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第六章:商いをする漢
208:氷結の実
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怒涛のコショウの購入者を捌き、その後のカレーライスの購入者も満足させた流は満足そうに額の汗を拭う。
「ふ~。みんなお疲れさん、ありがとう! 商業ギルドからの応援も本当に助かりましたよ、バーツさん」
「なに、少しは借りが返せたようで何よりだ。しかし今日の様子では予想より早く売れそうだな?」
「ええまったくです。明日は販売量をもっと増やそうかと考えていますよ」
「うむ。それなんだがな、箱売りは商業ギルドでしてもいいぞ? ここに運んで並べるのも大変だろう? 大量購入者に限りギルドで直接取り扱ってやる」
「え!? 本当ですか、それは助かりますがいいのですか?」
「勿論だ。手数料も要らん。だが倉庫前に倉庫使用料を徴収する職員がいるだろう? 他の商人の手前があるから、倉庫使用料だけは貰う事になるがな」
「それはもう是非! でも申し訳ないから販売手数料は払いますよ」
「いや、そっちはいらないから気にするな」
流石にそれは申し訳ないと、流はバーツに支払うと言うのだが、頑として聞く気が無い。
「はぁ、分かりました。ではお言葉に甘えさせてもらいますよ」
「それでいい、若者は素直でなくてはな! はっはっはっは」
「良かったですねナガレ様!」
「まったくだぜ、オヤジに感謝しろよナガレ?」
「ああ、それは無論だとも。バーツさんには感謝しかねーよ」
ニヤリと笑うバーツを見て流は思う。こんな大人になりたいものだと。
「そう言えばこの国は関税とか無いのですか?」
「ああ、基本的には無い。ただギルドへ申告した分しか売れない決まりになっとる。申告以上に売ると、密輸等の犯罪行為とみなされ処分される。もっともお前の場合に限り、俺は何処から持って来ているのか等興味は無いがな」
そう言うとバーツは豪快に笑う。そんなギルドマスターはとても眩しかった。
その後手伝ってくれたメリサ達ギルド職員達をカレーで慰労し、バーツとファンも食べると言うので全員で青空の下でカレーを楽しんだ。
◇◇◇
全ての品を売りつくした流は、午後二時頃には店仕舞いをして幽霊屋敷へと戻る。
メイド達も良く働いてくれたので、疲れているのかと思ったが全然平気のようだった。
「今日はありがとう、疲れたろう?」
「いえ、まだまだいけます!」
「そうですよご主人様。このまま寝ないで一週間は頑張れます!」
「お、おぉ……。無理はしないでね?」
「「はい!」」
この娘達も「中の人が見た目通りじゃない」事を改めて実感する。
そんな事を考えながらも、街中を進むと面白い屋台を見つけた。
「嵐影ちょっと止まってくれ」
「……マ」
「お前達も待っててくれ」
「「はい」」
流は目的の屋台へと足を進める。
店の前へと来ると、その屋台に置かれている品が良く分かった。
「ご店主、これは何だい?」
「らっしゃい! これは氷結の実と言ってな、実がいつまでも凍ったままなんだよ。で、見てろ」
店主がそう言うと、直径三十センチ程のアイスブルーの実を鉈で割る。
すると今まで凍っていたのが嘘のように、ピンク色に変色し甘い香りを放つ。
「おおお!? ナニコレ凄い!」
「はっはっは。やっぱり知らなかったのか? この辺りでは有名な果実なんだぜ? トエトリー名物、ダンジョン産の果物だ! どうだ、買っていくかい?」
「無論だ! 売れるだけくれ!」
「お、おう? っていいのかよ!?」
「ああ、その代わり今割ったやつはサービスしてくれよな?」
「そりゃあもう! あ~今日はもう店仕舞いだな! はっはっはっは」
店主はあるだけの氷結の実を流の販売車へと積み込む。
「ありがとうよ! ほれ、これおまけだよ」
「じゃあ貰ってくよ。また来る」
「毎度あり~!」
おまけの実を御者台に座りながら、メイド達へと渡し食べてみる。
「お!? 思った通り冷たくて美味しいな。強いて言えば、桃とバナナを足したような味だな」
「本当ですねぇ。あちらでは食べた事が無い味で美味しいです♪」
「うんうん、見た目にも面白いですね。まさか割ると色が変わるなんて、思いませんでしたよ」
そんな感じで今日もまた面白い物を発見し、満足に幽霊屋敷へと帰るのだった。
屋敷に着くとメイド達が入口で待っていた。
「「「お帰りなさいませご主人様」」」
「ただいま~。販売車の中に珍しい果物があるから食べてくれ。あ、それと嵐影が食べたいだけあげてくれ。割ると溶けて食べられるようになるから」
「承知いたしました」
「では頼む。嵐影はメイド達から氷結の実を貰って、ゆっくりしててくれよ。お前は今日も大活躍だったからな」
「……マァ」
流は嵐影をモフると、嵐影も流の胸へと鼻を押し付けて甘える。
「おっふ。嵐影は甘えん坊だなぁ」
「……マ」
「ははは。じゃあ俺は三階へと行くから、気が向いたら来いよ」
嵐影は流へと手を振ると、そのままお尻を地面に付けて座る。
両手でごそごそと、自分の荷物用のバッグからニンジンを取り出し、それをかじって氷結の実が来るのを楽しみにしていた。
屋敷の中へ入ると執事達が待っており、メイド達から受け取った本日の売り上げ等を受け取る。
「お館様、お疲れ様でございました」
「セバスか。びっくりするほど人が来てさ、本当に疲れたよ」
「ははは、そうでしょうなぁ。あれ程の品ですから飛ぶように売れたでしょう」
「ああ、本当に文字通りだったよ。で、珍しく妖怪屋敷組がいないが?」
「御三方共ビーチにいらっしゃるのでお呼びしたので、そろそろおいでになると思いますが……」
「ああいいよ、執務室で待ってると伝えてくれ」
「承知いたしました」
流はミレに頼み三階へと向かう。ミレは今日も陰鬱な表情であるが、実に楽しそうに流へと話しかけ、短い交流を二人共に惜しみながらも三階へと到着する。
「ふ~。みんなお疲れさん、ありがとう! 商業ギルドからの応援も本当に助かりましたよ、バーツさん」
「なに、少しは借りが返せたようで何よりだ。しかし今日の様子では予想より早く売れそうだな?」
「ええまったくです。明日は販売量をもっと増やそうかと考えていますよ」
「うむ。それなんだがな、箱売りは商業ギルドでしてもいいぞ? ここに運んで並べるのも大変だろう? 大量購入者に限りギルドで直接取り扱ってやる」
「え!? 本当ですか、それは助かりますがいいのですか?」
「勿論だ。手数料も要らん。だが倉庫前に倉庫使用料を徴収する職員がいるだろう? 他の商人の手前があるから、倉庫使用料だけは貰う事になるがな」
「それはもう是非! でも申し訳ないから販売手数料は払いますよ」
「いや、そっちはいらないから気にするな」
流石にそれは申し訳ないと、流はバーツに支払うと言うのだが、頑として聞く気が無い。
「はぁ、分かりました。ではお言葉に甘えさせてもらいますよ」
「それでいい、若者は素直でなくてはな! はっはっはっは」
「良かったですねナガレ様!」
「まったくだぜ、オヤジに感謝しろよナガレ?」
「ああ、それは無論だとも。バーツさんには感謝しかねーよ」
ニヤリと笑うバーツを見て流は思う。こんな大人になりたいものだと。
「そう言えばこの国は関税とか無いのですか?」
「ああ、基本的には無い。ただギルドへ申告した分しか売れない決まりになっとる。申告以上に売ると、密輸等の犯罪行為とみなされ処分される。もっともお前の場合に限り、俺は何処から持って来ているのか等興味は無いがな」
そう言うとバーツは豪快に笑う。そんなギルドマスターはとても眩しかった。
その後手伝ってくれたメリサ達ギルド職員達をカレーで慰労し、バーツとファンも食べると言うので全員で青空の下でカレーを楽しんだ。
◇◇◇
全ての品を売りつくした流は、午後二時頃には店仕舞いをして幽霊屋敷へと戻る。
メイド達も良く働いてくれたので、疲れているのかと思ったが全然平気のようだった。
「今日はありがとう、疲れたろう?」
「いえ、まだまだいけます!」
「そうですよご主人様。このまま寝ないで一週間は頑張れます!」
「お、おぉ……。無理はしないでね?」
「「はい!」」
この娘達も「中の人が見た目通りじゃない」事を改めて実感する。
そんな事を考えながらも、街中を進むと面白い屋台を見つけた。
「嵐影ちょっと止まってくれ」
「……マ」
「お前達も待っててくれ」
「「はい」」
流は目的の屋台へと足を進める。
店の前へと来ると、その屋台に置かれている品が良く分かった。
「ご店主、これは何だい?」
「らっしゃい! これは氷結の実と言ってな、実がいつまでも凍ったままなんだよ。で、見てろ」
店主がそう言うと、直径三十センチ程のアイスブルーの実を鉈で割る。
すると今まで凍っていたのが嘘のように、ピンク色に変色し甘い香りを放つ。
「おおお!? ナニコレ凄い!」
「はっはっは。やっぱり知らなかったのか? この辺りでは有名な果実なんだぜ? トエトリー名物、ダンジョン産の果物だ! どうだ、買っていくかい?」
「無論だ! 売れるだけくれ!」
「お、おう? っていいのかよ!?」
「ああ、その代わり今割ったやつはサービスしてくれよな?」
「そりゃあもう! あ~今日はもう店仕舞いだな! はっはっはっは」
店主はあるだけの氷結の実を流の販売車へと積み込む。
「ありがとうよ! ほれ、これおまけだよ」
「じゃあ貰ってくよ。また来る」
「毎度あり~!」
おまけの実を御者台に座りながら、メイド達へと渡し食べてみる。
「お!? 思った通り冷たくて美味しいな。強いて言えば、桃とバナナを足したような味だな」
「本当ですねぇ。あちらでは食べた事が無い味で美味しいです♪」
「うんうん、見た目にも面白いですね。まさか割ると色が変わるなんて、思いませんでしたよ」
そんな感じで今日もまた面白い物を発見し、満足に幽霊屋敷へと帰るのだった。
屋敷に着くとメイド達が入口で待っていた。
「「「お帰りなさいませご主人様」」」
「ただいま~。販売車の中に珍しい果物があるから食べてくれ。あ、それと嵐影が食べたいだけあげてくれ。割ると溶けて食べられるようになるから」
「承知いたしました」
「では頼む。嵐影はメイド達から氷結の実を貰って、ゆっくりしててくれよ。お前は今日も大活躍だったからな」
「……マァ」
流は嵐影をモフると、嵐影も流の胸へと鼻を押し付けて甘える。
「おっふ。嵐影は甘えん坊だなぁ」
「……マ」
「ははは。じゃあ俺は三階へと行くから、気が向いたら来いよ」
嵐影は流へと手を振ると、そのままお尻を地面に付けて座る。
両手でごそごそと、自分の荷物用のバッグからニンジンを取り出し、それをかじって氷結の実が来るのを楽しみにしていた。
屋敷の中へ入ると執事達が待っており、メイド達から受け取った本日の売り上げ等を受け取る。
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「セバスか。びっくりするほど人が来てさ、本当に疲れたよ」
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