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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
304:歌声は高らかに
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「なるほど、話はわかった。職員から聞いていた内容と一致するが、情報がさらに一つ出たな」
「ええ、この『強烈臭い玉』ですね?」
「そうだ、普通ならちょっと難しいだろうが、ナガレならなんとか出来るだろう?」
バーツはそう言うとニヤリと口元を歪める。その意味を知っている流は、自信たっぷりに頷く。
「ええ、嵐影の力があればいけると思います。それに……そろそろ『結果』が出る頃だと思いますし……」
「結果だと? それは――」
バーツがそう言いかけた時だった、外から歓声があがり何事かと思った瞬間だった。
部屋のドアを激しくノックする音がする。バーツは眉をひそめ、その来訪者を呼ぶ。
「なんだ!? 今接客中だぞ!!」
「失礼します!! メリサを攫った賊を捕まえたと報告が!!」
「なにいいいいいッ!? あの陰険な監視者どもか?」
「はい! なぜか足が凍りつき、動けなくなっているところを冒険者が捕縛しました!」
驚くバーツたち。そして落ち着いた表情で、お茶を楽しむように飲んでいる流を見ると、全てを理解した。
「ナガレ……お前と言うやつは」
「なに、最近新しくイヌを飼いましてね。そのイヌが氷系の魔法? のようなモノを使えるので、お願いしたんですよ。捕まえておけってね」
「ナガレさんすごい……って、これでメリサの事も!!」
「ああ、そうなるといいな」
ここまで無言で様子を見ていたヴァルファルドは、ゆっくりと口を開く。
「ふっ、相変わらずの規格外ぶりだな。先程から見ていたが、以前より遥かに強くなったな? まだ荒削りだが、研ぎ澄まされた気力が見える。まぁ少し変わっている気力だが」
「それこそ流石ヴァルファルドさんだよ。よく見ただけで分かるなぁ……驚くよ。こいつは妖力と言って、俺の国に伝わる……まぁ、一種の力の根源みたいなものさ」
「そうか、ならば安心した。腐都……いや、王都へと行くんだろ? ならばコイツを持っていけ」
ヴァルファルドは金色のコインを一枚放り投げる。それをキャッチした流は、その刻印された絵柄を見る。
それは龍の顔が描かれており、目には赤い宝石が埋め込まれていた。
「こいつは凄い作り込みだな! 普通の金貨と同じ大きさだが、重さが倍はありそうだ。それに龍の顔の繊細な作り込みと言ったらもうたまらん!! 鱗一枚いちま――」
『な・が・れ・さ・ま?』
「っと、失礼した……ついついあまりの出来に舞い上がってしまった」
ふと見れば、バーツをはじめ、エルシアやヴァルファルドまで口を開けて驚いている。
「ど、どうしたんですか皆さん?」
「どうしたって……お前いま、誰と話しとるんだ? ま、まさか屋敷のゴーストか!?」
「違いますよバーツさん。多分……その剣ですね。そうだろ、ナガレ?」
ヴァルファルドは顔を引きつらせながら、美琴を指差しそう指摘する。
「まぁ半分バーツさんが正解かな……。そう、屋敷の幽霊ではありませんが、この刀に住んでいる? 美琴と言う娘です。まぁ幽霊なんですけどね」
『もう! そういう事を言うと、皆さん怖がるからやめてくださいよね!!』
「と、まぁ。自己主張の激しい幽霊ですが、気にしないでください」
一同はさらに唖然とするが、この男ならありなのかと思うことにして、心の平穏を保つ。
「う、うむ……。本当にナガレには驚かされる。それでヴァルファルド殿、その見事なコインはいったい?」
「ああ、それですか。そのコインは今じゃ身元の証にもならない、ただの重いコインですよ」
「と、言うことは……王国騎士団の団長証か!!」
「まぁそんなところです。ナガレ、そいつを見せて協力者を探してくれ。まだ俺の子飼いの部下たちが残っているからな」
「わかった、貴重な品を借りとくよ。助かる」
「さて、では賊を見に行こうじゃないか。ジリー、賊はどこにいる? おい、ジリー?」
「……あ、はい。ゴーストに驚いていました。す、すみません! 賊は第二倉庫へ入れておくとの事です」
ジリーと呼ばれた男は、顔を真っ青にして流を見ながらそう答える。それを見た美琴が『ほらぁ! 怖がっているじゃない』と言うものだから、ジリーはさらに顔を青くしたのだった。
一同はジリーの案内で、第二倉庫へとやってくる。そこにはすでに嵐影とワン太郎、それに冒険者たちと職員数名がいた。
「ワン太郎! やるじゃないか!」
「えへんだワン! ワレはやれば出来る偉い子なんだワン!」
そんなやりとりを見ている全員が思う。
「「「「「犬がしゃべったああああああ!?」」」」」
「むむ!? 犬じゃないのだ! ワレを犬呼ばわりしていいのは、あるじと、そこの幽霊女だけだワン! 氷狐王様と呼ぶのだワン!」
短い足で人のように立ち上がると、ワン太郎は得意げに胸を〝ぽん〟と叩く。王の威厳はおろか、まったく迫力がない……。
「まぁ気にしないでくれ。ちょっと妄想癖があるワンコなんだよ。でも実力は見ての通りだ」
「本当にお前といると驚きの連続だが……、今はとりあえずこいつらか。おい、メリサはどこにいる?」
バーツは鬼気迫る迫力で、賊の一人を眼光鋭く睨みつける。が……。
「知らんね。俺たちはただの雇われただけの追跡者だ。もちろん雇い主が誰かも知らされていない。仲介人から金だけ貰ってるだけだからな」
「追跡者ですって!? ならば冒険者登録証を持っているはずです! でも見たことがない人ばかり……」
「エルシアも知らないのか? なら王都かどっかの冒険者か?」
その言葉を聞いて追跡者達は笑う。
「違う違う、俺たちは冒険者をクビになった『元追跡者』の食いつめ者だ。つまり軽犯罪者ってわけだ。まぁ調べたらすぐ分かる情報だし、痛いのは嫌だからな。ちょっとした罰と引き換えに開放してもらえるなら、知ってることは全て話す」
実に清々しく契約者を裏切る事を言い出す男。それを見た冒険者の一人が流の隣へと並ぶ。
「ナガレの旦那……ちょっといいかい?」
冒険者のリーダー格の男が、流へとそう言うと、入り口付近まで移動するのだった。
「ええ、この『強烈臭い玉』ですね?」
「そうだ、普通ならちょっと難しいだろうが、ナガレならなんとか出来るだろう?」
バーツはそう言うとニヤリと口元を歪める。その意味を知っている流は、自信たっぷりに頷く。
「ええ、嵐影の力があればいけると思います。それに……そろそろ『結果』が出る頃だと思いますし……」
「結果だと? それは――」
バーツがそう言いかけた時だった、外から歓声があがり何事かと思った瞬間だった。
部屋のドアを激しくノックする音がする。バーツは眉をひそめ、その来訪者を呼ぶ。
「なんだ!? 今接客中だぞ!!」
「失礼します!! メリサを攫った賊を捕まえたと報告が!!」
「なにいいいいいッ!? あの陰険な監視者どもか?」
「はい! なぜか足が凍りつき、動けなくなっているところを冒険者が捕縛しました!」
驚くバーツたち。そして落ち着いた表情で、お茶を楽しむように飲んでいる流を見ると、全てを理解した。
「ナガレ……お前と言うやつは」
「なに、最近新しくイヌを飼いましてね。そのイヌが氷系の魔法? のようなモノを使えるので、お願いしたんですよ。捕まえておけってね」
「ナガレさんすごい……って、これでメリサの事も!!」
「ああ、そうなるといいな」
ここまで無言で様子を見ていたヴァルファルドは、ゆっくりと口を開く。
「ふっ、相変わらずの規格外ぶりだな。先程から見ていたが、以前より遥かに強くなったな? まだ荒削りだが、研ぎ澄まされた気力が見える。まぁ少し変わっている気力だが」
「それこそ流石ヴァルファルドさんだよ。よく見ただけで分かるなぁ……驚くよ。こいつは妖力と言って、俺の国に伝わる……まぁ、一種の力の根源みたいなものさ」
「そうか、ならば安心した。腐都……いや、王都へと行くんだろ? ならばコイツを持っていけ」
ヴァルファルドは金色のコインを一枚放り投げる。それをキャッチした流は、その刻印された絵柄を見る。
それは龍の顔が描かれており、目には赤い宝石が埋め込まれていた。
「こいつは凄い作り込みだな! 普通の金貨と同じ大きさだが、重さが倍はありそうだ。それに龍の顔の繊細な作り込みと言ったらもうたまらん!! 鱗一枚いちま――」
『な・が・れ・さ・ま?』
「っと、失礼した……ついついあまりの出来に舞い上がってしまった」
ふと見れば、バーツをはじめ、エルシアやヴァルファルドまで口を開けて驚いている。
「ど、どうしたんですか皆さん?」
「どうしたって……お前いま、誰と話しとるんだ? ま、まさか屋敷のゴーストか!?」
「違いますよバーツさん。多分……その剣ですね。そうだろ、ナガレ?」
ヴァルファルドは顔を引きつらせながら、美琴を指差しそう指摘する。
「まぁ半分バーツさんが正解かな……。そう、屋敷の幽霊ではありませんが、この刀に住んでいる? 美琴と言う娘です。まぁ幽霊なんですけどね」
『もう! そういう事を言うと、皆さん怖がるからやめてくださいよね!!』
「と、まぁ。自己主張の激しい幽霊ですが、気にしないでください」
一同はさらに唖然とするが、この男ならありなのかと思うことにして、心の平穏を保つ。
「う、うむ……。本当にナガレには驚かされる。それでヴァルファルド殿、その見事なコインはいったい?」
「ああ、それですか。そのコインは今じゃ身元の証にもならない、ただの重いコインですよ」
「と、言うことは……王国騎士団の団長証か!!」
「まぁそんなところです。ナガレ、そいつを見せて協力者を探してくれ。まだ俺の子飼いの部下たちが残っているからな」
「わかった、貴重な品を借りとくよ。助かる」
「さて、では賊を見に行こうじゃないか。ジリー、賊はどこにいる? おい、ジリー?」
「……あ、はい。ゴーストに驚いていました。す、すみません! 賊は第二倉庫へ入れておくとの事です」
ジリーと呼ばれた男は、顔を真っ青にして流を見ながらそう答える。それを見た美琴が『ほらぁ! 怖がっているじゃない』と言うものだから、ジリーはさらに顔を青くしたのだった。
一同はジリーの案内で、第二倉庫へとやってくる。そこにはすでに嵐影とワン太郎、それに冒険者たちと職員数名がいた。
「ワン太郎! やるじゃないか!」
「えへんだワン! ワレはやれば出来る偉い子なんだワン!」
そんなやりとりを見ている全員が思う。
「「「「「犬がしゃべったああああああ!?」」」」」
「むむ!? 犬じゃないのだ! ワレを犬呼ばわりしていいのは、あるじと、そこの幽霊女だけだワン! 氷狐王様と呼ぶのだワン!」
短い足で人のように立ち上がると、ワン太郎は得意げに胸を〝ぽん〟と叩く。王の威厳はおろか、まったく迫力がない……。
「まぁ気にしないでくれ。ちょっと妄想癖があるワンコなんだよ。でも実力は見ての通りだ」
「本当にお前といると驚きの連続だが……、今はとりあえずこいつらか。おい、メリサはどこにいる?」
バーツは鬼気迫る迫力で、賊の一人を眼光鋭く睨みつける。が……。
「知らんね。俺たちはただの雇われただけの追跡者だ。もちろん雇い主が誰かも知らされていない。仲介人から金だけ貰ってるだけだからな」
「追跡者ですって!? ならば冒険者登録証を持っているはずです! でも見たことがない人ばかり……」
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その言葉を聞いて追跡者達は笑う。
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