日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
208 / 486
第六章:商いをする漢

208:氷結の実

しおりを挟む
 怒涛のコショウの購入者を捌き、その後のカレーライスの購入者も満足させた流は満足そうに額の汗を拭う。

「ふ~。みんなお疲れさん、ありがとう! 商業ギルドからの応援も本当に助かりましたよ、バーツさん」
「なに、少しは借りが返せたようで何よりだ。しかし今日の様子では予想より早く売れそうだな?」
「ええまったくです。明日は販売量をもっと増やそうかと考えていますよ」
「うむ。それなんだがな、箱売りは商業ギルドでしてもいいぞ? ここに運んで並べるのも大変だろう? 大量購入者に限りギルドで直接取り扱ってやる」
「え!? 本当ですか、それは助かりますがいいのですか?」
「勿論だ。手数料も要らん。だが倉庫前に倉庫使用料を徴収する職員がいるだろう? 他の商人の手前があるから、倉庫使用料だけは貰う事になるがな」
「それはもう是非! でも申し訳ないから販売手数料は払いますよ」
「いや、そっちはいらないから気にするな」

 流石にそれは申し訳ないと、流はバーツに支払うと言うのだが、頑として聞く気が無い。

「はぁ、分かりました。ではお言葉に甘えさせてもらいますよ」
「それでいい、若者は素直でなくてはな! はっはっはっは」
「良かったですねナガレ様!」
「まったくだぜ、オヤジに感謝しろよナガレ?」
「ああ、それは無論だとも。バーツさんには感謝しかねーよ」

 ニヤリと笑うバーツを見て流は思う。こんな大人になりたいものだと。

「そう言えばこの国は関税とか無いのですか?」
「ああ、基本的には無い。ただギルドへ申告した分しか売れない決まりになっとる。申告以上に売ると、密輸等の犯罪行為とみなされ処分される。もっともお前の場合に限り、俺は何処から持って来ているのか等興味は無いがな」

 そう言うとバーツは豪快に笑う。そんなギルドマスターはとても眩しかった。

 その後手伝ってくれたメリサ達ギルド職員達をカレーで慰労し、バーツとファンも食べると言うので全員で青空の下でカレーを楽しんだ。


◇◇◇


 全ての品を売りつくした流は、午後二時頃には店仕舞いをして幽霊屋敷へと戻る。
 メイド達も良く働いてくれたので、疲れているのかと思ったが全然平気のようだった。

「今日はありがとう、疲れたろう?」
「いえ、まだまだいけます!」
「そうですよご主人様。このまま寝ないで一週間は頑張れます!」
「お、おぉ……。無理はしないでね?」
「「はい!」」

 この娘達も「中の人が見た目通りじゃない」事を改めて実感する。
 そんな事を考えながらも、街中を進むと面白い屋台を見つけた。

「嵐影ちょっと止まってくれ」
「……マ」
「お前達も待っててくれ」
「「はい」」

 流は目的の屋台へと足を進める。
 店の前へと来ると、その屋台に置かれている品が良く分かった。

「ご店主、これは何だい?」
「らっしゃい! これは氷結の実と言ってな、実がいつまでも凍ったままなんだよ。で、見てろ」

 店主がそう言うと、直径三十センチ程のアイスブルーの実を鉈で割る。
 すると今まで凍っていたのが嘘のように、ピンク色に変色し甘い香りを放つ。

「おおお!? ナニコレ凄い!」
「はっはっは。やっぱり知らなかったのか? この辺りでは有名な果実なんだぜ? トエトリー名物、ダンジョン産の果物だ! どうだ、買っていくかい?」
「無論だ! 売れるだけくれ!」
「お、おう? っていいのかよ!?」
「ああ、その代わり今割ったやつはサービスしてくれよな?」
「そりゃあもう! あ~今日はもう店仕舞いだな! はっはっはっは」

 店主はあるだけの氷結の実を流の販売車へと積み込む。

「ありがとうよ! ほれ、これおまけだよ」
「じゃあ貰ってくよ。また来る」
「毎度あり~!」

 おまけの実を御者台に座りながら、メイド達へと渡し食べてみる。

「お!? 思った通り冷たくて美味しいな。強いて言えば、桃とバナナを足したような味だな」
「本当ですねぇ。あちらでは食べた事が無い味で美味しいです♪」
「うんうん、見た目にも面白いですね。まさか割ると色が変わるなんて、思いませんでしたよ」

 そんな感じで今日もまた面白い物を発見し、満足に幽霊屋敷へと帰るのだった。
 屋敷に着くとメイド達が入口で待っていた。

「「「お帰りなさいませご主人様」」」

「ただいま~。販売車の中に珍しい果物があるから食べてくれ。あ、それと嵐影が食べたいだけあげてくれ。割ると溶けて食べられるようになるから」
「承知いたしました」
「では頼む。嵐影はメイド達から氷結の実を貰って、ゆっくりしててくれよ。お前は今日も大活躍だったからな」
「……マァ」

 流は嵐影をモフると、嵐影も流の胸へと鼻を押し付けて甘える。

「おっふ。嵐影は甘えん坊だなぁ」
「……マ」
「ははは。じゃあ俺は三階へと行くから、気が向いたら来いよ」

 嵐影は流へと手を振ると、そのままお尻を地面に付けて座る。
 両手でごそごそと、自分の荷物用のバッグからニンジンを取り出し、それをかじって氷結の実が来るのを楽しみにしていた。

 屋敷の中へ入ると執事達が待っており、メイド達から受け取った本日の売り上げ等を受け取る。

「お館様、お疲れ様でございました」
「セバスか。びっくりするほど人が来てさ、本当に疲れたよ」
「ははは、そうでしょうなぁ。あれ程の品ですから飛ぶように売れたでしょう」
「ああ、本当に文字通りだったよ。で、珍しく妖怪屋敷組がいないが?」
「御三方共ビーチにいらっしゃるのでお呼びしたので、そろそろおいでになると思いますが……」
「ああいいよ、執務室で待ってると伝えてくれ」
「承知いたしました」

 流はミレに頼み三階へと向かう。ミレは今日も陰鬱な表情であるが、実に楽しそうに流へと話しかけ、短い交流を二人共に惜しみながらも三階へと到着する。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...