【完結】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀

黴男

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シーズン8-オルトス王国侵攻編

196-アバターVSアドアステラ(前編)

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アドアステラは速度を上げ、アバターに向かって迫る。
アバターから二回、焦滅砲が放たれるものの、アドアステラには効果がない。

『レーザー砲撃に切り替え、ミサイルは使うな、弾の無駄だ。レーザータレットをオーバーヒートさせろ、決戦モジュール起動、射撃精度にCPU使用率の割合を変更!』

毎秒480発の重レーザー砲が、全てアドアステラへと集中する。
しかし、主力艦用の武装はそもそも中型艦にはほぼ当たらない。
当たったとしても、アドアステラのシールドを貫くには至らない。

『包囲攻撃に変更! 予測軌道に撃ち込め』
『了解!』

所謂、偏差撃ちに切り替えたことで命中精度が上がり、アドアステラのシールドが歪み始める。
そして、近距離と呼ばれるような場所に入った瞬間、アドアステラが発砲する。
たった一撃で、アバターのシールドの二割程度の耐久力を持っていく。

『各種妨害装備起動!』
『起動します』

アドアステラに対して、電子戦・推進妨害モジュールが発動され、その速度と砲撃精度を低くする。
アバターの右舷に回り込んだアドアステラに対し、容赦なくレーザー砲火が加わる。
コバルトと共同でのオーロラ射撃であれば、フレンドリーファイアを気にすることなく撃つ事が出来るためだ。

『敵シールド減衰率:50%』
『アバター、シールド消失まで何秒だ!』
『残り22秒』

アドアステラもシールドブースターをオーバークロックし、シールドを減衰させないように努力はしていたものの、しかしどんなに盛ったところで、主力艦とは素の耐久力では天と地ほどの差がある。
アバターは脆弱なように思えるが、それは装備が装甲防御に主力を注いでいるからである。
そして。

『妾も忘れてはならんぞ!』

シュッツェ・フリューゲルス(近接戦闘仕様)がアドアステラを包囲し、レーザーキャノンではなくレーザーガトリングによって立体的な攻撃を仕掛ける。
アドアステラもパルスレーザーによる迎撃を行うものの、シュッツェ・フリューゲルスのシールドを破る事は出来ない。

『シンよ、今のうちじゃ!』
『ああ!』

ファンネ....ブレードがアドアステラの重レーザー砲の連射を防ぎ、シールドが崩壊する前にアバターがアドアステラのシールドを突き破った。

『アドアステラ、シールドダウン! ミサイル攻撃再開! ネム、ブラックガードを数隻こっちに回せ!』
『了解!』

妨害艦のブラックガードがアドアステラを包囲し、そこにレーザーとミサイル、シュッツェ・フリューゲルスのガトリング砲撃が集中する。
そして、それは来た。
何かの共鳴波と同時に、シュッツェ・フリューゲルスの制御が一瞬途切れ、アドアステラの船体が真っ白く染まる。

『来るぞ、こっちも備えろ!』

直後。
アドアステラの船首部分から突き出た砲台から、強力な砲撃が放たれる。
それはアバターに直撃するものの、思ったより威力が出ていなかった。
砲撃の残滓が消えると、その船体を真っ黒く染めたアバターが現れる。

『シン司令官、これは.....?』
『俺も、アドアステラと同じことをやっただけさ』

シンは笑う。
アルテアは、アドアステラの映像を見て「コレは聖遺物だ」と言った。
持ち主と共に在り、持ち主の願いに応え、持ち主に力を与えるモノ。
シンはそれに一つの予測を見出した。
聖遺物とは、キネス能力者のみが使えるものなのだと。
そして、本来は滅多に存在しないそれがアドアステラであるということは、その条件は「異世界から共にやって来た」という事である。
それに気づいたシンは、アバターに初期から存在している艦船を分解して組み込んだのだ。
結果、白銀のアバターはシンの想いに応え黒く染まった。
当然、兵装も大きく強化されている。

『さあ、流歌! どっちが長く耐えられるか勝負だ!』

シンはコアルームで一人叫ぶ。
聖遺物対聖遺物の戦いであり、両者の実力はほぼ互角と言える。
レーザー砲同士が交差し、アドアステラが放ったミサイルが、アバターの放ったミサイルに迎撃される。
爆炎の中から飛び出したアバター側のミサイルが、アドアステラに直撃してその装甲に損傷を負わせる。
しかし、その装甲の傷はすぐに塞がっていく。
反対に、アバターに到達するレーザー砲は、アバターの強固なアーマーによって止められる。

『まだ、まだじゃぞ!』

シュッツェ・フリューゲルスが、高速で飛翔するアドアステラに軸線を合わせて撃つ。
しかし、強化されたその装甲に損傷を負わせられず、反対にパルスレーザーによって撃墜される。

『レーザータレットのオーバーロード熱損傷、81%に到達』
『オーバーロード解除、急速冷却開始! ミサイルランチャーをオーバーロードさせろ、ネム! 艦載機編隊を二つこっちへ戻せ!』
『.....はい!』

ネムは少しだけ疑問に思いつつも、その命令を実行する。
自らの主が、妹を引き合いに出すと止まらないその主が、今その妹が乗る船を迎撃することに...妹を殺すことに何の躊躇も抱いていない様子に疑問を覚えたが、ネムにとっては些細な事である。

『ぐ......』

その時、シンは呻き声を上げる。
聖遺物の維持限界が近いのだ。

『どうやら、こっちの才能もないらしいな』

シンはそう言って自虐すると、コアルームに一つしかない操作盤の赤いスイッチを押す。
コアの機能が停止し、アバター級の装甲が白銀へと戻る。
直後、全ての艦船の砲撃が、アドアステラに集中した。

『......まあ、敵はいなくなったしな、結果オーライだ』

二つの船が戦っている間に、王国艦隊はほぼ全滅していた。
ワープ妨害フィールドのせいでワープできないため、アドアステラに救援は来ない。

『さあ、時間切れまでに生きていられるか、流歌?』

シンは冷徹に、ネムに攻撃指示を出した。
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