日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

文字の大きさ
212 / 486
第六章:商いをする漢

213:やさしきけもの

しおりを挟む
「こちらにいらっしゃいましたか、お……こほん、御館様」
「セヴァス……。チッ、追跡の魔具か。久しぶりの休日も終わり、か」
「何だよ、今日は休みだったのか? 悪かったな付き合わせちまって」
「何を言う! 俺は今日ほど楽しい事は無かったぞ? こんなに楽しいかったのは生まれて初めてだ」
「そうか? 俺も心から楽しんだ。それもこれもお前のおかげだよ。ありがとう、え~っと……」

 そこで二人は未だに名乗っていない事を思い出す。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。俺は流、古廻流と言うんだ。よろしくな!」
「え!? まさか噂の巨滅兵を討伐したって言う……」
「ちょっと前の奴なら俺だと思うぞ? あぁ、今日は腕章付けてないから分からないよな。何だよ、知ってたのか~」

 その言葉に金髪の漢は額に冷や汗を流す。そしてそれを見つめるセヴァスは、
もっと青い顔をしていた。

「そ、そうか。ふふ……そうだったんだな! はは、はっはっはっは!」
「おいおい、いきなりどうした? 悪い物でも食べたか?」

 いきなり笑い始めた金髪の漢に、流は食質・・をするが、不毛な答えが返って来る。

「それを言ったらお前もだろう?」
「確かにな!」
「「ハハハハ」」

 暫く笑った二人は落ち着くと、金髪の漢は流へくるりと背中を向ける。
 そして、そのままの姿で流へと名乗りをあげる。

「俺の名は『トエトリー・フォン・カーズ』だ」
「えええ!? まさかお前ってここの領主なのか?」
「……そうだ。俺は……ここの領主をしている。だが、しかしだ!」

 カーズは振り向くと、ナガレの胸に向け拳を出す。

「俺達は友達……だろ?」
「何を言っている、当たり前だろう?」

 流もまたカーズの拳へ己の拳を突き合わせる。

「なあ……、ナガレ。また一緒に遊んでくれるか?」
「当然だろう? 何時でも誘ってくれ。流石に俺からは連絡するのは気が引けるしな」
「いやその内……。ふっ、そうだな。俺から連絡しよう」
「もし良かったらさ、俺の屋敷にも遊びに来てくれよ。大歓迎するぞ?」
「そ、そうか!? 行ってもいいのか?」
「おう、勿論だぞ? 何時でも来いよ、待ってるからな?」

 その言葉を聞いてカーズは頬を上気させ、興奮して返事をする。

「ああ、ああ! 絶対に行くとも!」
「……申し訳ありませんお館様、そろそろお時間です」

 その言葉にカーズは、セヴァスを射殺すように睨みつける。

「だ、そうだ。なに、すぐにまた会えるさ」
「そうだったな……。流、また会おう!」

 そう言うとカーズは迎えに来ていた馬車へと乗り込む。
 そして馬車の窓から流をじっと見ると、ニコリと笑い手を振って去って行った。

「カーズか。まさかあのいけ好かない男が、ここの領主様とはなぁ……。また、会えるよな……?」

 流は去って行く馬車を見つめながら、寂しそうに独り言ちる。
 ほんの数時間の出来事だったが、その濃密な出来事を思い出し、それが終わったのだと思うと妙に寂しく感じるのだった。


◇◇◇


 同じ頃、馬車は領主の館へ向けて足早に向かう。
 まるで一刻も早く、外の世界からカーズを隔離するように……。

「まさかあの方が古廻流様だとは、思いもよりませんでしたな」
「……ああ、そうだな。だがよく見れば流の腰には刀が差してあったのを、流と別れる時になって初めて気が付くとはな。とんだ守護者もいた物だ」

 セヴァスはその言葉にピクリと眉を顰めるが、ふと先程の主の行動に思い至り質問をする。

「お館様、よかったのですか? あの場は普通握手では?」
「お前が来なければそうしていたかもな。だが、あいつは屈強な侍だ。その戦士の手に俺如きの根性の無い、柔らかな腑抜けた手など失礼と言うものであろう?」
「そう、でしたな。差し出がましい事を申しました」
「それにだ。またすぐに会えるさ、嫌でもな」
「…………」

 一気に空気が重くなった車内は、二人を押し込めるように重く圧し掛かる。
 その後どちらも言葉無く、領主の館まで向かうのだった。


◇◇◇


 流は一人寂しくラハーシア広場を歩く。
 時刻は既に十八時半を過ぎており、自分の店はすでに撤収したと分かっていても、何となくそこへと向かう。
 周囲の屋台は今だ輝きを失わず、逆に魔具の光によって幻想的な風景に仕上がり、昼とは違う夜の活気に沸き立っていた。

「ふぅ~。当然撤収した後だわな……」
 
 通常の屋台スペースの十倍程あるその場所には、テーブルと椅子以外何もなく、周囲からの明かりでそこだけポッカリと穴が空いているように見える。

「嵐影も……いないわな。そりゃあ販売車引いて帰ってるもんなぁ」

 そう思いながらも、流は嵐影が浮かんでいた場所へと向かう。
 噴水からは水が今も落ち続け、それをライトアップする魔具で照らされている。
 その色は主に青系統が主体だったが、赤や紫、時には黄色や緑色になり、その様子は実に幻想的であった。

「ふぅ……。少し噴水の縁に座ってから帰るとするかな」

 流はそんな幻想的な噴水を、ボーっと見上げながらため息を吐く。
 そして縁に座ろうとした瞬間、それは起こった。

「うわあああ!? すわっ魔物か!!」

 いきなり水面が隆起したと思うと、そこから大きな影が飛び出す。
 そして流へ向けて吠える。

「……マ!!」
「ら、嵐影かよ~。驚かすなよな~って、お前待っててくれたのか?」
「……マァ」
「そうか~。ありがとうな、わざわざ戻って来てくれたのかぁ……。本当にありがとう」

 そう言うと流は嵐影の頭を一撫ですると、嵐影は濡れた鼻先を流へと押し付ける。

「おっふ。甘えん坊だなぁ~。おかげでお前の鼻のスタンプが出来たぞ?」
「……マ~」
「え、チョットマテ!?」

 嵐影は流の静止も無視して例の儀式を始める。
 それは体に着いた水を吹っ飛ばすブルブルだった。

「ぎゃあああ!? 俺の全身ずぶぬれだ!!」
「……マッマ~」
「この野郎!! 許さんぞ!?」

 そう言うと流は噴水へ飛び込み、嵐影へと水をかける。
 その様子を腰の美琴は呆れて見ているが、流が元気になって良かったと心から思うのだった。
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...