158 / 247
シーズン7-対エミド戦線
152-闇夜を照らす極光
しおりを挟む
その頃。
ワープトンネルから離脱したルルと、その部下達は、遥か下を飛ぶエミド艦隊を視界に入れていた。
『これより、急降下奇襲を仕掛ける。奴らは近接戦闘こそがもっとも得意とする所。気を付けて戦ってください』
『応!!』
戦闘機隊は、エミド艦の死角である直上より奇襲を仕掛ける。
照準器に敵艦を捉えながら、ルルはシンの言葉を思い出していた。
『奴らは急な衝撃に弱い。インプラントで脳に電極を埋め込まれ、指揮官機の言いなりだからなのだが...とにかく、指揮官機の死角である真上から仕掛ければ、最初の一撃だけは必ず成功させられる。必ず、奴らの機関である特異点部分を狙え。接合を破壊すれば、エネルギーの逆爆縮が位相のズレで誤作動を引き起こして自爆するからな』
何を言っているかルルにはさっぱりだったが、とにかくエミド艦の露出した黒い球体を撃てばいいと分かっているので、話は簡単である。
指揮官機さえ撃ち落とせば、他は沈黙する。
『撃て!』
ルルの指示で、編隊は一斉に発砲する。
インデペンデンスには、左右に二つ、スワローエッジ:ウィルには四つ搭載された長い砲身の砲塔。
これには、対シールド装甲貫通型徹甲弾が入っている。
装甲の内側に突き刺さり、爆発で蹂躙する。
そういう兵器である。
目論見通り、指揮官機が炎上し、爆発する。
だが、沈黙したはずのエミド艦の一隻が、P.O.Dで薙ぎ払ってきた。
『!? 回避しなさい!』
『避けられ――――姫様!』
編隊のうち一隻が、P.O.Dによってその機体を焼き切られ、爆発四散する。
通信を通して響いた悲鳴を、ルルは聞かなかったことにした。
何故ならば――――聞いてしまえば、耐えられないからだ。
『旋回! 敵の兵器を振り切りながら射線を合わせなさい!』
ルルは叫ぶが、エミド艦はスワロー・エッジのみを執拗に狙う。
『ルル様! お逃げください!』
『いいから、撃ちなさい、撃って!』
『はっ!』
スワローエッジとインデペンデンスの特殊武装には違いがない。
スワローエッジだけ二門多いだけである。
ルルが逃げている隙に、エミド艦を編隊が取り囲み、射撃を以てシールドを破壊した。
更に砲撃を続け、エミド艦を撃沈する。
例え撃たれていても、反撃せず指揮官機を狙うその不気味さは、その中身を知るルルにはより一層のものとして映った。
「(何故.......)」
シンは教育し、反抗的な者を配下に置くことはある。
しかし、自我を奪ったり、完全に隷属させることはない。
あくまで、教育された者たちは自分の意思で従っているのだ。
「(全てを完全に従えて兵士にするなんて.....シン様なら絶対にやらないはず)」
天空騎士団を、洗脳することもなく雇用するシン。
自分に優しくしてくれたカレンを殺さず、救ってくれたシン。
『エミド艦が追加で来ました!』
『もう好きにはさせません、各個分散し、指揮官機とみられる艦を砲撃開始!』
ルルはスワローエッジを駆り、ワープアウトしたエミド艦隊の援軍に対して追跡を開始するのであった。
『............』
遮蔽状態のラムブレードⅡは、同じく遮蔽状態の爆撃艦とアステロイドベルトに潜んでいた。
狙いは、敵のエミド無人艦隊の本隊。
星系中に分散したエミド艦隊の中でも最も数が多い艦隊が、このアステロイドベルトに一度集結するのだ。
『既にワープ地点は設定済みです。うまくクロスポイントを算出し、攻撃してください』
『.....はい!』
ラムブレードⅡは、シンとオーロラによりワープ能力を大幅に高められている。
仮に逃げ遅れても、妨害を掛けられる前に、もしくはワープ妨害を掛けられたとしても急速に強度を上げて逃げ切れる仕組みになっている。
その代わり、武装は貧弱なままだが。
『来たっ!』
そして。
爆撃艦隊の向いている方向の丁度先に、エミド艦隊がワープアウトしてきた。
『5秒後に遮蔽を解除し、ボムを投射します!』
『了解しました。では、7秒後にワープドライブを起動します』
爆撃艦隊は遮蔽を解く。
遮蔽状態では各種センサーが起動せず、火器管制システムのセーフティが外れないのだ。
『軸線に乗りましたっ、ボム発射!』
電磁加速されたボムが、エミド艦隊に向けて飛翔する。
エミド艦隊は、ボムの威力を些事と認め、脅威になる可能性のあるラムブレード旗艦の艦隊を狙う。
だが、すぐに全ての艦がワープへと突入し、その場から逃げ去る。
ただし、ラムブレードは遮蔽を維持したまま、着弾を確認する。
『敵艦隊の大部分の喪失を確認しました』
『やったぁっ!』
指揮官機を失ったことで、無事、もしくは半壊したエミド艦も沈黙する。
『戦域を離脱します。回収ポイントへ向かってください』
『はいっ!』
ラムブレードⅡは、単騎で回収ポイントへとワープするのであった。
ワープトンネルから離脱したルルと、その部下達は、遥か下を飛ぶエミド艦隊を視界に入れていた。
『これより、急降下奇襲を仕掛ける。奴らは近接戦闘こそがもっとも得意とする所。気を付けて戦ってください』
『応!!』
戦闘機隊は、エミド艦の死角である直上より奇襲を仕掛ける。
照準器に敵艦を捉えながら、ルルはシンの言葉を思い出していた。
『奴らは急な衝撃に弱い。インプラントで脳に電極を埋め込まれ、指揮官機の言いなりだからなのだが...とにかく、指揮官機の死角である真上から仕掛ければ、最初の一撃だけは必ず成功させられる。必ず、奴らの機関である特異点部分を狙え。接合を破壊すれば、エネルギーの逆爆縮が位相のズレで誤作動を引き起こして自爆するからな』
何を言っているかルルにはさっぱりだったが、とにかくエミド艦の露出した黒い球体を撃てばいいと分かっているので、話は簡単である。
指揮官機さえ撃ち落とせば、他は沈黙する。
『撃て!』
ルルの指示で、編隊は一斉に発砲する。
インデペンデンスには、左右に二つ、スワローエッジ:ウィルには四つ搭載された長い砲身の砲塔。
これには、対シールド装甲貫通型徹甲弾が入っている。
装甲の内側に突き刺さり、爆発で蹂躙する。
そういう兵器である。
目論見通り、指揮官機が炎上し、爆発する。
だが、沈黙したはずのエミド艦の一隻が、P.O.Dで薙ぎ払ってきた。
『!? 回避しなさい!』
『避けられ――――姫様!』
編隊のうち一隻が、P.O.Dによってその機体を焼き切られ、爆発四散する。
通信を通して響いた悲鳴を、ルルは聞かなかったことにした。
何故ならば――――聞いてしまえば、耐えられないからだ。
『旋回! 敵の兵器を振り切りながら射線を合わせなさい!』
ルルは叫ぶが、エミド艦はスワロー・エッジのみを執拗に狙う。
『ルル様! お逃げください!』
『いいから、撃ちなさい、撃って!』
『はっ!』
スワローエッジとインデペンデンスの特殊武装には違いがない。
スワローエッジだけ二門多いだけである。
ルルが逃げている隙に、エミド艦を編隊が取り囲み、射撃を以てシールドを破壊した。
更に砲撃を続け、エミド艦を撃沈する。
例え撃たれていても、反撃せず指揮官機を狙うその不気味さは、その中身を知るルルにはより一層のものとして映った。
「(何故.......)」
シンは教育し、反抗的な者を配下に置くことはある。
しかし、自我を奪ったり、完全に隷属させることはない。
あくまで、教育された者たちは自分の意思で従っているのだ。
「(全てを完全に従えて兵士にするなんて.....シン様なら絶対にやらないはず)」
天空騎士団を、洗脳することもなく雇用するシン。
自分に優しくしてくれたカレンを殺さず、救ってくれたシン。
『エミド艦が追加で来ました!』
『もう好きにはさせません、各個分散し、指揮官機とみられる艦を砲撃開始!』
ルルはスワローエッジを駆り、ワープアウトしたエミド艦隊の援軍に対して追跡を開始するのであった。
『............』
遮蔽状態のラムブレードⅡは、同じく遮蔽状態の爆撃艦とアステロイドベルトに潜んでいた。
狙いは、敵のエミド無人艦隊の本隊。
星系中に分散したエミド艦隊の中でも最も数が多い艦隊が、このアステロイドベルトに一度集結するのだ。
『既にワープ地点は設定済みです。うまくクロスポイントを算出し、攻撃してください』
『.....はい!』
ラムブレードⅡは、シンとオーロラによりワープ能力を大幅に高められている。
仮に逃げ遅れても、妨害を掛けられる前に、もしくはワープ妨害を掛けられたとしても急速に強度を上げて逃げ切れる仕組みになっている。
その代わり、武装は貧弱なままだが。
『来たっ!』
そして。
爆撃艦隊の向いている方向の丁度先に、エミド艦隊がワープアウトしてきた。
『5秒後に遮蔽を解除し、ボムを投射します!』
『了解しました。では、7秒後にワープドライブを起動します』
爆撃艦隊は遮蔽を解く。
遮蔽状態では各種センサーが起動せず、火器管制システムのセーフティが外れないのだ。
『軸線に乗りましたっ、ボム発射!』
電磁加速されたボムが、エミド艦隊に向けて飛翔する。
エミド艦隊は、ボムの威力を些事と認め、脅威になる可能性のあるラムブレード旗艦の艦隊を狙う。
だが、すぐに全ての艦がワープへと突入し、その場から逃げ去る。
ただし、ラムブレードは遮蔽を維持したまま、着弾を確認する。
『敵艦隊の大部分の喪失を確認しました』
『やったぁっ!』
指揮官機を失ったことで、無事、もしくは半壊したエミド艦も沈黙する。
『戦域を離脱します。回収ポイントへ向かってください』
『はいっ!』
ラムブレードⅡは、単騎で回収ポイントへとワープするのであった。
0
あなたにおすすめの小説
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる