【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀

黴男

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シーズン8-オルトス王国侵攻編

185-フィーア

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「これより、クライスト・ジーク奪還及び防衛戦を開始します」

場所はクライスト・ジークから少しだけ離れたパーリアル星系。
そこの太陽付近に設置されたカスティオ内部である。
カスティオに付けられた名称は「サン・キーパー」。

『了解。全艦隊、出航し、所定位置に整列します』

冷たく、感情のない声が響く。
コバルトが船を指揮しているのだ。
オーロラと同じく、コバルトは基本的にシン以外にはこんな対応である。

「では、計画通り最初にフリゲート艦隊を....」
『いいえェ、様子見は不要でしょう? ツヴァイ様』
「...ですが」
『大胆に攻めるべき時はいつだってそうだと、ディーヴァ様も言っておられたではないですか』

ツヴァイが指示を出そうとしたその時、それを遮った者がいた。
フィーア....ラゼリア・ディエ・カルムスという、少女に見える人間だ。
だが実際は違う。
ビージアイナ帝国の将軍の副官であり、病気で可愛らしい少女の姿から一切変化しなくなった娘でもある。
現地で指揮官を務め、艦隊が負ければ民間人のふりをして脱出、敵兵が油断したすきに脱出艇を奪って脱出というプロセスを繰り返した末に第三級戦争犯罪者に指定され、王国側に捕らえられていたのだ。

「勝手な事を言って、ただ戦いたいだけでしょう」
『我々は同格ですが、言っていい事と悪いことがあるのではないですかねェ?』

フィーアは今回もまた、最前線に出る指揮官として立候補している。
実際、指揮能力としては帝国の精鋭の一人でもある。
子供の姿に置き去りにされたとはいえ、その飽くなき闘争本能とそれのために捧げた勉学と実践の経験は本物である。
再教育を受け、シンに忠誠を誓ってはいるものの、戦いが終わればいつ飼い主に噛み付くかもわからない狂犬である。

「(シン様は何故このような人物を.....)」
「(あぁ♡器の広いシンさま素敵♡)」

ツヴァイはそれを憂い、アインスは鉄のような表情の下で悦んでいた。
主力艦「ハービンジャー」がジャンプポータルを開き、フィーアの指揮する先鋒艦隊が戦場に飛び込んでいく。
何もない場所にジャンプしたフィーアらは、一斉に王国艦隊の現れた古いゲート前に向かう。
そこにいた王国艦隊を襲撃し、それを即座に撃滅。

『ハハハハハハ! 新しいパワーを手に入れたこのブロードベッツは無敵だッ!』

フィーアの乗艦は『ブロードベッツ』。
もともとは帝国の突入型指揮艦であったが、鹵獲されたのちに改良されて今の姿となった。
12門の中型レーザー砲を備え、かつ補助装備兼脱出装置としてダァト(知識)を積んでいる。
ブロードベッツを囲むのは、デリュージ級襲撃型戦艦と、ブリザード級コルベットの艦隊である。
連射力に優れるデリュージとブリザードにより弾幕を張り敵を逃さない。
それこそが、フィーアがシンに望んだ戦法なのだ。

『さあ、さあ、さあさあさあ!! 私と踊り狂おうじゃァないかァ、王国の犬共!』

ゲートを守るため、王国の主力が動き出す。
だが。

『させませんよ』

王国艦隊のど真ん中に現れたフォールダウンがワープ妨害フィールドを展開。
それに合わせる形でマリス・インパルスとミアプラキドゥスがワープアウト、遅れて飛んできたキングメイカー級支援巡洋艦によるナノウェーブ支援とシールドエコーを受けながら、その射程を生かして王国艦隊に襲撃を仕掛ける。
アドアステラが動き出すが、

『コバルト、プランDを発令』
『了解しました、偽装プロトコルを始動』

その時。
王国のバンカーそっくりに改変されたNoa-Tunの偽装施設から、アドアステラに向けて救難信号が出される。
それを受けた途端、アドアステラはそちらの方へ急行する。

「....ほ、本当に味方を捨てて....」
『ハハッ、シン様の言う通りではないですか、甘ちゃんなのですよ、敵の英雄とやらは――――甘さを捨てなければ、戦ではそんなものは意味をなさないというのに....』

フィーアが嗤う。
アドアステラは偽装された基地にワープアウトし、張られたワープ妨害フィールドへと飛び込んでしまう。
そして、そこにワープアウトしてきたフィーアの艦隊に集中砲火を浴びせられた。
しかし、アドアステラのシールドは硬く、これだけの猛攻にも耐えていた。
逆に、アドアステラからの高精度連射砲撃により、フィーアの艦隊は少しずつ削られていた。

『クッ、いったん撤退する!』

フィーアは即座に判断し、艦隊を何もない安全地帯にワープアウトさせた。
アドアステラのシールドを削り切れないと判断したためだ。
だが、それは結果的にファインプレーとなる。
主力艦隊の三割ほどを撃滅したNoa-Tun艦隊は一斉に退き、フィーア艦隊と合流して帰還した。
フットワークの軽いNoa-Tun艦隊の特徴を活かした、見事な奇襲であった。
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