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シーズン5-ショートバケーション編
146-驚異の獣人
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一瞬、最初から敵だったのかと思った。
だけど、明らかに様子がおかしい。
「ラビ! どうした!」
「.........」
ラビの目はこちらを捉えているけれど、その目には何の感情も浮かんでいなかった。
無言で肉薄、回し蹴りを放ってくる。
一瞬受け止めようと思ったけれど、やめた。
受け流して、投げ飛ばす。
「はっ...! えっ!?」
だけど。
投げ飛ばそうとした瞬間、その腕を掴まれた。
遠心力を殺したラビは、私を地面から引き剥がして投げ飛ばす。
受け身を取ったつもりだったけれど、返し技を返されたことのショックで、壁に激突する。
「がっ!」
視界が一瞬白くなる。
慌てて手甲のシールドを起動すると、重い衝撃音が響いた。
ラビの蹴りがまっすぐにシールドに刺さったのだ。
「くっ!」
「......」
シールドを押し込んでから消し、姿勢を崩して殴打を打ち込むが、大抵は避けられる。
そして、ギリギリ知覚できる程度の速度で反撃が飛んでくる。
それを受け流して、カウンターを差し込み、返される。
「(ニケを抜く暇がない!)」
第一、狙う暇もない。
向こうのほうが遥かに身体能力が上で、意識があったなら私でも勝てないはずだ。
「.........」
「ぐっ、う!」
余計な事を考えている間に、飛んできた蹴りをかわす。
だが、それは“誘い”だった。
いつの間にか、私は壁側に追いやられていた。
「しまっ...」
「......!」
強烈な殴打が、私をかすめて壁に突き刺さる。
ファイスのものと同じ、対物装甲を難なく突破する驚異の力だ。
壁が崩れて、虚空が現れた。
メンテナンス用の外周部空洞だろう。
あそこに落ちたら、100mは落ちることになる。
いくら私でも無事ではいられない。
「.........」
「やっぱりか」
ラビは私を、その虚空へと追いやるつもりのようだ。
ジリジリと距離を詰め、左右への隙をなるべく減らしている。
「(だったら、逆に利用してやる)」
私は構える。
そして、ラビの可動範囲ギリギリで仕掛けた。
当然、返されて動きを封じられる。
でも、今回は私の足が地面についていて、ラビはギリギリで私を抑えたせいで重心が安定していない。
「うおぉおおお!」
私は片足を軸にして反転、ラビをそのまま虚空に突き落とす。
ただ一つ、誤算だったのは...
「っ、まずい!」
「.........」
腕を振り解けなかった事だ。
私はラビごとそのまま空中に放り出される。
この場合、叩きつけられなかった方が生き残るという事になる。
「こうなったらっ!」
私はニケを抜こうとするが、蹴られた反動でその手を弾き飛ばされる。
ニケは遥か下へ向けて落ちていく。
どうしよう、カルセールのエネルギーはもうないし...
助けて、お兄ちゃん...
『本当にどうしようもなくなった時は、最悪の手段に出てみるのも一つの手だ。自分が考える中で、もっとも最悪な案を。やってみて損は無いはずだ、やらなかったら得も損もないんだからな』
その時、お兄ちゃんの本当に古い記憶が蘇って来た。
私が挫折しそうになった時、お兄ちゃんが私に言ってくれた言葉。
私だけの...言葉ァ!
「.........」
「見せてやる! これが俺の、真の力だ!」
私はそう叫びながら、手甲から大容量エネルギーパックを抜いた。
そしてそれをカルセールにあてがい、そのエネルギーを急速に回復させていく。
「(ラビを振り解くのは、生半可な力ではダメだ)」
最悪の策を実行する必要がある。
私はエネルギーパックをラビに投げつけ、ラビがそれを掴むのを確認した。
カルセールを、これまでのどの速度よりも速く抜き、撃つ。
シリンダーが回転し、エネルギーパックをレーザーが貫いた。
堰を切って溢れたエネルギーが、カルセールのレーザーに反応して大爆発を引き起こす。
手甲の緊急用バッテリーでシールドを起動して、何とか自分だけを守る。
ラビは私の腕を離して、爆風に巻き込まれた。
「さて...」
着地の心配をしないといけないな、と思っていた私だったけれど、何かに攫われて地面へと降り立った。
振り返ると、ファイスが私を抱き締めていた。
「ファイス...」
「御無事ですか?」
「当たり前...だ」
実を言うと無傷ではない。
手甲は完全に潰れて、パワードスーツは耐久限界でボロボロだ。
「元ゴールド傭兵であの強さなんて...」
理不尽だ、と私は呟く。
そもそも、あの首輪さえなければ敵対することも無かった。
「...まだ、全然元気みたいだな」
「ええ」
...ん?
首輪?
カルセールにはエネルギーがある...つまり、壊せるのでは?
「ファイス、これを使え」
「...はっ」
二個しかない高速再生ナノマシンユニットをファイスに渡し、私はこっちへ向けて駆け出してくるラビを目で追った。
だけど、明らかに様子がおかしい。
「ラビ! どうした!」
「.........」
ラビの目はこちらを捉えているけれど、その目には何の感情も浮かんでいなかった。
無言で肉薄、回し蹴りを放ってくる。
一瞬受け止めようと思ったけれど、やめた。
受け流して、投げ飛ばす。
「はっ...! えっ!?」
だけど。
投げ飛ばそうとした瞬間、その腕を掴まれた。
遠心力を殺したラビは、私を地面から引き剥がして投げ飛ばす。
受け身を取ったつもりだったけれど、返し技を返されたことのショックで、壁に激突する。
「がっ!」
視界が一瞬白くなる。
慌てて手甲のシールドを起動すると、重い衝撃音が響いた。
ラビの蹴りがまっすぐにシールドに刺さったのだ。
「くっ!」
「......」
シールドを押し込んでから消し、姿勢を崩して殴打を打ち込むが、大抵は避けられる。
そして、ギリギリ知覚できる程度の速度で反撃が飛んでくる。
それを受け流して、カウンターを差し込み、返される。
「(ニケを抜く暇がない!)」
第一、狙う暇もない。
向こうのほうが遥かに身体能力が上で、意識があったなら私でも勝てないはずだ。
「.........」
「ぐっ、う!」
余計な事を考えている間に、飛んできた蹴りをかわす。
だが、それは“誘い”だった。
いつの間にか、私は壁側に追いやられていた。
「しまっ...」
「......!」
強烈な殴打が、私をかすめて壁に突き刺さる。
ファイスのものと同じ、対物装甲を難なく突破する驚異の力だ。
壁が崩れて、虚空が現れた。
メンテナンス用の外周部空洞だろう。
あそこに落ちたら、100mは落ちることになる。
いくら私でも無事ではいられない。
「.........」
「やっぱりか」
ラビは私を、その虚空へと追いやるつもりのようだ。
ジリジリと距離を詰め、左右への隙をなるべく減らしている。
「(だったら、逆に利用してやる)」
私は構える。
そして、ラビの可動範囲ギリギリで仕掛けた。
当然、返されて動きを封じられる。
でも、今回は私の足が地面についていて、ラビはギリギリで私を抑えたせいで重心が安定していない。
「うおぉおおお!」
私は片足を軸にして反転、ラビをそのまま虚空に突き落とす。
ただ一つ、誤算だったのは...
「っ、まずい!」
「.........」
腕を振り解けなかった事だ。
私はラビごとそのまま空中に放り出される。
この場合、叩きつけられなかった方が生き残るという事になる。
「こうなったらっ!」
私はニケを抜こうとするが、蹴られた反動でその手を弾き飛ばされる。
ニケは遥か下へ向けて落ちていく。
どうしよう、カルセールのエネルギーはもうないし...
助けて、お兄ちゃん...
『本当にどうしようもなくなった時は、最悪の手段に出てみるのも一つの手だ。自分が考える中で、もっとも最悪な案を。やってみて損は無いはずだ、やらなかったら得も損もないんだからな』
その時、お兄ちゃんの本当に古い記憶が蘇って来た。
私が挫折しそうになった時、お兄ちゃんが私に言ってくれた言葉。
私だけの...言葉ァ!
「.........」
「見せてやる! これが俺の、真の力だ!」
私はそう叫びながら、手甲から大容量エネルギーパックを抜いた。
そしてそれをカルセールにあてがい、そのエネルギーを急速に回復させていく。
「(ラビを振り解くのは、生半可な力ではダメだ)」
最悪の策を実行する必要がある。
私はエネルギーパックをラビに投げつけ、ラビがそれを掴むのを確認した。
カルセールを、これまでのどの速度よりも速く抜き、撃つ。
シリンダーが回転し、エネルギーパックをレーザーが貫いた。
堰を切って溢れたエネルギーが、カルセールのレーザーに反応して大爆発を引き起こす。
手甲の緊急用バッテリーでシールドを起動して、何とか自分だけを守る。
ラビは私の腕を離して、爆風に巻き込まれた。
「さて...」
着地の心配をしないといけないな、と思っていた私だったけれど、何かに攫われて地面へと降り立った。
振り返ると、ファイスが私を抱き締めていた。
「ファイス...」
「御無事ですか?」
「当たり前...だ」
実を言うと無傷ではない。
手甲は完全に潰れて、パワードスーツは耐久限界でボロボロだ。
「元ゴールド傭兵であの強さなんて...」
理不尽だ、と私は呟く。
そもそも、あの首輪さえなければ敵対することも無かった。
「...まだ、全然元気みたいだな」
「ええ」
...ん?
首輪?
カルセールにはエネルギーがある...つまり、壊せるのでは?
「ファイス、これを使え」
「...はっ」
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