日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第五章:殺盗団を壊滅せよ

128:はわわわ……

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「あひゃぃ!? にゃ、にゃがりゃしゃま??」

 突然の事に、変な声と意味不明な言葉で混乱する〆を優しく抱きしめ、そのまま流は感謝の気持ちを伝える。

「本当にありがとな。ここへ戻ってからの廊下や庭園の気配り。そして風呂ここで俺を甘えさせてくれて感謝している。お陰で暗黒面とやらのブラック企業へ、就職しなくても済んだようだわ」
「あわわわ……」
「お前と会えて本当に良かった。これからもよろしくな」
「ひゃわわ……」

 そう言うと流は左手で〆の腰を支えつつ、右手で透き通るような美しい金髪が濡れて、一層その妖艶さを増した後頭部を一撫でし、何事も無かったように四阿温泉郷の入り口へ向けて歩き出す。

「あ! でも〆のせいで現世? に戻れなかったのかもしれないと思うと、あいつはこの原因を作った元凶だな! ま、異世界面白いからそれも感謝か?」

 流は実に楽しそうに笑い声を響かせながら、四阿温泉郷を後にする。

「はわわわ……」

 そんな流がすでにいない事が分から無いほどに、〆は混乱したままだった。
 そして〆を見守る一人の男が、この世の終わりのような顔で見ている。

「お、恐ろしい事じゃあ……あの女狐めがまるで無垢な少女のように、顔を朱色に染め上げておる……ワシは今一体何の悪夢を見ているのじゃろうか……こんな事を誰が信じるのか、もしかしたら信じる馬鹿もおる? 否! いるはずがない! 大体さっき後ろから裸で抱き着いていたろうに! 正面からと大差ないと思うが……何にせよワシは今、本当に正気なんじゃろうか……」

 たぬ爺はそう独り言ちると、熱に犯されたような足取りで湯煙の中へと消えていった。
 が、直後たぬ爺の声で「ぎゃあああ! 金の針が〇袋にああああ」と言う悲鳴が聞こえた気がしたが、きっと気のせいなのだろう。

 誰もいなくなった檜風呂には、顔をさらに染め上げた〆が先程と同じ場所で、流が去った方を見て目を潤ませて「あわわわ……」しているだけだった。

 ◇◇◇

「あがったぞ~因幡ぁ~美琴ぉ~生きてるかぁ~?」

 流は漢らしく右手にタオル持ち、それを肩へかけて歩いて来る。

「お!? お客人! ま、前! 前を隠してほしいのです!?」
「別にいいだろ。減るもんじゃあるまいし」
「もぅ!! お客人はどこのおじさんなのです!?」

 因幡は顔を真っ赤にして、垂れ下がった耳で目を塞ぐ……が、こっそり覗いていた。

「今日日、そう言うのが流行なんだぞ? 見た目は子供、中身はオッサンな推理好きの酔っぱらいがな」
「そ、そんな迷探偵はいらないのです!!」

 変質者が路上で自己正当化するような妄言を吐きつつ、さらに因幡へとセクハラをかましていると、どこからともなく凍り付くような冷気が、流の第三の足へと迫る。

「ひゃう!?」

 凍り付く冷気は、第三の足にクリティカルヒットして流を強制フリーズさせる。

「お、お客じーん!? え、衛生兵~メディィィック!! お客人が大変なのです! ってボクがそれだったのです!! あわわわ……と、とりあえず服を着せて寝所へと運ぶのです」

 因幡は流へ浴衣を着せると、何処からか呼び出した亀のような生き物へ流を乗せる。

「途中で休まないで『全力で』運ぶですよ?」

 亀は「貴女がそれをが言うか?」とボソリと言う。
 その言葉を呑み込むように亀は立ち上がると、了解と頷いてから荷物ナガレを載せて去って行く。

「むむぅ お風呂へ入る前と、随分とお客人の雰囲気が違っていたのです……あの後お風呂へ番頭さんが行ったのかな? むぅ、やっぱり番頭さんは凄いのです。でもボクも負けないのです!」

 そう言うと、因幡は冷気を放った美琴さんを両手に抱え、幻想的な廊下を歩いて行った。


 ◇◇◇


「んん、ここは……あ、いつもの部屋か」

 美琴のおしおきから目覚めた流は、布団に寝ていたが起きてしまう。
 見ると美琴は流の枕元にあり、光さえ吸い込まれるような深い黒色の艶やかな会津塗りの刀掛けへ置かれていた。

 良く見ると右手の甲に刻まれた、刻印の模様が刀掛けの中央に描かれている。

「ふぅ~、美琴。そんなに怒るなよ……え? ズルいって言われてもなぁ」
『…………』
「そうなのか? いや、大丈夫なのは分かるけどさ、風呂場にお前を持って行くのはな」
『…………』
「何時でも一緒にいたいって、お前なぁ」
『…………』
「わ、分かったよ。今度から一緒に入ろうな?」
『…………』
「ははは、機嫌が直って良かったよ。って、あれ? ちょっと待て!! どうしてお前の言っている事が分かるんだ!?」
『…………』
「さぁ? ってお前……これも異界言語理解のオーバーワークが原因か? 肝心な所でおかしな翻訳するくせに。はぁ~、まあいい。しかし何と言うか……不思議な感覚だな」


 妖刀ゆえなのか、それとも異界言語理解が仕事しすぎなのか、流は美琴と話せるようになっていた。
 その声は耳へ直接響くような感覚であり、他者へは聞こえ無いだろうと流は思う。

「それにしても美琴、お前の声は美しいな。凛としてるのに、心地よく心に響くよ……」

 その後、美琴と少し話した後、流は休む事とする。
 


 決戦まで残り数時間――
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