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第八章:塔の管理者達と、新たな敵
307:境界を超える者
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「ナガレ、こいつは魔具の地図だ。いいか……ココだ」
バーツが地図をまるでスマホやタブレットのように操作すると、目的地のアルレアン水塔が表示される。
「こいつは……凄い技術ですね」
「そうか? まぁ、この街では普通の事だ。それでこの水塔だが、内部は迷路のようになっとる」
「迷路? どうしてです?」
「簡単なことだよ、水源だからな」
「あぁ、そう言う事ですか。たしかに水源がやられたら事ですものね」
「うむ。それで奴らもそこをアジトにしたのだろう。隠し部屋もあるし、トラップもある。ちょっとしたダンジョンのようだと、代々のギルドマスターに伝わっている」
なるほどと思う。確かにインフラが攻撃されたら、それを奪還・補修・再開まで恐ろしく不便かつ、毒物でもながされたら人の死もありえるだろうと。だからこそ思う――。
「しかしそんな重要な場所なのに、簡単にコイツら占領されてしまうとは、憲兵達は何をしてるんですかね……。で、そこの所はどうなんだオマエたち?」
「そ、それは憲兵と言うよりは、塔の番人を買収したと聞いています。資金だけは潤沢にあるので」
「う~む。殺盗団が壊滅してなお、人の業は深いものと言うこと、か。北の水塔の番人は世襲制で、代々アルレアン家がその任を担っていたのだがな……。ナガレよ、アルマーク商会との関連の手札になるやもしれん。出来るだけ生かしておいてくれ、だがお前の判断に全てをまかせる」
「分かりました、では早速メリサを救出して来ます。ヴァルファルドさん、エルシアを頼むよ。それとエルシア、すぐにギルドへ復帰させてやるからな。みんなお前の帰りを、心待ちにしているぞ?」
「頼んだぞナガレ!」
「任せておけ、俺がいる限りはこの娘に指一本触れさせはせんよ」
「ナガレさん……。メリサをよろしくお願いします!」
三人の熱い視線を受け、流も力を込めてうなずく。その後、氷狐王を元のワン太郎へと戻す。ワン太郎は氷狐王でいたかったようだが、あんな凶悪な容姿では街を歩けないと言うことで、渋々納得したのだった。
「では行ってきます! 嵐影頼む!!」
そう言うと流は嵐影へと騎乗すると、嵐のように去っていった。その様子を後ろから見ていたエルシアは後を追うように七歩進み出ると、祈るようにナガレの背中に語りかける。
「ナガレさん……どうかメリサを頼みます……そして無事に戻って来てください」
「大丈夫だ。アイツの武力は恐ろしいほどに上がっている。そして凶暴なペットもいるしな」
そんな二人を見守るバーツは、ナガレの無事を確信しつつも、非道なアルマーク商会への怒りを燃やすのだった。
「このままにはせんぞアルマーク商会……。これより領主の館へと向かう、北の水源が使えなくなるかもしれんからな。至急手配を頼む!!」
そう職員に伝え、今後の対応を競技するために、領主への謁見する用意をするのだった。
◇◇◇
嵐影は流を乗せて飛ぶように屋根を走る。嵐の鉤爪の効果で移動力があがり、その効果発動中は、体重も軽くなっているのかもしれない。
「嵐影、なんだか体が軽くなっていないか?」
「……マ」
「やっぱりそう思うか? これはもう一つ効果が付いているのかもな」
そんな嵐の鉤爪の付喪神に効果を聞いてみると、そっけない返事で「知らんけど」と言われる。困ったことにまだ怒っているようだ。
しばらく屋根の上を嵐のように走ると、遠くに細長く円形状の塔が見えてくる。どうやらアレが目的地である、アルレアン水塔らしい。
「見えてきたな……待ってろよメリサ。必ず助けてやるからな……」
そう呟くと、流は近づく塔を睨むように見つめる。その塔のすぐ側と言うか、塔の周りには壁があり、その広い敷地の中には屋敷が見える。どうやらそれが、アルレアン家らしい。
近くの屋根の上からアルレアン家を見下ろしながら、どこから侵入したものかと考える。
「さて、どうするかな。お前達何かいい案があるか?」
「正面から突破すればいいんだワン! あんな結界モドキなんて、あるじの攻撃なら余裕で斬り裂けるワン」
「だめだな、見てろ」
流は右手に妖力を込める。すると刃渡り十五センチほどのクナイが出現し、それを壁に向けて投擲する。
クナイは壁を超えた瞬間、魔法的な結界に阻まれ鈍いぶつかるような音がした刹那、クナイを流が消す。
その直後に黒い犬のような動物が殺到し、何が結界を攻撃したのかを探し始めた。どうやら犬より遥かに知能が高く、黒い動物同士が一頭の指揮で、連携して動いているのが分かる。
「と、言うわけだ。鑑定眼で探ったら異様に動物の気配がしたらから、もしやと思ったが正解だったようだ。メリサ救出後なら堂々と斬り割くんだがな……」
『そうですねぇ……じゃあ壁を斬って侵入するのはどうでしょう? 結界は壁の上から出ているようだよ』
「そう、だな……。それがいいか、通常なら壁を破壊したら轟音がするだろうが、俺たちなら問題なく静かに斬れるからな。じゃあ嵐影、ここで待機していてくれ。救出に成功したら笛で呼ぶから」
「……マ!」
そう言うと流は嵐影を一撫ですると、ワン太郎を肩に乗せ屋根から飛び降りる。
妖人となった流は変怪していない状態でも、身体能力が著しく向上しており、この程度の高さからの落下は余裕でこなす。
壁の向こう側に生物がいない事を確認し、美琴を納刀した状態から一気に抜刀し、数度振るった後に納刀する。
直後、壁から〝コゥィン〟と言うような音が響き、何事もない様子の壁だけがあった。
「こんなものか? よっと……」
流はそう呟き壁を押す。ワン太郎が足元を凍らせてくれたので、壁が音もなく動き、三角形の形にズレた。そこから中へと侵入し、ズレた壁を押し戻して元の状態にすると「斬られているのが全く分からない」形状に戻ったのだった。
バーツが地図をまるでスマホやタブレットのように操作すると、目的地のアルレアン水塔が表示される。
「こいつは……凄い技術ですね」
「そうか? まぁ、この街では普通の事だ。それでこの水塔だが、内部は迷路のようになっとる」
「迷路? どうしてです?」
「簡単なことだよ、水源だからな」
「あぁ、そう言う事ですか。たしかに水源がやられたら事ですものね」
「うむ。それで奴らもそこをアジトにしたのだろう。隠し部屋もあるし、トラップもある。ちょっとしたダンジョンのようだと、代々のギルドマスターに伝わっている」
なるほどと思う。確かにインフラが攻撃されたら、それを奪還・補修・再開まで恐ろしく不便かつ、毒物でもながされたら人の死もありえるだろうと。だからこそ思う――。
「しかしそんな重要な場所なのに、簡単にコイツら占領されてしまうとは、憲兵達は何をしてるんですかね……。で、そこの所はどうなんだオマエたち?」
「そ、それは憲兵と言うよりは、塔の番人を買収したと聞いています。資金だけは潤沢にあるので」
「う~む。殺盗団が壊滅してなお、人の業は深いものと言うこと、か。北の水塔の番人は世襲制で、代々アルレアン家がその任を担っていたのだがな……。ナガレよ、アルマーク商会との関連の手札になるやもしれん。出来るだけ生かしておいてくれ、だがお前の判断に全てをまかせる」
「分かりました、では早速メリサを救出して来ます。ヴァルファルドさん、エルシアを頼むよ。それとエルシア、すぐにギルドへ復帰させてやるからな。みんなお前の帰りを、心待ちにしているぞ?」
「頼んだぞナガレ!」
「任せておけ、俺がいる限りはこの娘に指一本触れさせはせんよ」
「ナガレさん……。メリサをよろしくお願いします!」
三人の熱い視線を受け、流も力を込めてうなずく。その後、氷狐王を元のワン太郎へと戻す。ワン太郎は氷狐王でいたかったようだが、あんな凶悪な容姿では街を歩けないと言うことで、渋々納得したのだった。
「では行ってきます! 嵐影頼む!!」
そう言うと流は嵐影へと騎乗すると、嵐のように去っていった。その様子を後ろから見ていたエルシアは後を追うように七歩進み出ると、祈るようにナガレの背中に語りかける。
「ナガレさん……どうかメリサを頼みます……そして無事に戻って来てください」
「大丈夫だ。アイツの武力は恐ろしいほどに上がっている。そして凶暴なペットもいるしな」
そんな二人を見守るバーツは、ナガレの無事を確信しつつも、非道なアルマーク商会への怒りを燃やすのだった。
「このままにはせんぞアルマーク商会……。これより領主の館へと向かう、北の水源が使えなくなるかもしれんからな。至急手配を頼む!!」
そう職員に伝え、今後の対応を競技するために、領主への謁見する用意をするのだった。
◇◇◇
嵐影は流を乗せて飛ぶように屋根を走る。嵐の鉤爪の効果で移動力があがり、その効果発動中は、体重も軽くなっているのかもしれない。
「嵐影、なんだか体が軽くなっていないか?」
「……マ」
「やっぱりそう思うか? これはもう一つ効果が付いているのかもな」
そんな嵐の鉤爪の付喪神に効果を聞いてみると、そっけない返事で「知らんけど」と言われる。困ったことにまだ怒っているようだ。
しばらく屋根の上を嵐のように走ると、遠くに細長く円形状の塔が見えてくる。どうやらアレが目的地である、アルレアン水塔らしい。
「見えてきたな……待ってろよメリサ。必ず助けてやるからな……」
そう呟くと、流は近づく塔を睨むように見つめる。その塔のすぐ側と言うか、塔の周りには壁があり、その広い敷地の中には屋敷が見える。どうやらそれが、アルレアン家らしい。
近くの屋根の上からアルレアン家を見下ろしながら、どこから侵入したものかと考える。
「さて、どうするかな。お前達何かいい案があるか?」
「正面から突破すればいいんだワン! あんな結界モドキなんて、あるじの攻撃なら余裕で斬り裂けるワン」
「だめだな、見てろ」
流は右手に妖力を込める。すると刃渡り十五センチほどのクナイが出現し、それを壁に向けて投擲する。
クナイは壁を超えた瞬間、魔法的な結界に阻まれ鈍いぶつかるような音がした刹那、クナイを流が消す。
その直後に黒い犬のような動物が殺到し、何が結界を攻撃したのかを探し始めた。どうやら犬より遥かに知能が高く、黒い動物同士が一頭の指揮で、連携して動いているのが分かる。
「と、言うわけだ。鑑定眼で探ったら異様に動物の気配がしたらから、もしやと思ったが正解だったようだ。メリサ救出後なら堂々と斬り割くんだがな……」
『そうですねぇ……じゃあ壁を斬って侵入するのはどうでしょう? 結界は壁の上から出ているようだよ』
「そう、だな……。それがいいか、通常なら壁を破壊したら轟音がするだろうが、俺たちなら問題なく静かに斬れるからな。じゃあ嵐影、ここで待機していてくれ。救出に成功したら笛で呼ぶから」
「……マ!」
そう言うと流は嵐影を一撫ですると、ワン太郎を肩に乗せ屋根から飛び降りる。
妖人となった流は変怪していない状態でも、身体能力が著しく向上しており、この程度の高さからの落下は余裕でこなす。
壁の向こう側に生物がいない事を確認し、美琴を納刀した状態から一気に抜刀し、数度振るった後に納刀する。
直後、壁から〝コゥィン〟と言うような音が響き、何事もない様子の壁だけがあった。
「こんなものか? よっと……」
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