255 / 272
シーズン9-オストプライム編(後編)
253-カナードのお中元
しおりを挟む
三日後。
出港準備が整ったので、オストプライムを一度離れる事にする。
「チェックリスト確認」
『食糧・調達不可物品の満載を確認。燃料類オールグリーン。弾薬類フルです』
「機体チェック完了」
「機関に問題ありません」
『いつでも出撃できるよ!』
「分かった、機関始動!」
アドアステラのブリッジ。
ラビがいないのもそうだけど、アリアとソフがいないのが寂しい。
特にソフの席は私の隣だしね。
「シトリン、航路設定。ラグランジュポイントD-2に一度通常航行で移動する」
『了解....ですが、そこには何も.....』
「いいから」
「機関始動完了、メインスラスター点火」
「サブワープドライブにエネルギー注入」
シトリンがガントリーロックを遠隔解除し、アドアステラの対地浮遊システムが作動する。
地上の重力からこの船の内部の管制制御が独立したことで、私たちは少しの振動を体感する。
「こちらアドアステラ! 軌道上に上がりたい! ルートを指定してくれ」
『こちら自動管制塔です、しばらくお待ちください。ルートをそちらの航行システムにトレースします』
艦船同士が衝突事故を起こさないように、オストプライムのような大型の惑星には自動管制塔がある。
行きも使った奴だ。
すぐに取るべき航路がリンクされる。
有効時間は5分以内。
「出航する!」
舵を取るのは私。
アドアステラは前方向に加速し、そのまま船首を上げることで上昇する。
このままだと航路から外れるため、私はアドアステラを旋回させ、速度を上げる。
惑星の重力から逃れるだけの加速があれば十分だ。
「主人、どこへ行かれるのですか?」
「ちょっとね、会いたい人が居るんだよ」
「彼」はここに来ている。
協力を求めたら、不気味なほど簡単に頷いてくれたのだ。
「彼」は私に何の見返りを期待しているのだろうか?
「ラグランジュポイントD-2に接近する」
大気圏を抜け、軌道上に飛び出したアドアステラは、衛星軌道上にある一点に向けてSWDを起動して接近する。
ワープするよりは遅いが、伝言役は「ワープではなく通常航行で接近してください」とだけ言っていた。
「さて.....来たけど......」
指定の地点の2000m以内に接近したが、何もいない。
近くに何かあるのかと思ったけれど、そうではなかった。
待ってみる事にするかと思ったのだけど......
『D-2付近に出現する物体あり』
「なっ!? ズームしろ!」
映像を拡大すると、空間が僅かに歪んでいた。
そこから、まるでテクスチャーが剥がれ落ちるように白い艦体が出現したのだ。
「遮蔽.....装置......!」
兄のやっていたゲームに出てきたものだ。
艦体の表面を周囲に同化させる光学迷彩に、スキャン波を素通りさせる技術。
『やぁ』
「カナード!」
『悪いけど、ここに居られる時間は短いんだ。僕は指名手配だからねぇ....それとも、ここで墜としてみるかい?』
彼はそう言うけれど、間違いなく未知の技術で回避されるだろう。
だからここは、黙って従う。
「全額前払いだ、例の技術を買いたい」
『ああ、コンテナを射出するから回収してくれ。おまけも付けておいたからね...おまけは海賊には渡すな、パワーバランスが崩れるからねぇ』
「分かった」
『じゃあね』
白い艦はコンテナを射出すると、ワープして消え去った。
私たちはコンテナを回収し、中のカナード製技術データを回収する。
「これは....何に使うのですか?」
「手土産だよ、これからマフィアに会いに行くんだからね」
「なっ.....!?」
この件は私達だけではどうにもならない。
けれど、事を大きくは出来ない。
情報が要る。
「たまには、このネームバリューを生かさなきゃ」
私は拳を握り締め、堂々と宣言した。
出港準備が整ったので、オストプライムを一度離れる事にする。
「チェックリスト確認」
『食糧・調達不可物品の満載を確認。燃料類オールグリーン。弾薬類フルです』
「機体チェック完了」
「機関に問題ありません」
『いつでも出撃できるよ!』
「分かった、機関始動!」
アドアステラのブリッジ。
ラビがいないのもそうだけど、アリアとソフがいないのが寂しい。
特にソフの席は私の隣だしね。
「シトリン、航路設定。ラグランジュポイントD-2に一度通常航行で移動する」
『了解....ですが、そこには何も.....』
「いいから」
「機関始動完了、メインスラスター点火」
「サブワープドライブにエネルギー注入」
シトリンがガントリーロックを遠隔解除し、アドアステラの対地浮遊システムが作動する。
地上の重力からこの船の内部の管制制御が独立したことで、私たちは少しの振動を体感する。
「こちらアドアステラ! 軌道上に上がりたい! ルートを指定してくれ」
『こちら自動管制塔です、しばらくお待ちください。ルートをそちらの航行システムにトレースします』
艦船同士が衝突事故を起こさないように、オストプライムのような大型の惑星には自動管制塔がある。
行きも使った奴だ。
すぐに取るべき航路がリンクされる。
有効時間は5分以内。
「出航する!」
舵を取るのは私。
アドアステラは前方向に加速し、そのまま船首を上げることで上昇する。
このままだと航路から外れるため、私はアドアステラを旋回させ、速度を上げる。
惑星の重力から逃れるだけの加速があれば十分だ。
「主人、どこへ行かれるのですか?」
「ちょっとね、会いたい人が居るんだよ」
「彼」はここに来ている。
協力を求めたら、不気味なほど簡単に頷いてくれたのだ。
「彼」は私に何の見返りを期待しているのだろうか?
「ラグランジュポイントD-2に接近する」
大気圏を抜け、軌道上に飛び出したアドアステラは、衛星軌道上にある一点に向けてSWDを起動して接近する。
ワープするよりは遅いが、伝言役は「ワープではなく通常航行で接近してください」とだけ言っていた。
「さて.....来たけど......」
指定の地点の2000m以内に接近したが、何もいない。
近くに何かあるのかと思ったけれど、そうではなかった。
待ってみる事にするかと思ったのだけど......
『D-2付近に出現する物体あり』
「なっ!? ズームしろ!」
映像を拡大すると、空間が僅かに歪んでいた。
そこから、まるでテクスチャーが剥がれ落ちるように白い艦体が出現したのだ。
「遮蔽.....装置......!」
兄のやっていたゲームに出てきたものだ。
艦体の表面を周囲に同化させる光学迷彩に、スキャン波を素通りさせる技術。
『やぁ』
「カナード!」
『悪いけど、ここに居られる時間は短いんだ。僕は指名手配だからねぇ....それとも、ここで墜としてみるかい?』
彼はそう言うけれど、間違いなく未知の技術で回避されるだろう。
だからここは、黙って従う。
「全額前払いだ、例の技術を買いたい」
『ああ、コンテナを射出するから回収してくれ。おまけも付けておいたからね...おまけは海賊には渡すな、パワーバランスが崩れるからねぇ』
「分かった」
『じゃあね』
白い艦はコンテナを射出すると、ワープして消え去った。
私たちはコンテナを回収し、中のカナード製技術データを回収する。
「これは....何に使うのですか?」
「手土産だよ、これからマフィアに会いに行くんだからね」
「なっ.....!?」
この件は私達だけではどうにもならない。
けれど、事を大きくは出来ない。
情報が要る。
「たまには、このネームバリューを生かさなきゃ」
私は拳を握り締め、堂々と宣言した。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
チート無しっ!?黒髪の少女の異世界冒険記
ノン・タロー
ファンタジー
ごく普通の女子高生である「武久 佳奈」は、通学途中に突然異世界へと飛ばされてしまう。
これは何の特殊な能力もチートなスキルも持たない、ただごく普通の女子高生が、自力で会得した魔法やスキルを駆使し、元の世界へと帰る方法を探すべく見ず知らずの異世界で様々な人々や、様々な仲間たちとの出会いと別れを繰り返し、成長していく記録である……。
設定
この世界は人間、エルフ、妖怪、獣人、ドワーフ、魔物等が共存する世界となっています。
その為か男性だけでなく、女性も性に対する抵抗がわりと低くなっております。
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる