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第五章:殺盗団を壊滅せよ
129:見えないアイツら
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――あれ? 誰だ……ここは何時もの茶菓子の美味い店か……またあの音が聞こえる……魂を削る音なのに、どうしてここまで綺麗なんだ……(こ……さ……ま…………)
何処か遠く。今では手の届かない果てしない場所にいた流は、唐突に意識を引き上げられる。
「古廻様。お休みの所、大変申し訳ございません。愚兄より報告です『全ての準備は整った』との事です」
今だ夢と現実の区別がつかない流だったが、今やるべき事はハッキリと理解した。
そして、まどろんでいた意識から覚醒した流は上半身を起こし、両手を上に突き上げ伸ばす。
「そう……か。ん、じゃあ~行こうじゃないか。俺の覚悟を本物にするためにな」
「はい、どこまでもお供いたします」
畳に正座をしている〆は、三つ指をついた面を上げる。すると頬を鬼灯のように染めた娘がいた。
「お前、顔真っ赤だぞ。大丈夫か? 因幡に見てもらおうか?」
「いえ……これは草津の湯でも治らないと言う、伝説の奇病ゆえ……お気になさらず」
「そうなのか? まぁ気分が悪くなったら何時でも言ってくれ、それにしても不思議な病もあったものだ」
「はぃ……」
古い物が好物なくせに、なぜかこういう事には無知な流に隙は無かった。
〆が用意した和風でスタイリッシュに改造した、スーツのような漆黒の衣服を身に纏い、身支度を整えた流は、美琴を右手に持ち部屋を後にする。
来た時は心安らぐような廊下や庭の雰囲気は、現在は高揚感が湧き出るような色彩とオブジェに変わっていた。
それを見ながら流は口角を上げ、内心高揚感に包まれながら思う。
(ハハ、完璧だ〆! ここで引いたら俺はただ勢いに流されたクズだ。見ててくれ、まずは寝ぼけた精神を叩き起こす!!)
「〆、敵の情報をくれ」
「はい。商業・冒険の両ギルドより、凶賊である殺盗団の討伐として『オルドラ大使館』への攻撃が許可されました。また殺盗団の首魁の一人である男も、現在大使館に今だに潜伏中のようです。それにより大使館内部と周辺には、殺盗団の手の者と思われる雑兵が複数配置されているとの事です」
「向こうの時間と、こちらの差異は?」
「現在の設定で、約八時間となっています。古廻様がコチラへお帰りになった時間と、それほど変わりは御座いません」
「……それ、反則ぢゃね?」
「うふふ。異界骨董屋やさんですから♪」
「デスヨネ~」
廊下を歩きながら現在の状況を把握し、両ギルドが思い切った行動に出た事と、それを許可するまでの時間が短い事から彼らの熱意を伺える。
さらに細かく報告を聞きながら、店内へと続く暖簾へと差し掛かった所で流は足を止めた。
「〆、店内へ入る前に聞きたい事がある」
「はい、なんでございますか?」
「五老と呼ばれる存在についてだ。あいつらの声は聞こえるが、未だにその姿を見た事は無いんだよな。店内のどの辺りにいるんだ?」
〆はその問いに、どう答えたものかと少し考えてから答える。
「五老ですか……愚物共のまとめ役と自称していますが、確かにあの中では飛びぬけた力を保有し、また道具の異界渡りの最終許可を出しているのも五老です。無論私にかかれば即、滅却出来ますのでご安心を。それで五老が置いてある場所ですが……」
そう言うと〆は、申し訳なさそうに次の言葉を話す。
「あれは古廻様が真の力を開放しないと、見る事は困難かと思われます」
「鍵鈴の印か。と言う事は、この右手の刻印が完成しないとダメか……まあそれなら仕方ないか」
流は気持ちを切り替えるように、〆へ次の行動を促す。
「よし、あちらへ到着次第、殲滅しに行こうじゃないか?」
「畏まりました。今回の敵は大使館周辺の屋敷や、路地裏にも潜んでいると報告がありました。大使館自体には魔法的な結界が張られており、美琴で斬り裂けば突破は簡単ですが、破壊音が響きます。音で敵が殺到すると思われますので、御注意くださいまし」
「ん? 殺到するとまずいのか?」
〆は「あっ」と可愛く手をポンと合わせると、その訳を説明する。
「実は両ギルドよりの通達で『出来るだけ静かに、何事も無かったようにして欲しい』との事でございます」
「んなムチャな~」
「うふふ。古廻様なら何の問題もなく完遂ですね」
「またムチャな~」
両ギルドの無理難題をこなしていると言うのに、さらに上乗せしてくる難題に頭を悩ます流。
しかしそれが提示された以上は、それを遂行するために思案する。
(と、なると俺一人では難しいか? 今から応援ともなると、それも難しいな。賊だけに逃げるのも早そうだしな。それにこの依頼、やはり裏がある気がする……)
「一応確認だが、こちらの増援の予定は?」
「残念ながら古廻様お一人でとの事でした。私共の手勢を配置いたしますか?」
「いや、俺一人でやるよ。多分だが……理由は分からないが、両ギルド共に俺のランク。もしくはそれに準ずるモノを上げようとしている気がする。殺盗団の壊滅を俺一人に依頼する無茶ぶりな事と言い、そして俺の屋敷の件でもそうだが、あまりにも好待遇が過ぎる。まるでトエトリーに縛り付けるかのようにな」
〆は少し思案顔で床に目線を落とす。
「そう、ですね……確かにまあまあの待遇ですね。私的には、古廻様に無礼な少量の報酬で、怒り心頭ですが」
「おいおい、お前はどれだけの物を望んでいるんだよ」
「うふふ。そうですね、最低あの街を報酬に寄越すくらいですかね?」
「聞いた俺が馬鹿だったよ」
「あら、酷い言われようですね。ただ露払いくらいはお任せを。丁度、今回拾った手駒の動きも見たいので」
「あぁ、例の奴らか。分かった、大使館の外にいる奴らを任せる」
軽い冗談を飛ばしながら店内へと入ると、流は陳列棚をぐるりと見渡し、〆へと今回の秘密道具を聞くのだった。
何処か遠く。今では手の届かない果てしない場所にいた流は、唐突に意識を引き上げられる。
「古廻様。お休みの所、大変申し訳ございません。愚兄より報告です『全ての準備は整った』との事です」
今だ夢と現実の区別がつかない流だったが、今やるべき事はハッキリと理解した。
そして、まどろんでいた意識から覚醒した流は上半身を起こし、両手を上に突き上げ伸ばす。
「そう……か。ん、じゃあ~行こうじゃないか。俺の覚悟を本物にするためにな」
「はい、どこまでもお供いたします」
畳に正座をしている〆は、三つ指をついた面を上げる。すると頬を鬼灯のように染めた娘がいた。
「お前、顔真っ赤だぞ。大丈夫か? 因幡に見てもらおうか?」
「いえ……これは草津の湯でも治らないと言う、伝説の奇病ゆえ……お気になさらず」
「そうなのか? まぁ気分が悪くなったら何時でも言ってくれ、それにしても不思議な病もあったものだ」
「はぃ……」
古い物が好物なくせに、なぜかこういう事には無知な流に隙は無かった。
〆が用意した和風でスタイリッシュに改造した、スーツのような漆黒の衣服を身に纏い、身支度を整えた流は、美琴を右手に持ち部屋を後にする。
来た時は心安らぐような廊下や庭の雰囲気は、現在は高揚感が湧き出るような色彩とオブジェに変わっていた。
それを見ながら流は口角を上げ、内心高揚感に包まれながら思う。
(ハハ、完璧だ〆! ここで引いたら俺はただ勢いに流されたクズだ。見ててくれ、まずは寝ぼけた精神を叩き起こす!!)
「〆、敵の情報をくれ」
「はい。商業・冒険の両ギルドより、凶賊である殺盗団の討伐として『オルドラ大使館』への攻撃が許可されました。また殺盗団の首魁の一人である男も、現在大使館に今だに潜伏中のようです。それにより大使館内部と周辺には、殺盗団の手の者と思われる雑兵が複数配置されているとの事です」
「向こうの時間と、こちらの差異は?」
「現在の設定で、約八時間となっています。古廻様がコチラへお帰りになった時間と、それほど変わりは御座いません」
「……それ、反則ぢゃね?」
「うふふ。異界骨董屋やさんですから♪」
「デスヨネ~」
廊下を歩きながら現在の状況を把握し、両ギルドが思い切った行動に出た事と、それを許可するまでの時間が短い事から彼らの熱意を伺える。
さらに細かく報告を聞きながら、店内へと続く暖簾へと差し掛かった所で流は足を止めた。
「〆、店内へ入る前に聞きたい事がある」
「はい、なんでございますか?」
「五老と呼ばれる存在についてだ。あいつらの声は聞こえるが、未だにその姿を見た事は無いんだよな。店内のどの辺りにいるんだ?」
〆はその問いに、どう答えたものかと少し考えてから答える。
「五老ですか……愚物共のまとめ役と自称していますが、確かにあの中では飛びぬけた力を保有し、また道具の異界渡りの最終許可を出しているのも五老です。無論私にかかれば即、滅却出来ますのでご安心を。それで五老が置いてある場所ですが……」
そう言うと〆は、申し訳なさそうに次の言葉を話す。
「あれは古廻様が真の力を開放しないと、見る事は困難かと思われます」
「鍵鈴の印か。と言う事は、この右手の刻印が完成しないとダメか……まあそれなら仕方ないか」
流は気持ちを切り替えるように、〆へ次の行動を促す。
「よし、あちらへ到着次第、殲滅しに行こうじゃないか?」
「畏まりました。今回の敵は大使館周辺の屋敷や、路地裏にも潜んでいると報告がありました。大使館自体には魔法的な結界が張られており、美琴で斬り裂けば突破は簡単ですが、破壊音が響きます。音で敵が殺到すると思われますので、御注意くださいまし」
「ん? 殺到するとまずいのか?」
〆は「あっ」と可愛く手をポンと合わせると、その訳を説明する。
「実は両ギルドよりの通達で『出来るだけ静かに、何事も無かったようにして欲しい』との事でございます」
「んなムチャな~」
「うふふ。古廻様なら何の問題もなく完遂ですね」
「またムチャな~」
両ギルドの無理難題をこなしていると言うのに、さらに上乗せしてくる難題に頭を悩ます流。
しかしそれが提示された以上は、それを遂行するために思案する。
(と、なると俺一人では難しいか? 今から応援ともなると、それも難しいな。賊だけに逃げるのも早そうだしな。それにこの依頼、やはり裏がある気がする……)
「一応確認だが、こちらの増援の予定は?」
「残念ながら古廻様お一人でとの事でした。私共の手勢を配置いたしますか?」
「いや、俺一人でやるよ。多分だが……理由は分からないが、両ギルド共に俺のランク。もしくはそれに準ずるモノを上げようとしている気がする。殺盗団の壊滅を俺一人に依頼する無茶ぶりな事と言い、そして俺の屋敷の件でもそうだが、あまりにも好待遇が過ぎる。まるでトエトリーに縛り付けるかのようにな」
〆は少し思案顔で床に目線を落とす。
「そう、ですね……確かにまあまあの待遇ですね。私的には、古廻様に無礼な少量の報酬で、怒り心頭ですが」
「おいおい、お前はどれだけの物を望んでいるんだよ」
「うふふ。そうですね、最低あの街を報酬に寄越すくらいですかね?」
「聞いた俺が馬鹿だったよ」
「あら、酷い言われようですね。ただ露払いくらいはお任せを。丁度、今回拾った手駒の動きも見たいので」
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