日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第四章:凶賊と、人類最高の【ざまぁ】はこちらです

088:ラーマンの真実と、ブレない娘

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 その日はクエストを受けずに、殺盗団の殲滅準備をするために一度帰る事とする。

「ご店主、待たせてすまなかった。うちのラーマンは大人しくしてたかい?」
「あ~、あいつならホレ、そこの木陰で寝てるぞ」
 
 見ると屋台の裏にある街路樹から伸びる日陰で、ラーマンは気持ちよさそうに寝ていた。
 しかも周りには子猫や老犬、そして小鳥が頭や背中と足元で寝ており、なんとも平和であたたかい空間がそこにあった。

「あ~なんか癒されるなこれ……」
「本当ですねぇ……」

 二人はその光景をしばらく見ていたが、ふいにラーマンが目を覚ます。
 すると、ラーマンとマッタリしていた動物達も自然と立ち去っていく。

「へぇ~、みんなちゃんと分かって帰っていくんだなぁ」
「そうなんですよね、ラーマンがくつろいでいる時は色々な動物達が一緒に寝てるんですけど、ラーマンが目を覚ますとみんな何処かへと行ってしまうんですよ」
「面白なぁ」

 そう話しているとラーマンが二人に気が付いたのか、のっそりと歩いて目の前に来る。

「……マ、マ?」
「ああ、もう用事は済んだから問題ないよ」
「……マ」
「そうだな、じゃあ商業ギルドへ先に行ってくれるか?」
「……マ~」
「いや、待たせたのはこっちだからな。少しは腹の足しになったなら良かったよ」

 ラーマンと自然に会話している流に、メリサは一瞬からかわれていると思ったが、どうやら本当に話をしているようだと驚愕きょうがくする。

「ナ、ナガレ様。そのラーマンと話せるのですか!?」
「え? そう言えば話してる事が分かるぞ!? 普通に話してたけど何だこれ」

 見た目は筋骨隆々な男でとてもパン屋に見えないが、驚いている二人にパン屋の店主が、楽しそうに声をかける。
 
「はっはっは。そう言う奴はたまにいるのさ。そして俺もその『たまに居る』部類だ」
「マジかよ。『こんにゃく』でも食べたのか、おっさん?」
「こんにゃく? は知らんが生まれつき分かるんだよ、不思議とな」
「そう言うもんなのか……」

 流は店主とラーマンの生態やら、接し方などをしばらく話す。
 どうやらラーマンと言う動物は、人と同じように接しないと失礼らしいのだが、大抵の人々は「乗り物」としか思っていないらしく、パン屋のオヤジは残念そうにしていた。
 そんな貴重な話を聞けた流は、パン屋のオヤジからお礼にパンを全部購入し、また来ると言って帰る。

 ラーマンの背に乗りながら、メリサとパンを食べる。味はバターとも違うが、コクがある物を生地に練った癖になる味であり、メリサも食べた事のない味だと喜んでいた。
 そんなラーマンの背中にはパンのかけらが落ちていたが、不思議とどこからか飛んできた小鳥がそれを掃除してくれたので、二人は笑い合う。
 そんな楽し気な時間は、あっと言う間にすぎてしまい、気が付けば商業ギルドの前だった。

「じゃあメリサ、討伐日デートの日時が決まったら教えるから、期待して待っていてくれ」
「デ、デートですか!? あの神話の?? 生きていて良かった……」
「おいおい。そんなに大きな声で言うなよ、恥ずかしい。じゃあそんな訳だ。またな!」

 顔を真っ赤にして立ち尽くすメリサに別れを告げ、流はラーマンの背に揺られながら「昼から享楽亭」へ向けて進む。

(メリサの奴も役者だな~。ギルドの入口であの演技とはな。顔を染めている所とか、本当にデートの約束みたいじゃないか。仕事のプロとしての矜持を学ばせてもらったな)

 額面通りに「デート」という言葉を真に受け、心底嬉しいメリサだった。しかし流には演技に見えたらしい。

 今日も二人の溝が埋まる事は無かったのであった……。


 ◇◇◇


 流が昼から享楽亭が見える所まで行くと、気配察知に敵対的な雰囲気を持つ者がいる事を察知する。

(宿屋の向かいの建物の影と、露天の店主もそんな気配だ……。そして宿屋の中にもいるな、多分一階の食堂か?)

 剣呑な眼差しでこっちを見る露天の店主と、影に潜む男からの視線を合わせず確認しながら、ラーマンの上でリラックスした姿勢で宿屋の前に到着する。

「ラーマン、悪い。宿を引き払って来るから少し待っててくれないか?」
「……マ」
「ああ、そんな感じで頼むよ」

 流が宿屋へ入ると、ラーマンは〝ぬぅ~〟っと伸びると丸くなって目を閉じる。
 宿の入り口を潜り、すぐ横にある食堂をチラリと見ると、一目で分かる如何いかにもと言う男達のテーブルが見えた。

(あそこで食事している奴らか? ギラついた目で見やがって、ド素人なのか?)

 目つきが悪い男達の視線をこれでもかと背負い、流は内心呆れながらカウンターへと向かう。

「おーい。お客さんですよ~」
「はいはーい。あ! お客さーん、何処に行ってたんですか~? 戻ってこないから心配してましたよ」
「心配かけて悪かったな。それで今日は宿を引き払いに来たんだ」

 テーブルの目つきの悪い男達が、ざわりとする。そんな分かり易い態度に「馬鹿なのかこいつら?」と、逆に心配になる流は、宿屋の娘(困惑中)に話を続ける。

「泊る場所が出来たんでね、突然で本当に悪いな」
「また……そうやって私を捨てるんですね?(憤慨)」
「人聞きの悪い事を言うな、俺がいつお前を拾った」
「あんなに心から通じ合ったって言ってたのに(哀愁)」

「え?」
「え?」

「いや、あれはお前もこの宿の名前が変だって言うから……」
「え? 変なのはお客さんですよ……(困惑)」

「え?」
「え?」

「……俺のどこが変か言ってみろ」
「だって、こんな可愛い娘を見たら普通いやらしい目で見るじゃないですか! 絶対変ですよ! さては一部の『高尚な趣味』の女子に人気な方なんですね!(ドヤ顔)」

「…………」
「(ニヤリ)っアイダダダッ!?」

 流は右手でチョップを三連叩き込みむ。

「お前みたいなチンチクリンに、誰が欲情するか!! 馬鹿め」
「うぅ、チョップ三連もしなくていいじゃないですか~」

 そう言うと宿屋の娘(守銭奴)はうるむ瞳と上気する頬で、両手を出してアピールする。

「ひゃぃんッ!」
「お前は本当にブレない奴だな。世話になった? から駄賃だ」

 流は右手の親指で銀貨を一枚弾くと、宿屋の娘(ブレない)の額にビシリと貼り付ける。

「お、お客しゃん……すき……(愛、それは真実カネ)」
「お前の恋愛の基準は金か? はぁ~。ここまでブレないと、いっそ清々しい奴だよ。残りの宿代は好きに使ってくれ。それとこれは部屋を空けた迷惑代の金貨だ、受け取ってくれ」

 その行動に目つきの悪い男達がボソボソと話し始めている。
 内容は聞こえないが、どうやら流の言動に気色ばんでいるようであった。
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