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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした
002:見た事のない神事の道具
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だが、流の領域者無双も唐突に終わりを告げられる。
店内を半周した程で、突如右耳のすぐ傍で小さな子供の声で「ねぇ、早く来てよ」と、声がした。
その言葉を発した子供は、少し舌足らずな感じであったが、ドキリとするほど鮮明に耳へと響く。
「誰だ!? ……誰も、いない……?」
声がした場所を見ても誰もいなく、相変わらず店内は静寂に包まれていた。
しかし声がした方向を見ると、そこには立派な囲炉裏があり、杉の一枚板の立派なテーブルが囲炉裏を囲んでいる。
その上に不思議な物を流は見つけ、近くへと行ってみる。
うっすらと緑色に発光しているそれは、どうやら『鉾鈴』と言われる物だと認識するが――。
――鉾鈴とは、神社で巫女さん達が神事に使う鈴が沢山付いている物で、全長三十センチ程の短剣のような形の物であるが、この鉾鈴の形は変わっていた。
「これは鉾鈴か? それにしては鉾の部分が鍵のようだ……。それに何故発光してるんだ?」
不審に思いながらも、テーブルに置かれている鉾鈴を手にする。
すると淡く発行していた光が消え失せ、普通の鉾鈴になったようだったが、不思議な事が起こる。
「な、何だ? 持っただけで力が湧いて来るようだ……」
その瞬間、店内が〝ざわり〟と蠢いた気がし、周囲を見渡すが何も異常はない。
だがさらに異常は続く……。
周りを見渡していた流の背後、囲炉裏のテーブルの方から〝コトリ〟と音がしたので振り返る。
すると、そこには織田信長が愛した大名物、白天目茶碗に、点てたばかりの抹茶が香気を漂わす。
「あれ? 今あったか、こんなの? それになんだ……。このウサギの菓子はデカ過ぎだろう」
テーブルの上には白天目茶碗の隣に、全長ニ十センチほどの「妙にリアルな白いウサギの和菓子」が、輪島塗の朱色の盆の上に置いてあった。
そのウサギのお菓子の口元を見ると、和紙製のメモ用紙をくわえており、そこには何か文字が書いてあるようだった。
メモには「〆:いらしゃいませ~。心ゆくまでお茶を楽しみながら、店内をご自由にご覧下さい。お会計に興味がある時は、奥の障子戸の先でお待ちしています」と、書いてある。
妙な言い回しである「会計に興味」と言う、言葉に少し違和感を感じながらも周りを見渡す。
店の奥を見ると確かに豪華な障子戸があり、誰かが会話しているような声が小さく響く。
色々な事が不審なこの店だったが、何故かそれを疑問にも思わず「少し変ねぇ」くらいの認識で。
「へぇ、サービスいいじゃん。しかもこんな高価な茶碗を、一見に出すとは凄い店だな……。でも、こんなデカイ菓子は食べきれないぞ」
そう言いながらも、ウサギの和菓子の背中部分を和菓子切りで、ゆっくりとこそげ取る。
すると何故か和菓子が〝ブルリ〟と震えたような感覚が伝わり驚いていると、背後から「やめてあげて」とまた子供の声がする。
流は思わず振り向くが、やはり誰も居ない。
「何なんだ一体……? って美味い!? ちょ、菓子なのにジビエ肉のような濃厚さと、野生の金木犀のような芳醇な香で心が満たされるようだ!? も、もう一口! って……無い」
子供の声に振り向き、そのまま手に持っていた和菓子をこそげた物を、おもむろに口に入れた瞬間、濃密にして濃厚な美味さの本流に押し流される。
あまりの美味さにもう一口と和菓子を……と思ったが、あのデカイ和菓子が消えていた。
「ど、どこに消えた……。落ちてもいないし、あんな大きなウサギが消えるなんて変だ」
ここにきてようやく、この店の異常さに気が付いた流は、落ち着くために抹茶を一口飲んだ後に次の行動に移す。
それは目の前にある「鉾鈴」を持って、メモに書いてある場所である「障子戸の向こう」へと行く事にする。
なぜか異様に気になる鉾鈴は、持つだけで力が湧いて来るし、何より放したくないと言う思いを強く感じる。
だから価格だけでも聞いみようと思い、可能なら購入しようとしたのだ。
「あの菓子が食べれないのは残念だが、今はコイツを持ってレジへと行ってみるか」
鉾鈴を右手に持ちながら、店内にある骨董達を見つつ楽しみながら移動し、目的の障子戸の前へと辿り着く。
早速、障子戸を開けてみようとしたのだが……。
「なんだこれ!? 開・か・な・い・ぞぅぅぅッ!!」
どう見ても横へとスライドする形だが、何故か開かない。
疲れた流は右側をふと見ると、障子戸と言うアナログの結晶とも言える、障子の和紙の部分に文字が浮かび上がる。
「む、LEDか何かで文字を浮かび上がらせているのか? 骨董屋なのにハイテク仕様なのが解せん」
障子戸の格子の中には「鍵をお持ちのお客様ですね、おめでとうございます。この先にはお代として体験していただく、お客様が見たことも聞いた事も無い物で満溢れています。 が、一度見たら戻る事は大・変・困・難です♪ 進みますか?」と書いてあり、最後には●が点滅していた。
「ふっ。見た事も聞いた事も無い物に満溢れているだと? つまりそれほどの衝撃で今の価値観には戻れないって事だろ? 上等じゃないか、当然進むに決まってるだろう!」
後に流は思う。
なぜあの時、この状況を楽しんでしまったのか……と。
店内を半周した程で、突如右耳のすぐ傍で小さな子供の声で「ねぇ、早く来てよ」と、声がした。
その言葉を発した子供は、少し舌足らずな感じであったが、ドキリとするほど鮮明に耳へと響く。
「誰だ!? ……誰も、いない……?」
声がした場所を見ても誰もいなく、相変わらず店内は静寂に包まれていた。
しかし声がした方向を見ると、そこには立派な囲炉裏があり、杉の一枚板の立派なテーブルが囲炉裏を囲んでいる。
その上に不思議な物を流は見つけ、近くへと行ってみる。
うっすらと緑色に発光しているそれは、どうやら『鉾鈴』と言われる物だと認識するが――。
――鉾鈴とは、神社で巫女さん達が神事に使う鈴が沢山付いている物で、全長三十センチ程の短剣のような形の物であるが、この鉾鈴の形は変わっていた。
「これは鉾鈴か? それにしては鉾の部分が鍵のようだ……。それに何故発光してるんだ?」
不審に思いながらも、テーブルに置かれている鉾鈴を手にする。
すると淡く発行していた光が消え失せ、普通の鉾鈴になったようだったが、不思議な事が起こる。
「な、何だ? 持っただけで力が湧いて来るようだ……」
その瞬間、店内が〝ざわり〟と蠢いた気がし、周囲を見渡すが何も異常はない。
だがさらに異常は続く……。
周りを見渡していた流の背後、囲炉裏のテーブルの方から〝コトリ〟と音がしたので振り返る。
すると、そこには織田信長が愛した大名物、白天目茶碗に、点てたばかりの抹茶が香気を漂わす。
「あれ? 今あったか、こんなの? それになんだ……。このウサギの菓子はデカ過ぎだろう」
テーブルの上には白天目茶碗の隣に、全長ニ十センチほどの「妙にリアルな白いウサギの和菓子」が、輪島塗の朱色の盆の上に置いてあった。
そのウサギのお菓子の口元を見ると、和紙製のメモ用紙をくわえており、そこには何か文字が書いてあるようだった。
メモには「〆:いらしゃいませ~。心ゆくまでお茶を楽しみながら、店内をご自由にご覧下さい。お会計に興味がある時は、奥の障子戸の先でお待ちしています」と、書いてある。
妙な言い回しである「会計に興味」と言う、言葉に少し違和感を感じながらも周りを見渡す。
店の奥を見ると確かに豪華な障子戸があり、誰かが会話しているような声が小さく響く。
色々な事が不審なこの店だったが、何故かそれを疑問にも思わず「少し変ねぇ」くらいの認識で。
「へぇ、サービスいいじゃん。しかもこんな高価な茶碗を、一見に出すとは凄い店だな……。でも、こんなデカイ菓子は食べきれないぞ」
そう言いながらも、ウサギの和菓子の背中部分を和菓子切りで、ゆっくりとこそげ取る。
すると何故か和菓子が〝ブルリ〟と震えたような感覚が伝わり驚いていると、背後から「やめてあげて」とまた子供の声がする。
流は思わず振り向くが、やはり誰も居ない。
「何なんだ一体……? って美味い!? ちょ、菓子なのにジビエ肉のような濃厚さと、野生の金木犀のような芳醇な香で心が満たされるようだ!? も、もう一口! って……無い」
子供の声に振り向き、そのまま手に持っていた和菓子をこそげた物を、おもむろに口に入れた瞬間、濃密にして濃厚な美味さの本流に押し流される。
あまりの美味さにもう一口と和菓子を……と思ったが、あのデカイ和菓子が消えていた。
「ど、どこに消えた……。落ちてもいないし、あんな大きなウサギが消えるなんて変だ」
ここにきてようやく、この店の異常さに気が付いた流は、落ち着くために抹茶を一口飲んだ後に次の行動に移す。
それは目の前にある「鉾鈴」を持って、メモに書いてある場所である「障子戸の向こう」へと行く事にする。
なぜか異様に気になる鉾鈴は、持つだけで力が湧いて来るし、何より放したくないと言う思いを強く感じる。
だから価格だけでも聞いみようと思い、可能なら購入しようとしたのだ。
「あの菓子が食べれないのは残念だが、今はコイツを持ってレジへと行ってみるか」
鉾鈴を右手に持ちながら、店内にある骨董達を見つつ楽しみながら移動し、目的の障子戸の前へと辿り着く。
早速、障子戸を開けてみようとしたのだが……。
「なんだこれ!? 開・か・な・い・ぞぅぅぅッ!!」
どう見ても横へとスライドする形だが、何故か開かない。
疲れた流は右側をふと見ると、障子戸と言うアナログの結晶とも言える、障子の和紙の部分に文字が浮かび上がる。
「む、LEDか何かで文字を浮かび上がらせているのか? 骨董屋なのにハイテク仕様なのが解せん」
障子戸の格子の中には「鍵をお持ちのお客様ですね、おめでとうございます。この先にはお代として体験していただく、お客様が見たことも聞いた事も無い物で満溢れています。 が、一度見たら戻る事は大・変・困・難です♪ 進みますか?」と書いてあり、最後には●が点滅していた。
「ふっ。見た事も聞いた事も無い物に満溢れているだと? つまりそれほどの衝撃で今の価値観には戻れないって事だろ? 上等じゃないか、当然進むに決まってるだろう!」
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