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第七章:新たな力を求めるもの
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あれから二日が過ぎ、流もだいぶ妖力での防御も上手くなった。
善吉の「それなりに強め」の横スイングにも耐えれるようになり、今日はわりと本気の一撃を耐える訓練だ。
「よーし、来い善吉!」
「おうよ! 行くぞ~、フンッ!」
流を吹き飛ばす事を躊躇わない程気合を込めた、善吉の金棒が恐ろしい音を上げて迫って来る。
その金棒の威力は、乗用車すらも簡単に破壊する威力だと思いながらも、流は冷静だった。
(うぉ~! キタキタキタ! 足に妖力を込めて踏ん張る! そして腕に五割、足に二割、美琴へ三割で振り分ける!)
流はここ数日何度も食らった金棒から、最適な妖力の振り分けを考え実行に移す。
その直後、金棒が美琴へと迫り刀身へ練った妖力を返す。そして『赤い鬼の籠手』を具現化し、それを両手に装備して金棒の着打を待つ。
「ぐぐうぅぅぅぅぅ!!」
「おお! 耐え抜いた!!」
わずかに足が後ろへと下がったが、それでも金棒を美琴で完全に受け切った流は、そのまま金棒を押し上げて払う。
「うおっと!? しかも払いのけるかよ、やるな~」
「ふぃ~。いやギリギリだったぞ? もう少しで吹っ飛びそうだったからな」
「よっしゃ! ガキんちょ、ようやった!」
「防御面はそれなりに出来て来たねぇ。坊や、その籠手だけど、他の部分は出せるのかい?」
流は鬼の籠手を一撫ですると、左まゆを上げて溜め息まじりに答えを話す。
「あぁそれな。俺も試してみたんだけど手だけだな。なぜかは知らないが、具足一式は無論、兜もスネ当ても無理だったわ」
「そうかい、なら妖力の流に無駄があるのかねぇ」
「いや、個別で出そうとしても無理だったな」
「そうなると原因は違うがよ、多分ガキんちょの精神力の問題ぜよ」
前鬼の言葉にふと思う。確かに手はすぐ目の前に見えるから想像しやすい。
逆に足は下を見ていると、何か違和感があって集中できない。無論体とかは論外だった。
「あ~多分それだな。なかなか難しいな」
「何を言っているさね、それだけでも十分すぎる程の力だよ。元世界でそこまで妖気を操れる人間は少ないはずだよ」
「そうだが。ガキんちょは、希少中の希少と言ってもいい程の存在だがよ」
「そう言うもんかねぇ」
流は籠手を見ながら、呟くようにそんな事を思う。
「ガキんちょのその籠手は、防御力だけが上がる感じが?」
「今の所はそんな感じだなぁ……あ、でもこの前は円柱石を殴った時は凄かったよな? う~ん、良く分からんな」
「あれは力の入れようの問題さね、緩く殴ったつもりでも、その籠手のデザインでも分かる通り、坊やは鬼の力を意識しているね。だから力を引き出せたんじゃないのかね」
そう言われると、鬼が刀や槍で戦っている所を想像出来なかったりする。
鬼の戦闘スタイルとは、金棒をぶん回して殴りつけるイメージしかなかった。
「あ~そう言われると、何となく理解したわ」
「だろう? まあその辺りも追々慣れれば良いさね」
「鬼に剣豪とかいないのか?」
「そりゃいるさ。例えばウチの旦那とかね」
「え!? 前ちゃん剣豪なのか?」
「まぁ~昔はそう言われた事もあったがよ。最近はコレ一本だぜよ」
前鬼は腕まくりのような仕草で、ぷにぷにの右腕を掲げる。
「そ、そうか。じゃあ俺はもう少し練習すれいいのか?」
「そうだねぇ、あの天女は出せないのかい?」
「あ~ちょっと待ってくれ、聞いてみる」
流は美琴を抜くと、そこにいる天女へと聞いてみる。
「なぁ天女ちゃん。呼んだら出て来てくれるのかい?」
「坊や何を言って……え?」
「動いているっちゃ……」
「なぜ恥ずかしそうに顔を隠す」
天女は頬を染めて恥ずかしそうにしている。しかも何故か腰をクネらせ、妖艶さ(?)をアピールしているのか?
そんな天女はどうやら出て来てはくれないようだった。
「うーん、ダメっぽい。やっぱ妖力が刀身に滾らないと、恥ずかしがって出て来てくれないんだよ」
「オイのような存在がこう言っちゃなんだが、面妖だがよ」
「そりゃあ生きている品ってのはあるもんだが、これは群を抜いているさね。まあそれは分かったよ。じゃあコツを掴んだら、ウチの旦那と剣で戦ってもらおうかね」
「え!? 剣豪と?」
「ガハハハ、剣豪とはこそばゆいがよ。まあオイは本気を出さんちゃ、得物は……ああ、あれがいいがね」
前鬼は当りを見回すと嵐影が荒業(?)のために、昨夜枕にしていた海岸に打ち上げられていた流木を見つける。
それを空中へ放り投げると、あっと言う間に手刀で流木を削り木刀にする。
「うむ、いい出来だぜよ!」
「ちょ!? 前ちゃん、流石に美琴相手にそれは斬れちゃうぞ?」
「まあ見ちょれ。ほれ、かかって来るがよ」
「知らないぞ? じゃあ――」
流は前鬼へと美琴を袈裟懸けで斬り付ける。が、前鬼は木刀でそれを受け止め、しかも弾き返してしまった。
その後何度か斬り結び、数分が経ったころに前鬼が流を吹き飛ばす。
「どうがよ、驚いたっちゃろ?」
「マジかよ!? その木刀の芯に実は金属でも入っているんじゃないのか?」
「何を言うとるが。こいつは紛れも無くただの流木だぜよ。ただ――」
そう言うと前鬼は木刀に妖力を込めだすと、暗い青色に光りだし、それを全体に馴染ませるとまた普通の木刀になる。
「と、言う訳がや」
「そうか、妖力で武器も強化したって事か」
「ああそうがよ。だがそれだけじゃない、切れ味も増しているぜよ」
「だからか! さっき弾き返された時、真剣と斬り結んでいる感覚だった」
「だろう? 今回の課題は『妖力を美琴に効率よく纏わせる』と言う事を学んでもらうが」
「分かった! お願いしまっす!」
ウムと一つ頷くと、前鬼は目の前に円柱石を出しゆっくりと木刀を当て、木刀を高速で振り抜く。
すると円柱石は〝ズズッ〟と石と石がこすり合う重い音がしたかと思うと、熱したナイフで切られたバターのようにズレ、斜めに石床へと転がり落ちる。
それは全く力を込めていない感じであり、実に自然に木刀を斜めに振り下ろしただけであった。
善吉の「それなりに強め」の横スイングにも耐えれるようになり、今日はわりと本気の一撃を耐える訓練だ。
「よーし、来い善吉!」
「おうよ! 行くぞ~、フンッ!」
流を吹き飛ばす事を躊躇わない程気合を込めた、善吉の金棒が恐ろしい音を上げて迫って来る。
その金棒の威力は、乗用車すらも簡単に破壊する威力だと思いながらも、流は冷静だった。
(うぉ~! キタキタキタ! 足に妖力を込めて踏ん張る! そして腕に五割、足に二割、美琴へ三割で振り分ける!)
流はここ数日何度も食らった金棒から、最適な妖力の振り分けを考え実行に移す。
その直後、金棒が美琴へと迫り刀身へ練った妖力を返す。そして『赤い鬼の籠手』を具現化し、それを両手に装備して金棒の着打を待つ。
「ぐぐうぅぅぅぅぅ!!」
「おお! 耐え抜いた!!」
わずかに足が後ろへと下がったが、それでも金棒を美琴で完全に受け切った流は、そのまま金棒を押し上げて払う。
「うおっと!? しかも払いのけるかよ、やるな~」
「ふぃ~。いやギリギリだったぞ? もう少しで吹っ飛びそうだったからな」
「よっしゃ! ガキんちょ、ようやった!」
「防御面はそれなりに出来て来たねぇ。坊や、その籠手だけど、他の部分は出せるのかい?」
流は鬼の籠手を一撫ですると、左まゆを上げて溜め息まじりに答えを話す。
「あぁそれな。俺も試してみたんだけど手だけだな。なぜかは知らないが、具足一式は無論、兜もスネ当ても無理だったわ」
「そうかい、なら妖力の流に無駄があるのかねぇ」
「いや、個別で出そうとしても無理だったな」
「そうなると原因は違うがよ、多分ガキんちょの精神力の問題ぜよ」
前鬼の言葉にふと思う。確かに手はすぐ目の前に見えるから想像しやすい。
逆に足は下を見ていると、何か違和感があって集中できない。無論体とかは論外だった。
「あ~多分それだな。なかなか難しいな」
「何を言っているさね、それだけでも十分すぎる程の力だよ。元世界でそこまで妖気を操れる人間は少ないはずだよ」
「そうだが。ガキんちょは、希少中の希少と言ってもいい程の存在だがよ」
「そう言うもんかねぇ」
流は籠手を見ながら、呟くようにそんな事を思う。
「ガキんちょのその籠手は、防御力だけが上がる感じが?」
「今の所はそんな感じだなぁ……あ、でもこの前は円柱石を殴った時は凄かったよな? う~ん、良く分からんな」
「あれは力の入れようの問題さね、緩く殴ったつもりでも、その籠手のデザインでも分かる通り、坊やは鬼の力を意識しているね。だから力を引き出せたんじゃないのかね」
そう言われると、鬼が刀や槍で戦っている所を想像出来なかったりする。
鬼の戦闘スタイルとは、金棒をぶん回して殴りつけるイメージしかなかった。
「あ~そう言われると、何となく理解したわ」
「だろう? まあその辺りも追々慣れれば良いさね」
「鬼に剣豪とかいないのか?」
「そりゃいるさ。例えばウチの旦那とかね」
「え!? 前ちゃん剣豪なのか?」
「まぁ~昔はそう言われた事もあったがよ。最近はコレ一本だぜよ」
前鬼は腕まくりのような仕草で、ぷにぷにの右腕を掲げる。
「そ、そうか。じゃあ俺はもう少し練習すれいいのか?」
「そうだねぇ、あの天女は出せないのかい?」
「あ~ちょっと待ってくれ、聞いてみる」
流は美琴を抜くと、そこにいる天女へと聞いてみる。
「なぁ天女ちゃん。呼んだら出て来てくれるのかい?」
「坊や何を言って……え?」
「動いているっちゃ……」
「なぜ恥ずかしそうに顔を隠す」
天女は頬を染めて恥ずかしそうにしている。しかも何故か腰をクネらせ、妖艶さ(?)をアピールしているのか?
そんな天女はどうやら出て来てはくれないようだった。
「うーん、ダメっぽい。やっぱ妖力が刀身に滾らないと、恥ずかしがって出て来てくれないんだよ」
「オイのような存在がこう言っちゃなんだが、面妖だがよ」
「そりゃあ生きている品ってのはあるもんだが、これは群を抜いているさね。まあそれは分かったよ。じゃあコツを掴んだら、ウチの旦那と剣で戦ってもらおうかね」
「え!? 剣豪と?」
「ガハハハ、剣豪とはこそばゆいがよ。まあオイは本気を出さんちゃ、得物は……ああ、あれがいいがね」
前鬼は当りを見回すと嵐影が荒業(?)のために、昨夜枕にしていた海岸に打ち上げられていた流木を見つける。
それを空中へ放り投げると、あっと言う間に手刀で流木を削り木刀にする。
「うむ、いい出来だぜよ!」
「ちょ!? 前ちゃん、流石に美琴相手にそれは斬れちゃうぞ?」
「まあ見ちょれ。ほれ、かかって来るがよ」
「知らないぞ? じゃあ――」
流は前鬼へと美琴を袈裟懸けで斬り付ける。が、前鬼は木刀でそれを受け止め、しかも弾き返してしまった。
その後何度か斬り結び、数分が経ったころに前鬼が流を吹き飛ばす。
「どうがよ、驚いたっちゃろ?」
「マジかよ!? その木刀の芯に実は金属でも入っているんじゃないのか?」
「何を言うとるが。こいつは紛れも無くただの流木だぜよ。ただ――」
そう言うと前鬼は木刀に妖力を込めだすと、暗い青色に光りだし、それを全体に馴染ませるとまた普通の木刀になる。
「と、言う訳がや」
「そうか、妖力で武器も強化したって事か」
「ああそうがよ。だがそれだけじゃない、切れ味も増しているぜよ」
「だからか! さっき弾き返された時、真剣と斬り結んでいる感覚だった」
「だろう? 今回の課題は『妖力を美琴に効率よく纏わせる』と言う事を学んでもらうが」
「分かった! お願いしまっす!」
ウムと一つ頷くと、前鬼は目の前に円柱石を出しゆっくりと木刀を当て、木刀を高速で振り抜く。
すると円柱石は〝ズズッ〟と石と石がこすり合う重い音がしたかと思うと、熱したナイフで切られたバターのようにズレ、斜めに石床へと転がり落ちる。
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