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第六章:商いをする漢

210:メイド服の中の人は強いのです

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 十人いる見るからに香ばしい奴ら、椅子とテーブルを占拠しており、周囲に威圧を放っている。
 その佇まいは見るからにチンピラ然としており、時折ナイフをチラチラと見せている。

「おぅ……。何だあれは? もしかしてザ・チンピラ! って奴らか? ギルド何してる、仕事しろ」

 そんな流を見てチンピラ達がニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべている。

「おい、そこのガキ。早く店を始めねーか! こっちは客だぞ? さっさとしろ!!」
「あんだって? 最近耳が遠くてねぇ、もう一度言ってくれんかねぇ?」
「テメェ、馬鹿にしてるのか!?」
「はいぃ? 聞こえませんなぁ。せめて人間の言葉で話してくれんかのぅ?」
「クソガキがああああ!! 腕の一本や二本は覚悟しろや!」

 朝っぱらから馬鹿に絡まれ、不機嫌MAXの流は美琴に手を掛けたその時だった。

「ご主人様、ここは私達にお任せを」
「え? お前達戦えるの?」
「執事達程ではありませんが、多少なら問題なく」
「そ、そうなのか。じゃあ頼もうかなぁ?」

 再度中の人は何者疑惑が噴出したが、心に蓋をして知らないふりをする。
 するとチンピラ達が、そんな流を見て爆笑を始める。

「ぎゃはははは! 見たかよ、メイドに守ってもらっているぞ?」
「情けない野郎だな! どれメイドちゃん、お兄さんと遊ぼうぜぇ?」
「臭いから話しかけないでください。見た目も汚いですが、存在その物が汚物と言っていいでしょう」

 そうメイドの一人が言うと、鼻をつまみ右手でパタパタと扇ぐ。
 それを見たチンピラ達は激怒してナイフを持って襲い掛かって来る。

「このクソメイド、デカイ穴を股にもう一つ増やしてやるから泣いてて喜べや!!」
「はぁ~。臭い上に下品まで追加ですか、もう汚すぎて直視できませんね」

 襲い掛かるチンピラがメイドに掴みかかり、その体がチンピラの方へと引き込まれる。
 と、誰しもが思った刹那に起こる、意味不明な出来事。

 突如チンピラが宙を舞い、奥の噴水の泉へと投げ込まれる。
 すると次々に同じ現象が起き、メイド達がチンピラの傍へいつの間にか近寄ると、またチンピラ達が宙を舞い噴水の泉へと投げ込まれた。
 その様子はまるで、北海道名物ササラ電車が雪を弾き飛ばすが如く、人が勢いよく吹き飛んで行く。

「あぎゃああああ!?」
「いでえええええ」
「げひぃぃっぃ」

 投げられた全員は腕か足の骨など、何処かしらかを骨折しており、泉の中でもがいていた。

「さ、お掃除は完了ですね。ご主人様、ただいま開店準備を致しますので少々お待ちを」
「ああ。頼むよ……」

 いつの間にか出来ていたギャラリーと、流は呆然としながらメイド達の容赦ないゴミ掃除に驚く。

 そんな出来事があった事も忘れるように、開店準備が整うと、待ってましたとばかりに客が流の販売車へと殺到する。

「兄さん、今日も買いに来たぞ!」
「まいど! 昨日はありがとうございました。今日から通常価格で一袋銀貨一枚、それと一人十袋までですが、今日も同じで?」
「ああ、それでよろしく!」

 それを聞いたメイドが即座に十個入りの袋を出すと、男へと渡し代金を受け取る。
 淀みない流れるような作業に、とても昨日始めたばかりとは思えない動きだった。
 
「すまない兄ちゃん。大口で商って欲しいんだが、いいだろうか?」
「いいですよ。でもここじゃなく、商業ギルドが窓口になっているので、そっちで購入してください」

 次から次へと押し寄せる客をこなし、メイド達は売り子と並んでいる人の整理をしていると、あっと言う間に本日の分を売り切ってしまう。

「ご主人様、もう在庫がありません」
「え!? もう全部売り切ったのか?」
「はい、本日分用意した十五キロ、全て売れました」
「昨日より増やしたのに……。しかも昨日より売れるのが早い! はぁ仕方ない。昼までまだ一時間以上あるけど、カレーを売り始めるか」
「承知しました」

 メイドはプラカードを持って、今だ並んでいる客に完売を告げる。
 そしてカレーの販売の宣伝も同時にするのだった。

「で、やっぱりこうなるのね」

 カレーの屋台には長蛇の列が作られおり、その整理にメイド達は頑張っている。
 横入りする者は、嵐影が駆除したのかと思ったのだが、今日はメイドが不思議な力で泉へと投げ飛ばす。

 それを怪我しない様に嵐影が泉の中で受け止めてから、ポイっと泉の中へと投げ入れていた。
 一連の動作を見ていた流は、昨日泉に放り込まれた奴は無事だったんだろうかと思う。
 そんな流の気持ちを知らずに、嵐影は一仕事終えると泉の中にプカリと浮くのだった。

「むぅ、嵐影を見ていると心が安らぐ。そして屋台を見るとカオスすぎる……」

 次から次へと殺到する人々、それを苦も無く捌くメイドさん達。

「俺、もういらなくね?」
 
 そう独り言ちると、流は嵐影を見てほのぼのとするのだった。

 二日目はカレーの量を多く馬車へと積んできたが、それすらも完売となり、午後一時過ぎには店仕舞いとなった。


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