎の耳を持ち、真珠のような瞳を持つ彼女も、作業服に身を包んでいるが――――その胸は明らかにサイズがあっておらず、その豊かな体型に服のあちこちが悲鳴を上げていた。
「....ああ、そうか」
アズルは目のやり場に困って、彼女の横をそそくさと通り抜けた。
「頑張ってね」
「もちろんだ」
アズルは特殊格納庫へと入る。
そこにあったのは......
「ああ......やっぱり、いつ見ても綺麗だ」
アズルはその機体を見つめる。
それは、シンから下賜された、CBX-0001 スワロー・エッジ型隠密型戦闘機『ブラックバード』。
その特色は何といっても、隠密に特化した兵装である。
すべての信号と熱エネルギーを遮断した状態で遮蔽し、戦場においてその真っ黒の装甲で宇宙の夜闇に紛れる事が出来るのだ。
「.......」
アズルはしばらく恍惚としていたが、それを打ち破るようにアナウンスが響く。
『旗艦ガレス及び全第五分隊艦隊へ通達。これより戦闘宙域に突入する。全艦第一級戦闘配置、戦闘員は直ちに発進準備を完了せよ。繰り返す、戦闘員は直ちに発進準備を完了せよ。30秒後にワープへ入る。足場が不安定な場所にいるものは直ちに退避せよ』
アナウンスの後、ガレス艦内は一気に騒がしくなる。
アズルはその喧騒に顔をしかめる。
その耳がすべて拾ってしまうからだ。
だからこそ。
「はっ!」
アズルはブラックバードのコックピットに飛び込む。
席の横にあるレバーを倒すと、重いキャノピーが閉じて――――静寂が訪れる。
アズルは少し笑う。
この瞬間が少しだけ気に入っているのだ。
「機関始動」
アズルはコックピットのトグルスイッチを逆側に倒し、システムを起動させる。
それと同時にプリセットの起動パターンが入力され、クアンタムコアワープドライブが唸りを上げる。
人間の可聴域ではない音から始まる起動音を、アズルは気に入っていた。
それが、この役割に志願した理由でもあるからだ。
『ガレス、ワープ軌道に移行。備えよ』
こうして、艦隊は渦中へと飛び込むのだった。
ガレスを旗艦とする第五分隊は、ジャンプ先の宙域に展開していた。
既に第三分隊が交戦状態に入っており、ガレス内部の天空騎士団は緊張に包まれていた。
「”腕太”はこの戦いについていけるのか?」
「大丈夫さ、お前こそ”板材”で撃ち落とされないようにな」
獣人たちは、自分たちの乗る戦闘機の正式名称を知らない。
それゆえに、互いに戦闘機に名称を付けあっていた。
「..........」
その様子を見ていたのは、紺色の髪の少年だった。
頭の上には、兎のものらしい長い耳が生えている。
「何が腕太、板材だ、馬鹿らしい」
少年の名はアズル。
両親を戦争で亡くし、食いぶちが得られるのならと天空騎士団に志願。
しかしながら、その耳のせいで通常のレシーバーが身に着けられず、整備士となった獣人である。
「あれは”ファウヌス”。腕太なんてダサい名前じゃない。あれも”エインハージ”、板材なんかじゃない」
アズルは呟きながら、自分の手で耳を畳んで格納庫を歩く。
彼は整備士だが、実際の戦闘においては少し違う役割を担っている。
レシーバーが装備できない以上、通信を受けながらドッグファイトを繰り広げる通常の艦載機には乗れない。
そう、通常の艦載機には。
「おい、あれ....アズルじゃねーか?」
「まったく....調子に乗りすぎだ、シン様に特別な機体を与えられておきながら。それが温情だと分かりもせんのか」
アズルはあまり歓迎されていなかった。
シンとしては適材適所の配置をしたつもりだったが、この目つきの悪い少年は、獣人の中では華奢な体つきもあって、人望があまりないのだ。
「.........」
「あっ、アズル!」
その時。
吹き抜けを歩いていたアズルは、前からかかった声に意識を向ける。
「.......レンファ、どうした?」
「キミの機体、整備終わったよ」
前から現れたのは、瑠璃色の髪の少女だった。
兎の耳を持ち、真珠のような瞳を持つ彼女も、作業服に身を包んでいるが――――その胸は明らかにサイズがあっておらず、その豊かな体型に服のあちこちが悲鳴を上げていた。
「....ああ、そうか」
アズルは目のやり場に困って、彼女の横をそそくさと通り抜けた。
「頑張ってね」
「もちろんだ」
アズルは特殊格納庫へと入る。
そこにあったのは......
「ああ......やっぱり、いつ見ても綺麗だ」
アズルはその機体を見つめる。
それは、シンから下賜された、CBX-0001 スワロー・エッジ型隠密型戦闘機『ブラックバード』。
その特色は何といっても、隠密に特化した兵装である。
すべての信号と熱エネルギーを遮断した状態で遮蔽し、戦場においてその真っ黒の装甲で宇宙の夜闇に紛れる事が出来るのだ。
「.......」
アズルはしばらく恍惚としていたが、それを打ち破るようにアナウンスが響く。
『旗艦ガレス及び全第五分隊艦隊へ通達。これより戦闘宙域に突入する。全艦第一級戦闘配置、戦闘員は直ちに発進準備を完了せよ。繰り返す、戦闘員は直ちに発進準備を完了せよ。30秒後にワープへ入る。足場が不安定な場所にいるものは直ちに退避せよ』
アナウンスの後、ガレス艦内は一気に騒がしくなる。
アズルはその喧騒に顔をしかめる。
その耳がすべて拾ってしまうからだ。
だからこそ。
「はっ!」
アズルはブラックバードのコックピットに飛び込む。
席の横にあるレバーを倒すと、重いキャノピーが閉じて――――静寂が訪れる。
アズルは少し笑う。
この瞬間が少しだけ気に入っているのだ。
「機関始動」
アズルはコックピットのトグルスイッチを逆側に倒し、システムを起動させる。
それと同時にプリセットの起動パターンが入力され、クアンタムコアワープドライブが唸りを上げる。
人間の可聴域ではない音から始まる起動音を、アズルは気に入っていた。
それが、この役割に志願した理由でもあるからだ。
『ガレス、ワープ軌道に移行。備えよ』
こうして、艦隊は渦中へと飛び込むのだった。
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