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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

017:【異怪骨董やさんは知っている】

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「ともあれ、因幡ありがとう助かったよ。ずっと冷やしてくれたんだろう? とても気持ちよかったよ。そして薬? もありがとうな、また食べさせてくれよな」
「う、うんあれは……そ、そうだね。また機会があれば食べても良いよ。でも今度はちゃんとボクが良いって言ってからなのですよ?」
「分かった、楽しみだなぁ 因幡のお菓子は」

 にやにやしている流を見て〆が溜息を吐きつつ苦言を呈す

「〆:はぁ~。古廻様が幼女の尻を貪る趣味がおありと存じませんでしたが、あちらの世界ではほどほどにして下さいませよ? 流石に幼女趣味はあちらの世界でも、異常と思うので」
「ちょっとマテ! 幼女? 因幡が?」
「失礼な、ボクは幼女じゃないですよ。本当の姿は一度見たら夢に確実に出るほど綺麗系なおねいさんなのですよ!」
「〆:でも今は幼女なんでしょ? 今後の成長に期待ですね」
「あ~ぅ……」

 因幡はしょんぼりとした顔になり、長いお耳がシュンと垂れてしまった。

「そ、それはすまなかったな。でも美味かったのは事実だから元気出せよ」
「それは慰めになってないのです」
「〆:古廻様、幼女であろうがなかろうが、女の尻を貪る行為は如何なものかと思いますよ? しかも無許可で」
「ちょっとマテ、人が聞けば誤解されるような言い方はよせ」
「〆:時に、今後のご予定は如何なさいますか?」
「サラッっと無視しやがって……そうだな、もう満足したから家に帰って熱い風呂でも入って寝るさ」
「〆:そう……ですか。でも本当によろしいのですか、このままお帰りになっても?」
 
 因幡が外から入って来た蝶々を追いかけ始めたのを見ながら、流は異世界の事を考えていた。

(セリアとの約束があったが、まぁ無事だろうし問題ないだろう。あ、でもペンダント返してないな……)

「ま、ちょっと気になる事はあるけど、大満足なのは違いないから問題ないだろう」
「〆:そうですか、それなら今すぐお帰りになりますか?
「そうだな、じゃあ帰るとするか。美琴はこのまま持っていても?」
「〆:ええ、問題ありませんよ。むしろ私達を除き、古廻様以外が持つ事は不可能でしょうし」
「それは随分と好かれたものだ」

 流は美琴をそっと撫でるると〝ふるり〟と揺れた。

「じゃあ美琴、行こうか」

 美琴を手に取り入口へ向かう。長い廊下には見たことも無い骨董や美術品が品よく陳列されているのを見ると、思わず愛でたくなってしまう。
 そんな誘惑に打ち勝ち店に戻ると、そのまま入口へと向かい玄関の前まで来る。

「それじゃあまたな〆。あ、それと俺はここにまた来れるんだろう?」
「〆:はい、それは何時でも。(でもその心配は必要ないかと思いますが)」
「ん、最後に何か言ったか?」
「〆:いえ別に、それでは古廻様ごきげんよう」
「あぁ、またな」

流は玄関の引き戸を開ける。以前の何もしても動かないような抵抗感は無く、今度はすんなりと拍子抜けする程に普通に開かれた。

「おお! ちゃんと開いて良かった。さて帰るか~」

 と、一歩踏み出し進み出る――が。

「〆:お帰りなさいませ、古廻様」
「……は?」

 流が店から一歩外へ踏み出したと思ったら、また異怪骨董やさんの店内だった。催眠術とかそんなちゃちなもんじゃない、もっと異質な何かだった。
 流は額を滴る汗を拭う事もせず語りだす。

「あ……ありのままい――」

 と、〆がかぶせるように話す。 

「〆:ハイハイ、AAも無しに滑稽な事は言うのはお止め下さいね。とりあえずお帰りなさいませ、ようこそ異世界ライフへ」

「お前、こうなる事を知ってたな? はぁ。道理で素直に帰すと思ったよ」
「〆:失礼な。古廻様が本当に満ち足りた顔をしておいででしたから、ちゃんと帰れると思っていましたよ。だから引き戸も開いたじゃないですか?」
「言われてみれば最初は開きもしなかったな」
「〆:ええ、だから満足したのは間違いはないのでしょうね。でも何か心残りがある……違いますか?」

 流はポケットの中にあるペンダントを握りしめる。

「ったく、お前には敵わないねぇ」
「〆:ふふふ 二つも心残りがあればそれはもう」
「っ!! お前知ってたな? それでそのしたり顔かよ。本当に性格が悪い妖怪屋敷だ」
「〆:む、妖怪屋敷じゃないですよ。全く失礼なお方ですね」
「失礼なのはお前のプライバシー侵害だよ。はぁ~、もう疲れたから飯の用意してくれ」


 するとコトリと背後で音がした。それは確認するまでもなく豪華な膳が用意してあった。
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