日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

016:白い奴

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「〆:あら、あらあら? 古廻様どうされたのですか、随分とお早いお帰りで」

 流は異怪骨董やさんへ帰って来れた安堵感からか、急速に意識が飛んでいく。
 複数の気配が流を見守るように周りに集まって来たが、やがてそれも曖昧になる。 

「〆か……俺は満足した、しかも大満足だ。だからもう……かえ……る」

 そう言うと流はその場に崩れ落ち意識を失った。

「〆:一体何が……でも満足されたようで何よりです。さて、お部屋とお布団の用意をして来ますかね。あなたは流様・・の事を頼みましたよ」

 〆は誰にともなくそう言うと、奥へと紙飛行機になって飛んで行く。
 その様子を一羽の白兎がじっと見ていた。




(ここは……何処だ……白くて暖かい……あぁ、手がひんやりとして気持ちがいい……そうだった、俺は骨董屋さんに付いてそのまま意識を失ったのか?)

 首を上げようとしたが、まるで動かない。仕方なく目線だけ手を見ると、手を冷やしてくれているのか、髪は艶やかな黒絹のようで、着物は品の良い白い姿のとても綺麗な女性の横顔が見えた。

(誰だろう……でも気持ちがいい……痛みが引いていく……)

 そのまま流はまた意識を失ったのだった。




「ハ!? ここは……やったぞ! 知らない天井だ!!」

 突如意識が覚醒する流。そして目にする知らない天上を見てお約束を忘れない漢、それが流である。
 とは言え、冷静に周囲を見ると、ここが豪華な空間だと気が付く。

「まあ、骨董屋さんなんだろうが……こんな部屋もあるのか?」
 
 見渡すと十二畳程の部屋に趣味の良い置物が飾られた和室だった。
 美琴は流の枕元にあるのが、何故かすぐに感じる事が出来た。 

「手はどうだ……って、なんだこれ? あ! こいつはあのお菓子か!?」
 
 流は自分の手に乗っているひんやりとした重い物を見る。するとそこには以前、流が落とした和菓子のウサギが随分と大きくなってポテンと乗っていた。

「お前が冷やしてくれてたのか、ありがとうな。どれ、お礼に食べてやろう」

 どこの鬼畜かと思うような酷い事を言いながら、流はウサギを捕まえようと手を伸ばして鷲掴みにし、口に入れようとしたその時。

「ヒェェェェ。ボクを食べないで~」

 と、間の抜けた声がすぐそこから聞こえる。それを不審に思い周りを見渡すが、近くには誰も居ない。

「え? どこから……だが断る! 極上のスイーツは俺の物だ!」

 そう言うと流は誰かの懇願も無視し、ウサギの尻尾を貪る。

「う、うま~い!! この前食べた時よりも濃厚な味わいと風味が増してるぞ。最高だ、もう一口……」
「ひゃぁあ!? もうこれ以上はだめなのです」

 そう言うと和菓子のウサギはピョンと跳ね、流から距離を取った。

「うわ! え? 生きてるのコレ? 生物なのかよ……和菓子なのに?」
「もう!! ボクは生きているし、和菓子でもないのですよ。ボクは『因幡の白兎』って名前があるんだからね」

 因幡の白兎を見ると、怒っているのかスタンピングを激しく〝スタタタン〟と三回した後に、もっふりとした毛並みなり、二本足で立ち上がった。

「ほら、これがボクの姿なのです」
「マジかよ……お前食べたら美味かったぞ、しかも極上に」
「それはそうだよ、ボクを食べると色々元気になるのですよ。お客人も元気になったでしょ?」
「それ、何パンマンだ? って、これは……」

 流は自分の右手を擦りながら、筋肉や関節の激痛が嘘のように無くなっているのを感じ、さらに体中の打身や擦り傷も無くなっている事に気が付く。

「お~本当だ! 凄いウサギだな~」
「ウサギじゃないのです。因幡の白兎なのです」
「長いな……じゃあイナバシロで」
「どっかの湖みたいな略し方しないで欲しいのです!」
「我儘なウサギだ。ちっ、選べ。『シロ』か『イナバシロ』か『ワガシ』の三択だ。わたがしは殿堂入りしてるから却下だぞ?」
「酷いです! 特に三つ目がひどいですぅ」

 わたがしが選べない事なのか、それとも違う原因なのか、因幡の白兎はさめざめと泣いた。
 丁度その時、入口の襖がすっと開き、〆が紙飛行の姿で飛んでくる。

「〆:もう何をしてるんですか古廻様は。この子が泣いてるじゃないですか、ほら可哀そうに目が真っ赤ですよ」
「いや、白ウサギだから元々だろ?」
「〆:それもそうでしたね」

「「あーはっはっはっは」」

「もう! 二人して酷いのです! もう知らないのです!」
「〆:ごめんなさいね、ついつい面し、いえ仲がよろしいのでついね」
「ついが何度あるのですか! 番頭さん、ひどいのです」
「〆:ふふ。それと古廻様、この子の名前は『因幡』と呼んであげて下さいね。それと背中から食べるのは止めてあげてくださいね。昔この子が神様に悪戯されて、怪我した背中を塩水漬けにされて酷い目にあってからトラウマなんですよ」

 やっぱり「神話の話ってあるんですね」と、流は遠い目で庭を見る。鹿威ししおどしがコーンと鳴り響いていた。
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