日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第一章:素敵な出会い、それは狂った妖刀でした

018:気取らない料理と、青いエビ

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「準備がイインデスネ、〆衛門」
「〆:それはもう、お戻りになると思っていましたので念入りに準備させました」
「やっぱり知ってたんじゃねーかよ!」
「〆:ふふふ。さぁ、冷めないうちにお召し上がりください」
「おぉ、これはまた……」

 それは京懐石のようでもありながら、季節を問わず流の好物が並んでいた。
 まずは食前酒で喉を潤す。

「〆:まずは先付から、明石産の鱧の湯引きを紀州産の梅肉でご堪能ください」
「贅沢だな……じゃあ早速。――うまい」

 流は一言「うまい」と、だけしか言えなかった。人は本当に美味なる物を食べると言葉が少なくなるのだと魂が教えてくれる。

「〆:次は前菜の三品です。右から伊勢海老の新丈、四万十産の鮎の南部焼き、その辺の川に居た川海老の握りです」
「ちょっとまて、最後の何かおかしくないか、色々と!?」
「〆:まぁまぁ、そう言わずに食べてみてくださいな。お腹を壊すのは私じゃありませんし」
「ったくおまえなぁ~。まぁ他のは美味そうだし……」

(大体川海老って生で食えるのか? 〆が変なの出す訳ない……あるのか?)

「〆:ム、今失礼な事を考えてましたね? 川海老でも生で食べれる事が出来る物もありますよ。それはさて置き、お酒は何がよろしいですか? 本日の料理に合うのは飛〇喜の大吟醸か、十〇代の龍〇等はいかがでしょう?」
「うーん、ジジイがよく飛〇喜を呑んでいたからそれにしようかな」
「〆:かしこまりました」

 奥から因幡が頭の上に酒の盆を頭に乗せてトテトテと歩いて来る。耳が潰れているけど痛くはないのだろうか?

「お待たせしましたのです。どーぞ、お客人」

 因幡は意外としっかりとした持ち方で冷酒器より冷えた酒を注いでくれた。

「このぐい呑みもいいねぇ。こんな江戸切子見た事ないな、角度によって色が変わるなんてあるのか? たまらない……この鋭利な角度で削っているはずなのに、なんで巻き込むように中まで斬り込みが続いているんだ? 意味が分からない……それにこの軽さと来たら、まるで『うすはり』のようじゃないか」
「〆:はいはい、古廻様。お料理が冷める前にお食べくださいね」

「お? 悪い悪い、つい良い物を見ると、な?」
「〆:ふふふ、本当に骨董がお好きなのですね。このぐい呑みは天保後期に高名なビードロ職人が作ったとされる妖器です」

「ぶほっ!? ちょっとマティ! また……泣いたりしないよな?」

 流は一口呑んだ酒でむせてしまう。

「〆:ええ、大丈夫ですよ。見る者の心を虜にする位の弊害ですからね。魅了が進めば器と毎夜お話する位ですから問題ありませんね。それに古廻様なら今更では?」
「ぐぬぅ言い返せないのが辛い」
「そうですよ番頭さん、お客人は幼女の尻を貪るのが趣味なのですよ」
「お前ら、叩き斬ってもよい?」 

 おもむろに美琴へ手をかけると、因幡は兜に折られた〆を頭に被って逃げていく。

「はぁ。うるさいのも居なくなったし、ゆっくりと堪能しますかね。まずは伊勢海老の新丈か……」

 箸でそっと撫でるとほろりと崩れ、不思議な色の餡とマッチした伊勢海老が顔をのぞかせる。そして餡をふんだんに絡めた伊勢海老を待ちきれない口へと落とし込む。

 そして一口噛みしめる。

「っ!? 嘘だろ……新丈? これが? 海老の旨味を凝縮してるのに、くどい嫌みが無い。それでいてこの爽やかさはどうだ。フライよりも濃厚で、生よりも食材自体の甘味があり、海老なのにプチンと弾ける弾力が、通常の伊勢海老とは比べる事すら烏滸がましいほど……そう、海老と言うジャンルその物が化身したかのようだ」

 自分でもアホな事を言っているとは思うが、それしか表現出来ず「美味さの本流」を体全体で感じる。

 憑かれたように一心不乱で食べ終えると、次は鮎の南蛮焼きへ箸を進める。

「ふ~む。見た目はありきたりな感じで、一度片栗で素揚げした物か?」

 箸を背に入れてみる。するとありえない現象が起こる。

「は? パリっとした感触があったぞ? まさか……」

 一口食べると驚く事に揚げたてだった、しかも甘酢がかかっているのに関わらずサクサクだった。

「んまい!? 甘酢の酸味が何の酸味だ? 酢じゃない、何か濃厚な味の果物だ。しかも鮎の繊細な風味をパンチの強い甘ダレが全く邪魔していない! ありえないだろうこれは……付け合わせの玉ねぎも異常だ。玉ねぎの味がシッカリとするのに、みょうがの風味が同時に来る……しかも絶妙にマッチしてる。更に骨もカリカリに揚がっているのにも関わらず、身はホッコリと柔らかいとか……もう意味が分からない」

 驚きの連続で大満足中だったが、ついにアレの番になってしまった。そう、川海老握り(その辺の川産)に。

「……しかも寿司? 川海老の? って言うかこの川海老デカくない? それに色がなぁ」

 あらためて見ると気持ち悪いほどの青色をしている。
 何かケミカル感たっぷりの、海外のお菓子のような見た目と産地に戸惑ってしまう。

「ここまで美味しかったよな……あぁ、今まで食べた事の無い味ばかりだった。でもこれは……食えるのか??」

 飛〇喜をゴクリと一口呑み込み、鼻孔を突き抜ける吟醸香のフルーティな余韻に浸りつつも、現実を直視する流はついに決断する。

「よし、食ってやる!」

 覚悟を決めて右手で寿司をつまむと、生醤油にスっと浸し口に放り込む。
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