205 / 247
シーズン8-オルトス王国侵攻編
199-終わった戦い
しおりを挟む
こうして、俺たちはラステイクを襲撃した七十万の王国軍を撃破した。
前回の失敗を踏まえ、残党も残らず撃破、ラステイク星系内から完全に敵性存在を排除した。
だが、俺たちはこの戦い、勝ったわけではない。
アドアステラを逃してしまった以上、流歌は決して諦めないだろう。
そして、流歌がいる以上、王国の士気も下がりようがないはずだ。
ただ、流石に.....
『王国国内では暴動が頻発し、国家としての威信が大きく揺らいでいるようです。軍上層部ではトカゲの尻尾切りが始まっています』
「崩壊は近い、か」
士気が維持されるのは、軍内部と上層部だけだ。
国民は七十万もの戦力を失った上、死者は七十万では済まないはずだからな。
沈んだ主力艦だけで、一隻二万人程度が収容できると考えると、六万死んでいる。
小型艦ですら最低四人運用と考えると、考えたくもないな....
だが俺は、その数の命を奪ったことに後悔はない。
今更後悔など不要だ。
「ラステイク星系の状況は?」
『アウトポストは既に復旧、現在ホールドスターの係留が開始されています』
「サルベージは?」
『残骸のサルベージングは既に完了しました、現在、拿捕した艦艇を無人艦に改装中』
「どうする気だ?」
『司令官、肉盾や便衣兵はご存じですか?』
「....バカにしてるのか?」
『いいえ、そういう用途だと思ってください』
成程、元々便衣兵(オーロラインフォメーション:民間人に偽装した兵士の事です)を投入すると言ったのは俺だ。
少しダーティだが、味方同士で疑心暗鬼になってもらうのも面白そうだ。
『兵士たちのローカル通信での肉声も記録しており、現在99%に近い再現が可能となっています。これを利用し、王国軍に牽制をかけるという手も取る事が出来ます』
「それか、内部にボムを満載して、旗艦に接舷した瞬間にズドン、とかな」
こちらの指揮官はコバルト&オーロラが居れば十分だが、向こうの有能な指揮官は殺せば減る。
育成には何十年もかかるからな。
「遊撃部隊の成果はどうだ」
『現在、122回の襲撃のうち120回を成功。内2回は、星系軍に先回りされた他、ワープブースターらしき装置でインターディクションフィールドを振り切って逃亡されました』
「そんな輸送艦が王国にあるのか....」
技術レベルがおかしいような気がするが、まあ輸送艦だ。
気にする必要はない。
遊撃部隊といえば聞こえはいいが、実際はゲリラ部隊である。
敵地に侵入、ワープとジャンプを繰り返して遮蔽状態でワープ中の艦を捕らえて襲撃、その星系の警戒度を上げて逃走、を繰り返す艦隊だ。
被害が増えれば星系軍も本腰を上げるようだが、その時すでに艦隊は別の星系か、地方に移動してしまっている。
星系軍は無能を晒し、何も知らない一般市民は軍に対する不信感を強める。
そうなれば、次の作戦に移行できる。
「.....あの!」
「...どうした」
気付くと、背後にネムが居た。
彼女は、あまりいい表情をしていなかったので、俺は頬を緩めて屈む。
「どうした?」
「司令官....は、どうして、あの船を....実の妹のあの人を、あんなに執拗に殺そうとするのですか?」
「ああ、その事か....簡単だ、死なないからだよ、死んだくらいじゃ、あいつは死なない」
「そんなの理由に...」
「なる、だが....それをネム、ルル....お前たちに説明するのは、最後の決戦の時だ」
流歌は、俺よりずっとずっと.....いや、あいつを人の枠に当てはめること自体が間違いだ。
IQ自体は120程度だが、英語の文献をちょっと勉強したくらいで読めるようになり、数学の数式を数週間でマスターし、運動系も賞を取りまくってきた。
俺は兄として、それを称賛したが...
同時に、自分は物語の主人公ではないと思い知らされてきた。
この歪んだ関係は、俺の「計画」が終わると共に修復される。
ただ、それだけの話だ。
『ところで、ただいまお時間頂けますか?』
「どうした?」
俺はオーロラの声に耳を傾ける。
『ラステイク星系の残党調査中に、厳重に遮蔽された遺跡を発見しました。形式的にはエミドのものと思われます』
「調査しろ、直ちに」
『分かりました』
遺跡か.....それが吉と出るか、凶と出るかは分からないが、まあ、いいだろう。
俺はネムを連れて、戦闘指揮所を離れるのであった。
前回の失敗を踏まえ、残党も残らず撃破、ラステイク星系内から完全に敵性存在を排除した。
だが、俺たちはこの戦い、勝ったわけではない。
アドアステラを逃してしまった以上、流歌は決して諦めないだろう。
そして、流歌がいる以上、王国の士気も下がりようがないはずだ。
ただ、流石に.....
『王国国内では暴動が頻発し、国家としての威信が大きく揺らいでいるようです。軍上層部ではトカゲの尻尾切りが始まっています』
「崩壊は近い、か」
士気が維持されるのは、軍内部と上層部だけだ。
国民は七十万もの戦力を失った上、死者は七十万では済まないはずだからな。
沈んだ主力艦だけで、一隻二万人程度が収容できると考えると、六万死んでいる。
小型艦ですら最低四人運用と考えると、考えたくもないな....
だが俺は、その数の命を奪ったことに後悔はない。
今更後悔など不要だ。
「ラステイク星系の状況は?」
『アウトポストは既に復旧、現在ホールドスターの係留が開始されています』
「サルベージは?」
『残骸のサルベージングは既に完了しました、現在、拿捕した艦艇を無人艦に改装中』
「どうする気だ?」
『司令官、肉盾や便衣兵はご存じですか?』
「....バカにしてるのか?」
『いいえ、そういう用途だと思ってください』
成程、元々便衣兵(オーロラインフォメーション:民間人に偽装した兵士の事です)を投入すると言ったのは俺だ。
少しダーティだが、味方同士で疑心暗鬼になってもらうのも面白そうだ。
『兵士たちのローカル通信での肉声も記録しており、現在99%に近い再現が可能となっています。これを利用し、王国軍に牽制をかけるという手も取る事が出来ます』
「それか、内部にボムを満載して、旗艦に接舷した瞬間にズドン、とかな」
こちらの指揮官はコバルト&オーロラが居れば十分だが、向こうの有能な指揮官は殺せば減る。
育成には何十年もかかるからな。
「遊撃部隊の成果はどうだ」
『現在、122回の襲撃のうち120回を成功。内2回は、星系軍に先回りされた他、ワープブースターらしき装置でインターディクションフィールドを振り切って逃亡されました』
「そんな輸送艦が王国にあるのか....」
技術レベルがおかしいような気がするが、まあ輸送艦だ。
気にする必要はない。
遊撃部隊といえば聞こえはいいが、実際はゲリラ部隊である。
敵地に侵入、ワープとジャンプを繰り返して遮蔽状態でワープ中の艦を捕らえて襲撃、その星系の警戒度を上げて逃走、を繰り返す艦隊だ。
被害が増えれば星系軍も本腰を上げるようだが、その時すでに艦隊は別の星系か、地方に移動してしまっている。
星系軍は無能を晒し、何も知らない一般市民は軍に対する不信感を強める。
そうなれば、次の作戦に移行できる。
「.....あの!」
「...どうした」
気付くと、背後にネムが居た。
彼女は、あまりいい表情をしていなかったので、俺は頬を緩めて屈む。
「どうした?」
「司令官....は、どうして、あの船を....実の妹のあの人を、あんなに執拗に殺そうとするのですか?」
「ああ、その事か....簡単だ、死なないからだよ、死んだくらいじゃ、あいつは死なない」
「そんなの理由に...」
「なる、だが....それをネム、ルル....お前たちに説明するのは、最後の決戦の時だ」
流歌は、俺よりずっとずっと.....いや、あいつを人の枠に当てはめること自体が間違いだ。
IQ自体は120程度だが、英語の文献をちょっと勉強したくらいで読めるようになり、数学の数式を数週間でマスターし、運動系も賞を取りまくってきた。
俺は兄として、それを称賛したが...
同時に、自分は物語の主人公ではないと思い知らされてきた。
この歪んだ関係は、俺の「計画」が終わると共に修復される。
ただ、それだけの話だ。
『ところで、ただいまお時間頂けますか?』
「どうした?」
俺はオーロラの声に耳を傾ける。
『ラステイク星系の残党調査中に、厳重に遮蔽された遺跡を発見しました。形式的にはエミドのものと思われます』
「調査しろ、直ちに」
『分かりました』
遺跡か.....それが吉と出るか、凶と出るかは分からないが、まあ、いいだろう。
俺はネムを連れて、戦闘指揮所を離れるのであった。
0
あなたにおすすめの小説
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる