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シーズン4-スリーパー防衛編
103-『オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
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片腕を失ったカナードだったが、その動きはほとんど変わらない。
カルは防戦一方であり、ファイスはコンバットバトンを捨て、その膂力でカルのサポートに回っていた。
「無駄! 無駄! 無駄だっ!!」
カルは弾き飛ばされ、ファイスは地面に叩きつけられる。
左腕の骨が折れているために、うまく受け身が取れないカルは、地面を転がることで衝撃を分散する。
だが、勝機は全く見えない。
「無駄なことはやめたらどうだ!」
「無駄ではないから、やめる気はないな!」
カルは再び、カナードの足元を銃撃して配管を破壊。
カナードはその勢いを受けて吹っ飛ばされた。
「やるね――――だけど、見えているよ!」
「くっ!」
動体視力すら上がっているカナード相手に、カルは難なく捕らえられる。
「まったく.....不意を突かなければ武器も効かないというのに、よく頑張るね――――君は」
「不意さえ突けばいいんだろう?」
「もう突くことさえできないだろうね」
カナードはカルの首を握り、持ち上げる。
いかにカルが常人ではありえない技量を持っていようとも、重機並みの力で首を絞められれば、ただ死に向かうしかない。
だが。
「貴様あッ!!」
ファイスがカナードに組み付き、その強靭な咢でカナードの肩に噛み付いた。
「.....痛いじゃないか」
「くっ.......!」
カルは苦し気にファイスを見る。
牙がほとんど通っていない。
「お前は.....それで.....いいのか?」
「構わないさ」
最早どんな言葉もカナードに届かない。
つまり、挑発して抜け出すことは不可能。
そう判断したカルは、その場でマスクの解除スイッチを押した。
マスクが解除され、カルの顔が露になった。
「え.....君は......!」
「ハァッ!!」
折れた左腕を無理に動かしつつ、カルは再び至近距離でのカルセールを放った。
最後の一発であり、これで倒せなければ――――
「お......驚いたよ......君は女性だったのか」
「......っ」
避けられた。
カナードは撃たれた胸を再生させていく。
狙っていた腕に当たらなかったのだ。
カルはカルセールを優しく仕舞い、傷む腕を抑えて立ち尽くす。
「それで、私は可愛いかな?」
「勿論.....と言いたいところだけどね、見慣れない民族だからかな.....僕には少しわかりにくいところではあるよ」
会話は続いているが、カルの焦りは最高潮に達していた。
自分は負傷し、ファイスの力をも超越したカナード。
カルセールはエネルギー切れ、ニケではカナードに傷を付ける事はできない。
アドアステラの砲撃では、この研究施設まで砲撃は届かず、外部からの援護も期待できない。
背後にいるアラッドすら、生きているかどうかも分からない。
「............ちなみに、降伏すると言ったらどうなるかな?」
「勿論、命だけは助けてあげるよ。そこの犬コロと混ぜて獣人にしてあげようか?」
「.....」
勿論、そんな事をされたなら....兄に不気味だと思われるに違いないと、カルは冷や汗を流す。
「兄に嫌われそうだね、それは....」
「安心していいよ。君の兄とやらも、いずれは僕の作った兵器で死ぬんだ」
「死ぬ?」
カナードにとっては、今までの会話と同じノリで発した発言だったのだろう。
だが、返ってきたのは――――地獄のように冷たい声だった。
「何も間違ったことはないだろう? 君の兄だって人間に過ぎないんだから」
「お兄ちゃん、はぁ......!! 死なないッ、絶対に!」
「無駄だと、言っているだろう?」
カルは理性を失ってニケを連射するが、そのうちエネルギーが切れる。
カナードには一切の傷がない。
「いい反応を見せてくれたよ」
直後。
カルは不思議な感覚を味わった。
自分に向かって肉薄してくるカナードが、ゆっくりとした動きになり始めたのだ。
「――――?」
『オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
視界が白く染まり、再び”あの声”がカルの耳に届いた。
『オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
「強くなりたい――――お兄ちゃんを守りたい.......仲間たちを...悲しませない力が欲しい!!」
そして。
カルの声を聴いたナニカは。
『ソンナコトデイイノカ』
と、不思議そうに尋ねた。
だがカルは、迷わなかった。
直後――――
『ナラバ、授ケヨウ――――何ヨリ、大キナ”力”ヲ――――!!』
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
カルは慟哭した。
それに頼らなければ打破できない現状を。
そして――――不甲斐ない自分に向けて。
「――――さようなら」
時が動き出す。
カナードが振り上げた拳がカルに迫り――――
カルは防戦一方であり、ファイスはコンバットバトンを捨て、その膂力でカルのサポートに回っていた。
「無駄! 無駄! 無駄だっ!!」
カルは弾き飛ばされ、ファイスは地面に叩きつけられる。
左腕の骨が折れているために、うまく受け身が取れないカルは、地面を転がることで衝撃を分散する。
だが、勝機は全く見えない。
「無駄なことはやめたらどうだ!」
「無駄ではないから、やめる気はないな!」
カルは再び、カナードの足元を銃撃して配管を破壊。
カナードはその勢いを受けて吹っ飛ばされた。
「やるね――――だけど、見えているよ!」
「くっ!」
動体視力すら上がっているカナード相手に、カルは難なく捕らえられる。
「まったく.....不意を突かなければ武器も効かないというのに、よく頑張るね――――君は」
「不意さえ突けばいいんだろう?」
「もう突くことさえできないだろうね」
カナードはカルの首を握り、持ち上げる。
いかにカルが常人ではありえない技量を持っていようとも、重機並みの力で首を絞められれば、ただ死に向かうしかない。
だが。
「貴様あッ!!」
ファイスがカナードに組み付き、その強靭な咢でカナードの肩に噛み付いた。
「.....痛いじゃないか」
「くっ.......!」
カルは苦し気にファイスを見る。
牙がほとんど通っていない。
「お前は.....それで.....いいのか?」
「構わないさ」
最早どんな言葉もカナードに届かない。
つまり、挑発して抜け出すことは不可能。
そう判断したカルは、その場でマスクの解除スイッチを押した。
マスクが解除され、カルの顔が露になった。
「え.....君は......!」
「ハァッ!!」
折れた左腕を無理に動かしつつ、カルは再び至近距離でのカルセールを放った。
最後の一発であり、これで倒せなければ――――
「お......驚いたよ......君は女性だったのか」
「......っ」
避けられた。
カナードは撃たれた胸を再生させていく。
狙っていた腕に当たらなかったのだ。
カルはカルセールを優しく仕舞い、傷む腕を抑えて立ち尽くす。
「それで、私は可愛いかな?」
「勿論.....と言いたいところだけどね、見慣れない民族だからかな.....僕には少しわかりにくいところではあるよ」
会話は続いているが、カルの焦りは最高潮に達していた。
自分は負傷し、ファイスの力をも超越したカナード。
カルセールはエネルギー切れ、ニケではカナードに傷を付ける事はできない。
アドアステラの砲撃では、この研究施設まで砲撃は届かず、外部からの援護も期待できない。
背後にいるアラッドすら、生きているかどうかも分からない。
「............ちなみに、降伏すると言ったらどうなるかな?」
「勿論、命だけは助けてあげるよ。そこの犬コロと混ぜて獣人にしてあげようか?」
「.....」
勿論、そんな事をされたなら....兄に不気味だと思われるに違いないと、カルは冷や汗を流す。
「兄に嫌われそうだね、それは....」
「安心していいよ。君の兄とやらも、いずれは僕の作った兵器で死ぬんだ」
「死ぬ?」
カナードにとっては、今までの会話と同じノリで発した発言だったのだろう。
だが、返ってきたのは――――地獄のように冷たい声だった。
「何も間違ったことはないだろう? 君の兄だって人間に過ぎないんだから」
「お兄ちゃん、はぁ......!! 死なないッ、絶対に!」
「無駄だと、言っているだろう?」
カルは理性を失ってニケを連射するが、そのうちエネルギーが切れる。
カナードには一切の傷がない。
「いい反応を見せてくれたよ」
直後。
カルは不思議な感覚を味わった。
自分に向かって肉薄してくるカナードが、ゆっくりとした動きになり始めたのだ。
「――――?」
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視界が白く染まり、再び”あの声”がカルの耳に届いた。
『オマエノ ノゾミハ ナンダ?』
「強くなりたい――――お兄ちゃんを守りたい.......仲間たちを...悲しませない力が欲しい!!」
そして。
カルの声を聴いたナニカは。
『ソンナコトデイイノカ』
と、不思議そうに尋ねた。
だがカルは、迷わなかった。
直後――――
『ナラバ、授ケヨウ――――何ヨリ、大キナ”力”ヲ――――!!』
「うぉおおおおおおおおおお!!!」
カルは慟哭した。
それに頼らなければ打破できない現状を。
そして――――不甲斐ない自分に向けて。
「――――さようなら」
時が動き出す。
カナードが振り上げた拳がカルに迫り――――
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