日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界・骨董無双~狂気の娘を返品したいがもう遅い!!だから神が宿る骨董品達で、俺が世界を改変してやるッ!!

竹本蘭乃

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第七章:新たな力を求めるもの

280:その願いは時を超え、万感の思いは『今』成就せり

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「ジジイ流・刺突術! 間欠穿!!」

 典膳が右拳で殴りかかって来たのをカウンターでかわし、流は典膳の胸へと間欠穿を撃ちこむ。
 斬撃は吸い込まれるように心臓を捉えて確実に穿つ……が、即座に赤い霧で回復してしまう。
 まさかの心臓への攻撃まで無効化されるとは思いもよらず、その焦りは色濃く顔に浮かび上がる。

「クソッ! こいつもダメかよ……。あらかた業は出し尽くしたぞ」

 鑑定眼で弱点を探るも、それは人と同じ場所が表示される。
 つまり心臓だったり、頭部だったり、鳩尾だったりと、「一般的な人間」となんら変わりは無かった。
 しかしそれを突こうが、斬ろうが、飛ばそうが即座に回復してしまうか、固くて斬れなかった。
 幸い典膳の攻撃が単調で緩慢なのが救いだが、建築面積が大きいとは言え蔵の中と言う狭い空間では、その優位性すら失われている。

 一度典膳の力を利用し、壁をぶち抜き外へと出ようと試みたが、なぜか不思議な力により壁は一切の傷を付けず攻撃を弾き返す。
 その後、流も美琴で壁を斬り付けるが、見えない弾力性のある粘膜のような物を斬ったかのような感触があり、それも無駄に終わったのだった。

「グオオオオオオオオオ!!」
「どうした親父殿、攻撃が当たらずご不満か? それはこっちも同じなんだがな」

 だがいくら狭い空間とは言え、天膳の攻撃のスピードはそこまで早くもなく、電撃をまとった拳の間合いも少しずつだが慣れてきた。
 そんな応酬が続くなかで、お互い百日手の様相を呈したが、一切の攻撃を退けた流は典膳の攻撃に慣れて来た。そう、「慣れ」てしまった――が。

『流様! 危ない!!』
「なっに!? グァアアアッッ!!」

 流は典膳の上段からの、大振り叩き潰しを回避する。その後天膳は、しゃがんだ姿勢から体を回転しながら立ち上がる。
 両手をぶん回しながら立ち上がって来る、典膳の初めての動きに流は一瞬油断をした。
 その代償はあまりに大きく、咄嗟に両手に妖気でガードを固める。が、それを貫通した典膳の攻撃で蔵の右端にいた流は、逆の左端まで吹っ飛ばされ壁に激突する。

 典膳の適当な攻撃と、咄嗟に間に合った妖気の籠手でのガードで、幸い骨折はしていないようだった。しかしそれでも殴られた衝撃と、壁に激突した激痛で立ち上がる事も困難になり、さらに電撃で骨の髄まで浸透したダメージから回復するには相当時間がかかりそうだった。

 つまり――。

「ぐぅっ……致命的ってやつか。最近こんなんばかりだな……」

 流が動けないと分かったのか、その歩みは実にゆっくりとだが、確実に迫る典膳。その距離約十五メートル程である。
 確実に迫る命の終わり、そんな光景をまんじりともせず睨みつけながら流は思う。

「美琴、お前に食べられてやれなくてすまなかったな」
『い、嫌! そんな事言わないで!』
「とは言え、目の前に親父殿が迫って来るしなぁ。あと十五メートルってとこか……。ハァ~、悲恋美琴……か。完全なお前を使いこなしたかったなぁ」
『そんな事を言わないでよ! 私も悲恋もあなたに完全に使ってもらえる……日、を……?』
「お前と悲恋……も?」

 その瞬間、二人の中で霧の向こうにあった見えない答えがハッキリと見えて来る。
 美琴は『あの瞬間』を思い出し、流は『あの時見た』ことを思い出す!

 だから二人は「どうすればいいのか」がすぐに分かる。

『「未完なら完全にすればいいじゃない!!」』
「美琴!!」
『はい!!』

 美琴は悲恋から抜け出すと、すぐさま刀身へと触れる。
 すると実に新鮮なドロリとした血文字で描かれた「相合傘」と、その下に「みこと」と書かれたものが刀身へと浮かび上がる。

「うぉ!? こうして見るとマジで怖いな、確実に呪われる気しかしない……」
「もう! なに言ってるんですか!! そんな事言っている場合じゃないですよ!!」
「そ、そうだった!」

 流と美琴はお互いを見つめると一つ頷く。
 そして流は右手の人差し指先を悲恋で少し切ると、先端からわずかに漏れ出る鮮血で、刀身へと渾身の想いをつづる。


 ――数百年間空席だった場所。刀照宮美琴の焦がれる思いの結晶である、相合傘あいあいがさの空いた場所、そこへ『流』と――


 瞬間、美琴は悲恋に吸い込まれて行き、妖刀・悲恋美琴が爆発すると思うほどに大歓喜をする。

 それは灼熱の炎天下の砂漠で、突如オアシスが湧き出たのを見つけた喜びのように。
 冬山の極寒の地で凍死寸前に、明かりの灯る山小屋を見つけた時のように。
 草木すら死に絶えた大地で空腹で死にそうな時に、場違いなレストランを見つけたように。

 そして――数百年待ち焦がれた想い人に『やっと出会えた奇跡に感謝』するように……。

 悲恋美琴を中心に爆発的に膨れ上がる妖気の渦。
 それに恐れをなしたか、典膳も両腕で顔を庇うようにして立ち止まる。
 そして「その時」がついに訪れるのだった。
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