日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第五章:殺盗団を壊滅せよ

119:いさぎの良い男

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「ば、バケモノ……」
「んだあ~? オレをバケモノ呼ばわりする奴わ~お前だな~?」

 そう言うとバケモノと呼ばれた『赤鬼』は、エッゾを鷲掴わしずかみにして持ち上げると、無造作に岩山の向こうへと放り投げる。

「ウワアアアアア!!」
「エ、エッゾオオオオ!!」
「さでど、おめーらはどごさぶん投げてやんべかな?」

 赤鬼は愚鈍そうな巨体に似合わず、機敏に賊達を捕まえるとあちこちへと放り投げる。

「一塊になるな! バラバラに逃げるぞ!」
「クッソ、分かった! ヤルンお前も死ぬなよ!」

 ヤルンは岩場を縫うように逃げる。途中で仲間の悲鳴が聞こえるが、今は逃げる事を優先に全力で走る。
 息も絶え絶えに走りながら、ヤルンは生き物の気配のようなモノを感じて足を止める。
 岩場に身を隠しながら、その気配のする方を〝そっと〟覗く……。

(ひぃっ!? な、何だあれは――)

 思わず心の中ですら絶句する程の、恐ろしい光景がそこにはあった。

 針の山に刺さりながらも生きている人間。
 大きな鍋に入っている真っ赤に煮えたぎる液体の中で、悶えながらも生きている人間。
 先程の巨人と同じ怪物が持つ、巨大な鉄のこん棒で粉々にされながらも生きている人間。
 焼けた鉄板の上で悶えながら焼かれているが、それでも生きている人間。

 等々言葉にするのも恐ろしい風景が広がっていた。
 更によく見ると、まだまだありそうだったがヤルンの心は砕かれて、それを確認するのを拒む。

 それもそのはずで、一番近い場所にある針山に何度も叩きつけられている「エッゾ」の姿を目撃してしまった。
 さらに最悪なのは、その叩きつけらているエッゾは「生きて」おり、ヤルンと目があってしまう。

「ヤ゛ル゛ン゛だずげで……」

 エッゾはヤルンに手を伸ばして助けを乞う。

(馬鹿! コッチ見るんじゃねえ!!)

「あら? そこに誰かいるのですか?」

 ヤルンはゾっとしながら、声のする方へ振り向く。
 そこには浅黒い肌のとても美しい容姿の女が、東方にて着られていると言う服装で立っていた。

「お、女?」
「はい? そうですが、どうされましたか? 何かお困りのようですが?」
「へ、へへへ。こいつはツイテるぜ。オイあんた、ここは危険だ。ここから離れようじゃないか」

 ヤルンは下卑げひた顔で女を誘う。そんな顔を見た女は、少し困った顔でヤルンへ返事をする。

「それはいいんですけど……何かあちらで、お友達が助けを求めているようですが、助けなくていいんですか?」
「友達? いや、あんな奴は知らねえ、それより早く行こうぜ。ここはヤバイ」
「本当に知らないのですか?」
「シツケ―ナ!! 知らネーって言ってるだろうが!! いいから早くこ……い……」
「ウ~ソ~ツ~キ~ハ~ここにいたかああああああああああ!!」

 女の口が耳まで割けたかと思うと、目は真っ赤に染まり、腕は枯れ木のようになりはて、爪は鋭く折れ曲がっていた。

「ヒアアアッ!? な、な、なんだオマエわああああ!?」
「良く回る嘘吐きの舌はこれだなあああああああ?」
「ヤメヤメヤメアガガガガアアアア!! 」

 女はヤルンの口へ無理やり手を突っ込むと、そのままヤルンの舌を引っこ抜く。

「ほ~ら、ぬ・け・た~ これで嘘吐きはいなくなったわね~。ふふふ……あら? また生えて来たわね……じゃあ、もう一度抜いてあ・げ・る」

 そう言うとまた女はヤルンの舌を抜くのだった――。

 ◇◇◇

「と、まあこんな場所へご案内したんですよ?」

 〆は実に嬉しそうに、開いた扇子の中から映し出された映像を見せ、賊が消えた先を案内するのだった。

 〆が見せた地獄の風景に賊達は魂から凍り付いていた。
 それを見て「全てを悟った」キルトは、体に呪縛のように纏わりついていた恐怖が自然と薄れて口を開く。

「……なあ、娘さん。俺達を助けてはくれないか? 今後は真面目に生きるし、これまで溜め込んだ財は全てアンタにやる。想像出来ないかもしれねーが、俺達が溜め込んだ額は半端ないんだ。頼むよ、俺達を――」

 キルトは最初に死んだ男の死体を一瞥すると続ける。

「最悪、その死体と同じように死ねるようにしてください!!」
「キルトさん……アンタ一体何を言っているんだよ……」
「そうですよ! あの宝は俺達の物だが殺盗団の物だ! 頭目達に殺されるぞ!?」

 ここに来てもまだ、「状況が掴めていない馬鹿な部下」を殺してやりたい気持ちになるが、ぐっと我慢して諭すように話す。

「お前達、この状況が何故分からない? もうオシマイなんだよ、何もかもな。待っているのは絶対的な死。それ以外は何も無い。いや……それより酷い物を今見たばかりだろう? 世の中にはな、自分の物差しで測る事すら烏滸がましい、超常的な『何か』が存在する。そしてこの娘さんがソレだ」

 〆は黙ってその様子を見ている。その瞳は実に楽しそうでもあり、このあとの展開を早く見たいとばかりに口元が緩む。
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