異世界の宇宙に転移しましたが、お兄ちゃんのいない宇宙には住めないので、お兄ちゃんを探す事にしました!〜男装ブラコン少女の宇宙冒険記〜

黴男

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シーズン9-オストプライム編(後編)

259-多種族国家の闇

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それから数日が経ち。
ソフは看守の男...アレブと仲良くなっていた。

「今日の晩飯か? 多分だがハンバーガーだろう」
「わぁ.....凄いんですね、どこから食材を持ってきているんですか?」
「さあな」

アレブは最初はそっけない態度を取り続けていたが、ソフがひっきりなしに話しかけるので次第に心を許していた。
独房に誰も来ない理由についても、話してしまっていた。

「俺たちダラト人は左右の脳で分かれて休めるから睡眠が要らないのさ、よって俺が監視には最適ってわけだ、理解したか?」

アレブリュートはダラト星系Ⅳに生活圏を持つダラト人のバラト種族に生まれた身であり、困窮する故郷を離れて宇宙へ出たものの....

「俺たちは図体が人よりでかいし、力仕事は出来ても細かい仕事は苦手だ。こんな場所でしか雇ってもらえねえんだ」

アレブはそれだけ言うと、長い溜息を吐く。
多種族が混在するオルトス王国だからこその、問題の発露であった。

「それは.....」
「おっと、同情なんてするなよ。俺は金欲しさにダラト人の同胞のイメージを穢してるんだからな」

ソフが余りに酷い身の上に同情しそうになった時、アレブは手でそれを制した。
一度も振り返らずに。

「あんたのご主人様とやらは、いい主人だな」
「....はい! 世界一立派な人です!」
「俺も......いや、何でもない」

疑うでもなくハッキリとはいと口にしたソフに、アレブは顔を歪める。
心の内で溢れかえりそうになった感情を抑え、アレブはその場から立ち上がった。

「飯を取ってくる、逃げんじゃあ、ねぇぞ?」
「....いいえ!」
「それが言えれば元気だな」

彼はそれだけ言うと、独房を後にする。






独房からその手前の看守室に映ったアレブは、頑丈な耐衝撃扉を閉めると、室内の防音システムをオンにして食事を始める。
パンに肉や野菜を挟んだものを三、四口で食い、宇宙では希少な純水で飲み干した。

「.....はぁ」

彼は溜息を吐く。
ここのところの異変に気付いていたからだ。
変わり者の囚人。
怯えてばかりのもう一人の少女とは違い、怯えつつも強くあり続ける少女。
理不尽の中で声を張り上げられる、弱い存在。
それが、大衆の偏見の視線の中で声すら上げられなかった自分と重なるのだ。

「俺らしくも無いな....ん?」

その時。
通信が入っていたので、アレブはディスプレイにそれを投影する。

『こちら管制室。ひとつ前の定時連絡がなかったが、どうしていた?』
「悪いな、どうせ逃げられないと踏んで寝てたんだ」
『チッ、これだから頭の弱い奴は......』

アレブは管制官の暴言を聞き流す。
その上で、表情を一切変えずに言った。

「問題なしだ」
『そうか。次の報告は二時間後だが、不要だ。連絡してくるなよ』
「分かった」

アレブは半ばボタンを押し込むようにして通信を切ると、更に大きなため息を吐いた。

「バカだよな、ここを裏切ったって、いつか俺の居場所なんかなくなるのにな」

一瞬、囚人二人を手土産に自分を傭兵カルに売り込もうと考えついたアレブは、それを恥じた。
所詮は傭兵、このまま敵を作り続ければ、最後には無様な最期が待っている。
それに付き合うくらいなら....

「俺にはこの地獄がお似合いだ」

アレブは席を立ち、耐衝撃扉を開けて独房へと戻っていった。
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