2度目の結婚は貴方と

朧霧

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モーリスさんと市場調査

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 騎士団との打ち合わせが終わった翌日からクロスボウの市場価格調査をすることになり、ミシェルさんからは一人助手を付けてもらった。理由は二人の方が着眼点も良くなるし効率も良くなるから。

ありがたいがおそらく女性一人になると危ないので事件に巻き込まれないように安全面も考慮したであろう。ミシェルさんも必ず男性の助手をいつも連れている。どこの世界でも変わらないのだろうか…。

今回助手をしてくれるのはモーリスさん、22歳の男性。違う商会で働いていたがマララ商会に移ってきた。詳しい事情は知らないが経験は私より豊富なのでとても頼りになる。仕事以外の会話はしたことがないが嫌な印象はなかった。

「これからよろしくお願いします。担当経験も少ないので気がついたことがありましたら教えてください」

「こちらこそよろしくお願いします。そんなに経験豊富ではありませんが一緒に頑張りましょう」

紳士的な人かも、モーリスさん。横柄な態度ではなく上手く一緒に仕事ができそうなので安堵する。その後、3日間私達は王都にある武器屋を全て訪問し店主から話を聞き調査した。中には話好きの店主もいたので時間がかかってしまったが、一日中モーリスさんと同行していたのでだいぶ打ち解けてきたようだった。

「モーリスさん、これで全ての武器屋は訪問しクロスボウの種類と価格は調査できました。ありがとうございます」

「そうですね、一つだけ提案があるのですが滞在しているイルベナ国の商人からも話を聞いてみませんか? 何か情報が得られるかもしれませんし、無いかもしれませんが」

「あっ、そうですね。気がつきませんでした…。ありがとうございます、是非聞いてみましょう」

モーリスさんと私は王都に滞在しているイルベナ国の商人を探し話を聞いた。期待していたよりも情報は少なく正確なものでもなかったが参考になることもあった。モーリスさんにはとても助けてもらったので感謝する。

「モーリスさん、本当にありがとうございました。とても良い経験になりました」

「それは良かった、お役に立てて嬉しいです。とりあえず調査も終わりましたしよろしければこれから酒でも飲みに行きませんか?」
 
「いいですね、行きましょうか」

モーリスさんには何かお礼もしたいしこれから先もまた仕事で一緒になるかもしれないので交流をしておこう。それから私達はラモン亭へ行った。



騎士団の団長執務室では俺とジルベルトが仕事に追われていた。今日中に処理しておかなければならない書類がもう少しで終わりそうだ。

「団長、この書類でとりあえず今日までの分は終わるよ。もうこんな時間だ、お腹空いたな…」

「ジル今日も助かった。そうだな、何か食べに行くか? 何でも食べていいぞ」

「よし、じゃあラモン亭に行こう! 思い出のラモン亭に」

俺は思わず動揺して羽ペンを落としてしまった。なにが思い出のラモン亭だ。揶揄ってるな、ジル。

「何が思い出だ。ラモン亭は料理も美味しいから行ってもいいぞ」

「はいはい、決まりね。今日の分を提出してくるから待ってろよ」

「分かった。戻り次第行こう」

ラモン亭に行ったとしても彼女に会えるわけでもないが、ずっと彼女が気になっているのは事実である。どうしてこんなに惹かれるのか未だに答えは見つからずこの歳にして厄介な問題だ。初めての経験に動揺しているのを悟られないように日々を過ごしていた。

ジルベルトが戻ってきたのでラモン亭に行くが内心では彼女が店に偶然いたりしてと期待もしている。先に入店したジルベルトが呟いた。

「レオ、本当にいる。しかも男連れ」

何のことだかさっぱり分からない。

「ジル、何を言っている? わからんぞ」

「リオナちゃん、久しぶり。打ち合わせ以来だね」

リオナちゃん? まさかと思いジルベルトの歩く方を見た。まさか本当にいた…、しかも男連れ。男性と二人でいる光景を見てしまったら心がざわついて素直に近づけない。

「お久しぶりです。副団長さん、団長さんも」

「こちらの方はどなた様かな?」

衝撃を受けているはずのレオのためにも確認する。

「はい、マララ商会の同僚でモーリスさんです。今回の取引の件で色々と仕事を手伝ってくれたのでお酒を飲みに来ました」

「はじめまして、ジルベルトです。よろしければご一緒してもいいですか?」

「はじめまして、モーリスです。私達は構いませんのでどうぞ」

「レオ、リオナちゃん達が一緒に座っても良いって。早く来いよ」

ジルベルトに呼ばれて俺は彼女に近づいた。

「お久しぶりです、リオナさん」

「お久しぶりです、団長さん。こちらはマララ商会の同僚でモーリスさんです」

「はじめまして、レオナードです」

「はじめまして、モーリスです。団長さんと副団長さんにお会いできるなんて光栄です」

俺は同僚だったのかと一安心した。
なぜだか分からない組み合わせになったが乾杯をしながら談笑する。

「団長さんや副団長さんでも庶民的なお店に入るんですね」

モーリスさんは不思議そうに団長さん達に聞いているが、そういえば最初は私も同じように思ったな。

「騎士団は基本的には貴族も平民もいるから関係ないよ。それにラモン亭は美味しいからね」

「はい、私も大好きなんです! ラモン亭の料理」

大好きという彼女の言葉にレオナードが動きを止めたのでそれを見たジルベルトは反応するレオナードに気がつきかなり重症だなと思った。
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