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第五章:殺盗団を壊滅せよ
148:鎌鼬の夜景
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「うっそだろう……お前も悪魔……なのか?」
「はい! あらためましてご挨拶を。魔界で貴族の筆頭を務めます、四公爵の一人『ジ・レ・ドレバヌス』と申します。愛称を込めてジ・レとお呼びくださいね」
そう言うと黒髪の少年は男女共に魅了される、実に可愛らしい屈託のない笑顔で微笑むのだった。
「なッ!? 魔界の貴族!! 筆頭って事は公爵だというのかよ……ちょっと待ってくれ! そんなとてつもない悪魔が、なぜ俺の執事になんかになっているんだ?」
「あはは。そう固くならないでくださいませ。理由はそうですね。昔むか~しの事でした。〆お嬢様が突如魔界へと『遊びに』来たんですよ……。そしてボクのお城にも来ましてね。壮絶な……。まあ〆お嬢様にはそのつもりないでしょうけど、まぁ壮絶な事が色々ありましてね。う、ぅぅぅ」
そう言うとジ・レは、ハイライトの消えた目に涙を浮かべ、遠い……それは遠い深淵の底を覗くような目で遠くを見ていた。
「そ、そうか。ジ・レも色々大変だったんだな。なんかその、悪かったな」
「やめて下さいよ~。そんな謝られたりしたらお嬢様に何をされるか……(ぶるり)」
「いや、ホント迷惑かける……はは」
「あはは……」
互いにいた堪れない雰囲気に、乾いた笑いで返す二人。
「ああそうだ、モーリスの契約外で縛られている姉妹がいるんだが、この後どうなる?」
「う~ん。本来なら歪な契約の解除をボクがしなきゃいけないんですが、御館様はそれをお望みじゃないんですよね?」
「ああそうだ。出来ればこのまま本人の気が済むまで、罪滅ぼしをさせてやりたい」
「でしたら~、そう。ボクは到着が遅れて、すでに小物君は塩になっていて詳細不明だった……と言う訳ですから仕方ありませんね」
そう言うとジ・レはペロリと舌を出して微笑む。
「助かる。それにしてもお前は凄い魅力的な顔をしているな。悪魔ゆえか?」
「な!? 何を言うんですか~恥ずかしいなぁもう」
「ははは悪い悪い。でもまぁお陰で助かったよ、俺もあの姉妹も。サンキューな」
ジ・レは「いえいえ」と褐色の頬を朱色に染めつつも、塩になったゴミを見る目は冷たかった。
「さて、このゴミは本来勝手に魔界へ戻るのですが、ここは異世界ゆえ誰かに回収されても面倒ですので、ボクが処理しておきます。御館様はお気になさらずお戻りください」
「そうか、助かる。じゃあよろしく頼む」
「はい、お任せなさってください。あれ、これも微妙な言葉ですね」
そんな微妙な表現をするジ・レを残し、流はオルドラ大使館を後にする。
この屋敷には大使館で働く者やメイド等誰にも会わないで来た事を不思議に思うが、それも入り口前へ行くと原因が分かった。
「壱:古廻はん! ご無事だったんでっか! 良かったわぁ。ジ・レのガキがスッ飛んで行ったんで、何事かと思いましたやん」
「お? 壱も元気そうで良かった良かった。で、男と女二人がここに来たと思うが、三人はどうした?」
「壱:ああ、あいつらでしたら右にある木の下に纏めてありまっせ」
言われた方を見ると、正門の右側にある木の下で三人がぼーっと屋敷を見ていた。
「さっき見た光景が忘れられないね、ミレリアお姉ちゃん……」
「ええそうね、お屋敷が斜めに切れて、それが地面に付く寸前で元に戻るなんて……」
「ああ、まったくだ。しかもその後に出来た大穴……なんだありゃ……きっとナガレの旦那に違いない」
「「だよねぇ……」」
三分の一は正しいが、残りは冤罪だと言いたいのをグッと我慢した流は、ヒクつく頬に笑顔を浮かべて三人の前へと現れる。
「よう、無事着いたようだな」
「「ナガレさん!」」
「ナガレの旦那もご無事で良かったです、正直ダメかと思いましたよ。屋敷がずれ落ちた時はね。それにしても凄い人だ……俺達なんざ敵うはずもない、敵対した事が間違いだったんだと、今なら骨身に染みてますよ」
するとロッキーの背後に五人の薄っすらとした影が現れる。
「それが分かっただけで運が良かったな。確かお前は情報部隊の……。そうだ、特殊能力持ちのロッキーだったか?」
「っ!? あ、あんた達は?」
「ああ、そいつらはキルトとその部下達だ」
「キルトのアニキ!?」
驚くロッキーを尻目に、キルトは片膝を折り、流へと報告するのだった。
◇◇◇
余談だが、この大使館はそれなりの観光スポットだったりする。
夜も魔具によるライトアップがされており、この日も観光客や恋人達がまばらだが訪れていた。
その中に著名な画家がたまたまおり、ズレ落ちた屋敷を見て大興奮した彼は、その驚愕の光景を一枚の絵画に封じ込める事に成功する。
後にその絵はプレミアムが付き、好事家たちが競って手に入れようとあらゆる手を使った。
そんな名画の題名はシンプルだが、ありえないと言う観点からこう命名された。
題:鎌鼬の夜景
「はい! あらためましてご挨拶を。魔界で貴族の筆頭を務めます、四公爵の一人『ジ・レ・ドレバヌス』と申します。愛称を込めてジ・レとお呼びくださいね」
そう言うと黒髪の少年は男女共に魅了される、実に可愛らしい屈託のない笑顔で微笑むのだった。
「なッ!? 魔界の貴族!! 筆頭って事は公爵だというのかよ……ちょっと待ってくれ! そんなとてつもない悪魔が、なぜ俺の執事になんかになっているんだ?」
「あはは。そう固くならないでくださいませ。理由はそうですね。昔むか~しの事でした。〆お嬢様が突如魔界へと『遊びに』来たんですよ……。そしてボクのお城にも来ましてね。壮絶な……。まあ〆お嬢様にはそのつもりないでしょうけど、まぁ壮絶な事が色々ありましてね。う、ぅぅぅ」
そう言うとジ・レは、ハイライトの消えた目に涙を浮かべ、遠い……それは遠い深淵の底を覗くような目で遠くを見ていた。
「そ、そうか。ジ・レも色々大変だったんだな。なんかその、悪かったな」
「やめて下さいよ~。そんな謝られたりしたらお嬢様に何をされるか……(ぶるり)」
「いや、ホント迷惑かける……はは」
「あはは……」
互いにいた堪れない雰囲気に、乾いた笑いで返す二人。
「ああそうだ、モーリスの契約外で縛られている姉妹がいるんだが、この後どうなる?」
「う~ん。本来なら歪な契約の解除をボクがしなきゃいけないんですが、御館様はそれをお望みじゃないんですよね?」
「ああそうだ。出来ればこのまま本人の気が済むまで、罪滅ぼしをさせてやりたい」
「でしたら~、そう。ボクは到着が遅れて、すでに小物君は塩になっていて詳細不明だった……と言う訳ですから仕方ありませんね」
そう言うとジ・レはペロリと舌を出して微笑む。
「助かる。それにしてもお前は凄い魅力的な顔をしているな。悪魔ゆえか?」
「な!? 何を言うんですか~恥ずかしいなぁもう」
「ははは悪い悪い。でもまぁお陰で助かったよ、俺もあの姉妹も。サンキューな」
ジ・レは「いえいえ」と褐色の頬を朱色に染めつつも、塩になったゴミを見る目は冷たかった。
「さて、このゴミは本来勝手に魔界へ戻るのですが、ここは異世界ゆえ誰かに回収されても面倒ですので、ボクが処理しておきます。御館様はお気になさらずお戻りください」
「そうか、助かる。じゃあよろしく頼む」
「はい、お任せなさってください。あれ、これも微妙な言葉ですね」
そんな微妙な表現をするジ・レを残し、流はオルドラ大使館を後にする。
この屋敷には大使館で働く者やメイド等誰にも会わないで来た事を不思議に思うが、それも入り口前へ行くと原因が分かった。
「壱:古廻はん! ご無事だったんでっか! 良かったわぁ。ジ・レのガキがスッ飛んで行ったんで、何事かと思いましたやん」
「お? 壱も元気そうで良かった良かった。で、男と女二人がここに来たと思うが、三人はどうした?」
「壱:ああ、あいつらでしたら右にある木の下に纏めてありまっせ」
言われた方を見ると、正門の右側にある木の下で三人がぼーっと屋敷を見ていた。
「さっき見た光景が忘れられないね、ミレリアお姉ちゃん……」
「ええそうね、お屋敷が斜めに切れて、それが地面に付く寸前で元に戻るなんて……」
「ああ、まったくだ。しかもその後に出来た大穴……なんだありゃ……きっとナガレの旦那に違いない」
「「だよねぇ……」」
三分の一は正しいが、残りは冤罪だと言いたいのをグッと我慢した流は、ヒクつく頬に笑顔を浮かべて三人の前へと現れる。
「よう、無事着いたようだな」
「「ナガレさん!」」
「ナガレの旦那もご無事で良かったです、正直ダメかと思いましたよ。屋敷がずれ落ちた時はね。それにしても凄い人だ……俺達なんざ敵うはずもない、敵対した事が間違いだったんだと、今なら骨身に染みてますよ」
するとロッキーの背後に五人の薄っすらとした影が現れる。
「それが分かっただけで運が良かったな。確かお前は情報部隊の……。そうだ、特殊能力持ちのロッキーだったか?」
「っ!? あ、あんた達は?」
「ああ、そいつらはキルトとその部下達だ」
「キルトのアニキ!?」
驚くロッキーを尻目に、キルトは片膝を折り、流へと報告するのだった。
◇◇◇
余談だが、この大使館はそれなりの観光スポットだったりする。
夜も魔具によるライトアップがされており、この日も観光客や恋人達がまばらだが訪れていた。
その中に著名な画家がたまたまおり、ズレ落ちた屋敷を見て大興奮した彼は、その驚愕の光景を一枚の絵画に封じ込める事に成功する。
後にその絵はプレミアムが付き、好事家たちが競って手に入れようとあらゆる手を使った。
そんな名画の題名はシンプルだが、ありえないと言う観点からこう命名された。
題:鎌鼬の夜景
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