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第二章:偉大なる称号

042:魚介系が美味しいのは鉄板です!

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 ギルドを出た流は精神的に疲労しつつも、見慣れない街並みを楽しみつつ、今夜の事を思うと疲れがドっと湧き出るのを感じる。

「は~あ、全く酷い目にあったな。しかしまた夕方か~。面倒な事を勢いで言ったが、またあの変態紳士と会うのか……憂鬱ゆううつだ」
 
 ふと流は腹が減っている事に気が付く、街中からも食事の支度をしているのか、あちらこちらから食欲を刺激する香が漂っていた。

「よし、腹減った! 確かこの先の広場で屋台が所狭しとあったな。そこで飯にしよう!」
 
 そう思い立った流は足取りも軽く広場へと向かった。
 中央広場に来ると、威勢のいい呼び込みがあちらこちらで聞こえ、タイムセールのような事から、セット販売まで色々な事をしている。

 特に面白いのが野菜の実演試食と通行人が話しているのを聞き、早速その屋台へと向かう。
 どのような物かと流も興味をそそられ黒山……いや、この世界では金髪が多いので、金山の人だかりとも言うべき後ろから、野菜売りの屋台を見る。

「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! こんな野菜を見た事あるかいお客さん? なんとこの野菜は肉なんだ! 何を言っているのか分からないと思うが、言っているオイラも分からない。あ! そこの人、石を投げるのは止めておくれよ! まずは百聞は一見にしかず、試しに一口食べてみたい人は手をあげておくれ! もし肉の味がしなかったら金貨を贈呈しちゃうよ~さあさあ誰か居ないかい?」

「俺が試す! 食べさせてくれ!」

 流は迷うことなく手をあげて、人だかりをかき分けて屋台の前に来ると、そこにはどこかの絵本で見たような全身モフモフのウサギの獣人がいた。少し因幡っぽい。

「ウサギだ!」
「え? ウサギですが何か?」
「あ、いやスマン。ちょっと興奮した」
「妙な性癖をお持ちですね、そんな事より早速食べてみてくださいよ。ほらほら」
「よし、どれがその肉野菜なんだ?」
「肉野菜炒めみたいな言い方やめてくださいよ、えっとコレですよコレ!」

 ウサギの獣人が出したのは真っ赤なニンジンだった。香はニンジンそのものであるが、味が肉と言う事だが……。

「これニンジンだよな、まあ食べてみるか! ん……お? おおおお!? 肉だ!! しかもニンジンなのに汁気がたっぷりで、その肉汁がジューシーすぎて美味いぞこれ! ニンジンだけど」

 観客も興味津々で沸きあがる。

「でしょう? 最近品種改良に成功した、意味不明なニンジンなんですよ。別に毒とかは無いですよ、王都の食品衛生局に調べてもらいましたからね」
「確かに意味不明だな。他にも種類があるのか?」
「ええ、ありますよ。今日持ってきたのは三種類で『肉味』『イチゴ味』『魚味』ですね」

「また肉以上に際どいワードが一つあったが、まずイチゴ味を試させてくれ」
「はい、どーぞ。砂糖をかけて食べると一層美味しいですよ~! 高いから無いけど」
「砂糖無いのかよ! まあいい。う~ん、これもうま~い! 上品な甘みが奥深い酸味とコラボして、イチゴ本来の味を一層引き立てている! ニンジンだけど」
「でしょ~? お客さん分かってるね~。さてはプロのニンジン家だな!」
「なんだよ、プロのニンジンって……野生の白菜みたいな強烈なインパクトがあって、ちょっぴり怖いぞ」
「確かに野生の白菜って響きは、ちょっと怖いね……」

 周りのお客も想像したのか、ウンウンと首を上下している。

「じゃあ最後に魚味をど~ぞ!」
「ふむ、魚か……刺身みたいな感じか? どれ――ブッフォ!! 生臭っさ!! おい、ご店主! これはまずいぞ!」
「そりゃそうですよ、火にかけましょうよ。肉は生で食べれるのがありますけど、魚は生で食べる人はそうは居ませんよ」
「そういう事は早く言え!!」
「まったく酷い目にあった……あ、そうだ。このニンジンならお土産に丁度いいな。ご店主、魚はいらないから、肉とイチゴを十本ずつくれ」
「えええ!? こんな野菜買ってくれる人がいるなんて驚きだな~」
「お前は何をしにここに来たんだ? ん? 言ってみろ!」
「あ、そうでした。毎度あり~お客さんは神様です!」
「安い神様だな」

 観客も頷いている。そんな客達を眺めながら、ニンジンを包んでいるウサギの獣人に、流は気になる事を質問する。

「まだ色々種類があるのか?」
「ありますよ~。今日は持って来てないけど、村には色々あるんですよ。特にメロン味なんかオススメですね。クッソマズイ魚味なんかと違って、それはもう最高に美味いですよ。正に神がかっている美味さですね!」

 『『『じゃあそっちを持って来い!!!!!!』』』

 流と観客から総突っ込みを入れられてしまう、ウサギのニンジン屋さんだった。
 
 ウサギのニンジン屋さんから品を受け取り、今度村へ行くと約束して他の屋台へ向かう。
 おまけでくれたイチゴ味のニンジンをかじりながら歩く。とても遠くから「お客じーん」と可愛らしい声が聞こえた気がした。


 
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