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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
300:手紙
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嵐影は走る、屋根の上を……。
「うわぁぁ~!? 落ちるのだあああ、あるじ助けてええええ」
「まったく、どこが氷狐王だよ。やっぱりワン太郎だよお前は」
自分も少し前までワン太郎と同じように叫んでいたのを忘れたのか、ヤレヤレと落ちそうになっているワン太郎を懐に入れる。それが嬉しいのか、懐の中でもぞもぞと動いているのがくすぐったい。
「おい、動くなよ。くすぐったいだろう?」
「そうは言っても安心したからしかたないワン」
『本当に王様はだめな子ですねぇ』
「まったくだ……それにしても何で俺をみんな見ているんだ?」
冒険者ギルドが近くなったので、石壁を蹴るようにして地上へと戻る嵐影。
だが、いざ道を歩いていると「子供から大人まで不思議そうな顔で見ている」のが分かった。
『あ! 流様が妖人になっているからじゃない?』
「あああ!? 忘れていた。そのままだったなぁ……」
そう言うと変怪を解き、人間形態に戻ると、嵐影を珍しそうに見る人だけに戻る。
どうやら異世界でも妖人となった容姿はめずらしいと言う事らしい。
少し進むと冒険者ギルドが見えてくる。外は相変わらずの様子で、夕方と言うこともあり屋台や店舗は活気づいていた。
「嵐影行ってくるよ。笛で呼ぶから、好きな場所で待っててくれよな」
「……マァ」
「ヒャッハーここは通さ――」
「今はそれどころじゃない、エルシアは?」
ウエスタンドアを押し入り、プロの雑魚が反応したところでこの言いようである。
周りの馴染みの顔は「じゃあ引いて入れ!」と思ったが口に出さない。だって、顔が怖いから……。
「ア、アニキ。どうしたんでさぁ?」
「まぁ、色々あってな。それとアニキって呼ぶな」
「ヘイ、アニキ。エルシアなら数日前からいやせんぜ?」
奥に見えるカウターにはエルシアの姿はなく、どうやら数日前からいないと言う。
ふと右奥を見ると、ジェニファーちゃんが手招きをしていた。
「そうか、ありがとな」
「ヘイアニキ。何やら最近不穏な空気がながれています。どうかお気をつけて」
流はその言葉に感謝をつたえ、ジェニファーの元へと歩き出す。
殺盗団の手先が蔓延していた頃よりは、はるかに空気がよい冒険者ギルドだったが、なにやら冒険者達はピリピリとした空気をまとっているのが分かる。
「あはん♪ 久しぶりねボーイ。修行の成果は……どうやら出たみたいね?」
「よく分かるものだ、流石だよ。それで今回のことは何か聞いているかい?」
その言葉の意味を知っているジェニファーは、グラスを〝キュキュ〟っと磨くと、アップルジュースのような、白濁したものを注ぎ流への前へと静かに置く。
「……メリサちゃんだったかしらん。その子のことね?」
「ありがとう、いただくよ。そう、メリサのことだけど、何か聞いているかい?」
「ええ、それでエルシアへ情報を聞きに来たんでしょ? まったく妬けちゃうわん、ボーイの心を鷲掴みなんてね」
そう言うとジェニファーは、大柄な肩をすくませる。
「その話がここへ来たのは、五日ほど前だったかしらん。エルシアがドアを『押して』入ってきてね、全員がその方向を見た時は驚いたわよん。なにせ顔が文字通り真っ青だったんだからねん」
「何があった?」
「混乱気味のエルシアを落ち着かせて、話を聞いてみたのよん。そしたらどうやらエルシアを攫う予定で、男たち数人で襲いかかって来たらしいのよん。その中にナイフを持って襲いかかって来たヤツもいてねん、エルシアは刺される寸前だったところで、今回攫われた娘、メリサちゃんがエルシアをかばって身代わりに『刺された』の……」
その言葉で背筋が凍りつく。まさか拉致られただけじゃなく、大怪我をしていると思うと居ても立ってもいられなかった。
「まぁまぁ、落ち着きなさいよボーイ。実は続きがあるのよん……その子が刺されたとエルシアも思ったらしいわん。でもね、不思議なことがおきたのよん……。甲高い何かが割れる音がしたと思ったら、刺したはずの男の方が壁にでも当たったかのように、弾かれて気絶したらしいのよん」
「っ!? ま、まさか氷盾の指輪か!!」
その言葉でジェニファーは理解する。
「やっぱりボーイのアイテムだったのねん。魔法が発動した感じがしなかったとエルシアも言っていたし、その襲って来た奴らも魔法を使った形跡が無かったと報告があったわん」
「そっか、ちゃんと守ってくれてたのか……。それで、その後はどうなった?」
「その後に丁度よく憲兵が駆けつけてくれて、あせった賊たちは元気なエルシアよりも、襲われた恐怖で放心していたメリサちゃんを攫ったらしいわん」
「そうだったのか……。それでエルシアは無事だったのかい?」
「ええ、もしもの事があってはと、ギルドで匿っているわん。だからそこは心配しないでねん。それより、これから乗り込むんでしょ? 王都へ」
そう言うと、ジェニファーは一枚の手紙を差し出してくる。中身を開封すると、思わず妖人化しそうになるほどの憤怒にかられる内容だった。
☆*:゚♪+。.☆.+**:゚+。☆彡
【あなた様に大感謝♪】
☆*:゚+。.☆.+*♪*:゚+。★彡
ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!
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「うわぁぁ~!? 落ちるのだあああ、あるじ助けてええええ」
「まったく、どこが氷狐王だよ。やっぱりワン太郎だよお前は」
自分も少し前までワン太郎と同じように叫んでいたのを忘れたのか、ヤレヤレと落ちそうになっているワン太郎を懐に入れる。それが嬉しいのか、懐の中でもぞもぞと動いているのがくすぐったい。
「おい、動くなよ。くすぐったいだろう?」
「そうは言っても安心したからしかたないワン」
『本当に王様はだめな子ですねぇ』
「まったくだ……それにしても何で俺をみんな見ているんだ?」
冒険者ギルドが近くなったので、石壁を蹴るようにして地上へと戻る嵐影。
だが、いざ道を歩いていると「子供から大人まで不思議そうな顔で見ている」のが分かった。
『あ! 流様が妖人になっているからじゃない?』
「あああ!? 忘れていた。そのままだったなぁ……」
そう言うと変怪を解き、人間形態に戻ると、嵐影を珍しそうに見る人だけに戻る。
どうやら異世界でも妖人となった容姿はめずらしいと言う事らしい。
少し進むと冒険者ギルドが見えてくる。外は相変わらずの様子で、夕方と言うこともあり屋台や店舗は活気づいていた。
「嵐影行ってくるよ。笛で呼ぶから、好きな場所で待っててくれよな」
「……マァ」
「ヒャッハーここは通さ――」
「今はそれどころじゃない、エルシアは?」
ウエスタンドアを押し入り、プロの雑魚が反応したところでこの言いようである。
周りの馴染みの顔は「じゃあ引いて入れ!」と思ったが口に出さない。だって、顔が怖いから……。
「ア、アニキ。どうしたんでさぁ?」
「まぁ、色々あってな。それとアニキって呼ぶな」
「ヘイ、アニキ。エルシアなら数日前からいやせんぜ?」
奥に見えるカウターにはエルシアの姿はなく、どうやら数日前からいないと言う。
ふと右奥を見ると、ジェニファーちゃんが手招きをしていた。
「そうか、ありがとな」
「ヘイアニキ。何やら最近不穏な空気がながれています。どうかお気をつけて」
流はその言葉に感謝をつたえ、ジェニファーの元へと歩き出す。
殺盗団の手先が蔓延していた頃よりは、はるかに空気がよい冒険者ギルドだったが、なにやら冒険者達はピリピリとした空気をまとっているのが分かる。
「あはん♪ 久しぶりねボーイ。修行の成果は……どうやら出たみたいね?」
「よく分かるものだ、流石だよ。それで今回のことは何か聞いているかい?」
その言葉の意味を知っているジェニファーは、グラスを〝キュキュ〟っと磨くと、アップルジュースのような、白濁したものを注ぎ流への前へと静かに置く。
「……メリサちゃんだったかしらん。その子のことね?」
「ありがとう、いただくよ。そう、メリサのことだけど、何か聞いているかい?」
「ええ、それでエルシアへ情報を聞きに来たんでしょ? まったく妬けちゃうわん、ボーイの心を鷲掴みなんてね」
そう言うとジェニファーは、大柄な肩をすくませる。
「その話がここへ来たのは、五日ほど前だったかしらん。エルシアがドアを『押して』入ってきてね、全員がその方向を見た時は驚いたわよん。なにせ顔が文字通り真っ青だったんだからねん」
「何があった?」
「混乱気味のエルシアを落ち着かせて、話を聞いてみたのよん。そしたらどうやらエルシアを攫う予定で、男たち数人で襲いかかって来たらしいのよん。その中にナイフを持って襲いかかって来たヤツもいてねん、エルシアは刺される寸前だったところで、今回攫われた娘、メリサちゃんがエルシアをかばって身代わりに『刺された』の……」
その言葉で背筋が凍りつく。まさか拉致られただけじゃなく、大怪我をしていると思うと居ても立ってもいられなかった。
「まぁまぁ、落ち着きなさいよボーイ。実は続きがあるのよん……その子が刺されたとエルシアも思ったらしいわん。でもね、不思議なことがおきたのよん……。甲高い何かが割れる音がしたと思ったら、刺したはずの男の方が壁にでも当たったかのように、弾かれて気絶したらしいのよん」
「っ!? ま、まさか氷盾の指輪か!!」
その言葉でジェニファーは理解する。
「やっぱりボーイのアイテムだったのねん。魔法が発動した感じがしなかったとエルシアも言っていたし、その襲って来た奴らも魔法を使った形跡が無かったと報告があったわん」
「そっか、ちゃんと守ってくれてたのか……。それで、その後はどうなった?」
「その後に丁度よく憲兵が駆けつけてくれて、あせった賊たちは元気なエルシアよりも、襲われた恐怖で放心していたメリサちゃんを攫ったらしいわん」
「そうだったのか……。それでエルシアは無事だったのかい?」
「ええ、もしもの事があってはと、ギルドで匿っているわん。だからそこは心配しないでねん。それより、これから乗り込むんでしょ? 王都へ」
そう言うと、ジェニファーは一枚の手紙を差し出してくる。中身を開封すると、思わず妖人化しそうになるほどの憤怒にかられる内容だった。
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