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シーズン4-ビージアイナ侵攻編
088-かき乱す黒鳥
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『第五分隊、作戦宙域へ到着』
事前に指定した座標へとワープしたガレス艦隊は、艦載機の展開を始める。
それを確認したビージアイナ艦隊は、集合を始める。
『やはりな』
『予想していましたか?』
『勿論だ』
シンは目を細める。
宇宙海戦における、艦載機への有効な陣形は集合すること。
艦と艦の密度を高めることで、艦載機への攻撃に対処、もしくは防御しやすくするのだ。
『この陣形は巧いな、防御の厚い戦艦を前面に出すことで、前面からの砲撃を防ぎつつ、側面はシールド出力の高い巡洋艦でカバーしているようだ』
『でも、シンさま! それは.....』
ネムが手を挙げて発言する。
シンは、それを遮ることなく目をやる。”続きを言ってみろ”と。
『それは....こちらの第三分隊の爆弾があれば、無意味ですよねっ!?』
『その通りだ。爆撃艦にとっては密集した艦隊など、餌に過ぎない』
遮蔽した状態で、第三分隊が左右に分かれて展開し、前進を開始する。
戦艦に当てるのではなく、左右のシールド艦に当てるつもりなのだ。
『司令官、艦載機『ブラックバード』から通信が届いております』
『スクリーンに出せ』
シンがそう命じると、戦闘指揮所の大モニターに、黒兎獣人の少年が映る。
『.....誰だったかな』
『(司令官、特殊作戦機の)』
『.....アズルか、どうした?』
『現在ガレス周辺を旋回中、編隊長が指示を求めてきていますが、どうしますか?』
『オーロラ、サウンド02』
その時、アズルの通信回路に音声が流れる。
直後、アズルは敬礼すると通信を切った。
『アズル君......し、シン様....これはどういう事なんですか?』
『ああ、説明していなかったな』
シンは大モニターに、アズルのデータを表示する。
『アズル....男性、16歳。兎獣人で、身体的特徴から人望はなく、パイロット適性もない』
シンはそう言い切ってから、前を向く。
『だが、彼には他の兎獣人にはない能力がある』
『それは...?』
『絶対音感だよ。彼は少ないフレーズのメロディを聴くことで指示を受けて、全体にローカル通信で指示を飛ばすんだ』
シンはアズルの音感を買っていた。
指示を飛ばす暇がない時、メロディの微妙な差異で正確な指示を飛ばすのだ。
そして。
『彼の機体はスワローエッジをベースに改良を加えたものだ』
『ええっ!?』
スワローエッジは自分だけのものと思っていたルルが、驚いたように叫ぶ。
『落ち着け。スワロー・エッジよりは性能が低い。それに俺は、あれをスワローエッジではなくブラックバードと呼んでいるからな』
『どういった機能なのですか...?』
『見ていればわかる』
シンはそういって笑う。
その間に、爆撃艦は射程距離へと入っていた。
『爆撃艦隊、射程距離に到達』
『敵惑星の背面の座標は記録しているか?』
『はい』
『では、爆撃艦隊...全艦、遮蔽解除。のち、ボム投射!』
カタパルトにセットされたボムが放たれ、敵艦へ向かって飛んでいく。
『情報統制はしっかりしているから、敵にとっては未知の攻撃だろうな』
シンは呟く。
ボムは通常のミサイルと形式は似ているが、シールドを持っているために、迎撃は高火力の一撃...ブラストウェーブなどでなければ不可能だ。
すぐに敵艦隊の前面で爆発が巻き起こり、シールド艦が火を噴く。
戦艦は耐えたものの、背面での爆発により推進機を破壊され、行動不能に陥った。
『第一、第二、第四分隊は前面へ展開せよ! 第五分隊の艦載機編隊は敵艦隊の上部へ移動開始! ブラインドファイスは敵艦隊旗艦にECMを展開!』
ブラインドファイスによる電磁パルス攻撃に対し、ビージアイナ艦隊旗艦はECCMを展開するものの、強度が高すぎて防御できずに浴びてしまう。
「敵、電磁パルス攻撃によりシステムがダウン!」
「馬鹿者、対電磁防御はどうした!」
「破られました! 通信回線がダウン!」
密集した艦隊は、対空防御が可能――――――だがそれは、指揮系統が正常に機能していればの話である。
『ルル、俺は.....その、天空騎士団を使い潰すつもりではある』
『.....はい』
ルルは、シンの一面を知った。
だが同時に、彼がそんなことを口走る理由について考えもした。
『だが、無為に死なせるなんてことはしない。味方である以上、損耗がないように運用するべきだからな。彼らは同族を養うために犠牲になってくれているんだから、最低限の応援は必要だろう――――アグリジェント、シンフォニア! シールドエコー! シールドウェーブ、スピードウェーブ、スキャンウェーブ展開!』
『各ウェーブ展開。シールドエコー開始』
アグリジェント、シンフォニアのそれぞれ二隻が光の波を放つ。
その波は、展開していた戦闘機隊へと覆い被さり、すべての機体のシールド出力と性能を大幅に引き上げた。
『戦闘機隊、進撃せよ!』
司令官の号令が下り、すべての艦載機が速度を上げ、敵艦隊へと迫った。
事前に指定した座標へとワープしたガレス艦隊は、艦載機の展開を始める。
それを確認したビージアイナ艦隊は、集合を始める。
『やはりな』
『予想していましたか?』
『勿論だ』
シンは目を細める。
宇宙海戦における、艦載機への有効な陣形は集合すること。
艦と艦の密度を高めることで、艦載機への攻撃に対処、もしくは防御しやすくするのだ。
『この陣形は巧いな、防御の厚い戦艦を前面に出すことで、前面からの砲撃を防ぎつつ、側面はシールド出力の高い巡洋艦でカバーしているようだ』
『でも、シンさま! それは.....』
ネムが手を挙げて発言する。
シンは、それを遮ることなく目をやる。”続きを言ってみろ”と。
『それは....こちらの第三分隊の爆弾があれば、無意味ですよねっ!?』
『その通りだ。爆撃艦にとっては密集した艦隊など、餌に過ぎない』
遮蔽した状態で、第三分隊が左右に分かれて展開し、前進を開始する。
戦艦に当てるのではなく、左右のシールド艦に当てるつもりなのだ。
『司令官、艦載機『ブラックバード』から通信が届いております』
『スクリーンに出せ』
シンがそう命じると、戦闘指揮所の大モニターに、黒兎獣人の少年が映る。
『.....誰だったかな』
『(司令官、特殊作戦機の)』
『.....アズルか、どうした?』
『現在ガレス周辺を旋回中、編隊長が指示を求めてきていますが、どうしますか?』
『オーロラ、サウンド02』
その時、アズルの通信回路に音声が流れる。
直後、アズルは敬礼すると通信を切った。
『アズル君......し、シン様....これはどういう事なんですか?』
『ああ、説明していなかったな』
シンは大モニターに、アズルのデータを表示する。
『アズル....男性、16歳。兎獣人で、身体的特徴から人望はなく、パイロット適性もない』
シンはそう言い切ってから、前を向く。
『だが、彼には他の兎獣人にはない能力がある』
『それは...?』
『絶対音感だよ。彼は少ないフレーズのメロディを聴くことで指示を受けて、全体にローカル通信で指示を飛ばすんだ』
シンはアズルの音感を買っていた。
指示を飛ばす暇がない時、メロディの微妙な差異で正確な指示を飛ばすのだ。
そして。
『彼の機体はスワローエッジをベースに改良を加えたものだ』
『ええっ!?』
スワローエッジは自分だけのものと思っていたルルが、驚いたように叫ぶ。
『落ち着け。スワロー・エッジよりは性能が低い。それに俺は、あれをスワローエッジではなくブラックバードと呼んでいるからな』
『どういった機能なのですか...?』
『見ていればわかる』
シンはそういって笑う。
その間に、爆撃艦は射程距離へと入っていた。
『爆撃艦隊、射程距離に到達』
『敵惑星の背面の座標は記録しているか?』
『はい』
『では、爆撃艦隊...全艦、遮蔽解除。のち、ボム投射!』
カタパルトにセットされたボムが放たれ、敵艦へ向かって飛んでいく。
『情報統制はしっかりしているから、敵にとっては未知の攻撃だろうな』
シンは呟く。
ボムは通常のミサイルと形式は似ているが、シールドを持っているために、迎撃は高火力の一撃...ブラストウェーブなどでなければ不可能だ。
すぐに敵艦隊の前面で爆発が巻き起こり、シールド艦が火を噴く。
戦艦は耐えたものの、背面での爆発により推進機を破壊され、行動不能に陥った。
『第一、第二、第四分隊は前面へ展開せよ! 第五分隊の艦載機編隊は敵艦隊の上部へ移動開始! ブラインドファイスは敵艦隊旗艦にECMを展開!』
ブラインドファイスによる電磁パルス攻撃に対し、ビージアイナ艦隊旗艦はECCMを展開するものの、強度が高すぎて防御できずに浴びてしまう。
「敵、電磁パルス攻撃によりシステムがダウン!」
「馬鹿者、対電磁防御はどうした!」
「破られました! 通信回線がダウン!」
密集した艦隊は、対空防御が可能――――――だがそれは、指揮系統が正常に機能していればの話である。
『ルル、俺は.....その、天空騎士団を使い潰すつもりではある』
『.....はい』
ルルは、シンの一面を知った。
だが同時に、彼がそんなことを口走る理由について考えもした。
『だが、無為に死なせるなんてことはしない。味方である以上、損耗がないように運用するべきだからな。彼らは同族を養うために犠牲になってくれているんだから、最低限の応援は必要だろう――――アグリジェント、シンフォニア! シールドエコー! シールドウェーブ、スピードウェーブ、スキャンウェーブ展開!』
『各ウェーブ展開。シールドエコー開始』
アグリジェント、シンフォニアのそれぞれ二隻が光の波を放つ。
その波は、展開していた戦闘機隊へと覆い被さり、すべての機体のシールド出力と性能を大幅に引き上げた。
『戦闘機隊、進撃せよ!』
司令官の号令が下り、すべての艦載機が速度を上げ、敵艦隊へと迫った。
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